
te'が語る、「死」や「解散」の言葉がよぎっても歩み続けた11年
- インタビュー・テキスト
- 三宅正一
- 撮影:田中一人
アルバムタイトルは全29文字、曲タイトルは全30文字で統一していて。決めたときは、「こんなこと他に誰もできねえだろ!」って盛り上がって(笑)。
―te'は、一貫してアルバムや曲名に観念的な日本語の長いタイトルを冠していますよね。これはどのようにして始まったんですか?
1stアルバム
『ならば、意味から解放された響きは『音』の世界の深淵を語る。』
2ndアルバム
『それは、鳴り響く世界から現実的な音を『歌』おうとする思考。』
3rdアルバム
『まして、心と五感が一致するなら全て最上の『音楽』に変ずる。』
4thアルバム
『敢えて、理解を望み縺れ尽く音声や文字の枠外での『約束』を。』
5thアルバム
『ゆえに、密度の幻想は綻び、蹌踉めく世界は明日を『忘却』す。』
6thアルバム
『其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。』
hiro:アルバムタイトルは全29文字、曲タイトルは全30文字で統一していて。そもそものきっかけは、こういうタイトルをつけるバンドはいなかったし、曲に歌詞がないからタイトルでリスナーの想像力を高めるような言葉をつけれたらいいなということで。初音源を出す前は10文字くらいにしようと考えてたんです。でも、そこから「いや、もうちょっと長く!」って20文字くらいになって、「いやいや、もっと長く!」って29文字と30文字になって、「これでいきましょう! こんなこと他に誰もできねえだろ!」って盛り上がって(笑)。
―他のバンドがやっていないことをやってやろう、というのが原点だったんですね。かなり文学的で、文字数も決まっているとなると、簡単に思いつくものではないと思うのですが、誰が考えているんですか?
hiro:最初は初代ベースのmasaが考えてくれていて、masaが脱退した後は、今のベースのmatsudaさんが考えてくれています。
―masaさんは2010年に脱退してますけど、継承するにはなかなか難儀なスタイルですよね。楽器だけでなく、そこも担えるmatsudaさんが加入したのは、ある意味すごく奇跡というか。
hiro:これはもう奇跡でした。masaが脱退するときに、「これからタイトルはどうしよう?」って思いましたね(笑)。僕は絶対に思いつかないし、konoも「俺も無理だ」って言ってた記憶があります。それで、matsudaさんが後任のベースを務めてくれることが決まったときに、俺がダメ元で「matsudaさん、こういうタイトルって思いつきます?」って訊いてみたんですよ。そしたら「やってみたい」って言ってくれて。masaもmatsudaさんもかなりの読書家なんですよ。それで引き継ぐことができたんですよね。
―この様式美としてのタイトルのスタイルを捨てなかったのは、te'にとって重要な要素だからなんですかね。
hiro:そう。このスタイルにずっとこだわってやってきたし、極端に言えば、急に“LOVE”とかになっても、ねえ?(笑)
―あはは(笑)。まあ、そうですよね。
hiro:ずっと追いかけてくれてるファンも「あれ!?」ってなるだろうし。だからなんとかして引き継ぎたかったんです。
どのバンドもギリギリの状態でやりながら、危機を乗り越えて成長したり進化したりしてるんですよね。それがバンドのおもしろさでもあると思う。
―このニューアルバムを最後にドラムのtachibanaさんが一時バンドから抜けることになりましたけど、キャリアを振り返るとメンバーの入れ替わりが度々あるじゃないですか。それでも活動休止や解散という結論に至らなかったのは、hiroさんやkonoさんのte'を絶対に死守するんだという強い思いがあったからだと思うんですけど。
hiro:バンドって、丈夫そうに見えて、みんな弱いんですよね。だから、masaが脱退したときも、tachibanaが一時抜けることが決まったときも、まずは活動休止や解散という言葉がよぎりました。
―やっぱりよぎりはするんですね。
hiro:それはもう、よぎります。tachibanaだって、一時脱退って言っても、帰ってくる保証はないわけで。でも、僕としては、とにかくお客さんに恩返しがしたいんです。僕も1回病気(悪性リンパ腫)でバンドを離れたことがあって。
―2009年ですね。
hiro:あのとき、お客さんからものすごくたくさんのお手紙や励ましの言葉をいただいて……。そういうことが今の僕の原動力になってるのは間違いないし、だからこそなんとかしてバンドを続けたいという思いがあるんです。
―病気によって音楽から遠ざかっていた時間というのは、hiroさんにとってどういうものだったのでしょう。
hiro:病気で倒れてたときは、音楽のことを考える余裕はなくて。生きるか死ぬかの病気だったので。死と直面して、一度はミュージシャン人生をあきらめたんですけど、お客さんの言葉があったからこそ、頑張れたんですよね。自分の病気にしても、他のメンバーの脱退にしても、いろんなことがte'の糧になってると思います。その度にバンドとして強くなってるし、変な言い方をすれば、それらにどこか感謝してるところもあって。
―危うい境遇に直面する度に、それを乗り越えて、むしろいい運命に繋げてきてるんですね。
hiro:今回、tachibanaの一時脱退が決まったときも、初代ドラムのyokoがサポートで入ってくれることになって、一緒にスタジオに入ったら、締め切っていた窓から爽やかな風が入ってくるような感覚があったんです。それがすごく気持ちいいし、楽しくて。そこで思うのは、どのバンドもギリギリの状態でやりながら、危機を乗り越えて、成長したり進化したりしてるんですよね。それがバンドのおもしろさでもあると思うんですけど。
―hiroさんは、残響レコードの社長としてのkonoさんも近くで見続けてきたと思うんですけど、残響レコードを11年動かしているkonoさんのことはどう見られてますか?
