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小林武史が訴える「経済の合理性を追求すると多様性が失われる」

小林武史が訴える「経済の合理性を追求すると多様性が失われる」

YEN TOWN BAND『diverse journey』
インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:森山将人 編集:矢島由佳子

もっと自由に想像力やクリエイティブが放たれていった方が楽しいと思います。

―小林さんと岩井監督は、単にYEN TOWN BANDと『スワロウテイル』や、Lily Chou-Chouと『リリイ・シュシュのすべて』のような音楽と映画の関係だけに終わらず、お互いにクリエイターとして、社会にどう関わるかという問題意識が接点になっているのではないでしょうか。

小林:そうですね。「円都」というキーワードにそれが集約されているのかな、とも思います。たとえば“my town”のミュージックビデオも岩井くんに作ってもらったんだけれど、その映像は、東京から始まって、福島を通って、『Reborn-Art Festival』をやる石巻市の埠頭まで行くんです。ああいう風に、僕が投げると岩井くんが返してくるようなことが、いろんなところで起こっていた。

―「円都」というキーワードに、どういった考えが集約されているのでしょうか?

小林:たとえば、震災のような自然災害が起これば、慰霊や、ある人から言えば服喪という考えが生まれる。それに「ボランティア」という、単に労働に対する対価を求めることじゃない、今までの考え方の枠には収まり切れない考えが生まれたりしている。それでも、今の世の中は、さらに経済を合理的に回していくべきだという方向に向かっているでしょう?

―そうですね。

小林:でも、そこからこぼれていくものがある。そういうものがすべてつながっていると思うんです。たとえば『アイノネ』のジャケットには、フォトジャーナリストの安田菜津紀さんがシリアの難民キャンプで撮影した子供たちの写真が使われているんですね。

それは、単に安保法案反対とか憲法改正阻止を訴えるという話ではなくて、ただ、いろんなものがつながっていて、それが水面に油が浮いてくるみたいに現実に見えてきていると思うんですよ。言い方は難しいけれど、バングラディシュでテロが起こってJICAの日本人の方が殺害されてしまうようなことも、そこにつながっていると思うんです。

YEN TOWN BAND『アイノネ』初回限定盤ジャケット
YEN TOWN BAND『アイノネ』初回限定盤ジャケット

YEN TOWN BAND『アイノネ』通常盤ジャケット
YEN TOWN BAND『アイノネ』通常盤ジャケット

―YEN TOWN BANDが架空のバンドであり、今回のアルバムのジャケットのようにファンタジーの世界観を持っているがゆえに、逆に現実や社会と接点を持つための有効な機能を持っているように感じます。特に昨年の『大地の芸術祭』での初ライブから『Reborn-Art Festival』にいたる流れの中でもそう思うのですが、いかがでしょうか。

YEN TOWN BAND『diverse journey』通常盤ジャケット
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小林:そうかもしれないですね。まあ、僕らは自由過ぎると言えば自由過ぎるけど(笑)、やっぱり、もっと自由に想像力やクリエイティブが放たれていった方が楽しいと思います。食の世界ではそういう動きもあるんだけれど、音楽業界でもあってほしい感じはしますよね。

震災から5年経ったからって、元に戻ったとか回復したなんて、とても簡単には言えないんですよね。でも、だからこそ出会いが起こりやすいと思っているんです。

―音楽業界でももっと自由な動きがあってほしい、というのは?

小林:フェスはすごく大事だけれど、今はそこに新しい出会いがなくなってきている感じがするんですよね。大物と言われるアーティストの見せ方があって、あとはどれだけ盛り上げられるか。それだけになっている。僕は震災後、震災の街で『Reborn-Art Festival』を構想していく中で、「出会う」ということがひとつのテーマになっているんだと気付いたんです。これは出会いをテーマにした場の作り方なんだ、と。やっぱり震災を機に、それまでにあったたくさんの関係性が途切れてしまっているんですね。

小林武史

―それが震災後に起こっていたことだった。

小林:ネガティブな言い方をするけれど、5年経ったからって、元に戻ったとか回復したなんて、とても簡単には言えないんですよね。中断されてしまったものがあって、それがすごく複雑に渦を作っている。でも、僕はそこに新しい出会いがあった方がいいし、だからこそ出会いが起こりやすい場なんだと思っているんです。

―『Reborn-Art Festival』を構想する上で、『大地の芸術祭』から刺激や影響を受けた部分はありますか?

