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モテを求めて三千里。サイゾー、ジブリ出身の脚本家・岸本卓とは

モテを求めて三千里。サイゾー、ジブリ出身の脚本家・岸本卓とは

『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:鈴木渉 編集:飯嶋藍子

あの人気ゲームアプリ『モンスターストライク』がこの冬、劇場アニメになる。魅力的なキャラクターが多数登場する同作だが、これまでその背景にあるストーリーは明確には語られてこなかった。今回の劇場版は、そんな『モンスト』の起源に迫る物語になるという。

今回、同作の脚本を担当した岸本卓にインタビューする機会を得た。彼は『ハイキュー!!』『僕だけがいない街』『91days』など、数々の話題作を手がけている気鋭の脚本家だが、その経歴がまず目を引く。雑誌『サイゾー』の編集者として社会派&ゴシップ記事を多数手がけた後、スタジオジブリに入社。『借りぐらしのアリエッティ』の脚本制作に関わったものの宮崎駿監督から降板勧告を受け、退社。脚本家になったのはつい数年前のことだ。濃すぎる経歴について本人に話を聞くうちに浮かび上がってきたのは、脚本家という職業の意味、そして役割だった。

部活とか、仲間とか、そういうのにグッと来ちゃう性格なんです。

―人気ゲームアプリをアニメーション映画化した『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』では、これまで明かされることのなかった『モンスト』世界の秘密が明らかになるそうですね。YouTube上で配信されているミニシリーズの過去編に当たる物語だとか。

岸本:そうですね。映画としてのポイントは2つあって、1つはゲームとして『モンスト』をプレイすることにどんな目的が隠されていたのか、というモンスト誕生秘話。それは、これまで『モンスト』を熱心に遊んできた人であればあるほど「そうだったのか!」と驚くものになっているはずです。

岸本卓
岸本卓

―それともう1つのポイントというのは?

岸本:四人の子どもたちを主役にした冒険映画であるということです。僕が生まれて初めて見た映画が『グーニーズ』なんですよ。

―1985年公開のアメリカ映画ですね。

岸本:屋根裏部屋で宝の地図を見つけた少年たちが、ふだん見慣れた岬の地下に広がる大洞窟に迷い込み、機を同じくして脱獄したギャングたちの妨害をかいくぐって、ついに財宝を積んだ海賊船を発見するというお話。僕は、日常と非日常が地続きになっている冒険譚が大好きなんです。だからプロデューサーからこんな映画にしてほしいというオーダーの書かれたプロットを受け取って、まず閃いたのは「自分の好きな物語を書ける!」でした(笑)。

実を言えば、僕はスマホを持ってないし、当然『モンスト』もプレイしたことがなかったんです。でも、子どもたちが冒険する物語ならぜひ書いてみたい。それが今回の劇場版に関わることになった大きなきっかけです。

―岸本さんは主にテレビアニメの脚本を書かれていますが、かなりのアニメマニア?

岸本:いや、それが全然なんですよ。子どもの頃からアニメはおろかテレビや映画といった映像作品への思い入れがほとんどなくて、大学のゼミにいた超面白い3人の先輩との出会いがなければ、アニメの世界に進むことはなかったでしょうね。

―どんな先輩たちだったんですか?

岸本:一言でいえば、重度の映画マニアでした。酔っ払うと3人で映画の名シーンを演じ出すんですよ。タランティーノの『レザボア・ドッグス』(1992年)とか。

―90年代って感じですねえ。

岸本:そんな先輩たちに自分を仲間として認めてもらいたい、という強烈な承認欲求から狂ったように映画を見始めたんです。大学を卒業して働き始めたのが雑誌『サイゾー』の編集部でしたけど、その理由を作ったのも同じ先輩です。

岸本卓

―それは、どういうきっかけだったんでしょう?

岸本:一人暮らしの先輩の家に大量の雑誌が積んであって、そこで『サイゾー』と出会いました。「本当か嘘かわからないことばかり書いてあってメチャクチャすぎる!」と大興奮したんです。後に『Quick Japan』の名物編集長だった赤田祐一さんが書いた『証言構成「ポパイの時代」―ある雑誌の奇妙な航海』という本で、かつての雑誌黄金期の編集者たちが完全に部活ノリで仕事をしていたことを知って「俺も編集者になる!」と、ますます決意を固めました。部活とか仲間とか、そういうのにグッと来ちゃう性格なんです。

―『サイゾー』は部活感ありましたか?

岸本:満載でした。当時は用賀にあるボロボロの一軒家を編集部にしていて、靴を脱いで木の階段を上がっていくと、5人くらいが身を寄せ合って仕事してるわけです。

人手が足りないから、編集だけじゃなくて自分で記事も書いていたんですけど、必死で書いた原稿にボッコボコに修正の赤字を入れられて「やり直し!」って先輩たちから全否定されるという(笑)。それは学生気分が抜けない僕への手荒い洗礼で、部活でありながらも、社会人意識のなんたるかを学んだ気がします。

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作品情報

『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』

2016年12月10日(土)から新宿ピカデリーほか全国公開
監督:江崎慎平
脚本:岸本卓
主題歌:ナオト・インティライミ“夢のありか”
声の出演:
坂本真綾
村中知
Lynn
木村珠莉
河西健吾
福島潤
小林裕介
水樹奈々
山寺宏一
北大路欣也
配給:ワーナー・ブラザース映画

プロフィール

岸本卓(きしもと たく)

脚本家。兵庫県出身。幼少期を香港の日本人学校で過ごす。大学卒業後アルバイトとして講談社、『サイゾー』編集部で編集者として活動。2005年にスタジオジブリに入社。2009年に独立し、テレビアニメ『うさぎドロップ』『銀の匙 Silver Spoon』『ハイキュー!!』『銀魂゜』『僕だけがいない街』などの脚本を担当。2016年12月10日に自身が初めての長編アニメ映画の脚本を務める『モンスターストライク THE MOVIE』が公開となる。

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