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インスタントな表現に喝を downy青木裕×DIR EN GREY薫対談

インスタントな表現に喝を downy青木裕×DIR EN GREY薫対談

青木裕『Lost in Forest』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:鈴木渉 編集:山元翔一

このアルバムは青木さんの頭の中だけのものなので、まったく想像ができない。そこがすごく楽しかった。(薫)

―『Lost in Forest』の資料には「制作期間10年」とありますね。

青木裕『Lost in Forest』ジャケット
青木裕『Lost in Forest』ジャケット(Amazonで見る) / イラストは青木が手がけている

青木:ずっと「アルバムを作りたい」と思っていたんです。具体的なプランは何もなかったんですけど、とにかく自分だけの作品を作りたくて。幼少期から描いていた夢である「イラストと音楽の融合」を、僕なりに具現化できたのではないかと思います。実際、制作を開始したのは10年前くらいなんですけど、僕、録音機材に疎くて……(笑)。ただ、数年前にDAW(デジタルで音声の録音、編集、ミキシングなど一連の作業が出来るように構成された一体型のシステム)に移行したことをきっかけに、急に作品の完成が現実味を帯びたんです。

―薫さんはアルバムに対してどんな印象を持たれましたか?

:何というか……言葉にはしにくいんです。一言で言ってしまうと、それだけではない気がするし、とにかく「えらいもんができたな」と思いました。そして「やっぱり、この人おかしいな」と(笑)。でもね、聴いてて楽しいんですよ。「次はどうなるんやろう?」って、どんどん楽しくなってくる。

:downyだと、バンド形態なので、曲が始まると何となくその先も想定できる気がするんです。でも、このアルバムはこの人の頭の中だけのものなので、まったく想像ができない。そこがすごく楽しかったです。「ギタリストのソロアルバム」という感覚ではなくて、「青木さんの作品」という感覚で聴かせてもらいました。

―間違いなく、「ギタリストのソロアルバム」と聞いて、パッと連想するタイプの作品ではないですよね。とはいえ、すべてがギターの音のみで構成されているわけで、その意味ではものすごく「ギタリストのソロアルバム」らしい作品とも言えると思います。

青木:そうですね。本当は、アンプから出したギターの音だけで作りたかったんですよ。でも、それだと音域が集中してしまうので、途中でちょっと考えを改めて、アコギのボディを叩いてキックの代わりにするところから、ちょっとずつ脱線していきました。

ギターシンセとかも使ってはいるんですけど、「ギターから発せられる音だけで作る」というラインは守っていて。まあ、生演奏では決してできないテイストを入れたかったので、DAW上の編集ありきで、何度もトラックを分解したり、切り貼りを繰り返して作ったんですけどね。

:青木さんの作るフレーズって、リズムやメロディーが陰鬱だと思うんです。それがね、たまらないんですよ。俺はそれがすごく好き。

薫

自分を信じて、聴いてくれる人たちを信じる。それしかない。これもある種の怨念ですね。(青木)

―表現の根幹に「闇」があるというのは、お二人の共通点なのかと思いますが、そこについてはいかがでしょうか。

:自分から出てくるものも陰鬱なものが多いですね。それは大した理由があるわけではなくて、そういう性格で、そういうものが好きなんです。例えば、ハッピーな映画より暗い映画の方が好きだし、自分も闇を抱えたようなものしか表現できない。無理して自分の中にあるものとはまったく違ったものを作ったとしても、どこか見繕ったようなものしか作れないと思うので、自分の内側から出てくるものを表現しようとすると、陰鬱なものになるんです。

青木:やっぱり、薫くんも等身大なんでしょうね。昔は自分をそのまま映し出した作品なんて世の中に受け入れられるわけがないと思っていて、それも一度音楽を離れた理由としてあったんです。子どもの頃、いじめられていた時期が長くて、生きる意味をあまり感じられてなかったんですけど、そんな僕でも今は受け入れてくれる場所がある。そう感じているので、だったら他人の顔色を伺う必要なんてないなと。

青木裕

青木:そこには、「どっちが正しい」なんてこともないですからね。「勝手にやってよ、僕も勝手にやるから」っていう、それが表現だし、今はそういう時代でもあると思う。リスナーの耳も肥えてきていますし、そういう意味でも挑戦すべきだと思ったんですよね。

―昨年青木ロビンさんに取材をした際(音楽家は増えすぎた? 馴れ合わず、孤高の道を行くdownyの問い)に、誰もがDTMなどで簡単に音楽を作れるようになったことを肯定しつつ、クオリティーの低い作品も増えていると感じていて、「作品を発表している」というだけで、肩を並べたように接してこられることに対しては、「舐めんなよ」という気持ちが正直あるとおっしゃっていました。『Lost in Forest』はインスタントに作られたようなサウンドが溢れる現代に対し、音楽家の凄味を伝えるような作品だとも感じたのですが、今の状況に対してどんなことをお考えですか?

