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「音楽は言語のようになる」ジェフ・ミルズが音楽の進化を語る

「音楽は言語のようになる」ジェフ・ミルズが音楽の進化を語る

ジェフ・ミルズ&ポルト・カサダムジカ交響楽団『Planets』
インタビュー
湯山玲子
テキスト:重信綾 撮影:豊島望 編集:山元翔一

テクノDJ / プロデューサーとして、世界で熱狂的な支持を集め続けるジェフ・ミルズ。いまヨーロッパでは、電子音楽とクラシック音楽を融合させた彼の先鋭的な活動を発端に、オーケストラがダンスミュージックを演奏する公演が数多く行われ、音楽シーンにおける新たな潮流として注目を集めている。日本国内においても、2016年3月に東京フィルハーモニー交響楽団とジェフの共演による公演が開催され、チケットはソールドアウトと大成功を収めた。

そんな彼が新たに完成させた作品が『Planets』だ。これまでも深い思い入れを持ち、宇宙をテーマとした作品を追求し続けてきたジェフ。オーケストラとのコラボレーションによって宇宙はどんなふうに描かれ、そこにはどんな音の景色が広がっているのか。

今回ジェフと、昨年9月に彼が出演して話題となったテレビ朝日系音楽番組『題名のない音楽会』のMCを務めるバイオリニストの五嶋龍、そして、2017年2月に予定されているコンサートを含め、2度の日本公演のプロデューサーを務める湯山玲子による鼎談を実施。三人の話からは、音楽業界に起こり始めている変革と、音楽そのものの「進化」が見えてきた。

身近に時代とのつながりを感じたいという欲求から、クラシックのジャンルで作曲している人たちや演奏家たちはポップミュージックとの融合を求めている。(五嶋)

湯山:昨年『題名のない音楽会』にジェフさんが出演した際は、大きな話題となりましたが、五嶋さんがジェフさんの音楽を初めて聴いたときはどんな印象を抱かれたのでしょうか?

五嶋:それまで僕は、ジェフさんがやっていらっしゃるエレクトロニックミュージックと、あまり接点がありませんでした。だからこそ、純粋に向き合い、ありのままを吸収することができたのですが、とても「説得力がある音楽」だということに驚きました。

すべての優れたアートやエンターテイメントには「説得力」が備わっていると考えているのですが、彼の音楽に僕は一瞬にして心を打たれました。音楽の最初の音符がそうさせたのか、それともジェフさんが演奏をする姿に感じたのかはわかりませんが、心を掴まれたのです。

左から:五嶋龍、ジェフ・ミルズ、湯山玲子
左から:五嶋龍、ジェフ・ミルズ、湯山玲子

湯山:ジェフさんの音楽には、クラシック音楽の世界で生きてきた五嶋さんの心を一瞬で掴んでしまうだけの「説得力」があったんですね。

五嶋:ジェフさんが『題名のない音楽会』に出演されたときに演奏をした2曲(“The Bells”“Amazon”)を、何度も繰り返し聴きましたし、映像も見ました。ジェフさんは再生ボタンを押しているだけではなく、実際にオーガニックに演奏されていますよね。そこが1つのポイントだと思うんです。おそらくDJという音楽表現には、まだ非常に視野の狭い偏見が存在していると思いますが、そういった意見は表層的なものでしかなく、深く追求していく余地のある音楽なのだと思いました。

湯山:さて、2000年代後半ぐらいから、ヨーロッパでは、クラシック界からDJに楽曲制作の依頼が始まってきていました。これは、ジェフさんが取り組んできたようなテクノが培ってきた音楽の沃野に、クラシック業界が新たな可能性を見いだしたことでもあると思うのですが。

湯山玲子

五嶋:1つは、クラシック界全体が、時代の流れについていかなければならないことに気づいたということ。つまり「音楽の融合」が、クラシック音楽を未来へ進めるために必要な進化だと感じているのでしょう。

そして、もう1つは、常に作曲家や演奏家たちがこれまでと違うものを求めているということです。クラシックの世界に生きていると思い込んでいる人間が実際に日常生活で聴いている(流れている)音楽は、バッハやブラームスではないんですよ。ですからクラシックを演奏している特に若い人たちには、もっと時代とのつながりを感じたいという欲求があると思います。だからこそポップミュージックとの融合を求めている。

