
te'が語る、「死」や「解散」の言葉がよぎっても歩み続けた11年
- インタビュー・テキスト
- 三宅正一
- 撮影:田中一人
僕は「ロックバンドであれ!」という意識が強いから、ライブで再現できないことは絶対にしたくなかったんです。でも、今までやってなかったことに着手することで、バンドの成長に繋がると思えるようになった。
―ニューアルバムはバンドにとって初のコンセプトアルバムになっていて、te'の今までの活動を振り返るストーリーになっているということですけど、そういう作品を作ろうと思ったのはtachibanaさんが抜けたことも影響していますか?
hiro:その影響もありますけど、そもそもはツアー中の移動車から始まった話で。僕らはいつも運転中に眠くならないように、いろんなCDを買い漁ってみんなで聴いてるんですけど、TM NETWORKの『CAROL』というアルバムを聴いてたときに、「te'でもこういうアルバムを作れないかな」って話になって。僕もkonoも昔からTM NETWORKが大好きなんですけど、『CAROL』はコンセプチュアルなストーリー性を持ったアルバムなんです。
―まさかTM NETWORKがきっかけだったんですね。
hiro:そうなんです(笑)。今までのアルバムの作り方は、1曲ずつ濃いものを作っていって、曲が溜まったらアルバムにするというやり方だったんですけど、あまりにも1曲1曲に思いを込めすぎていて、たまに「3曲くらい聴くと疲れる」みたいなに言われることもあって。それなら今回はアルバムの全体像を最初に決めて、そこに向かって曲を作っていこうという話になったんですよね。
―これまでとは真逆の始まり方だったんですね。
hiro:そう。だからすごく新鮮でしたね。その結果、アルバム全体として聴きやすくて、気持ちいい流れになってると思います。tachibanaが一時抜けるということになったのは制作中なんです。で、なんとかtachibanaが抜ける前に完成させたかったから、予定よりもかなり急いで完成させたんですよ。実質半年くらい前倒ししました。
―そんなに!? 逆によくそんな状況でコンセプチュアルなアルバムを作れましたね。
hiro:もう、必死でした。音楽的にも新しいアプローチがありつつ、これまでのte'を総括するような内容にもしたかったし、そのためにみんなでものすごく集中しましたね。実際にそういうアルバムが作れたと思って、今すごく達成感があります。
―新たなアプローチという意味では、たとえば2曲目“夜は光を掩蔽し、幾多の秘密を酌み、さかしまな『夢想』を育む。”はシーケンスの音も入った高速4つ打ちナンバーですけど、こういうサウンドもパブリックイメージとは一線を画してますよね。
hiro:今までも4つ打ちの曲はあったんですけど、解釈が違うというか。今っぽいサウンドですよね。
―そうですね。
hiro:今まではあまりシンセの音を入れたくなかったんですけど、この曲では全面的に導入してみようと思って。というのも、僕は特に「ロックバンドであれ!」という意識が強いから、今まではライブで再現できないことは絶対にしたくなかったんです。でも、今回、コンセプチュアルなアルバムを作ろうってなったときに、今までやらなかったアプローチも自分の中で許せたというか。だから、アコギを使った曲もあるし、女性の声が入ってる曲もあるし。今までやってなかったことに着手することで、バンドの成長に繋がると思えるようになって。
―女性ボーカルが入ってる10曲目“『盈』”は、ポストダブステップやインディR&B的な要素とポストロックが融合したようなサウンドで。これも新鮮ですね。
hiro:最初、konoに「こういう曲をやりたい」って言われたときは反対したんですよ(笑)。でも、作っていくうちに「あ、こういうのもありだな」って思えるようになって。この曲はギターの音が入ってないじゃないですか。だから勇気がいりましたね。
―でも、その発想の変化はものすごく大きいですよね。引き算のよさも覚えて。
hiro:そう。アコギの曲(“『有』”)もkonoが全部弾いていて、僕の音は入ってないですし。konoに「なんか入れる?」って訊かれても、「いいや」って素直に思えたんですよ。最初にアルバム全体の設計図があったことで、大人になれたんですね(笑)。
こういうバンドが『ミュージックステーション』とか『紅白歌合戦』に当たり前のように出ていたら、いい国だなって思うんですよね。「歌」がないのに『紅白歌合戦』に出たい(笑)。
―次の作品のビジョンもすでにあったりするんですか?
