
音楽の醍醐味は偶然の出会い GOODWARP×CHABE×TGMX
GOODWARP『bravo! bravo! bravo! / Sweet Darwin』- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:田中一人 編集:山元翔一 取材協力:JAZZY SPORT SHIMOKITAZAWA
「ダンサブルポップのニュースタンダード」を掲げ、今年3月にミニアルバム『FOCUS』をリリースしたGOODWARPが、ダブルAサイドEP『bravo! bravo! bravo! / Sweet Darwin』を発表した。ブラックミュージックをベースに、心も体も踊らせて、異次元へとワープしてしまうような瞬間を追求しつつ、あくまでJ-POP的なメロディーの良さにもこだわる彼ら。その存在は、バンドによるダンスミュージックのトレンドが縦ノリから横ノリへと変化し、これからそれがさらにオーバーグラウンド化していくことのひとつの象徴のように感じられる。
今回、GOODWARPのフロントマンである吉崎拓也の対談相手として招いたのは、新作に収録されている“bravo! bravo! bravo!”、『FOCUS』に収録されていた“僕とどうぞ”のリミックスを手がけた松田“CHABE”岳二(以下、CHABE)とTGMX(FRONTIER BACKYARD / 以下、TGMX)。CHABEとTGMXによる初のリミックスタッグは、バンド側からのラブコールで実現したという。共に1990年代から活躍し、バンドマンとして、DJとして、プロデューサーとして、夜遊びをしながらジャンルの交配を見つめ続けてきた二人は、今のシーンに何を思うのか。音楽でつながった先輩後輩による対話からは、自然と「音楽との出会い方」というテーマが浮かび上がってきた。
(GOODWARPは)いい意味でエグみがないのがいいところなんだけど、ホントは結構やんちゃなんだろうなって感じもあってよかった(笑)。(TGMX)
―吉崎くんにとってCHABEさんとTGMXさんはどんな存在なのでしょうか?
吉崎:僕が音楽を好きになった小学生くらいのころは、Mr.Childrenを筆頭にオリコンチャートにバンドがいっぱいいた時代で。バンドをやりたいと思ったのも、まずは1990年代のJ-POPのメロディーに惹かれたのが大きかったです。
ただ、音楽が好きな人にはよくあることだと思うんですけど、僕にも「洋楽以外はダサい」って考えていた時期があって、そのころにJamiroquaiやスティーヴィー・ワンダーに出会ったんです。そんな僕を「日本の音楽もかっこいいじゃん」って引き戻してくれたのが、このお二人であり、その周りにあったシーンの存在でした。
―それはいつごろのことですか?
吉崎:高2とか高3くらいですかね。当時の僕からすると、SCAFULL KINGもNEIL&IRAIZAも「イケてる人たちが聴いてる音楽」みたいな印象もありました。あとすごく覚えているのが、隣のクラスに好きな子がいて、その子がスキャフルの大ファンだったんです。
僕は当時スキャフルのことを知らなかったんですけど、その子と話したいから知ったかぶって、「俺もスカフル好きなんだよね」って言ったら、「スキャフルね」って言われて。めっちゃ恥かいたっていう思い出があります(笑)。
―いい話ですね(笑)。お二人はGOODWARPとどのように出会って、最初はどんな印象を持ちましたか?
