
自由奔放なさかいゆうに完敗 極上ポップスの裏にある本音を語る
- インタビュー・テキスト
- タナカヒロシ
- 撮影:豊島望
こんなに完敗したと思わされたインタビューは久し振りだった。シングルとしては名作との呼び声高い『薔薇とローズ』以来、約2年ぶりの新作となる『ジャスミン』について掘り下げていくつもりだったが、「僕の歌詞って、毎回同じことを言ってるんですよ」「需要がなくなったら食いっぱぐれる」など、奔放な発言に終始振り回されっぱなし。しかし、その独特な人生観が反映された音楽は、どこまでもピュアで、ズバッと核心を突くように胸の内側を揺さぶってくる。表題曲の“ジャスミン”について、一般には鍵盤奏者としてのイメージが強い渡辺シュンスケに作詞を依頼した“WALK ON AIR”について、そして田島貴男本人も絶賛したORIGINAL LOVEの名曲“接吻”のカバーについて、四苦八苦しながら聞き出したインタビューをどうぞ!
音楽では本当の性格を書けるので面白いなと。だから、歌詞には自分のなかの嫌な部分といい部分の両方を出せたらいいなと思っています。
―“ジャスミン”は2年間温めていた曲だそうですね。
さかい:温めていたというか、完成しなかったんです。最初にサビのメロができたんですけど、そこからいろいろ考えて。僕の場合、サビはわかりやすくしたいんですけど、ダイレクトにメッセージが伝わるものって、小難しいものを作るよりも難しいんですよ。シンプルのなかにも、何回も聴きたくなるアレンジにする必要がある。それで途中から蔦谷好位置さんの力を借りて仕上げていったんです。
―蔦谷さんの力を借りたのは、いつ頃からなんですか?
さかい:今年の4月くらいかな。蔦谷さんはプライベートでも会うことが多かったので、これもご縁かなと思って。この曲に出てくる「君」は、主人公のパートナーみたいな人をイメージしているんですけど、その「君」に出会ったことが、恋愛とかそういうのを越えて、神様からの贈り物だと思えるような曲にしたいなと思ったんです。
―神様からの贈り物?
さかい:うちの父親と母親もそうで、母は父の愚痴を餅つきのようにこねることが人生の一部みたいな感じだったんです。ドキドキするような恋愛も素敵かもしれないけど、そういう関係も捨てがたいなと思うんですよ。それって巡り合わせというか、贈り物みたいじゃないですか。だから“ジャスミン”という曲名にしたんですね。ジャスミンはもともとペルシャ語のヤースミンという言葉に由来していて、「神様からの贈り物」という意味があるんです。
―そうだったんですね。歌詞に1度も「ジャスミン」が出てこないから気になってました。この曲は自伝的な内容でもありますよね?
さかい:僕は歌詞を書くと自伝っぽくなるんですよ。自分のこと以外あんまり歌えないから。たとえば、「こいつを殴りたい」と思ったとするじゃないですか。実際には殴らなくても、殴りたいと思うことは止められない。でも曲のなかでは、「こいつを殴りたい」って書けるんですよね。対外的な意味での性格は、最終的にどう行動するかで決められますけど、音楽では本当の性格を書けるので面白いなと。だから、歌詞には自分のなかの嫌な部分といい部分の両方を出せたらいいなと思っていて。
―Aメロの<淋しさだけが渦巻く夜は / 自分以外悪者にしてた / 数えきれない 失望や挫折も / 明日へ向かう始まりだった>という歌詞は、前回のCINRAのインタビューで語っていらっしゃったようなメジャーデビュー前にとにかくひとりで自分と向き合って、ピアノの練習に打ち込んでいらっしゃったことを歌っているのかなと思いました。
さかい:それもあるし、いまも当てはまると思います。自分以外のみんなを悪者として考えているような部分が、僕のなかにずっとあるんですよ。
―“ジャスミン”では、そういう嫌な自分が、「君」と出会うことでポジティブに変わっていくわけですよね?
さかい:そうですね。仮に「君」をジャスミンちゃんとすると、ピュアなジャスミンちゃんに会って、「なんて自分は垢にまみれてるんだ」と思いながらも自分の汚い部分を受け止めて、その人と歩いていきたいと思う。そういう曲にしたかったんです。
大きい奇跡は何年かに1回しか起きない。でも、その奇跡を起こすためには、やっぱり努力しないと。
―“ジャスミン”では「奇跡」という言葉をたくさん使われてますけど、どういう意図で?
さかい:たぶん、「奇跡」っていう音を気に入ってたんでしょうね。なんか音の強さってありますから。それは音楽ならではですよね。
―それは意味とかではなく、言葉の響きとして?
さかい:言葉の響きと意味がリンクしてると思うんです。奇跡って、起こるものであって、起こせるものじゃないから。起こす努力はできるけど、「昨日、奇跡起こしたんだよ」ではなくて、「昨日、奇跡起きたんだよ」って言うじゃないですか。それもやっぱり、人以外のものからの贈り物なのかなって思いますよね。
―布石は敷いておけるけど、奇跡は今日とか明日とか自在に起こせるものじゃない。
さかい:そうなんです。ライブも同じで、いいライブをしようと思ったらダメなんですよね。だから、どうしても「今日は降りてきたなぁ」っていう日と、「今日はこなしたなぁ」っていう日があって。本人は一生懸命やってるだけなんですけど、奇跡は何回かに1回とか、大きい奇跡は何年かに1回しか起きない。でも、その奇跡を起こすためには、やっぱり努力しないと。
リリース情報

- さかいゆう
『ジャスミン』初回限定盤(CD+DVD) -
2015年10月21日(水)発売
価格:1,900円(税込)
AUCL-187/8[CD]
1. ジャスミン
2. WALK ON AIR
3. 接吻
4. ジャスミン(backing track)
[DVD]
『さかいの湯 Vol.3“さかいゆうといっしょ”スペシャル』
1. 薔薇とローズ with Little Glee Monster
2. How Beautiful with 土岐麻子
3. シロクジ with KOHEI JAPAN
4. Magic Hour with RHYMESTER
5. 闇夜のホタル with 日野皓正

- さかいゆう
『ジャスミン』通常盤(CD) -
2015年10月21日(水)発売
価格:1,300円(税込)
AUCL-1891. ジャスミン
2. WALK ON AIR
3. 接吻
4. ジャスミン(backing track)
イベント情報

- さかいゆう
『TOUR 2015“ジャスミン”』 -
2015年11月30日(月)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:福岡県 DRUM Be-1
料金:4,860円(ドリンク別)2015年12月2日(水)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:大阪府 サンケイホールブリーゼ
料金:5,400円2015年12月7日(月)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
料金:4,860円(ドリンク別)2015年12月10日(木)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:北海道 札幌 cube garden
料金:4,860円(ドリンク別)2015年12月19日(土)OPEN 16:30 / START 17:00
会場:東京都 中野サンプラザホール
料金:5,400円
プロフィール
- さかいゆう
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2009年にシングル『ストーリー』でデビュー。2014年は話題の楽曲“薔薇とローズ”収録の3rdアルバム『Coming Up Roses』がオリコンデイリーチャート5位にランクインした他、映画『LOVE SESSION』で初主演も果たし話題を集める。11月には初の中野サンプラザホールを含む大阪・東京でのスペシャルライブも開催。唯一無二の歌声と、SOUL・R&B・JAZZ・ゴスペル・ROCKなど幅広い音楽的バックグラウンドをポップスへと昇華させるサウンドが魅力の男性シンガーソングライター。2015年10月21日に6枚目のシングル『ジャスミン』をリリース。