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学生ノリからライフワークへ。ラップで人生を刻むパブリック娘。

学生ノリからライフワークへ。ラップで人生を刻むパブリック娘。

パブリック娘。『初恋とはなんぞや』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影・編集:山元翔一

「お前はお前のラップをやるしかない」って昔言われて。だから、僕らのラップはヒップホップのリアルというか……「マイセルフ」ですよね。(斎藤)

―リリックの方向性としては、PUBLIC ENEMYのように政治的なことを書いているわけではなく、学生らしいモラトリアム感が出ていますよね。「女の子と遊びたい」とか、表面的にはそういう内容が多いけど、これは話し合ってこうなったんですか? それとも、ノリで?

斎藤:ノリですね。発想としては、「mixiの日記の代わりにラップしてる」みたいな感じだったんです。僕、日本語ラップに関してはあんまり「これだ」っていうものがないんですけど、ひとつ理想だと思っているのが、インディーズの頃のRIP SLYMEで。

まだヒップホップのいなたさを引きずりながら、“白日”(1998年)で<暖かい午後の日差しに揺り起こされ 少し遅めの朝食すませ 開くスケジュール帳 今日の予定はNICE! 何も入ってない>とかラップしてたあの感じなんですよね。「日常をラップする」っていうのともちょっと違って、当時のRIP SLYMEは「今の自分達はこのままでも問題ないんじゃないか?」とか「自分達の今を肯定していくしかない」っていうスタンスだったと思うんです。

文園:大学生がラップしたら、みんなあんな感じになるんじゃない? 僕は映画サークルの部長もやってて、今も映像関係の仕事してるんですけど、大学生が撮った映画ってみんな似てるものになりがちですから。

―でもEminemに憧れていた人達からすると、モラトリアムのゆるい日常ではなくもっと違った内容をラップしたいと思ったことはないですか?

斎藤:さっき話に出た火星の人に「どうやったらみなさんみたいなラッパーになれるんですか?」って聞いたときに、「やりたいからやってるだけで、お前はお前のラップできることしかラップできないんだから、それをやるしかないんだよ」って言われて。だから、ヒップホップのリアルというか……「マイセルフ」ですよね。

清水:僕も同じようなことを一人で考えてた時期がありました。中学時代にヒップホップにはまって、どういう理由でラップをしてるのか、なぜ黒人が「ファック」って言ってるのかを調べて、「日本人はラップするな」ってクソみたいなことが書いてあるのも一通り読んだ結果、自分のことをラップすればいいんだって思えたんです。

左から:清水大輔、斎藤辰也

“そんなことより早く、このパーティを抜け出さない?”はちょうど震災から1年くらいの時期に「もうこんな国は嫌だ、抜け出したい」って思って書いた曲なんです。(斎藤)

―パブリック娘。が最初に世に知られるきっかけになったのが、2011年に発表したタイトルトラックの“初恋とはなんぞや”ですね。

文園:これは、Crystal Waters(アメリカのR&Bシンガー)の“Gypsy Woman (She's Homeless)”をサンプリングした曲を聴いて、自分でもサンプリングしてトラックを作ったんです。で、そのあとに写真史の授業で林忠彦(昭和を代表する写真家の一人)の『焼け跡の母子』っていう作品に「初戀とはナンゾヤ」って書いてあるのを見て、「これをあのトラックとくっつけよう」と思って、二人に「“初恋とはなんぞや”って曲を作るから、リリック作ってきて」って。

斎藤:当時は(文園による)トップダウン型の活動スタイルだったんで、僕と清水からすると「わけわかんない」って感じだったんですけど。

清水:「『初恋とはなんぞや』って、それがなんぞや?」みたいな。

斎藤:よくわかんないまま書いたから、<んなもん知るか>とか<記憶にないからピンとこない>ってリリックになってるんです。

―でも、ネットに上げたらトーフくんがリミックスしたりして、一部で話題になったと。文園くんは昔からインターネットのカルチャーにハマってたから、ネットに曲を上げることを楽しんでたわけですよね?

