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ご本人とファン二人の鼎談から、「鈴木慶一」を改めて解き明かす

ご本人とファン二人の鼎談から、「鈴木慶一」を改めて解き明かす

鈴木慶一『Records and Memories』
インタビュー・テキスト
渡辺裕也
撮影:豊島望

音楽活動開始から今年で45周年を迎えた鈴木慶一が、完全セルフプロデュースのソロアルバム『Records and Memories』を完成させた。鈴木といえば、はちみつぱい~ムーンライダーズとしてのキャリアは言うに及ばず、その他にもTHE BEATNIKS、Controversial Spark、No Lie-Senseといったバンド / ユニットを複数抱え、さらには劇伴の制作や楽曲提供も手がけるという、まさに超がつくレベルの多作家。ところが、ソロ名義作をみずからプロデュースするのは、意外にもこれが24年ぶりのことだという。時期をほぼ同じくして発表された3枚組のアンソロジー『謀らずも朝夕45年』を、彼の45年におよぶキャリアが一望できる作品とするなら、本作は鈴木慶一の現在地をもっとも濃厚な形で記録した、まさに記念碑的なアルバムなのだ。

さて、作詞作曲はもちろん、アレンジと演奏の大半を鈴木自身が手がけている『Records and Memories』において、もうひとつ気になるのがゲストプレイヤーたちの顔ぶれだ。そこで今回は本作のレコーディングに参加しているミュージシャンから2名を招聘。鈴木との鼎談をここに企画してみた。まず一人は、卓越したソングライティングで知られるポップバンド「スカート」唯一の正式メンバー、澤部渡。そして、おなじくシンガーソングライターとして活動する傍ら、ceroをはじめとしたさまざまなバンドにも参加しているマルチプレイヤーのあだち麗三郎。自他ともに認める熱烈な鈴木慶一ファンでもある彼らの視点を交えながら、アルバム『Records and Memories』の内容についてはもちろん、鈴木慶一という音楽家の魅力にとことん迫ってみたい。

音楽って、作り手の人柄と、そのまわりにいる人によって音の温度感がすごく変わると思うんですけど、慶一さんはそこがものすごく長けている方。(あだち)

―まずは澤部さんとあだちさんにお伺いしたいのですが、お二人が最初に聴いた慶一さん関連の作品って何でしたか?

鈴木:遠慮なく言ってね(笑)。

澤部:は、はい(笑)。僕は、はちみつぱいでしたね。はじめて聴いたのは、たしか高校生の頃だったかな。

あだち:あ、僕もはちみつぱいでした。でも、そう言われると、なんで最初がはちみつぱいだったんだろう。

澤部:多分、はっぴいえんどからの流れじゃないですか? 日本のロックを掘っていくと、はちみつぱいには必ずぶつかりますから。で、僕の場合はそこからムーンライダーズにも興味を持っていくんですけど、特に『DON'T TRUST OVER THIRTY』(1986年に発表されたムーンライダーズ10作目のアルバム)を聴くようになった時期はよく覚えてるんです。というのも、あの頃は僕の人生のなかでも一番暗い時期で……。

鈴木:(『DON'T TRUST OVER THIRTY』制作時は)僕もそうだったからね(笑)。

澤部:あ、そうだったらしいですね。そのお話はインタビューで読んで知ったんですけど、当時はそういうこともなにも知らずに聴いてて。大学に入ったのはいいけど、友達も全然できないし、彼女もいないし、とにかくいいことがまったくなかった時期に、『DON'T TRUST OVER THIRTY』の“何だ?この、ユーウツは!!”という曲を聴くと、なんか胸が晴れるようなものがあったんですよね。

左から:あだち麗三郎、澤部渡、鈴木慶一
左から:あだち麗三郎、澤部渡、鈴木慶一

―先ほど「僕もそうだった」と仰っていましたけど、慶一さんにとって、あのアルバムを作っていた頃はどんな時期だったんですか。

鈴木:もう、最低だったね(笑)。あの頃は結成10周年のアニバーサリーだったのもあって、いろいろ無茶なことをやりすぎてたんだ。

あだち:僕、慶一さんのインタビューで「ムーンライダーズは民主主義でやってる」という話を読んだことがあって。そのときに「あぁ、だからこういう音楽ができるんだ」って、すごく納得したんですよね。音楽って、作り手の人柄と、そのまわりにいる人によって、音の温度感がすごく変わると思うんですけど、慶一さんはそこがものすごく長けている方という印象がずっとあって。

鈴木:ムーンライダーズに関しては「ソングライティングができる人達と一緒にバンドを作りたい」というのが、まずはじめにあったんだよ。つまり、はちみつぱいでは私と渡辺勝がお互いをライバル視しながら曲を書いてたけど、ムーンライダーズではメンバー全員がライバルなわけだ(笑)。で、みんながソングライティングをやるバンドをうまくまとめていくっていうのは、なかなか至難の業で、民主主義にならざるをえないんだよね。

鈴木慶一

あだち:慶一さんは、ワンマンバンドをやりたいと思ったことはないんですか?

