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アートシーンの磁場「P3」芹沢高志が語る「たまたま」の重要性

アートシーンの磁場「P3」芹沢高志が語る「たまたま」の重要性

インタビュー・テキスト
萩原雄太
撮影:高見知香

僕は状況によって作品の意味なんて変わって構わないと思っています。むしろ、アートを隔離することで、生活との距離を作ってしまうほうが面白くありません。

―芹沢さんがP3の活動を通して考えてきた「アート」は、この26年間で変わった部分もありますか?

芹沢:世の中の状況に反応して、自分たちも変わっていきました。その意味で、この26年は激動でしたね。P3の活動を開始した1989年は、ベルリンの壁が崩壊した年。変に象徴っぽく言うつもりはありませんが、現在の世界の混乱に通じる最初期から活動を続けてきたんです。蔡國強の屏風ドローイング『原始火球』のプロジェクトを行ったときには、イラクで湾岸戦争が始まっていましたが、「あちらでは、人殺しのために火薬を使っていて、こちらではアートのために火薬を使っているんだね」と話し合っていました。同じ時代の中でアーティストと共に過ごし、影響を与え合いながら作品を生み出していったんです。

『東長寺(模型)』『回向―つながる縁起』展示風景
『東長寺(模型)』『回向―つながる縁起』展示風景

―社会、アーティスト、P3がそれぞれ影響を与え合って、その循環の中で作品が生まれてくる。ちなみにP3で行なうプロジェクトと大規模な芸術祭をディレクションする際には、どのような違いがあるのでしょうか?

芹沢:P3では、拠点をあえて「プロジェクトスペース」と呼んでいます。ここでは、美術館のように大規模な展示をすることは考えていなくて、社会にアートやプロジェクトをプレゼンテーションするようなキャンプであればいいと思っているんです。一方、他の芸術祭で取り組んでいるのは「場所の問題」。美術館やギャラリーの白く塗られた「展示室=ホワイトキューブ」から出て、アーティストがそれぞれの場所の力を引き出すようなアートを展開していくことが自分にとって重要なんです。

―ホワイトキューブに対する違和感を感じる?

芹沢:近代建築では、台所は調理のため、寝室は寝るため、オフィスは仕事のためと、機能と空間を結びつけていきました。アート作品を観るときに、ニューヨークの美術館で観るのと、台北のギャラリーで観るのと、自分の家で観るのと、意味が変わってしまうのはおかしいから、純粋にアート作品を観るためのホワイトキューブが生まれてきたんです。けれども、僕は置かれる状況によって作品の意味なんて変わって構わないと思っています。むしろ、アート作品を隔離することで、生活との距離を作ってしまうほうが面白くありません。

芹沢高志

―つまり「場所の問題」を突き詰めていくと、「近代」に対する挑戦を考えることになる。そんな挑戦を積み重ねてきたこの26年間の活動を振り返って、芹沢さん自身どのように感じているのでしょうか?

芹沢:一言で言えば「たまたま」(笑)。その積み重ねです。ただ、この「たまたま」は自分にとって、とても重要な概念です。東長寺との関係も、たまたま400周年のプロジェクトに関わって、いくつもの提案や挑戦をしていったことから始まりました。そういった挑戦を行うことによって、他者が応答し、反応しながら世界が動いていったんです。これも回向ですね(笑)。だから、どの仕事を選択的に取ってきたという意識はないんです。『とかち国際現代アート展・デメーテル』も、競馬場でアートがやりたい! と帯広に乗り込んでいったわけでなく、たまたまそういう状況になって、結果的に競馬場で国際美術展をすることになったし、『別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」』も似たようなもの。強固な計画を持って行動するのではなく、流れに身を任せながら、一番面白いと思うものを実現してきた26年間だったと思います。

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イベント情報

『回向―つながる縁起』

2015年7月11日(土)~10月12日(月・祝)
会場:東京都 新宿御苑前 P3 art and environment
時間:11:00~17:00(金曜および夜のイベント開催時は19:00まで)
休館日:火、水、木曜(9月22日~9月24日は開館)
料金:無料
主催:東長寺
企画制作:P3 art and environment

プロフィール

芹沢高志(せりざわ たかし)

951年東京生まれ。神戸大学理学部数学科、横浜国立大学工学部建築学科を卒業後、(株)リジオナル・プランニング・チームで生態学的土地利用計画の研究に従事。その後、東長寺の新伽藍建設計画に参加したことから、1989年にP3 art andenvironmentを開設。1999年までは東長寺境内地下の講堂をベースに、その後は場所を特定せずに、さまざまなアート、環境関係のプロジェクトを展開している。2014年より東長寺対面のビルにプロジェクトスペースを新設。帯広競馬場で開かれた『とかち国際現代アート展デメーテル』の総合ディレクター(2002年)、『アサヒ・アート・フェスティバル』事務局長(2003年~)。『横浜トリエンナーレ2005』キュレーター。『別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」』総合ディレクター(2009年、2012年、2015年)などを務める。2014年『さいたまトリエンナーレ2016』のディレクターに就任。

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