特集 PR

中田裕二×クリス松村 知っているようで知らない「名曲」の裏側

中田裕二×クリス松村 知っているようで知らない「名曲」の裏側

中田裕二『THE OPERATION / IT'S SO EASY』
インタビュー・テキスト
阿部美香
撮影:田中一人 編集:飯嶋藍子

「70~80年代の音楽を語るのに、シンガーソングライターのことだけ話をしていてはいけない」。クリスが教える大滝詠一の裏話

クリス:だとしたら、はっぴいえんどにも遡らないといけないですね。はっぴいえんど、ティン・パン・アレーの傾向が枝分かれして、ロックの流れにいくとサディスティック・ミカ・バンドにも行き着く。でも、今でこそみなさんビッグネームですけど、山下達郎さんや大貫妙子さんが在籍していたシュガー・ベイブなんかも当時は爆発的には売れていなかったんですよ。リアルタイムで売れていたシティポップの元祖といえば、ユーミンなんです。“あの日に帰りたい”が唯一ヒットしていた。

中田:そうなんですか! “あの日に帰りたい”もカバーさせてもらっています。

左から:中田裕二、クリス松村

クリス:ユーミンは、後から名曲と呼ばれるものがたくさん語られたけど、1970年代だとヒットはそれくらいですし、1977年にソロになられた山下達郎さんも、大滝詠一さんも、火がついたのは1980年代に入ってから。じゃあ売れない間どうしていたかというと、アイドルに曲を提供していたんですよね。

中田:なるほど!

クリス:だから1970年代、1980年代の音楽を語るのに、シンガーソングライターのことだけ話をしていてはいけない。アイドルポップスや歌謡曲を無視することはできないんですよ。そうそう、大滝詠一さんの作った“夢で逢えたら”という曲のエピソードも面白いですよ。

あの曲はラッツ&スターが歌って初めてベスト10に入ったんですけど、もともとは、ガールポップをやりたいと思った大滝さんが、アン・ルイスさんのために書いた曲だったんです。1970年代半ばの話ね。でも、大滝さんご本人の話によると、当時、彼女はロック路線でいきたいから歌えないといってボツになったそうなんです。

中田:そんな裏話があったんですね。

左から:中田裕二、クリス松村

クリス:そうなんです。でも、ちょっと話が合わないんですよ。“夢で逢えたら”は76~77年に吉田美奈子さんらが歌うんだけど、同時期にアン・ルイスさんは“甘い予感”という曲を出している。それはユーミンの曲なんだけど、全然ロックじゃないんです。

アン・ルイスさんがロックを歌い出すのは78年。もうご存命じゃないから、大滝さんに真相がお聞きできないのが残念なんですけど。……というように、「シティポップ」という単語ひとつでも、音楽は歴史や影響力が脈々と続いていますから、お話ししたいことは山ほど出てきちゃいますね(笑)。

中田:ほんとですね。すごく勉強になります! 今、シティポップがブームになっている現象は、クリスさんにはどう映りますか?

左から:中田裕二、クリス松村

クリス:そうですね。実際どういうバンドが、どんな曲をやっているか詳しくないので、大きなことは言えないですけど……みなさん必ず、過去の音楽からいろんな影響を受けていらっしゃるはず。

中田:ネオ渋谷系ブームというのもありますし。

クリス:ね、それも渋谷系とは何か? みたいなところから始まるでしょう? ルーツ的な音楽をもう一度聴こうとか、それにプラスして自分たちの新しい才能で、先人たちができなかったくらい、その世界を広げてもらえたらいいなと思いますね。

中田:分かります。サウンドは時代によって流行り、また沈んで、また繰り返すというのもありますし。それでいえば、バンドマンにとってはシティポップの前、2000年代はギターロックが主流でしたしね。僕も10数年前、バンド(椿屋四重奏)をやっていた初期の頃は、それに近い感じの音楽をやっていましたけど(苦笑)。

