特集 PR

暮らす場所が働き方を変える?曽我部昌史(みかんぐみ)×熊谷玄

暮らす場所が働き方を変える?曽我部昌史(みかんぐみ)×熊谷玄

インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:豊島望

人って「与えられる場」はあまり大切にしない。愛着を生むためには自ら「関わること」が重要なんです。(熊谷)

―クリエイターの誘致や助成に加え、横浜市ではそうした人々と地元企業のコラボレーションをコーディネートし、ビジネスに新しい付加価値を生み出す「創造的産業の振興」にも取り組んでいて、その取り組みを広めるイベント『YOKOHAMA CREATIVE WEEK』が『関内外OPEN!』と同時期に開かれます。そこでは人と場所の結びつきによる可能性が探られていると感じます。お二人は仕事をするうえで、横浜を拠点にしたことで得たメリットや面白さはありますか?

熊谷:ランドスケープデザインの仕事では、「現場」は都市部中心というより、あらゆる場所になります。僕らも地元の案件に関わらせていただくと同時に、日本各地に加え、中国での仕事もしますし、やや特殊なケースではタイの世界遺産に登録された寺院の環境整備にも関わっています。なので、たとえば東京に拠点があったほうが有利、といった制限には捕らわれずに選択ができました。東京での打ち合わせにも気軽に対応できるし、横浜はそうした働き方において各地とちょうどいい距離感だと思う。

熊谷玄

―みかんぐみも国内外の様々な場所でお仕事しつつ、BankARTや『開国博Y150 はじまりの森』など横浜でのお仕事も手がけていますね。

熊谷:曽我部さんは神奈川大学でも都市デザインを教えているし、ご自宅もたしか横浜市内ですよね?

『開国博Y150 はじまりの森』
『開国博Y150 はじまりの森』

曽我部:すべて偶然なんですけどね。でも1年半限定のつもりだったのに今もいる理由の1つは、この街には良い意味でのローカルな感じがあるからかも。それはたとえば、街の「顔」の変化が直に感じられることや、行政の人々の「顔」がよく見えるということです。こちらに移ってきたら、BankARTの関係者などを通じてしょっちゅう行政側の人と引き合わされて(笑)。特別な配慮というより、それが当たり前という感じもあった。東京にいた頃は、たとえば一度、子どもたちのワークショップを地域の行政側に提案したけど、あまり話を聞いてもらえなかったり(苦笑)。だから対照的な感じはありましたね。まあ、大都市ではそうならざるを得ないのかもしれないけれど。

左から:曽我部昌史、熊谷玄

―街との関わり方のスケールが心地よいということでしょうか。建築の世界でも、コミュニティーやつながりのデザインといったことが、近年より注目されているとも感じます。曽我部さんにとっては、これらの要素はお仕事のうえでどんな意義を持ちますか?

曽我部:これも「反動」と言って良いかわかりませんが(笑)、僕はもともと伊東豊雄さんという強烈な個性の建築家の下で働いていて、そこではいち所員の僕たちも伊東さんという存在に「成り代わって」仕事をするような感じがあったんですね。では独立したら自分は何ができるのかと考えた際、自分の中の「こうあるべき」をあらかじめ決めない作り方かな、と思ったんです。クライアントに対し、僕らはプロの知見や経験を持ってはいる。でも、打ち合わせで建築家側が気付かされることも絶対あるし、もっと言えば、あらゆるところに発見があるはずという想いがあった。みかんぐみのみんながそういう意識を共有していて、当時『非作家性の時代に』という文章を書いた。そうしたら、けっこう議論になっちゃったんだけど……。

―そうした、人と関わりながら作るというアプローチを実践していくうえでも、横浜の街のありようは魅力的だったということでしょうか。熊谷さんは、ご自分のお仕事と、街や人々との関係をどう考えていますか?