青木:あれは僕らの言葉でもあるんです。downyって、アルバム1枚作るのに毎回数年かけているので、「downyに影響を受けひと月かけて作りました、勝負です」って音源渡されても、「お前らいい加減にしろよ」っていう思いはどこかある。

僕らがデビューしたのは2000年なんですけど、作品を世に送り出すことはすごくしんどいことだったんです。今は全部自分で完結して配信までできてしまう。だからといって、音楽家として同じ土俵に立ったと思われるのは、「ふざけんな」って気持ちですよ。明らかに質の低いものに限った話ではあるけど。

―薫さんはどのようにお考えですか?

:時代といえば時代なんでしょうけど……まあ、いいことだとは思うんです。音楽がより身近になって、創作の可能性も広がってるわけですからね。ただ、インプットが減っているとは思います。今ってインプットもアウトプットもPCの中で完結できる時代じゃないですか?

左から:青木裕、薫

:昔は実際に楽器を鳴らして、目の前で鳴っているのを聴いて、どのフレーズにどのアンプが合うのかっていうのをひたすら考えたわけですけど、きっと今はそういう感覚は薄れていますよね。アンプにしてもシミュレーターで、何となく音が作れる時代になっていて、「でも、実際のその音知らないでしょ?」っていう。まあ、それはいいことでもあるし、そういう人たちだからこそ、俺らには作れないものを作れるんじゃないかとも思うんですけどね。

青木:僕もデジタル機材の恩恵を受けたことでこの作品ができたわけですし、そこを否定するつもりはないんです。でもはじめから、迷いも壁もなく、誰からもジャッジされることなく作品を出せてしまう環境というのはどうかとも思うんですよね。バンド内のディスカッションや、レーベルの厳しい目を経たことで生み落とされる作品の質ってあるじゃないですか?

全てを一人で完結した素晴らしい作品をたくさん知ってます。けど、クソみたいなものもいっぱいある。それらが同一で並んでしまうことに関しては、「どうしたらいいんだろう?」って思います。

青木裕

:大丈夫ですよ。ちゃんと聴いてる人はわかってますから。

青木:そう、結局そこしかないんですよね。だから、自分を信じて、聴いてくれる人たちを信じる。それしかない。これもある種の怨念ですね。

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リリース情報

青木裕『Lost in Forest』
青木裕
『Lost in Forest』(CD)

2017年1月18日(水)発売
価格:2,700円(税込)
Virgin Babylon Records / VBR-037

1. I am Lost(feat. MORRIE)
2. Open the Gate(feat. MORRIE)
3. 851
4. Waltz of the Bugs
5. Fury
6. Missing
7. Witch Hunt(feat. 薫)
8. Im Wald
9. Ghosts in the Mist
10. Gryphon / Burn the Tree
11. Cave
12. "B"
13. Colling(feat. MORRIE)
14. Shape of Death(feat. SUGIZO)

プロフィール

青木裕
青木裕(あおき ゆたか)

downy、unkieのギタリスト。他にMORRIE(DEAD END)ソロ・プロジェクト、黒夢等様々なプロジェクトに参加。ギタリスト、プロデューサーの他、CDジャケットのアート・ワーク等イラストレーターとしても幅広く活動している。

薫(かおる)

兵庫県出身。1997年に結成された5人組ロックバンド、DIR EN GREYのギタリスト兼リーダー。そのカテゴライズ不能なサウンド、圧倒的なライヴパフォーマンスは国内外で高く評価され、欧米でも作品のリリース、ツアーを行ない世界中で熱狂的なファンを獲得している。2015年には自伝書籍『読弦』を発表、また毎月第2・第4金曜日に有料会員向けオフィシャルブログマガジン「TheThe Day」を配信している。

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