クリス:そうだったんですね! でも、ソロではもっとブルージーな色もあったり、スタイリッシュな音楽をやられていますよね。

中田:自分ではソウルミュージックもすごく好きなんです。プリンスも好きだし、先ほどクリスさんにご指摘を受けたこぶしや歌い方の感じや、フェイクなんかも黒人音楽の影響は大きいと思います。1970年代の歌謡曲も音楽はすごく横ノリでファンキーなものが多いので、そこもかぶっているのかなと思います。

中田が語る椿屋四重奏時代の音楽と「歌手としての挑戦」

クリス:プリンス的なソウルまで。『THE OPERATION / IT'S SO EASY』のジャケットがあまりに爽やかだから、もっとシティポップの方向にいくのか思いましたけど、それもちょっと違うのかな?

中田裕二『THE OPERATION / IT'S SO EASY』ジャケット
中田裕二『THE OPERATION / IT'S SO EASY』ジャケット(Amazonで見る

中田:そうですね、憧れはレニー・クラヴィッツですね。シンガーソングライターとしてルーツミュージックをすごくリスペクトしながら、いいバランスで常にアップデートしてる。それが理想です。

―1970年代、1980年代音楽のカバーも、中田さんのルーツミュージックへのリスペクトだと思いますが。

中田:それもありますし、カバーの良さは過去のいい曲を、僕という歌手を通じてみなさんにも聴いてもらえることです。シンガーソングライターとしてオリジナルを聴いてもらうだけでなく、ひとりの歌手として、名曲をどう歌うかの挑戦でもあります。

僕がバンドをしていた2000年代くらいは、みんなそうでしたけど、かなりデジタルに頼った音作りをしていました。コンプレッサーをかけて、音圧を上げるのを良しとしていた。でも、やっぱり僕のルーツはアナログ時代の音楽だし、デジタルな音には飽きてしまったんです。

椿屋四重奏時代のアルバムは、今ちょっと自分でも聴けないというか……耳がキーンとなってしまって(笑)。だから今回『THE OPERATION / IT'S SO EASY』に収録した“接吻”のカバーも一発録りですし、生身のままの音楽はぜひ今後も続けていきたいですね。

クリス:一発録り!? すごいですね!

中田:海外の僕世代のシンガーソングライターの人たちは、完全にアナログ回帰していますしね。レコーディングもテープでやるのが当たり前だし、演奏もあえて直さない。その人間らしさにすごく魅力を感じるんです。

クリス:中田さんは、ポリシーがあっていいですね。自分の昔の音が聴くに堪えないと思うところまでいって、でもそこを修正してまた挑戦していくって。お話しをしていて、中田さんは音楽をたくさんご存知で、歌謡曲から何から、いろんな音楽が大好きなのが伝わってきました。

それを、どう自分のワールドに変えていくかという可能性をすごく秘めていらしゃるから、これからも楽しみ! ルーツ全部入りで、なおかつオリジナルな中田ワールド、期待してますよ!

中田:はい、誰にも代わりの効かない音楽を作っていきたいですね。

左から:中田裕二、クリス松村

Page 3
前へ

リリース情報

中田裕二『THE OPERATION / IT'S SO EASY』
中田裕二
『THE OPERATION / IT'S SO EASY』(CD)

2016年8月24日(水)発売
価格:1,620(税込)
TECI-512

1. THE OPERATION
2. IT'S SO EASY
3. 接吻
4. モンロー・ウォーク
5. 不時着

番組情報

『MUSIC FAIR』

2016年9月24日(土)18:00~18:30までフジテレビで放送
出演:
岩崎宏美&国府弘子
ナオト・インティライミ
中田裕二
ももいろクローバーZ

プロフィール

中田裕二
中田裕二(なかだ ゆうじ)

