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盛り上がりそうなVR、どう使うべき? 広告会社の担当者と考える

盛り上がりそうなVR、どう使うべき? 広告会社の担当者と考える

SETA“金魚鉢”
インタビュー・テキスト
タナカヒロシ
撮影:豊島望 編集:野村由芽

VRを既存の映像コンテンツとして考えないほうがいい。VRコンテンツはVRコンテンツとして、別モノなのかなと。(小林)

―まだまだ発展途上な部分もあると思うんですけど、現時点でVRを使ったMVとは、どうあるべきだと思いました?

保持:公開後もよく話していたのは、まだまだ視聴環境が整ってないということ。たとえばFacebookでシェアされても、スマホのブラウザからでは見られなくて、アプリでアクセスしないといけなかったり、そういうハードルがあって。我々が想定している形で見てくれる人が思ったより少なかった。

―普通の平面動画で見てもらっても、あまり意味がないですもんね。

保持:でも、最近もPlayStation VRが発表されたり、ヘッドマウントディスプレイが広がってきたりしていて、それが普及すると、見る人の層も変わってくるだろうし、可能性は広がってくると思います。ただ、たくさん見てもらうために「VR」を使うかというとそれは別の話。そもそもVRは視聴者が受け身で見られるものではないから、いままでの映像メディアの延長で考えるべきではないと思うんです。単純に「プロモーションビデオ」として考えてしまうと、たくさんの人に見てもらうという意味では、必ずしもすぐれた方法論ではないですし。

小林:僕も既存の映像コンテンツとして考えないほうがいいと思いました。VRコンテンツはVRコンテンツとして、別モノなのかなと。

左から保持壮太郎、小林大祐

保持:今回の話でいうと、SETAさんの曲自体が持っていた世界観を、VRという枠を使うことで感じやすくする。歌詞や音楽だけを聴いても、ああいう世界は思い描かないと思うんですけど、実際に彼女のなかにあったイメージを可視化したらああなったんですよね。そこには価値があると思いますし、音楽との相性もいいので、プロモーションビデオの代替物という狭い話として捉えない方がいいのかなと思います。

―他にも活用法が?

保持:たとえばいま、テロの現場をVRのカメラで撮影するとか、ジャーナリズムに活用されているケースも多くあります。我々のラボでも、VRが何に有効なのかというリサーチグループを作っていて、音楽のみならず、違う利用の仕方も考えていこうとしています。

小林:熊本の地震の翌日にも、一般の人が360度カメラをつけて、街中を歩きまわっている映像がYouTubeに上がっていましたよね。被害の状況もわかりやすくて、いいメディアだなと思いました。

保持:海外では学術的な利用も進んでいるみたいで。たとえば貧困・格差などの社会問題をVRで体験させると、普通の映像で見た人よりも、問題に対する関心のスコアが高くなるという研究があるそうなんです。だから、意外と僕たちが考えているよりも、VRは人間にメッセージを伝える力に秀でているのかもしれません。

小林:予想外の使い方で面白かったのが、ヘッドマウントディスプレイは子どもが使うと斜視になりやすいという話があるんですけど、それを逆手に取って、斜視を直すゲームを作った人がいたんです。自分が斜視だったらしく、自分を実験台にして。

保持:医療や教育、ジャーナリスティックな利用以外にも、海外ではいろいろな事例が広がっているみたいですね。ベンチャーの会社もいっぱいできているし。

―いまからならVRで一旗あげられるかも?

小林:ゲームがいちばん向いているなとは思いますけど、まだキラーコンテンツは出てきてない感じがしますよね。

保持:だからプレステのVR対応で爆発的にリッチな視聴環境とコンテンツが拡がると、一気に世の中を変える可能性があるなと思っています。

新しい才能を消費しただけで終わらせてしまうのは、文化的に危機だと思うんです。(保持)

―VRに限らず、最近見た動画で面白かったものはありました?

小林:岡崎体育の“MUSIC VIDEO”ですかね。

保持:あー、あれは曲もいいですよね。ただ、面白い作品は日々あるんですけど、どんどん消費しちゃう感じになっていますよね。

小林:面白いものがありすぎて心に残らないっていう。

保持:我々の世代はVHSやDVDを買っていましたけど、そういう視聴体験をした映像は、どうしても記憶に残っているんです。10代の多感な時期に、人が燃えながら走っているPV(スパイク・ジョーンズが監督したWax“California”)を見せられて、「なんだありゃ!?」って何回も繰り返し見ていて。それと比べると、いまのタイムラインに流れてきたものは、その瞬間に面白いなとは思いますけど、そこで終わってしまう。それは作品の質が落ちたわけではなく、見る側の問題として。