TGMX:今年の前半にLOW IQ 01さんと弾き語りのライブをやらせてもらったときに、吉崎くんが観に来てて、そこでCDをもらったのが最初です。LOW IQ 01さんや渡辺俊美さん(TOKYO No.1 SOUL SET)がそのCDにコメントを寄せていて、聴いてみたら実際よかったんですよね。いい意味でエグみがないのがいいところなんだけど、ホントは結構やんちゃなんだろうなって感じもあってよかった(笑)。
CHABE:僕もそのライブを観に行ってて、楽屋で話してCDをいただいたんですけど、売れる人の声だなって思いました。リミックスってひたすらアカペラを聴きながら作業するんですけど、吉崎くんはすごくいい声なんですよね。だからずっと聴いてても嫌にならない(笑)。
―でも、吉崎くんはGOODWARPを始めるまでボーカルをやったことがなかったんですよね?
吉崎:そうなんですよ。GOODWARPを始める前は、今のベース(萩原“チャー”尚史)と別のバンドをやっていたんですけど、歌は歌ってなくて。そのときも作曲はしていたんですけど、たまにコーラスをやると、当時のボーカルに「ひどいからやめてくれ」って言われたくらいなので、自分がボーカルをやるとは思ってもなかったんです。
CHABE:でも、ホントは作った人が歌うのが一番いいと思う。
―きっと、その人がメロディーを作ってるからこそ、いい声に聴こえるっていうのもあるでしょうね。
CHABE:それもあると思いますね。
「ブラックミュージックの要素を取り入れたポップス」っていうイメージは最初からあった。(吉崎)
―GOODWARPは今年の3月に初の全国流通盤(『FOCUS』)をリリースしました。このミニアルバムは、バンドによるダンスミュージックのトレンドが縦ノリから横ノリに変化し、さらにオーバーグラウンド化していくことを象徴している、という見方ができるんじゃないかなと思うんです。実際、吉崎くんはここ何年かのバンドシーンのトレンドをどのように見ていましたか?
吉崎:GOODWARPの結成は2012年なんですけど、その時点で縦ノリのダンスミュージックが流行っていたんです。Perfumeやサカナクションがいて、エレクトロを取り入れたロックバンドが既にでかいステージで活躍していたんですよね。でも僕らはその流れの中で、新人としてストレートにやるほど若くはなかったから、一回ちょっと冷静になろうと(笑)。ボーカルをやるのも初めてだったし、何かアイデアで勝算を見出せないかと思ったときに、一番最初は横ノリに目をつけたんです。
吉崎:GOODWARPはもともと僕と萩原との宅録から始まったんですが、メンバー募集する際の名刺代わりに“真夜中のダンス”って曲を作ってネットにアップしたんです。それをたまたま見たイベンターの人が、「面白いことやってるね」って声かけてくれて。「ブラックミュージックの要素を取り入れたポップス」っていうイメージは最初からあったんですけど、「これは間違ってないかも」って今の方向性に自信を持てたきっかけになりましたね。
―TGMXさんはFRONTIER BACKYARDでの活動の一方、KEYTALKをはじめとした若手バンドのプロデュースも手がけられていますが、近年のバンドシーンの動きをどのように見ていますか?
2013年リリース。プロデュースはTGMX
TGMX:バンドがやるダンスミュージックと、CHABEくんみたいにクラブに接点がある人たちの周りにあるダンスミュージックってちょっと違うと思うんです。僕はバンドマンとしてクラブカルチャーに憧れつつ、舐められたくない気持ちもあったから、何とかクラブでも通用するような曲を作りたかった。でも、今の若いバンドマンはまたちょっと解釈が違う気がする。もうロックもダンスも意識してないんじゃないですかね? 感覚を指標にしているというか、「ジャンル」ではない。
リリース情報

