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取材中も変顔連発な画家・松井えり菜が刺激されまくった海外留学

取材中も変顔連発な画家・松井えり菜が刺激されまくった海外留学

『DOMANI・明日展』
インタビュー・テキスト
野路千晶
撮影:鈴木渉 編集:飯嶋藍子

自画像は私が今どこにいるのか教えてくれる。「目は口ほどにものを言う」というように、顔が物語ってくれる。

―そもそも、松井さんと美術との出会いはどのようなものだったのでしょうか? 松井さんは美術予備校生時代『GEISAI#6』に出品した『エビチリ大好き』をきっかけに20歳の若さでデビューを果たしました。

松井:私は岡山県出身なのですが、実家から徒歩10分圏内に大原美術館があったんです。それで幼少期から何度か訪れているうちに「いつか油絵を描いてみたいな」と思いました。それが美大進学のきっかけです。

松井えり菜『エビチリ大好き』(2003年)
松井えり菜『エビチリ大好き』(2003年)

―大原美術館といえば、日本で初めて西洋美術・近代美術を紹介した本格的な美術館として有名です。

松井:そこで見た西洋画から受けた影響はとても大きいです。所蔵作品のクロード・モネの名画『睡蓮』に描かれた池の中からウーパールーパーが出現するイメージが子供の頃からあって。

―なかなかユニークなイメージですね(笑)。

松井:というのも、京都の東映太秦映画村に、池の中から突然恐竜が出現するエリアがありまして。それを見ていて「この池からはウーパールーパーも出てくるはず」って。

―松井さんの作品には、度々ウーパールーパーが登場しますよね。

松井:ウーパールーパーは、私が子供のころから似ていると言われる動物なので、幼少時のメタファーでしょうか。ウーパールーパーの被り物をかぶって各地を訪れる『ドコヘデモイケマス』という写真シリーズは、水槽の外に出られないウーパールーパーの代わりに外に出てあげる、というイメージの作品です。

松井えり菜『ドコヘデモイケマス』(2008年)
松井えり菜『ドコヘデモイケマス』(2008年)

―世界各地で撮影されていますね。ときにはベルサイユ宮殿にも……。

松井:「ここは大道芸をする場所じゃない!」って怒られたり、ウーパールーパーの頭を持っていたので、空港の荷物検査では度々警戒されながら、各地を訪れてきました。

―そうした作品シリーズも、自画像の発展版のひとつなんですね。

松井:そうです。例えば『なりきりヴィーナス センターはいつだってプレッシャー』も、一見すると自画像に見えないかもしれないですが、私の顔を描いています。

松井えり菜『なりきりヴィーナス センターはいつだってプレッシャー』(2016年)
松井えり菜『なりきりヴィーナス センターはいつだってプレッシャー』(2016年)

―これはどういった作品なんですか?

松井:古典絵画における中心軸はだいたい真ん中で、中央にいる人物を中心に色々な出来事が起こっているんですね。さらに、その真ん中の人物は同じ画面に描かれた他の人物からも鑑賞者からも常に見られる立場であると。そのプレッシャーに「耐えられない!」と感じているヴィーナスの顔が、私の顔になっています。

―なぜ松井さんはシチュエーションを変えつつも、自画像を主軸に描き続けてきたのでしょうか?

松井:それは自画像が、私が今どこにいるのかを教えてくれるGPSのようなものだからです。私がその時々にどういうことに興味を持って、そしてどういうことを訴えたいのかを教えてくれるダイアリーのようなものなんですよ。「目は口ほどにものを言う」というように、顔が物語ってくれるような気がして、顔というモチーフにとても興味があります。

松井えり菜

―自画像によって、松井さん自身の現在地を確かめるという。

松井:そうですね。毎日の生活、あるいは絵を描いているときに、自分を見失う瞬間があるんですよ。そのときに過去の作品を見返して気がつくこともあります。

―そこで気づくことは、自分自身のこと、あとは周りの環境や社会のことも含まれますか?

松井:はい。肌のコンディションや興味の範疇、時代の流行、今はもう使えない画材。変化と喪失の気づきですね。今回の『19th DOMANI・明日展』では、過去作から初公開の最新作までを網羅的に展示することになりました。ひとりの作家の人生や興味の移り変わりとモチーフへの向かい方が見えるので、みなさんにも楽しんでいただけると思います。

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イベント情報

『未来を担う美術家たち「19th DOMANI・明日展」文化庁新進芸術家海外研修制度の成果』

2016年12月10日(土)~2017年2月5日(日)
会場:東京都 六本木 国立新美術館 企画展示室2E
時間:10:00~18:00(金、土曜は20:00まで、入場は閉館の30分前まで)
参加作家:
池内晶子
岡田葉
南隆雄
秋吉風人
保科晶子
松井えり菜
曽谷朝絵
三原聡一郎
山内光枝
今井智己
折笠良
金子富之
平川祐樹
休館日:火曜、12月20日~1月10日
料金:一般1,000円 大学生500円
※高校生、18歳未満および障害者手帳をお持ちの方と付添者1名は無料

プロフィール

松井えり菜(まつい えりな)

画家。現代美術家。1984年、岡山県出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了。自画像やウーパールーパーをモチーフとした作品を多く制作する。2004年に自画像『エビチリ大好き』で『GEISAI#6』金賞を受賞。同作品はパリ・カルティエ現代美術館のコレクションとして収蔵される。平成24年度文化庁新進芸術家海外留学制度研修員。

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