小林:それは確実にありますね。

―どういったところが『Reborn-Art Festival』に受け継がれたのでしょうか?

小林:『大地の芸術祭』のプロデューサーの北川フラムさんが、本当にリベラルな方なんですね。取り残されていく新潟の越後妻有というエリアの自然や、失われつつある文化や、そこに暮らす人にとても近いところで芸術祭を作っている。その本気度の中に新しい出会いがあったと思うんです。

それに、震災後、あきらかにボランティアの精神が広がっているように感じるんですよね。先日の熊本の地震でもそうだった。経済に依存する形の社会に対して、不安や不満や問題意識が生まれていて、そこからはみ出す形でそういう人たちが出てきているということだと思うんですね。『大地の芸術祭』は、そこをちゃんと使いこなしていた。ボランティアで来る人と地域の人たちが一緒になって、お客さんがその作品を自分のものとして考えるようにする仕組みがあったんです。

―そこで地域との一体感が生まれていたと。

小林:労働と対価だけでない関係が生まれて、その流れが次のステップに何らかの影響を与えていくようなことが起こっているんだと思いますね。少なくとも、僕はそこから種をもらって、震災後の東北で『Reborn-Art Festival』をやろうと考えるようになったわけだから。

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リリース情報

YEN TOWN BAND『diverse journey』初回限定盤
YEN TOWN BAND
『diverse journey』初回限定盤(CD+DVD)

2016年7月20日(水)発売
価格:4,536円(税込)
UMCK-9852

[CD]
1. Fantasy
2. コオルS.O.S
3. イェンタウンクラブ
4. EL
5. 君が好き
6. I'll Love You So
7. my town / YEN TOWN BAND feat. Kj(Dragon Ash)
8. アイノネ(diverse journey mix)
9. Kiss me with your eyes
10. オレンジ色
11. Romance
[DVD]
『大地の芸術祭 2015 YEN TOWN BAND @NO×BUTAI produced by Takeshi Kobayashi』
・Gold Rush
・Sunday Park
・Mama's alright
・上海ベイべ
・My way
・She don't care
・してよ してよ
・アイノネ
・Swallowtail Butterfly ~あいのうた~

YEN TOWN BAND
『diverse journey』通常盤
YEN TOWN BAND
『diverse journey』通常盤(CD)

2016年7月20日(水)発売
価格:3,240円(税込)
UMCK-1547

1. Fantasy
2. コオルS.O.S
3. イェンタウンクラブ
4. EL
5. 君が好き
6. I'll Love You So
7. my town / YEN TOWN BAND feat. Kj(Dragon Ash)
8. アイノネ(diverse journey mix)
9. Kiss me with your eyes
10. オレンジ色
11. Romance

YEN TOWN BAND
『diverse journey』アナログ盤(LP)

2016年9月14日(水)発売
価格:4,104円(税込)
UMJK-9064/5

1. Fantasy
2. コオルS.O.S
3. イェンタウンクラブ
4. EL
5. 君が好き
6. I'll Love You So
7. my town / YEN TOWN BAND feat. Kj(Dragon Ash)
8. アイノネ(diverse journey mix)
9. Kiss me with your eyes
10. オレンジ色
11. Romance

イベント情報

『Reborn-Art Festival×ap bank fes 2016』前夜祭

2016年7月29日(金)
会場:宮城県 石巻港 雲雀野埠頭

『Reborn-Art Festival×ap bank fes 2016』

2016年7月30日(土)、7月31日(日)
会場:宮城県 石巻港 雲雀野埠頭

プロフィール

YEN TOWN BAND
YEN TOWN BAND(いぇん たうん ばんど)

岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』(1996年)の音楽を担当した小林武史のプロデュースにより、劇中に登場した架空のバンド。ボーカルは、主人公グリコ役を演じたChara。シングル『Swallowtail Butterfly ~あいのうた~』、そしてアルバム『MONTAGE』はオリコンチャートでもシングル / アルバム同時1位となり大ヒットを記録した。一切活動を行っていなかったものの、昨今の世界情勢や日本の各地域における過疎、そして『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』からのオファーにより、昨年復活を遂げた。約19年振りの新曲“アイノネ”は、JFL5局合同キャンペーン2015年テーマソングに。また、その後も新曲”my town“が石原さとみ出演「東京メトロ」CMソングに起用されるなど、話題を振りまき、7月20日には『MONTAGE』以来の約20年ぶりとなるファン待望のニューアルバム『diverse journey』を発表した。

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