鈴木:一度もないですね。というか、私はバンドってものをそういうものだと思ってるんだよ。たとえば、The Beatlesがそうでしょ? あるいはクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングとか、Buffalo Springfieldなんかもそうだよね。みんなが曲を作り、みんなで歌うっていうスタイル。そういうのが一番面白いっていう感覚を、僕はもう擦り込まれてしまってたんだ。

澤部:僕も、バンドは本来そうあるべきだと思ってて。実際、慶一さんのそういう美学にはかなり影響を受けてるんです。僕が一人でバンドと言い張ってるのも、そういう考えからきているものだし。

鈴木:民主的なバンドも大変だけど、スカートみたいに1人でやるのも、それはそれで大変だよね。だって、すべてを自分一人で決断しなきゃいけないわけだからさ。だから、2人か3人のユニットが一番気楽なんだよ(笑)。すくなくとも、メンバー5人とかで協議をしなくても済むからさ。手間暇がかかるからね、民主主義は(笑)。

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リリース情報

鈴木慶一『Records and Memories』
鈴木慶一
『Records and Memories』(CD)

2015年12月16日(水)発売
価格:3,024円(税込)
PCD-28027

1. 男は黙って…
2. 愛される事減ってきたんじゃない?ない
3. 無垢と莫漣、チンケとお洒落
4. ひとりぼっち収穫祭
5. Sir Memoria Phonautograph邸
6. 六拍子のワルツ
7. Records
8. 危険日中毒
9. バルク丸とリテール号
10. Livingとは Lovingとは
11. Memories
12. Untitled Songs
13. My Ways

イベント情報

『鈴木慶一ミュージシャン生活45周年記念ライブ』

2015年12月20日(日)OPEN 17:15 / START 18:00
会場:東京都 芝公園 メルパルクホール
出演:
鈴木慶一
駒沢裕城、本多信介、渡辺勝、和田博己、橿渕太久磨(はちみつぱい)
高橋幸宏(THE BEATNIKS)、ゴンドウトモヒコ
岡田徹、白井良明、鈴木博文(ムーンライダーズ)
あだち麗三郎、岩崎なおみ、佐藤優介、トクマルシューゴ、ダスティン・ウォング(鈴木慶一with マージナル・タウン・クライヤーズ)
田中宏和
近藤研二、矢部浩志、岩崎なおみ、konore(Controversial Spark)
斉藤アリーナ、上野洋子、湯浅佳代子
PANTA、斉藤哲夫
and more

プロフィール

鈴木慶一
鈴木慶一(すずき けいいち)

1951年8月28日 東京生まれ。1970年、あがた森魚と出会い本格的に音楽活動を開始。以来、様々なセッションに参加し1971年には「はちみつぱい」を結成、独自の活動を展開するも、アルバム『センチメンタル通り』をリリース後、解散。「はちみつぱい」を母体にムーンライダーズを結成し1976年にアルバム『火の玉ボーイ』でデビューした。ムーンライダーズでの活動の傍ら高橋幸宏とのユニット「ビートニクス」でもアルバムをリリース。また膨大なCM音楽の作編曲、演歌からアイドルまで幅広い楽曲提供、プロデュース、またゲーム音楽などを作曲し日本の音楽界に大きな影響を与えてきた。2012年、ソロアルバム『ヘイト船長とラヴ航海士』が第50回日本レコード大賞優秀アルバム賞を受賞。映画音楽では、北野武監督の『座頭市』で日本アカデミー賞最優秀音楽賞、シッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀音楽賞を受賞した。2015年、ミュージシャン生活45周年の節目にソロアルバム『Records and Memories』をPヴァインよりリリース。

澤部渡(さわべ わたる)

1987年生まれ。東京都板橋区出身のシンガーソングライター。どこか影を持ちながらも清涼感のあるソングライティングとバンドアンサンブルで職業・性別・年齢を問わず評判を集める不健康ポップバンド”スカート”を主宰。音楽と漫画をこよなく愛する好男子。スカートでの活動の他にもパーティ・バンドのトーベヤンソン・ニューヨーク、川本真琴率いるゴロニャンずでもドラムを担当。金剛地武志率いるyes, mama ok?ではサポートベーシスト/ドラマーとして参加。ツボをつくソングライティングに定評があり、様々なアーティストに楽曲提供も行っている。スカートの最新作は『シリウス』(カクバリズム/2014年)。

あだち麗三郎(あだち れいさぶろう)

1983年1月生まれ。早稲田大学第一文学部卒。9歳から15歳まで米国アトランタで過ごし、高校は日本の男子高で寮生活を送る。大学時代からライヴ活動を始め、ドラムやサックスなどを担当。その吹き抜ける風のような開放的音楽センスにより片想い、cero、鈴木慶一、百々和宏、前野健太、寺尾紗穂、坂口恭平 等とマルチプレイヤーとして活躍し、Fujirockfes'12では、サポートとして4ステージに出演。メインはシンガソングライターである。独特の世界観、宇宙的郷愁感あふれるロマンチックなうたをうたっている。2013年カクバリズムより7"シングル『ベルリンブルー』、2015年6月3rdアルバム『ぱぱぱぱ。』リリース!

関連チケット情報

2018年1月31日(水)
「生誕71年 エンケン祭り」
会場:渋谷CLUB QUATTRO(東京都)

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