1981年生まれ、熊本県出身。2000年にロックバンド「椿屋四重奏」を結成、フロントマンおよびすべてのレパートリーのソングライターとして音楽キャリアを本格的にスタート。2011年1月のバンド解散後、東日本大震災の被災地 / 被災者に向けて作られた『ひかりのまち』の発表を機にソロへ。これまでに、5枚のオリジナルアルバムと1枚のカバーアルバムをリリース。確かな歌唱力に裏打ちされた艶のある歌声、幼少時に強く影響を受けた70~80年代の歌謡曲 / ニューミュージックのメロディセンスを核にあらゆるジャンルを貪欲に吸収したバラエティに富むサウンドメイクと様々な情景描写や人生の機微をテーマとした詞作によるソングライティングは中毒性が高く、多くの熱心な信奉者を惹きつけている。

クリス松村
クリス松村(くりす まつむら)

オランダの政治都市ハーグで誕生。日本に帰国後も、学生時代にアメリカ、カナダ、ブラジル、メキシコ、フランス、オーストリア、ポルトガル、エジプト、ギリシャなどの海国、各都市をまわる。邦楽、洋楽問わずの音楽好きが高じて、番組出演にとどまらず、テレビやラジオの番組監修、CDの音楽解説、航空会社の機内放送オーディオプログラムの構成、ナレーションなども手掛けた。アナログ盤、CD、DVDなど約2万枚所有、現在も収集中。大物アーティストとの対談もこなすなど、アーティストからも認められるほどの、大の音楽ファン。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

岩井勇気(ハライチ)『ひねくれとか言われても俺はただ自分が進みたい道を選んでるだけ』

ドリームマッチでの『醤油の魔人 塩の魔人』、ラジオで突如披露した推しキャラケロッピをテーマにしたEDM調楽曲『ダメダメケロッピ』など、音楽的な才能に注目が集まる岩井勇気。今回はミツカン「こなべっち」とタッグを組み、自らがマイクを取ってラップに挑戦。しかもこの動画、岩井がこれまでラジオや書籍の中で言及してきた、珪藻土のバスマットや、海苔、メゾネットタイプの部屋、クラウス・ノミなどのネタが詰まっていて、まさか岩井さんの自宅なのでは……? と隅々まで見てしまう。つぎはぜひ、自作のトラックとリリックによる曲が披露されることを待っています。(川浦)

  1. テイラー・スウィフトと因縁のインディロック 田中宗一郎らが語る 1

    テイラー・スウィフトと因縁のインディロック 田中宗一郎らが語る

  2. 川井憲次に聞く押井守との共同制作。説明不可能な音楽探求の日々 2

    川井憲次に聞く押井守との共同制作。説明不可能な音楽探求の日々

  3. 三浦春馬主演『天外者』ウェブ限定動画「約束編」「決意編」「友情編」公開 3

    三浦春馬主演『天外者』ウェブ限定動画「約束編」「決意編」「友情編」公開

  4. 平手友梨奈が表紙を飾る『装苑』詳細発表 「クラシカルかつ幻想的ムード」 4

    平手友梨奈が表紙を飾る『装苑』詳細発表 「クラシカルかつ幻想的ムード」

  5. 菅田将暉“虹”PVで古川琴音と夫婦役、監督は呉美保 5

    菅田将暉“虹”PVで古川琴音と夫婦役、監督は呉美保

  6. 『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』論評 自立と解放への戦い描く 6

    『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』論評 自立と解放への戦い描く

  7. のんがブルーハーツをカバー マルコメ×『私をくいとめて』コラボ企画始動 7

    のんがブルーハーツをカバー マルコメ×『私をくいとめて』コラボ企画始動

  8. 石崎ひゅーい×森山未來対談 本当の戦いは勝ち負けの物差しの先で 8

    石崎ひゅーい×森山未來対談 本当の戦いは勝ち負けの物差しの先で

  9. 高橋一生が今年のグラコロソングを歌う、マクドナルド新テレビCM 9

    高橋一生が今年のグラコロソングを歌う、マクドナルド新テレビCM

  10. PUNPEEが2つの配信ライブで提示したもの、メール取材も実施 10

    PUNPEEが2つの配信ライブで提示したもの、メール取材も実施