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八代亜紀が語る、ホステスや罪人の哀しみも支えてきた歌手人生

八代亜紀が語る、ホステスや罪人の哀しみも支えてきた歌手人生

インタビュー・テキスト
武田砂鉄
撮影:中村ナリコ
2015/10/27

アメリカの開放的な雰囲気は素敵。日本のおじさんたちにも、もうちょっと街中で「うぇ~い」って音楽を奏でて欲しいわ。

―以前、マーティ・フリードマンさんにインタビューした際、ギターソロで八代さんの“舟唄”などの演歌をプレイする理由について聞きました。マーティは「演歌の間奏には、必ず歪んでいるギターがある。メタルと演歌は、その歪み方が似ているんだ」と言っていました。

八代:マーティが演奏する“舟唄”は、ロックや演歌というより、ブルースなのよね。切なさが、その魂が、伝わってくるんです。ブルースは奴隷制度の中から生まれた音楽です。日本でも、貧しさの中から子守唄や浪曲が生まれましたが、これもまた切ないブルースなんです。

―今回リリースされるブルースアルバム『哀歌-aiuta-』では、THE BAWDIESや横山剣さんなどから楽曲提供を受けていますが、ジャンルを横断し、初めての人と音楽を共に作り上げるとき、新たな発見を覚えることが多いですか、それとも共通項に気づくことが多いですか。

八代:共通項ですね。ブルースとは、あまりにも酷い扱いを受けてきた人間の魂だから、今回のアルバムではそこを掘り下げてみたかったんです。自分の家ではジャズが鳴り、父は浪曲を歌ってました。そのジャズや浪曲が、私の中でブルースと呼応したんですね。今回は、自分のルーツを掘り下げる作品にもなりました。

―2013年、ニューヨークの老舗ジャズクラブ「Birdland」でもライブを開催されました。アルバムを作る上で、アメリカという土壌から感知した部分も大きかったのではないでしょうか。

八代:自由よね、アメリカって。街を歩いているだけで、ジャジーだったり、ブルージーな歌が聴こえてくる。でも、一昔前までは日本でも街中に音楽が溢れていたのよ。ほら、おじさんたちが、酒の力を借りて歌いながら歩いていたでしょう(笑)。アメリカにはまだまだ人種差別が残っていますし、良くない面もたくさんあります。でも、あの開放的な雰囲気は素敵。日本のおじさんたちにも、もうちょっと街中で「うぇ~い」って音楽を奏でて欲しいわ。

八代亜紀

―音楽がみんなの共通のものになるくらい広まっていくために、これまで歌番組が大きな役割を果たしてきました。最近は、めっきり歌番組が少なくなりましたね。

八代:やっぱり、時代よね。でもね、BSでは増えてきたのよ。BSだと世界各地でも映るわけで、だから私、韓国でも台湾でも、街で見つかったら追っかけられちゃうくらいなんだから。

―むしろ、日本人より日本の音楽番組を見ているのかもしれませんね。

八代:本当にそうなの、とてもよく見てくれています。この間、モンゴルに行ってきたんですが、モンゴルの大草原にパラボラアンテナがあるんです。ゲル(モンゴル遊牧民の移動式住居)は布だから、パラボラアンテナは上につけられなくて、外に置いているのね。

―モンゴルのゲルの中でも八代さんが見られると。

八代:そう、しかも、ゲルの中だけじゃないのね。モンゴルで7時間の移動をしたんですが、ドライバーさんが「Aki Yashiro」で検索してくれて、私の曲をスピーカーから流してくれたんですよ。私、驚きました。モンゴルで自分の曲を聴けちゃうんですから。

―ジャズアルバム『夜のアルバム』(2012年)も世界各国で配信されました。キャリアを積み重ねてられてもなお、新たなジャンルを開拓するための好奇心を持ち続けていらっしゃいますね。

八代:私はね、「もう十分だから」って一応は言うんですけど、若いスタッフたちが色々と仕掛けてくるんです(笑)。

―「八代さんならきっと受けてくださるだろう」と。

八代:そうなの。こっちは大変なんですから(笑)。でも結局、新しい宿題を前にすると、脳がグラッと動くんです。

―新しい音楽に向かうことで脳が活性化される感覚は、キャンバスに向かう画家・八代亜紀とはまた異なるものですか?

