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映像のプロフェッショナルたちに訊く『紅白』の進化と空間映像史

映像のプロフェッショナルたちに訊く『紅白』の進化と空間映像史

『東京プロジェクションマッピングアワード』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望

東京駅や大阪城などを、映像の力で思いもよらない姿に変容させるプロジェクションマッピングは、野外・都市型のイベントとして、すっかり定着した感がある。その祝祭的でスペクタクルな体験が人気を支える大きな理由だが、同時に、スマホで撮影しSNSで拡散するような「体験の共有」にも、現在的なエンターテイメントやお祭りのあり方を見ることができる。最先端だけど普遍的。それがプロジェクションマッピングの面白さだ。

3月26日の夜から東京ビッグサイトで行われる『東京プロジェクションマッピングアワード vol.0』は、9組の学生チームがビッグサイトに実際にプロジェクションを行い、それを審査するというコンテストだ。今回、その審査員であるメディアアートキュレーター・東京都現代美術館学芸員の森山朋絵と、『紅白歌合戦』の舞台美術や数多くのプロジェクションマッピングの映像演出に関わる森内大輔を招いて、同アワードについて聞いた。テクノロジーの進化と共にある映像の歴史を振り返りながら、芸術と大衆娯楽、体験の共有について考えてみた。

空間的な広がりを持つ映像表現と、スクリーンで展開する上映型の映画的表現が、時代を超えて繰り返し現れる。(森山)

―森山さんはキュレーターとしてメディアアートを中心とする展覧会を数多く手がけてきました。また、森内さんはNHKのデザイナーとして『NHK紅白歌合戦』の舞台美術や、東京駅で行われたプロジェクションマッピング『TOKYO STATION VISION』に関わっています。つまり、日本の映像表現を研究する側と、最新の映像技術を実地に用いる側でそれぞれ活動されているわけです。そんなお二人は、現在のプロジェクションマッピングの隆盛をどのように見てらっしゃいますか?

森山:私は幼い頃に「映像の万博」と呼ばれた大阪万博に行ったのですが、山口勝弘さんや松本俊夫さんといったアーティストが、各パビリオンで大胆奔放に展開した巨大映像を目にして心打たれた体験が、今の仕事の原点なんです。

―山口勝弘氏は戦後まもなく活動を開始した前衛美術家グループ「実験工房」のメンバーですね。松本俊夫氏も同グループと交流のあった映像作家で、初期の実験映画を牽引した先駆者の一人です。

森山:ええ。ですから、それをより一層大きなスケールで都市空間に展開できるようになった現在の環境は、ずっと夢見ていた理想の環境であるとも言えます。かつてのインタラクティブアートって、展覧会の会期中に故障しなかっただけでも珍しくて貴重なくらいだったし、空間全部を映像で埋めるようなインスタレーションも、21世紀に入って、ようやく手に届く予算規模、技術水準で実現できるようになったくらいですからね。1980~90年代のメディアアートは、本当に一部の先駆者による特権的な芸術でもあったんですよ。

森山朋絵
森山朋絵

―しかもソニーなどの先端企業やNHK、研究機関の厚いバックアップがなければ実現できないものでしたから、今回の『東京プロジェクションマッピングアワード』のように学生グループがプロジェクションマッピングで作品を作るだなんて、想像できないですよね。

森山:自分なりにちょっと映像表現の歴史を振り返ってみると、19世紀以前に始まり、大阪万博で成立していたような空間的な広がりを持つ映像メディアの表現と、モニターやスクリーンで展開する、上映型の映像表現が時代を超えて繰り返し現れているように思います。特に後者は、映像メディアの義務教育化(2002年)やYouTubeの登場によって、よりパーソナルなメディアとなって広く普及しました。そういう環境のなかで、プロジェクションマッピングという表現に注目が集まるのは温故知新的だし、その様子を写真に撮って拡散共有するのは、SNS登場以降のクラウド的なプラットフォームの概念も併せたユニークな現象だと思いますね。