hiro:僕は、残響レコードの代表としてkonoを見れないですよ。残響レコード自体、「te'のCDをリリースしよう」ってなったときに、「どこから出す?」って話になって、「自分でレーベル作っちゃえばいいじゃん」ということで生まれたので。そこから仲のいいバンドやかっこいいバンドがレーベルに入ってきて少しずつ大きくなっていったんですけど、僕は1度もkonoを社長として見たことはないですね。変に社長としての顔を出されると、同じバンドのメンバーとして何も言えなくなりますし(笑)。
―なるほど(笑)。そこはkonoさんも同じ感覚だろうし。
hiro:そうだと思います。ただ、te'がなくなってしまったら残響レコードが存在する意義が薄くなってしまうと思うから。だからこそte'を続けたいという思いもありますね。
リリース情報

- te'
『其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。』初回限定盤(CD+DVD) -
2015年8月5日(水)発売
価格:3,600円(税込)
CRCP-40423[CD]
1. 『緒』 。
2. 夜は光を掩蔽し、幾多の秘密を酌み、さかしまな『夢想』を育む。
3. 意味を喪失した時、虚無は私を冒し、享楽だけが『慰』みとなる。
4. 離散的な欠片の集合が混沌から『秩序』に変わる時、美は発現す。
5. 『鍵』 。
6. 自由と孤独は秤の上の矛盾であり、その均衡にこそ『檻』がある。
7. 終焉から振り返る我夢は、陰影の濃淡に浮かぶ『光』の残り香。
8. 『有』 。
9. 道徳はうつろう教義であり、その『閾』は昼と夜でさえ変容する。
10. 『盈』 。
11. 思想も共感もいらず、ただ幻聴を誘発する『起因』としての音楽。
12. 私は舞う枯葉。風任せな躍動を自律と『錯誤』する縹渺たる虚体。
[DVD]
・2015年3月6日渋谷CLUB QUATTROでのライブを全曲収録
・2014年6月15日代官山UNITライブのダイジェストを収録

- te'
『其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。』通常盤(CD) -
2015年8月5日(水)発売
価格:2,700円(税込)
CRCP-404241. 『緒』 。
2. 夜は光を掩蔽し、幾多の秘密を酌み、さかしまな『夢想』を育む。
3. 意味を喪失した時、虚無は私を冒し、享楽だけが『慰』みとなる。
4. 離散的な欠片の集合が混沌から『秩序』に変わる時、美は発現す。
5. 『鍵』 。
6. 自由と孤独は秤の上の矛盾であり、その均衡にこそ『檻』がある。
7. 終焉から振り返る我夢は、陰影の濃淡に浮かぶ『光』の残り香。
8. 『有』 。
9. 道徳はうつろう教義であり、その『閾』は昼と夜でさえ変容する。
10. 『盈』 。
11. 思想も共感もいらず、ただ幻聴を誘発する『起因』としての音楽。
12. 私は舞う枯葉。風任せな躍動を自律と『錯誤』する縹渺たる虚体。
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- te'
iPhone6ケース「其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。」 -
価格:3,780円(税込)
ファッションブランドも立ち上げた「te'」のメンバーによる色彩鮮やかなケース
プロフィール
- te'(て)
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2004年1月、エモ、ポストコア、ポストロックに影響を受けたkono(Gt)を中心に東京で結成。アートな響きを放つメロウギター、独特なフレーズで攻めてくるリズムギター、繊細な中にもビート感が迫ってくるドラム、現代系エフェクトを駆使したベースが1つになるその音の世界は、果てしなく奥深い感性が揺さぶられるのを気付かせてくれる。9月、1stシングルを「残響レコード」よりリリース。2005年9月、1st album『ならば、意味から解放された響きは『音』の世界の深淵を語る。』をリリース。2015年3月より、tachibana(Dr)が一時的にバンドを脱退。現在は、kono、hiro(Gt)、matsuda(Ba)、そして初代ドラマーであるyokoをサポートメンバーに迎えて活動中。2015年8月5日、約3年ぶりとなる6thアルバム『其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。』をリリース。