八代:絵を描くことと歌うことは全く違うんです。絵は幼い気持ちに戻るんですね。毎回ワクワクして、おトイレに何回も行きたくなっちゃうくらいなの(笑)。

―歌が「代弁者」だとすれば、絵は何ですか?

八代:絵は自分の心です。心が出るんですよね。だから「八代亜紀」というより「アキちゃん」が出るんです。心を見透かされるみたいに。

絵画製作風景

八代亜紀『やすらぎ』
八代亜紀『やすらぎ』

ここでダメなら違うことを探そうって決断するのも大事です。

―八代さんは、熊本県立八代清流高等学校の校歌の作詞・作曲を手掛けられました。とても特別な経験だったのではないでしょうか。

八代:そうですね。校歌って難しい言葉がいっぱい並んでいますでしょう。だから私には作れませんって、1度はお断りしたんですね。そうしたら校長先生が、「そうじゃないんです。八代さんのステージで話されている言葉が若者には必要なんです」とおっしゃってくださった。その言葉を聞いて、それならやりましょうとお引き受けしたら、とてもスムーズに言葉が出てきましたね。

―若者たちに向けて、「これだけは持っていなさい」と伝えたいことはありますか。

八代:自分でやろうと思ったことを、実際に社会の中で実現させようとすると、とっても苦しく、形になるまでは大変だと思います。その中でも頑張れるなら、そこには何かがあると思う。でもね、やってもやってもダメで、周りから罵倒されて、辛い思いをしてまで我慢する必要はないと思うのね。そしたら、本当に合うものを、またイチから探し直せばいいの。

―ただただ、がむしゃらにやる必要もないと。

八代:がむしゃらにやって、それで人間的な楽しさを忘れるようだったら、ダメだと思うの。がむしゃらにやって、ダメなら友達と会い、話をする、飲みに行く。それでも面白くないならば、危険信号よ。

―八代さんが『全日本歌謡選手権』で「ここでダメだったら……」と覚悟を決めたように、自分でタイミングを作ることも大事なのですね。

八代:そう。ここでダメなら違うことを探そうって決断するのも大事です。

―来年はデビュー45周年に……。

八代:いいえ、来年は44周年になるの。これからは年を「取る」のよ。

八代亜紀

―なるほど。ではそのうち、今年デビューという日がやってくるんですね(笑)。

八代:そう! そう思わないと。

―野暮な質問でございました。

八代:そうです、人生は野暮ではいけません(笑)。

―では、デビュー20周年くらいのときにでも、またお話を聞かせてください。

八代:喜んで。今日はどうもありがとう。

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リリース情報

八代亜紀『哀歌-aiuta-』(CD)
八代亜紀
『哀歌-aiuta-』(CD)

2015年10月28日(水)発売
価格:3,240円(税込)
COCP-39274

1. St.Louis Blues
2. The Thrill Is Gone
3. 別れのブルース
4. フランチェスカの鐘
5. Give You What You Want
6. ネオンテトラ
7. 命のブルース
8. The House of the Rising Sun
9. 夢は夜ひらく
10. Bensonhurst Blues
11. あなたのブルース
12. Sweet Home Kumamoto

イベント情報

『AKI YASHIRO "aiuta" Special Night』

2015年11月17日(火)
[1]OPEN 17:00 / START 18:30
[2]OPEN 20:15 / START 21:30
会場:東京都 表参道 Blue Note Tokyo
料金:8,500円

プロフィール

八代亜紀(やしろ あき)

熊本県八代市出身。1971年デビュー。1973年に出世作“なみだ恋”を発売。その後、“愛の終着駅”“もう一度逢いたい”“舟唄”等、数々のヒットを飛ばし、1980年には“雨の慕情”で日本レコード大賞・大賞を受賞する。また、画家としてフランスの由緒ある『ル・サロン展』に5年連続入選を果たし、永久会員となる。近年では、メタルフェス出演、『京都音楽博覧会』への出演、学園祭にて学生ビッグバンドとのコラボレーションなども果たす。2015年10月28日、寺岡呼人プロデュースのブルースアルバム『哀歌-aiuta-』をリリース。

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