小林:いまはコンテンツがいっぱいあって、まず見てもらわなきゃいけないから、わかりやすいものが多くなっていると思うんです。YouTubeでも最初の10秒で惹きつけないと見てもらえないとか。そういう作品は、面白いんですけど、すごくさっぱりしていて、5年後に「あれ、よかったな」と思えるものが、少なくなってきている気もします。

保持:少し話が脱線しますけど、この前SETAさんのプロデューサーである「渋谷のレーベル合同会社」の庄司明弘さんと食事をしたときに、ニコニコ動画のような新しいプラットフォームができて、新しいタイプのクリエイターが世に出やすくなったのかなと思っていたけど、実はそんなことないんじゃないかという話になったんですよ。

―どういうことですか?

保持:才能がある人はいつの時代にもいて、その総量自体はあまり変わっていない。いままでは、その才能を誰かが引っ張りあげることで、育ててきたじゃないですか。インターネットの時代になって、誰かが育てるという作為的なものより、自然発生するほうが偉いみたいな風潮になっているけど、本当にすごいものは、大人が手間をかけて、お金もかけて盛り立てていかないと、なかなか大きく発展はしないと思うし、先に続かない気がするんです。

昨日ちょうどビョークのイベント(『Björk Digital―音楽のVR・18日間の実験』のオープニングパーティー)をお手伝いしましたけど、ビョークも新しいアーティストを引っ張りあげて、一緒に作品を作っているじゃないですか。OK Goが世界中の人とコラボレートしているのも、意識的にやっているんだろうなと思うし。

―自然発生的なものだと、なかなか大規模なことはできないですしね。

保持:そうですね。そうすると小ネタばかりになってしまって、才能ある人が出てきても、次第に埋もれちゃうというか。ただ、以前に比べると、世界中のすごい人に気付きやすくはなっているし、気軽にアプローチもできるから、そのうねりを大きくすることに対して、もっと意識的にやっていけば、その先にちゃんと記憶に残るような作品が生まれるんじゃないかと思うんです。

―確かに、ビョークはまさにそういう感じですよね。

保持:新しい才能を消費しただけで終わらせてしまうのは、文化的に危機だと思うんです。いまはインターネットがそれを勝手にやってくれるんじゃないかと、みんなが思い込んでいるのかもしれないけど、そこは人間がやらないとダメっていうか。

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リリース情報

YEN TOWN BAND『diverse journey』初回限定盤
SETA
『金魚鉢』(CD)

2016年2月14日(日)発売
価格:1,080円(税込)
SBLB-0001

レーベル情報

渋谷のレーベル合同会社

「渋谷のレーベル合同会社」とは、「クリエイターの才能を開放する!」というコンセプトの元設立されたクリエイティブオリエンテッドなレーベル。シンガーソングライター・SETAは、渋谷のレーベル合同会社の音楽部門「しぶレコ」第一弾アーティストとなる。

プロフィール

保持 壮太郎(やすもち そうたろう)

コピーライター / CMプランナー。東京大学工学部卒業後、2004年に電通入社。人事局配属を経てクリエーティブ局へ。 主な仕事にHondaインターナビ「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」「RoadMovies」、映画「テルマエ・ロマエⅠ/Ⅱ」、Gungho「パズドラ×嵐」、三井不動産「BE THE CHANGE」など。Cannes Lions グランプリ、D&AD Black Pencil、Adfest グランプリ、ACC賞 グランプリ、TCC賞、文化庁メディア芸術祭 大賞、日本パッケージデザイン大賞 金賞、ほか受賞多数。Advertising Age誌のAWARDS REPORT 2014においてコピーライター部門世界2位。

小林大祐(こばやし だいすけ)

映像ディレクター。京都造形芸術大学 情報デザイン学科卒。2005年電通テック入社。2010年電通クリエーティブX入社。『第1回Pocket Fiim Festival』大賞受賞。2011年『東京インタラクティブADアワード』クロスメディア部門ブロンズ受賞。第16回文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門審査委員推薦作品。『映像作家100人 2013』掲載。

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一聴・一見すると繊細に織られたアンサンブルに柔和な印象を抱く。が、極太のベースがリズムとメロディの両方を引っ張っていく様は超アグレッシヴでもある。観客も含めて会場に漂う空気は一貫して緩やかなものでありながら、なによりも3音の鋭い合気道を存分に楽しめるライブ映像だ。ビルドアップした低音に歌心を置くスタイルはまさに今だし、音の余白も心地いい。ポップとエッジィの両極をあくまで愛嬌たっぷりに鳴らす台湾出身の3ピースバンド、その魅力を1カット1カットが十二分に伝えている。(矢島大地)

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