クラシック音楽とエレクトロニックミュージックという性質の違う2つのジャンルを融合することで、超越的な音楽が生まれると思っている。(ジェフ)

湯山:2015年の『BBC Proms』(ロンドンで毎年夏に開催される、8週間におよぶクラシック音楽コンサートシリーズ)では、数々のクラブアンセムがオーケストラによって演奏されました。確かにあのコンサートは、クラシック音楽と電子音楽のマイルストーンとなりましたよね。

Fatboy SlimやDaft Punk、デリック・メイらの楽曲がオーケストラアレンジで演奏されている

五嶋:そうですね。あと、サンフランシスコ交響楽団のマイケル・ティルソン・トーマス(指揮者、芸術監督)が、オーケストラがクラブで演奏する『サウンドボックス』というプロジェクトを行っていて。そこではクラシックだけでなく、まったく新しい曲を演奏したりしているんですね。シンセサイザーやDJとのコラボレーションも行っていて、クラシック界ではアヴァンギャルドな試みとして受け止められていますが、とても人気があるみたいです。

湯山:ロンドンの『イエロー・ラウンジ』のように若いクラシックの演奏家たちが、本格的なクラブのなかで、クラバーに向けて演奏するというようなイベントもありますよね。当事者でもあるジェフさんは、電子音楽とクラシック音楽についてどのように考えていらっしゃるのですか?

ジェフ:クラシック音楽は、映画や広告などでもよく使われていますし、長年に渡って音楽の王道を走ってきました。その一方でエレクトロニックミュージックは魅惑的な音楽であり、一瞬にして人々の興味を惹きつけられるという基本設計を持っています。そういった違う性質を持つ2つのジャンルを融合させることで、超越的な音楽が生まれると思っているんです。

左から:ジェフ・ミルズ、湯山玲子

ジェフ:クラシック音楽が持つ生のエネルギーと緻密さと合わさること、さらにスケール感が加わることで、すごいジャンルが生まれるのです。エレクトロニックミュージックのアーティストたちもクリックやシンクに縛られすぎることなく、クラシック音楽の人たちが行っていることに近づいている部分もあります。お互いが歩み寄ることによって融合が進み、特別な音楽が生まれていく可能性があると考えています。これからきっと起きていくでしょう。

湯山:クラシック界の方たちは、より時代へ接続するために電子音楽との融合という道に興味を持っているとのことでしたが、ジェフさんは新しい音楽を求めた先にクラシック音楽との融合に行き着いたと。

五嶋:まさにジェフさんは新しい音楽を創造していますよね。こういう音楽を聴くと、大きな希望を感じるんです。この2つの音楽の融合は、多くの人々が関わっていくことでより自然なものになっていくでしょうね。実際、新しい試みであるにもかかわらず、僕はジェフさんの音楽を、違和感なく自然に感じられましたから。

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イベント情報

爆クラ!presents
『ジェフ・ミルズ×東京フィルハーモ二ー交響楽団×バッティストーニ クラシック体感系II -宇宙と時間編-』

2017年2月22日(水)
会場:大阪府 フェスティバルホール
DJ:ジェフ・ミルズ
指揮:アンドレア・バッティストーニ
オーケストラ:東京フィルハーモニー交響楽団
ナビゲーター:湯山玲子

2017年2月25日(土)
会場:東京都 渋谷 Bunkamura オーチャードホール
DJ:ジェフ・ミルズ
指揮:アンドレア・バッティストーニ
オーケストラ:東京フィルハーモニー交響楽団
ナビゲーター:湯山玲子

リリース情報

ジェフ・ミルズ&ポルト・カサダムジカ交響楽団『Planets』初回生産限定盤
ジェフ・ミルズ&ポルト・カサダムジカ交響楽団
『Planets』初回生産限定盤(Blu-ray+CD)