hiro:今作の続編みたいなアルバムを作りたいなとは思っていて。個人的には、もっとメロディーを極められると思うし。すぐにレコーディングしたいくらいですね(笑)。
―今後、バンドとして今後実現させたいことはありますか?
hiro:僕はとにかくずっとこのバンドを続けたいです。それが一番やりたいことですね。あとはもっと多くの人にライブに来てほしい。konoも「いつか武道館でやりたい」って言ってるし、僕もte'の音楽をお茶の間に届けたいと思ってます。
―オーバーグラウンドで、te'の存在感をますます強めていきたいと。
hiro:こういうバンドが『ミュージックステーション』とか『紅白歌合戦』に当たり前のように出ていたら、いい国だなって思うんですよね。「歌」がないのに『紅白歌合戦』に出たいですね(笑)。いや、でも本気でそう思ってます。
リリース情報

- te'
『其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。』初回限定盤(CD+DVD) -
2015年8月5日(水)発売
価格:3,600円(税込)
CRCP-40423[CD]
1. 『緒』 。
2. 夜は光を掩蔽し、幾多の秘密を酌み、さかしまな『夢想』を育む。
3. 意味を喪失した時、虚無は私を冒し、享楽だけが『慰』みとなる。
4. 離散的な欠片の集合が混沌から『秩序』に変わる時、美は発現す。
5. 『鍵』 。
6. 自由と孤独は秤の上の矛盾であり、その均衡にこそ『檻』がある。
7. 終焉から振り返る我夢は、陰影の濃淡に浮かぶ『光』の残り香。
8. 『有』 。
9. 道徳はうつろう教義であり、その『閾』は昼と夜でさえ変容する。
10. 『盈』 。
11. 思想も共感もいらず、ただ幻聴を誘発する『起因』としての音楽。
12. 私は舞う枯葉。風任せな躍動を自律と『錯誤』する縹渺たる虚体。
[DVD]
・2015年3月6日渋谷CLUB QUATTROでのライブを全曲収録
・2014年6月15日代官山UNITライブのダイジェストを収録

- te'
『其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。』通常盤(CD) -
2015年8月5日(水)発売
価格:2,700円(税込)
CRCP-404241. 『緒』 。
2. 夜は光を掩蔽し、幾多の秘密を酌み、さかしまな『夢想』を育む。
3. 意味を喪失した時、虚無は私を冒し、享楽だけが『慰』みとなる。
4. 離散的な欠片の集合が混沌から『秩序』に変わる時、美は発現す。
5. 『鍵』 。
6. 自由と孤独は秤の上の矛盾であり、その均衡にこそ『檻』がある。
7. 終焉から振り返る我夢は、陰影の濃淡に浮かぶ『光』の残り香。
8. 『有』 。
9. 道徳はうつろう教義であり、その『閾』は昼と夜でさえ変容する。
10. 『盈』 。
11. 思想も共感もいらず、ただ幻聴を誘発する『起因』としての音楽。
12. 私は舞う枯葉。風任せな躍動を自律と『錯誤』する縹渺たる虚体。
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- te'
iPhone6ケース「其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。」 -
価格:3,780円(税込)
ファッションブランドも立ち上げた「te'」のメンバーによる色彩鮮やかなケース
プロフィール
- te'(て)
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2004年1月、エモ、ポストコア、ポストロックに影響を受けたkono(Gt)を中心に東京で結成。アートな響きを放つメロウギター、独特なフレーズで攻めてくるリズムギター、繊細な中にもビート感が迫ってくるドラム、現代系エフェクトを駆使したベースが1つになるその音の世界は、果てしなく奥深い感性が揺さぶられるのを気付かせてくれる。9月、1stシングルを「残響レコード」よりリリース。2005年9月、1st album『ならば、意味から解放された響きは『音』の世界の深淵を語る。』をリリース。2015年3月より、tachibana(Dr)が一時的にバンドを脱退。現在は、kono、hiro(Gt)、matsuda(Ba)、そして初代ドラマーであるyokoをサポートメンバーに迎えて活動中。2015年8月5日、約3年ぶりとなる6thアルバム『其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。』をリリース。