- GOODWARP
『bravo! bravo! bravo! / Sweet Darwin』うどん盤(CD) -
2016年11月16日(水)発売
価格:1,620円(税込)
VPCC-818861. Sweet Darwin
2. bravo! bravo! bravo!
3. Answer
4. Tonight is the night
5. bravo! bravo! bravo! CBSMTGMX mix (Remixed by CHABE+TGMX)

- GOODWARP
『bravo! bravo! bravo! / Sweet Darwin』通常盤(CD) -
2016年11月16日(水)発売
価格:1,620円(税込)
VPCC-818871. bravo! bravo! bravo!
2. Sweet Darwin
3. Answer
4. Tonight is the night
5. bravo! bravo! bravo! CBSMTGMX mix (Remixed by CHABE+TGMX)

- LEARNERS
『Learners Christmas EP』(7inchアナログ) -
2016年11月30日(水)発売
価格:1,512円(税込)
KKV-041VL[SIDE-A]
1. I Saw Mommy Kissing Santa Claus
[SIDE-B]
1. Hot Club Of Christ

- FRONTIER BACKYARD
『FUN BOY'S YELL』(CD) -
2016年11月2日(水)タワーレコード限定発売
価格:1,836円(税込)
NIW-1251. always remember
2. UNKNOWN
3. excuse to
4. Journey of music
5. 2016
6. shout out good-bye
プロフィール

- GOODWARP(ぐっどわーぷ)
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90'sポップス、シティポップ、クラブミュージック等への愛着を感じさせるダンサブルなサウンドメイクの中に、温もりある日常ドラマを唄う4人組バンド。結成後すぐに「出れんの!?サマソニ!?2012」を勝ち抜き、その後も「MINAMI WHEEL」や「COMIN‘KOBE」「JamNight2016」をはじめとする各地のイベントへ勢力的に出演し注目度を高めている。作詩作曲のみならず、作品のアートワーク等も手掛けるVo.吉崎拓也が描く、どこか男臭くて遊び心のある歌詞とメロディーの世界観、そして人懐っこい歌声、ポップ且つグルーヴィーなバンドサウンドは老若男女の垣根を越えて心を軽やかに踊らせる。11/29(火)渋谷clubasia、12/15(木)心斎橋アメリカ村FANJ twiceで自主企画「YOASOBI vol.7&8」を開催、2017年1月より全国リリースツアーを実施する。

- 松田“CHABE”岳二(まつだ ちゃーべ がくじ)
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ソロ・プロジェクトのCUBISMO GRAFICO、バンド・スタイルのCUBISMO GRAFICO FIVE、堀江博久とのユニット“NEIL&IRAIZA”、そしてDJ、リミキサーとしても活動。また、FRONTIER BACKYARD、LOW IQ 01&MASTERLOWのサポートも務める。2001年には、映画『ウォーターボーイズ』の音楽を手掛け、第25回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。渋谷Organ Banでのレギュラーナイト「MIXX BEAUTY」をはじめ、三宿web他、CLUBでのDJで現場を大切にした活動を展開。様々な音楽活動を経て、楽曲提供やリミックス、さらに音楽やファッションのプロデュースも行い、セルフプロダクトのファッションブランド、kit galleryも主宰。現在は、時代の若者を躍らせたダンスナンバーを蘇らせるロックンロールバンドLEARNERSを精力的に活動中。

- TGMX(FRONTIER BACKYARD)(てぃーじーえむえっくす ふろんてぃあ ばっくやーど)
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90年代後半から、SCAFULL KINGのボーカル&トランペットで活動。2001年1月、渋谷AX3DAYSを最後に休止へ。2001年11月、TGMX名義の1stソロアルバム「MUSIC LIBRARY」の5000枚限定発売(2012年再発)。2012年には10年振りに2ndソロアルバム「I CAN'T SING IT」を発売するなどソロワークをしつつ、2004年頃から本格的始動したFRONTIER BACKYARDは、今年12年目を迎え、現在までにアルバム5枚、ミニアルバム1枚などをリリース。FUJI ROCK、RISING SUN、ROCK IN JAPAN、RUSH BALL、KESEN ROCKなど数々の大型フェス等にも出演。他にもCUBISMO GRAFICO FIVE(2001年~)、THE DEKITS(2011年~)のバンドで鍵盤、ギターなどの楽器を担当。LOW IQ 01 & MASTER LOW(1998年~)のサポートメンバーでもある。バンド活動やソロでの弾き語りのみならず、プロデュース、楽曲提供、DJ等あらゆる音楽形態でマルチに活動中。FBYとして久々のオリジナルミニアルバム「FUN BOY'S YELL」が発売中。