2017年2月22日(水)発売
価格:4,104円(税込)
UMA-9090/9091

[Blu-ray]
1. Introduction
2. Mercury
3. Loop Transit 1
4. Venus
5. Loop Transit 2
6. Earth
7. Loop Transit 3
8. Mars
9. Loop Transit 4
10. Jupiter
11. Loop Transit 5
12. Saturn
13. Loop Transit 6
14. Uranus
15. Loop Transit 7
16. Neptune
17. Loop Transit 8
18. Pluto
※ファイナルオーケストラバージョン(5.1ch / ステレオ)
※ジェフ・ミルズほかによるインタビュー映像を収録
[CD](オリジナルエレクトロニックバーション)
1. Mercury
2. Venus
3. Earth
4. Mars
5. Jupiter
6. Saturn
7. Uranus
8. Neptune
9. Pluto

ジェフ・ミルズ&ポルト・カサダムジカ交響楽団『Planets』通常盤
ジェフ・ミルズ&ポルト・カサダムジカ交響楽団
『Planets』通常盤(2CD)

2017年2月22日(水)発売
価格:3,024円(税込)
UMA-1090/1091

[CD1](ファイナルオーケストラバージョン)
1. Introduction
2. Mercury
3. Loop Transit 1
4. Venus
5. Loop Transit 2
6. Earth
7. Loop Transit 3
8. Mars
9. Loop Transit 4
10. Jupiter
11. Loop Transit 5
12. Saturn
13. Loop Transit 6
14. Uranus
15. Loop Transit 7
16. Neptune
17. Loop Transit 8
18. Pluto
[CD2](オリジナルエレクトロニックバーション)
1. Mercury
2. Venus
3. Earth
4. Mars
5. Jupiter
6. Saturn
7. Uranus
8. Neptune
9. Pluto

プロフィール

ジェフ・ミルズ

1963年デトロイト市生まれ。エレクトロニック・ミュージック、テクノ・シーンのパイオニアとして知られるDJ/プロデューサー。Axis Records主宰。2007年、フランス政府より日本の文化勲章にあたるChevalier des Arts et des Lettresを授与される。近年では各国オーケストラと共演、日本科学未来館館長/宇宙飛行士 毛利衛氏とコラボレイトした音楽作品『Where Light Ends』を発表、また日本科学未来館の館内音楽も手がける。ジャクリーヌ・コー監督、ジェフ・ミルズ主演のアート・ドキュメンタリー・フィルム『MAN FROM TOMORROW』は、パリ、ルーブル美術館でのプレミアを皮切りにニューヨーク、ロンドンの美術館などで上映される。2015年、東京にてアート作品展示会『WEAPONS』を開催するなど、その活動は音楽だけにとどまらない。2017年2月22日には『PLANETS』をリリース。

五嶋龍(ごとう りゅう)

ニューヨーク生まれ。7歳でパシフィック・ミュージック・フェスティバルにおいて、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番を演奏しデビューを飾った。その後、ソリストとして日本国内のオーケストラはもとより、ワシントン・ナショナル交響楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団など世界各地のオーケストラと共演。演奏活動のみならず、ニューヨークでは同市教育委員会の協力のもと『五嶋龍 “Excellence In Music”(音楽優秀賞)』を通じて公立高校生に奨学金を授与する活動に加え、中南米・アフリカ・アジアでの教育活動・国際文化交流・社会貢献にも積極的に取り組む。10年間にわたりフジテレビのドキュメント番組「五嶋龍オデッセイ」で成長過程が紹介された他、数々のメディアで特集が組まれるなど注目を集める。2015年10月より「題名のない音楽会」(テレビ朝日系列)の司会を務める。ハーバード大学(物理学専攻)を卒業。公益社団法人日本空手協会 参段。ニューヨーク在住。3月にベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団(指揮:エリアフ・インバル)と共演するコンサートを、東京・横浜・大阪・群馬で開催する。

湯山玲子(ゆやま れいこ)

著述家。文化全般を独特の筆致で横断するテキストにファンが多い。20代のアネキャンから、ギンザ、50代のハーズまで、全世代の女性誌にコラムを連載、寄稿している。著作に『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『クラブカルチャー!』(毎日新聞出版局)、『女装する女』(新潮新書)、『四十路越え!』(ワニブックス)、『ビッチの触り方』(ワニブックス)、上野千鶴子との対談『快楽上等! 3.11以降を生きる』(幻冬舎)、『ベルばら手帖』(マガジンハウス)等。月1回のペースで、爆音でクラシックを聴く、『爆クラ』イベントを開催中。(有)ホウ71取締役。日本大学藝術学部文藝学科非常勤講師。

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