熊谷:ランドスケープのデザインでは、屋外の公共空間など、誰もが使える場をどうすれば魅力的なものにできるかを考えます。ただ、人って「与えられる場」はあまり大切にしないんですよね。そこへの愛着を生むのは、やっぱりその人たちが自ら「関わること」です。その点で、横浜で活動するうえでの意見のしやすさ、風通しの良さというのは僕らの仕事においてもすごく重要です。もともと、アーティストのアシスタントから今の仕事に転身したのも、そうした形で社会に関わりたいと思ったからなんです。

Page 2
前へ 次へ

イベント情報

『関内外OPEN!7』<

2015年11月7日(土)~11月8日(日)
会場:神奈川県 馬車道、元町・中華街、関内、桜木町、石川町各駅周辺のスタジオ
料金:無料(一部有料、詳しくは各イベント参照)

『YOKOHAMA CREATIVE WEEK』

2015年11月4日(水)~11月8日(日)
会場:神奈川県 横浜 YCC ヨコハマ創造都市センター
時間:11:00~22:00(最終日は20:00まで)
料金:無料

プロフィール

曽我部昌史(そかべ まさし)

1962年、福岡県生まれ。「みかんぐみ」共同主宰。設計だけでなく、ワークショップの企画運営やアートプロジェクトへの参加など、多彩な活動を展開。主な作品に、「北京建外SOHO低層商業棟」(2003)、「2005年日本国際博覧会トヨタグループ館」(2005)、京急高架下文化芸術活動スタジオ「黄金スタジオ」(2008)、「マーチエキュート(mAAch ecute)神田万世橋」(2014)の設計などがある。

熊谷玄(くまがい げん)

1973年横浜生まれ。株式会社スタジオゲンクマガイ代表。ランドスケープデザインを中心にまちづくりやアートワーク製作などを手がける。ランドスケープデザインを担当したプロジェクトに「日清カップヌードルミュージアム」(2011)、「三井アウトレットパーク木更津」(2014)、「三井ガーデンホテル 大阪プレミア」(2014年)などがある。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

岩井勇気(ハライチ)『ひねくれとか言われても俺はただ自分が進みたい道を選んでるだけ』

ドリームマッチでの『醤油の魔人 塩の魔人』、ラジオで突如披露した推しキャラケロッピをテーマにしたEDM調楽曲『ダメダメケロッピ』など、音楽的な才能に注目が集まる岩井勇気。今回はミツカン「こなべっち」とタッグを組み、自らがマイクを取ってラップに挑戦。しかもこの動画、岩井がこれまでラジオや書籍の中で言及してきた、珪藻土のバスマットや、海苔、メゾネットタイプの部屋、クラウス・ノミなどのネタが詰まっていて、まさか岩井さんの自宅なのでは……? と隅々まで見てしまう。つぎはぜひ、自作のトラックとリリックによる曲が披露されることを待っています。(川浦)

  1. 秋山黄色×佐藤寛太対談 互いに認め合う「異常さ」、交わる遊び心 1

    秋山黄色×佐藤寛太対談 互いに認め合う「異常さ」、交わる遊び心

  2. 古田新太が振返る劇団☆新感線40年 演劇界に吹かせたエンタメの風 2

    古田新太が振返る劇団☆新感線40年 演劇界に吹かせたエンタメの風

  3. 青葉市子の新AL『アダンの風』詳細発表&原美術館でのライブ配信も 3

    青葉市子の新AL『アダンの風』詳細発表&原美術館でのライブ配信も

  4. 米津玄師と是枝裕和監督が初タッグ“カナリヤ”PV公開 蒔田彩珠らが出演 4

    米津玄師と是枝裕和監督が初タッグ“カナリヤ”PV公開 蒔田彩珠らが出演

  5. 角舘健悟の『未知との遭遇』たなかみさき編(後編) 5

    角舘健悟の『未知との遭遇』たなかみさき編(後編)

  6. 坂本龍一の過去ライブ映像が本日から3週にわたってYouTubeでプレミア公開 6

    坂本龍一の過去ライブ映像が本日から3週にわたってYouTubeでプレミア公開

  7. 三浦春馬主演、映画『天外者』五代友厚の「志」と「天外者」な部分を紹介 7

    三浦春馬主演、映画『天外者』五代友厚の「志」と「天外者」な部分を紹介

  8. 小沢健二が「手紙」を読み上げる生配信番組『キツネを追ってゆくんだよ』 8

    小沢健二が「手紙」を読み上げる生配信番組『キツネを追ってゆくんだよ』

  9. 『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』論評 自立と解放への戦い描く 9

    『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』論評 自立と解放への戦い描く

  10. 『あつ森』とジェラート ピケのコラボブック刊行 表紙は松岡茉優 10

    『あつ森』とジェラート ピケのコラボブック刊行 表紙は松岡茉優