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インスタントな表現に喝を downy青木裕×DIR EN GREY薫対談

インスタントな表現に喝を downy青木裕×DIR EN GREY薫対談

青木裕『Lost in Forest』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:鈴木渉 編集:山元翔一

ちょっとミステリアスで、もやがかかっていた方が、作品として魅力的に見えることってあると思うんです。(青木)

―『Lost in Forest』はジャンルで規定できる作品ではないと思うのですが、青木さんの音楽的なルーツはどこにあるのでしょうか?

青木:僕は昔から映画音楽が好きなんですけど、その影響は大きいですね。基本的に曲がコンパクトなのは、映画の予告編みたいなものにしたかったから。スピード感と臨場感があって、想像力を掻き立てられるところが予告映像の魅力なんです。こちらの想像が本編を超えてしまう、ということがよくありますね。結局僕は、映画自体よりも予告映像が好きなんじゃないか、とも思うんですけど(笑)。

青木裕

青木:曲とは別に、聴き手の感情を引き出すような音が作れたらとは考えます。ノイズとかね。子どもの頃から効果音が好きで、将来アメリカの「インダストリアル・ライト&マジック」(アメリカの特殊効果及びVFXの制作会社)に就職して、効果音を作る人として働けないかなって考えたりもしてました。

―青木さんのギターの多彩な音色のルーツは効果音にあったんですね。薫さんも映画音楽がお好きなのでしょうか?

:好きですね。好きな映画のサントラは、必ず買ってよく聴いていました。気に入った映画はサントラを聴いて、好きなシーンを思い出したりして、劇場公開からビデオが出るまでの期間を楽しんでいましたね。

―『Lost in Forest』は、まさに同名映画のサウンドトラックとも言えそうですよね。

青木:架空の映画のサウンドトラックといった意識はあります。ただ、さっきも言ったように、本編以上に予告編そのものが面白いことは多々あるので、ストーリーなどはぼんやりしていてもいいかなって。ちょっとミステリアスで、もやがかかっていた方が、作品として魅力的に見えることってあると思うんです。

これが僕の等身大。別に背伸びをして作ったわけではなくて、「陰鬱な自分」が無理なく出ているだけ。(青木)

―“Witch Hunt”を共に作り上げるにあたっては、どういうやりとりがあったのでしょうか?

青木:この曲は、核となるものがないまま作り始めて、メロディーとかテーマがない状態で薫くんに渡したので……大変だったと思います(笑)。

:どうしたらいいのか、めちゃめちゃ悩みましたよ。データが送られてきて、「好きにやって」って言われたんですけど、元は自分が作った曲だから、「また戻ってきた」みたいな感じもあったし。なので、かなり時間をかけて、とにかくいろんな音を入れまくって、「あとは任せます」って送り返したんです。

薫

青木:でも、ほとんど使ったよ。

:もう自分がどんな音を録ったのか覚えてないです(笑)。

青木:最初に送られてきたものは、リフやアルペジオが中心だったんです。そこにメロディックなフレーズがあったら面白いんじゃないかと思って、「ソロ風に弾いて」と追加でお願いしました。「できれば使わないでください」みたいな、赤面してる顔が見えるようなメールと一緒に送られてきたんですけど、全部使いました(笑)。ランダムにトラックを合わせていく作り方をしたのですが、メロディーと他のギターがはまったときの得も言われぬ瞬間に感動しましたね。

―“Witch Hunt”という曲名はあとからついたわけですか?

青木:そうです。送られてきた極悪トーンのごついギターサウンドを聴いて、炎がうごめいている映像が浮かんだんです。そこから魔女狩りのイメージに繋がっていきました。もっと不気味にしてやろうと思って、女性が嘆くような声を僕が作ったり。あとは、命の期限を思わせる秒を刻むような音も彼のギターだし、トイピアノみたいな音もそうです。まあ、最終的には僕がいじっているので、「こんな音、弾いてない」っていうのもあると思うんですけど(笑)。

左から:青木裕、薫

―『Lost in Forest』というタイトルにはどんな意味が込められているのでしょうか?

青木:森っていうのは精神的な意味です。誰しもが持っている闇を表現したつもりですが、もともとは自分の中にあるもの。つまり、これが僕の等身大。別に背伸びをして作ったわけではなくて、普段からこんなことばっかり考えてるような、「陰鬱な自分」が無理なく出ているだけなんです。

「僕を見てください」「僕を聴いてください」っていう、それだけなんです。(青木)

―闇や「陰鬱さ」はアートワークにも表れているように思うのですが、もともとは2015年に開催された初の個展のときに書き下ろしたものですよね?

青木:個展自体ソロ作を見据えて開催したもので、あの原画をPCに取り込んで、着色したものをジャケットに使っています。山羊って、西洋では悪魔的なイメージがあったり、森の精とされていたり、神秘性があるので、ぼんやりした物語性を伝えられたらとも思ってモチーフにしました。ただ、山羊だと思って描いてはいないんです。自分自身や心の闇が投影された像ですね。

左から:青木裕、薫

―3年前の取材では、「自分に勝ちたい」とおっしゃっていましたが、そういう感覚とはちょっと違う?

青木:この作品に関しては、ただただ自分です。3年前は迷いの中で、ギラギラしていたんだと思うんです。でも今は、自分が何を表現したいかが明確になりました。「この闇をみなさんに伝えたい」ではなくて、「僕を見てください」「僕を聴いてください」っていう、それだけなんですよね。

―world's end girlfriend(『Lost in Forest』のリリース元である「Virgin Babylon Records」主宰)が昨年発表した『LAST WALTZ』も「自分」が色濃く投影された作品でしたし、途中で青木さんもおっしゃっていたように、そこには時代性も反映されているように思います。最後にもうひとつだけ訊かせていただくと、10年の制作期間を経て、「これで完成」となったのはどんなタイミングだったのでしょうか?

青木:それはレーベルが設定した締め切りです(笑)。それがないと、一生やってると思う。実は納品した後も、「ごめん、やっぱり修正してもいい?」って、world's end girlfriendに何回も電話しちゃったんですよ。迷惑かけちゃって、悪かったなあ(笑)。

左から:青木裕、薫

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リリース情報

青木裕『Lost in Forest』
青木裕
『Lost in Forest』(CD)

2017年1月18日(水)発売
価格:2,700円(税込)
Virgin Babylon Records / VBR-037

1. I am Lost(feat. MORRIE)
2. Open the Gate(feat. MORRIE)
3. 851
4. Waltz of the Bugs
5. Fury
6. Missing
7. Witch Hunt(feat. 薫)
8. Im Wald
9. Ghosts in the Mist
10. Gryphon / Burn the Tree
11. Cave
12. "B"
13. Colling(feat. MORRIE)
14. Shape of Death(feat. SUGIZO)

プロフィール

青木裕
青木裕(あおき ゆたか)

downy、unkieのギタリスト。他にMORRIE(DEAD END)ソロ・プロジェクト、黒夢等様々なプロジェクトに参加。ギタリスト、プロデューサーの他、CDジャケットのアート・ワーク等イラストレーターとしても幅広く活動している。

薫(かおる)

兵庫県出身。1997年に結成された5人組ロックバンド、DIR EN GREYのギタリスト兼リーダー。そのカテゴライズ不能なサウンド、圧倒的なライヴパフォーマンスは国内外で高く評価され、欧米でも作品のリリース、ツアーを行ない世界中で熱狂的なファンを獲得している。2015年には自伝書籍『読弦』を発表、また毎月第2・第4金曜日に有料会員向けオフィシャルブログマガジン「TheThe Day」を配信している。

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