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現代写真を代表するトーマス・ルフを知ってる? 来日インタビュー

現代写真を代表するトーマス・ルフを知ってる? 来日インタビュー

金沢21世紀美術館『トーマス・ルフ展』
インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影・編集:宮原朋之
2017/01/13
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私たちの世界のとらえ方に、「写真」はどのように関係しているのだろう。インターネットやスマホの登場以降、ますます身のまわりに溢れかえる写真に、我々はどのように接するべきだろうか――。そんなことをあらためて考えさせる、現代写真シーンを代表するドイツ人写真家、トーマス・ルフの日本初の大回顧展が、東京国立近代美術館に引き続き、金沢21世紀美術館で開催されている。これまでの代表シリーズを東京会場より多い点数で網羅した、トーマス・ルフを知るための決定版ともいうべき内容だ。

先に「現代写真シーンを代表する」と書いたが、ルフの活動は従来の写真家のイメージを大きく逸脱している。自らの手で撮影することにこだわらず、天体写真から報道写真、ポルノ写真まで、インターネットやNASAから入手した既存の画像を加工して自らの作品とするなど、その表現はつねに異彩を放ってきた。そんな彼が約30年にわたる活動の中で、探求してきたこととは一体何なのか。今回の展覧会開催にあわせて来日した本人に話を聞いた。

多くの人々は日頃、写真に囲まれて生活をしているにも関わらず、その状況を自覚していない。

―展示を拝見して、あなたの写真表現の多様さをあらためて感じました。大学時代の仲間を撮影した初期の作品から、インターネットにおける画像の流通の問題を扱った作品、レンズを使わずにコンピュータ上で制作された作品まで、非常に幅広いです。これらの活動を通じてあなたが持ち続けてきた問題意識とは何なのでしょう?

ルフ:私が一貫して興味を持っているのは、我々のまわりに溢れる「写真」と呼ばれるものが、一体どのようなものなのか、どのように流通され発信されているのか、ということを考えることです。なぜそんなことに取り組むかといえば、多くの人々は日頃、写真に囲まれて生活をしているにも関わらず、その状況を自覚していないからです。

でも実は、人の世界のとらえ方の中には、写真が深く関わっています。だから、人々の足を少し止めさせて、彼らに「自分が何を見ているか」を考えさせる作品を作ってきたんです。

トーマス・ルフ
トーマス・ルフ

―つまり「写真を見ていること」そのものに、人の意識を向かわせようとしているんですね。

ルフ:そのとおり。そうやって人を啓発していきたいという思いが、制作の大きな動機になっています。私たちは、写真に写ったものを、つい現実そのものだと思い込んでしまいがちです。しかし多くの場合、写真は現実を素直に切り取ったものではなくて、カメラの背後にいる撮影者の意図や作為を反映したものです。そのことに気づいてほしいんです。実際に私が活動を始めた1980年代に比べて、現代はインターネットやスマホの普及によって、写真がとても深く社会の中に入り込んでいます。

トーマス・ルフ

―写真がどのようなものかを考える必要性は、近年ますます高まっている。

ルフ:そうですね。今は昔と比較して、写真がありとあらゆる場所に存在しています。写真がより巧妙に私たちの意識に働きかけてきているんです。そんな状況の中で、写真というメディアに向き合う態度を問いかけることは、ますます重要になってきていると思います。

でも、私が制作をする動機はそれだけではありません。私のこれまでの人生も作品に色濃く反映されています。日々の生活の中で湧き起こった関心を作品に生かしてきました。

金沢21世紀美術館『トーマス・ルフ展』展示風景

金沢21世紀美術館『トーマス・ルフ展』展示風景
金沢21世紀美術館『トーマス・ルフ展』展示風景

―ルフさんが写真に興味を持ったきっかけは何だったのでしょう?

ルフ: 16歳のころに友達が35ミリのカメラを持っていて、撮影に一緒についていった際、自分もほしいと思ったのがきっかけでした(笑)。当時はごく普通に、アマチュアの写真雑誌を読んだり、巨匠の傑作に触れたりする程度でした。

あと、『ナショナルジオグラフィック』(地理学、人類学、自然・環境学などを取扱う、世界各地で発行されている学術誌)に掲載された写真が好きでしたね。まだ行ったことがない遠い外国の写真を見ては惚れ惚れとしていました。

トーマス・ルフ

―そんなルフさんはデュッセルドルフの大学で、ドイツの有名な写真家、ベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻に学びました。ベッヒャー夫妻は工業建築物を匿名的に撮影して羅列する「タイポロジー」という手法で知られて、その弟子は「ベッヒャー派」として現代写真の一大潮流になっています。彼らとの出会いは、どんなものだったのでしょうか?

ルフ:ベッヒャーとの出会いは、一言で言えば衝撃でした。大学の試験で、私はこれまで撮った中で選りすぐりの16枚のスライドを提出したのですが、入学後、はじめてベッヒャーに会ったとき、「トーマス、これはとても美しい写真だけど、君がいままで見た写真の模倣だ。だから、自分独自のものを見つけないといけない」と言われたんです。実際、その後ベッヒャー夫妻が撮った写真を見て、自分の写真は低俗なものに過ぎないと感じて、それから半年はまったく写真が撮れなかった。それほど衝撃的だったんです。

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イベント情報

『トーマス・ルフ展』

2016年12月10日(土)~2017年3月12日(日)
会場:石川県 金沢21世紀美術館
時間:10:00~18:00(金、土曜は20:00まで)
休場日:月曜日(祝日の場合は翌平日)

プロフィール

トーマス・ルフ

1958年、ドイツ、ツェル・アム・ハルマースバッハ生まれ。1977年から85年までデュッセルドルフ芸術アカデミーでベルント&ベラ・ベッヒャー夫妻のもとで写真を学び、ドイツ人家庭の典型的な室内風景を撮り続けた『Interieurs(室内)』シリーズを皮切りに、友人たちの肖像を巨大なサイズに引き伸ばした『Porträts(ポートレート)』で大きな注目を集めました。以来、建築、都市風景、ヌード、天体などさまざまなテーマで作品を制作し、明確なコンセプトに基づいたシリーズとして展開しています。今日に至るまで世界各国での展覧会が開催され、現代ドイツを代表する写真家として活躍しています。

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