森内:私が映像に関心を持ったのはスティーブン・スピルバーグの映画やマイケル・ジャクソンのミュージックビデオですね。テレビだったらザ・ドリフターズの『8時だョ!全員集合』、ビートたけしさんの『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』。そういうバラエティー番組を浴びるように見て育った世代なので、エンターテイメントや情報を広く社会へ届けることに携わりたくて、今の仕事につきました。それもあって、プロジェクションマッピングもテレビ同様に幅広いお客様の存在を強く意識しています。自分が東京駅でのプロジェクトに関わって感じたのも、巨大な映像を何万人という人が一緒に鑑賞するという体験の面白さでした。

右:森内大輔
右:森内大輔

東京駅で初めて開催されたプロジェクションマッピング『TOKYO STATION VISION』
東京駅で初めて開催されたプロジェクションマッピング『TOKYO STATION VISION』

『TOKYO STATION VISION』では超高精細プロジェクター46台が使用された
『TOKYO STATION VISION』では超高精細プロジェクター46台が使用された

―森内さんが関わってこられた『NHK紅白歌合戦』は、まさに国民的なマスコンテンツですね。

森内:映像表現の場として『紅白』はかなり特別な環境ですね。というのも、この番組はおよそ4時間半という限られた時間のなかで、50組を越える出演者のみなさんが、演歌からポップスまで、いろんな曲をお茶の間に向けて届けるというものです。さらに、石川さゆりさんのようにお一人で唄われる方から、大勢のメンバーによるAKBグループなど、出演者の数も千差万別です。

森山:1人から100人単位まで、人数も空間もスケーラブルですよね。

NHKホール外壁からショーの幕開けへ誘う『紅白』のオープニング演出
NHKホール外壁からショーの幕開けへ誘う『紅白』のオープニング演出

森内:曲の世界感も、ある一人に寄せた想いを歌うものもあれば、世界の平和を願うものもある。このように多種多様なパフォーマンスを生放送で届けるというのがポイントで、出演者や楽曲のテーマに合わせて舞台を一瞬で変える必要があります。かつては大規模な舞台セットを転換して各シーンにふさわしい表現をしていたわけですが、近年、舞台装置の主役は大型LEDやプロジェクターの活用に移行しています。CGがワークステーションで作れるようになるのと同時に、デバイスの性能も急速に進化して、低コスト&軽量化、そしてスクリーンの巨大化を図ることが可能になったのです。舞台全体を包み込む映像内容を切り替えることにより、短い時間でシーンをガラリと変えることができるようになりました。『紅白』だけではなく、イベントやコンサートなどのライブエンターテイメントを中心に、大型映像による演出手法の一般化が進んだ。そういった流れに併せてプロジェクションマッピングも注目されていったのだと思います。

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イベント情報

『東京プロジェクションマッピングアワード vol.0』

2016年3月26日(土)
会場:東京都 有明 東京ビッグサイト 会議棟前広場
時間:18:30~19:30

プロフィール

森山朋絵
森山朋絵(もりやま ともえ)

メディアアートキュレーター、東京都現代美術館学芸員。東京都写真美術館(開館記念プロジェクションマッピング『White Shadow』1995年、恵比寿ガーデンプレイス)ほか文化施設の創設に携わり、東京大学ほか国内外の大学で教鞭を執りつつ、『SIGGRAPH』議長や『Ars Electronica』『NHK日本賞』ほかの審査員を歴任。

森内大輔
森内大輔(もりうち だいすけ)

1999年、大学卒業後NHKへ入局。『紅白歌合戦』を中心に舞台美術やCGのデザインに携わる。2012年からプロデューサーとして東京駅や会津若松の鶴ヶ城など複数のプロジェクションマッピングを企画制作。現在は、同局デザインセンター映像デザイン部の副部長として、番組やコンテンツのデザインマネジメントに従事している。

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