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アーティスト同士が本気のホームステイ。異文化コラボの成果は?

アーティスト同士が本気のホームステイ。異文化コラボの成果は?

インタビュー・テキスト
萩原雄太
撮影:高見知香

一端ドアが開くと、日本人はとても想像力豊かだし、かなりクレイジーな表現をします。(トゥスネルダ)

―オーディションの方法が異なるように、日本とヨーロッパのアーティストでは、クリエイションの方法も異なりましたか?

ファビアン:日本の場合、「どこに行ってこれをやってほしい」と、細かく演出が決まっていることが多いので、それぞれの役割がとてもはっきりしています。けれども、『SOMAプロジェクト』の場合、自分の立場は自分で作っていかなければならない。自分が持っているいろいろな武器を使って、作品内に居場所を作る必要があるんです。その意味で、日本のアーティストにとって、最初は難しかったかもしれません。

左から:あゆ子、トゥスネルダ・メルシー、ファビアン・プリオヴィル

トゥスネルダ:最初はみんなやりづらそうでした。でも、一端ドアが開くと、日本人はとても想像力豊かだし、かなりクレイジーな表現をしますね(笑)。もっと日常的に他の国の人々と仕事をする機会が増えれば、そんなクレイジーな自分を自由に表現するためのより良い方法を見つけられるのでは、と感じました。

ファビアン:作品を創作する上では、ドアの鍵を開くことが大切なんです。日本の場合、アーティストが自由に表現するためのドアに鍵をかけていることが多く、その鍵を開けてあげることが必要になります。私は、その鍵を見つけて、ドアの向こうに何があるのかを見たいんです。その向こうには、きっと驚くべき美しい物があるはずです。

―日本人としてはいかがでしょうか?

あゆ子:失敗することが悪いという風潮が日本にはありますよね。日本では生活においても失敗しないように作りこまれています。工事現場にも人が配置され、「こちらを通ってください」みたいな案内をしていますが、ドイツだったらそんなことはない。隅々まで徹底して失敗しないようにされていることが、アーティストにとっての足枷になっているのかもしれません。

―良くも悪くも日本は「快適すぎる」ということかもしれませんね。

あゆ子:またクリエイションの中で、日本人は「正解」を出そうとしますが、ヨーロッパの人々は「価値観」を出そうとします。そこがとても大きな違いとして実感した部分です。正解ではなくて、感じたものを出せばいいと吹っ切れてから、少し変わったような気がします。

―まさに、少しずつ「新たな身体」を獲得している。

あゆ子:アーティストたちはそれぞれの価値観を持っています。その価値観から激しい摩擦が起こりますが、それと同時に今回集まったメンバーは柔軟に吸収するスポンジも持っている。「そっちのほうがいい」と気づいたら、すぐに吸収してしまうんです。摩擦を起こしながらも、いい部分は吸収するというバランスを持った人たちだからこそ、作品を一緒に創作できるんでしょうね。

ファビアン:その通りだね。

あうるすぽっと×fabien prioville dance company×An Creative 国際共同制作『SOMAプロジェクト』
あうるすぽっと×fabien prioville dance company×An Creative
国際共同制作『SOMAプロジェクト』

―そんな経験を経て、『SOMA』が提示する「新しい身体」や「新しい世界」は、どのような形で舞台上に現れるのでしょうか?

ファビアン:今回のプロジェクトでは「赤」を重要なカラーとしています。身体を作っている細胞をDNAレベルまで深く覗き込むというイメージを持っているんです。日本、フランス、ドイツのDNAが組み合わさってできる新しい身体を、顕微鏡で覗きこむような空間にしたいと考えています。そのためにも、それぞれのパフォーマーが、今回の制作プロセスを通じて、自身の身体を再発見する必要がある。ヴッパタール舞踊団出身のメンバーにとっても、日本の出演者の身体に触れ合いながらクリエイションをすることで、自分自身が持つ「無意識な癖」から抜け出すことができます。ドイツと日本、私たちの違う身体について何を語ることができるのか、その身体にどんなメッセージが込められるのか、それらがこのプロジェクトの核心になっていくでしょうね。

―そして、国籍やジャンルを超えた「新たな身体」へと変身していく。

ファビアン:そうですね。「変身」というのはとても近いイメージです。このプロジェクトを経ることによって、手触りや肌触りといったベーシックな感覚すらも違ったものになっていくのではないかと期待しています。

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イベント情報

あうるすぽっと×fabien prioville dance company×An Creative 国際共同制作
『SOMAプロジェクト』

2015年8月24日(月)~8月30日(日)全7公演
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと
構成・演出:ファビアン・プリオヴィル
出演:
クレモンティーヌ・デリュイ
パスカル・メリーギ
トゥスネルダ・メルシー
蘭妖子
谷川清美
大窪晶
中澤陽
あゆ子
演奏:
井ノ上孝浩
宇澤とも子
料金:一般4,500円 高校生以下1,000円 豊島区民割引4,000円 障がい者割引3,000円

プロフィール

ファビアン・プリオヴィル

アンジェ国立振付センターにて学ぶ。エドゥワール・ロックのラ・ラ・ラ・ヒューマン・ステップス、フィリップ・ブランシャードの元にて活動後、1999年ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団に入団。2006年退団後はフリーで活動、振付家としてもジョセフ・ナジ、デビッド・フリーマンら多数のアーティストと作品を創作。2010年自身のカンパニーを立ち上げ、5作品を発表。2009年デュッセルドルフのタンツハウスnrw とブダペストのトラフォと共同で『Jailbreak Mind』を制作、好評につき現在も海外ツアーを行っている。

トゥスネルダ・メルシー

エッセンのフォルクヴァング芸術大学で学ぶ。ベルリンのサシャ・ヴァルツ&ゲスツによる『NoBody』(2002)、『Roméo & Juliette』(2015)に参加。2003年から2015年までヴッパタール舞踊団にダンサーおよびアシスタントとして参加。映画『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』出演。2009年、C・デリュイ、D・O・ビッギーとともに結成したTrio CDTでは独自の作品と並行してP・メリーギなどのゲスト振付家の作品も創作。公演、育成活動を行っている。

あゆ子(あゆこ)

2011年より塩屋俊アクターズクリニックにて演技を学ぶ。2012年同プロデュースにて『ロミオとジュリエット』でジュリエットを演じる。2013年ファッションブランド『opening ceremony』表参道店 レセプションパーティー フラッシュモブダンサー出演など。アクリル画、Tシャツデザインなども手がけ、2014年東横イン元麻布ギャラリーにて個展を開催している。

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