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シティボーイズが語る「歳をとったコメディアンは、もはや老害」

シティボーイズが語る「歳をとったコメディアンは、もはや老害」

インタビュー・テキスト
土佐有明
撮影:永峰拓也

作・演出を担当した前田司郎による、シティボーイズの細かい分析

三人が同時代性を追求し続けていることは、『シティボーイズ ファイナルpart.1「燃えるゴミ」』の鮮度の高さとキレの良さを見ればはっきりと分かる。そして、その大きな要因と言えるのが、劇作家で小説家の前田司郎を作・演出に起用したことだろう。前田は五反田生まれ五反田育ちで、現在も五反田に劇団の本拠地を構える生粋の東京っ子だが、そうした彼の出自はシティボーイズの洒脱でドライな芸風と見事にマッチしている。

―前田司郎さんに脚本・演出をお願いすることになった経緯は?

きたろう:前田くんの本を読んだりお芝居を観たりしていて、この人は笑いが書けると思ってたの。特に『岸田戯曲賞』を獲った『生きてるものはいないのか』、あれがおかしかったの、俺にとってはめちゃくちゃ。で、たまたま飲み屋で話す機会があって誘ったら、ぜひやりたいって言ってくれて。彼は最初からやれるって自信があったんじゃないかな?

大竹:たまたま会ったの?

きたろう:打ち上げでね。たまたま隣りに座ってたから、「シティボーイズ興味ある?」って聞いたら、「あります」って。

大竹:俺らのこと、ちょっとは知ってたの?

きたろう:めちゃくちゃ知ってるんだよ、実は。忙しい人なのに、「スケジュール空いてる?」って聞いたら「全然空いてます」って即答してくれちゃって。

大竹:忙しいだろう。稽古中に『向田邦子賞』(東京ニュース通信社が主催する脚本賞。連続ドラマ『徒歩7分』で受賞)まで獲っちゃったもんな。

左手前:きたろう、右奥:大竹まこと

―前田さんはみなさんの雑談を聞いて、それをヒントに脚本を書かれたそうですね。

きたろう:雑談というか、各々の人間性を見てたんだよね。

大竹:ずっと見てたね。脚本もそれぞれのキャラ通りになっていて、よくこんなに観察していたなって思った。

斉木:俺たちがしゃべっている会話の内容を元に脚本を書くのかなと思ったら、そうじゃないのね。むしろ見ていたのは、それぞれの個性。どういうしゃべり方をしていて、どういう癖があるか。そういうところずっと見ていたみたい。

きたろう:稽古場で俺と大竹がべらべらしゃべっていて、斉木が黙っているとか、そういう関係性を見てたんだよね。

『シティボーイズ ファイナル part.1「燃えるゴミ」』より
『シティボーイズ ファイナル part.1「燃えるゴミ」』より

―台本を読んでみて、自分たちのしゃべり方の癖にあらためて気付いたこともありますか?

きたろう:倒置法をよく使うんだよ、前田くんは。俺はこういうしゃべり方をしてないぞって最初は思ってたんだけど、実は意外とそういうしゃべり方してるのね。

大竹:みんなで蕎麦食いに行った時に、「普段からこういうしゃべり方してないぞ、俺たちは」って言っちゃったの、きたろうが。

きたろう:「俺たち」が後ろに行っちゃうしゃべり方をするんだよね、俺は。

大竹:舞台とかテレビの台本は倒置法になってないけど、普段しゃべってる時は割とみんな倒置法を使ってるんだよ。前田さんはそういうことを分かっていた。

作家が変わっても「俺たちがやるとみんな同じになる」

先ほど、シティボーイズのコントは既成の演劇の否定から始まった、と述べたが、DVDを見ると、実は演劇的要素もちらほらと垣間見える。例えば三人は、しゃべっていない時でも相手の発話にちゃんと反応している。観客はしゃべっている人間を注視しがちだから、サボろうと思えばいくらでもサボれるのだろうが、皆、その場に相応しい反応をして笑いを倍加させているのだ。こじつけかもしれないが、これは彼らが演劇からスタートしたことと関係あるのではないか。そうした彼らの役者っぽさは、前田の脚本と相性がよかったのだと思う。

―前田さんのセンスは、これまで脚本を書いてきた三木聡さんや宮沢章夫さんや細川徹さんと比べてだいぶ違いを感じましたか?

斉木:もちろん違うね。

きたろう:違うけど、俺たちがやるとみんな同じになるね。

大竹:例えば、細川が書いた本はアドリブでぶっ壊すのが平気なのね。アドリブを言って笑いを取ることができた。でも、前田さんの本はそういうことが通用しなかったね。アドリブがきかないコントというか、つまり演劇チックという意味だよね。コントチックだったらアドリブの入る余地が残ってるけど、演劇寄りだとそうはいかない。

きたろう:よく書いてるんだよ、一言一言。

斉木:そう。だから、俺も本番中に「そのせりふはこういう風に言ってください」って指摘されたことがあって。語尾のトーンが違っていたみたいなんだよね。で、指摘された通りに言い直したら途端にウケたもんね。

斉木しげる

「俺たちがやるとみんな同じになる」というきたろうの発言は、一見謙遜した言葉のようでいて実に的を射ている。それじゃあ誰と組んでも同じなのか? という声が聞こえてきそうだが、それだけ三人が集った時の空気は独特なのだ。インタビューでも、三人の当意即妙のやりとりがまるでコントのように聞こえて驚いた。その場でエチュード(即興の芝居)を見ているようなのだ。作家やゲスト陣は入れ替わっても、三人がいれば揺ぎないものができる。そうした自信と自負が彼らにはあったのではないか。だからこそここまで続いたのだ、とも。ファイナルということで、これで終わりかと惜しむ声もあるが、1989年から毎年、ゴールデンウィークに決まって公演を続けてきたこと自体驚異的だ。その理由を最後に述べてくれた。

―これで終わりかと惜しむ声もありますが、逆にここまで続けてきたことがすごいと思います。

斉木:それは、新しいことを常にやってきたからだね。惰性やマンネリを感じた瞬間に、もう止めてるよ。

きたろう:自分たちが面白いと思うことをやる、というのが第一だったからね。客がそれを面白いと思うかは二の次でさ。要するに学生のようなモチベーションを持ち続けたことが続いた理由だと思うね。

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リリース情報

『シティボーイズ ファイナル part.1「燃えるゴミ」』(DVD)
『シティボーイズ ファイナル part.1「燃えるゴミ」』(DVD)

2015年10月28日(水)発売
価格:5,076円(税込)
COBM-6807

[収録内容]
・舞台本編映像
・舞台特別映像
・シティボーイズスペシャルインタビュー

プロフィール

シティボーイズ

大竹まこと、きたろう、斉木しげるによるコントユニット。1979年結成。1981年から『お笑いスター誕生!!』に出場し、10週勝ち抜きでグランプリを獲得する。1980年代から定期的にコントを上演してきた。定型に陥ることを周到に避け、コントに新鮮な風を送り続けてきた彼ら。まさに、コントをアートにまで高めたといっても過言ではない。

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