文園:そうです。その頃からマルチネのみんなとも仲良かったんで、「みんなやってるから、俺もやろう」くらいの感じでした。

斎藤:曲を上げるのはまだわかるんですけど、アカペラ音源とかも上がってて、「需要あんのか?」って思ってたら、tofubeatsがリミックスを上げてて、「あ、この人昔掲示板で名前見た人だ」って何かがつながって。僕はマルチネのこととかよくわかってなかったんですけど、tofubeatsの昔のトラックは持ってるんです。

当時周りがいなたいヒップホップを目指す中、彼だけハウスとかオシャレなトラックを上げてたんですよね。で、ちょっと面白いのが、昔はトラックメーカーがいなくて、ラッパーが多かったのに、僕達が曲を上げだした頃は、ラップする人がいなくて、トラックメーカーがたくさんいたんです。SoundCloudとかが出てきて、曲を発表する環境が整ってきたタイミングだったんだと思います。

左から:斎藤辰也、文園太郎

―もう一曲、パブリック娘。の代名詞になっているのが、2012年に発表した“そんなことより早く、このパーティを抜け出さない?”で、このトラックを作ってるのはSEKITOVAくんですね。

文園:当時はネットレーベルがブームになってて、みんな4つ打ちのトラックを作りまくってたんですよね。マルチネもリリースしまくってたんで、「俺達もクラブでガンガンかかるような曲作ったらモテるかな?」って思って、日々学校の行き帰りにSoundCloudでそういう曲を聴いてたんです。そんな中でSEKITOVAくんのトラックを聴いて、「これだ!」って思って、連絡したら使わせてもらえたので、二人にこのタイトルでリリックを書いてもらいました。

斎藤:今はいい曲だと思ってるんですけど、当時は「ずいぶんチャラい曲がきたな」って思いました(笑)。「パーティーを抜け出さない?」っていっても、僕、ライブイベントとか行ったら最後まで見たいタイプなんで、比喩で書いたんです。この曲、ちょうど震災から1年くらいの時期に作った曲なんですけど、その頃「もうこんな国は嫌だ、抜け出したい」って思っていたんで、「パーティー」を「日本」に置き換えて書きました。

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リリース情報

パブリック娘。『初恋とはなんぞや』
パブリック娘。
『初恋とはなんぞや』(CD)

2016年7月6日(水)発売
価格:2,376円(税込)
PCD-22395

1. 初恋とはなんぞや
2. 25mプール
3. Summer City
4. おつかれサマ―
5. このままこの電車に乗って
6. DATE
7. 2nd Hotel
8. おちんぎんちょうだい
9. そんなことより早く、このパーティを抜け出さない? feat. 森心言
10. 寄せては返す俺のアティチュード
11. 俺の誕生日
12. そんなことより早く、このパーティから連れだして。 feat. あまえん

プロフィール

パブリック娘。
パブリック娘。(ぱぶりっくむすめ。)

ゆとり世代の最終兵器にして、「PUBLIC ENEMYとモーニング娘。の橋渡し」を掲げる男子3人組ラップユニット。tofubeats、夢眠ねむ(でんぱ組.inc)、田中宗一郎らが現場で早くからとりあげ、音楽ファンのあいだでじわじわと名を広める。2013年、「DUM-DUM」レーベルからトリプルファイヤーとの同時配信リリース、ネットレーベル「Maltine Records」や「Ano(t)raks」のコンピへ参加。2014年にはYkiki BeatなどとファッションZINE『Weary』への曲提供、2015年には旬のインディーズバンドが集ったコンピレーション『New Action! ~CompilationVol.2~』に参加し初の全国流通を果たす。2016年、ヒップホップの名門「P-VINE」から待望の1stアルバムをリリースする。

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