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吉澤嘉代子×文月悠光が新宿の若手文壇バーで語る「言葉」の力

吉澤嘉代子×文月悠光が新宿の若手文壇バーで語る「言葉」の力

ISETAN PARK net
インタビュー・テキスト
冨手公嘉
撮影:西田香織 編集:野村由芽、飯嶋藍子

圧倒して思考停止に陥らせる表現より、同じところまで来てほしいと思う表現の方が多いかもしれない。(文月)

―文月さんも「フィクションとノンフィクションの間の部分を探している」というお話をされていた記事を読んだことがあります。

文月:そうですね。詩を書くときは必ずしも自分が語り手ではないんです。なぜかというと、嘘を混ぜたくないから。語り手として自分の感情を「言葉」の表現にした時点で、その感情はありのままではなくなってしまうから、転化させる必要がある。もちろん自分が感じたことは、そこに当然含まれます。

例えば恋愛をしたら、相手に対して色んな感情を抱くじゃないですか。愛おしさも憎悪も嫉妬もあるけれど、一つの文章でその感情すべてを丸々見せずに、切り身のようにして「この切り口素敵でしょ」と提示することが必要な気がします。

左から:吉澤嘉代子、文月悠光

―なるほど。一つひとつの感情の見せ方を提示するんですね。一方でエッセイは赤裸々にご自身の体験からくるものを語られている印象を受けました。

文月:エッセイの場合も実は語っていることよりも、語られていないことの方が多いんです。「語る言葉」より「語らない言葉」、何をそぎ落とすかを考える方が重要なのかもしれないですね。

吉澤:アクも一緒に料理するか、アクを綺麗に取るか、ということですよね。私の場合だと、描くと生々しくなりすぎて、自分が壊れてしまうラインについて考えます。

―そういう意味ではどこまで書くか / 書かないかは言葉を扱う職業の人の永遠のテーマかもしれないですね。

吉澤:そうですね。その言葉の取捨選択が文月さんは上品だなと感じます。音楽でも、ギザギザした言葉の断片を見せつけて殴る、みたいなやり方は、強いしフックになりやすいですが、個人的には品がないなと思います。

左から:吉澤嘉代子、文月悠光

文月:わかります。私も、圧倒して思考停止に陥らせる表現より、同じところまで来てほしいと思う表現の方が多いかもしれないです。一緒にここから覗いてみようよ、という感じで。エッセイに関しては、ここまで告白したら読者に引かれてしまうのではという距離感について考えました。

それは情報レベルの話ではなくて、表現としてあえて和らげることもしています。詩の場合は、コミュニケーション用の言語に疲れている人が読むものだと思うので、せめて詩を読むときくらいは、その呪縛から解き放ってあげたい。だからそういう意味で強い言葉を選びますね。

―これだけ表現がある中で、文月さんが詩やエッセイを表現手段に選んだ理由はどこにあるのでしょうか?

文月:小学生の頃、金子みすずさんの詩を読んだのですが、短いセンテンスに感情表現が落とし込まれているのを見て「これなら自分にもできるかも」と感じられたのが、大きいですね。あと、そのとき自分が感じたことや記憶がなくなるのが怖いのだと思います。

だからノートを常に持ち歩いて書くようにしている。書いては忘れを繰り返していますが、ページをめくると字の書き方一つで、そのときの精神状態から感情まで思い出せます。誰かに依頼を受けて詩を書くようになりましたが、まずは自分のために言葉を書いていたんです。

―詩だけでなくエッセイなど文筆業を続けるのはどうしてですか?

文月:詩やエッセイを通じて、言葉の色んな可能性を知りたくて、実験して楽しんでいる感覚に近いです。詩もエンターテイメントの選択肢の一つとして、映画や音楽と同じくらいの身近さで存在したらいいなと思います。世の中全員に詩を愛してほしい、読んでほしい、ということではなく、日常に馴染んでくれたらいいし、エッセイがそのきっかけになればと。

文月悠光

―言葉の色んな可能性ということと通じますが、吉澤さんが歌に言葉を乗せて歌うのはなぜですか?

吉澤:私も文月さんと同じで、ずっと自分のために口ずさんでいたんです。私にとって歌や言葉は魔法であり、お守りなんですよね。嬉しさや悲しさはいつか風化するけど、日常の中で瞬間的に発せられる言葉に魔法は潜んでいて。仮に魔法の効果が切れても、言葉は記号としても永遠に存在するし、人はいつもそれを交わしながら生きている。

―魔法ですか。

吉澤:はい。歌人の笹井宏之さんの短歌に「砂のない 砂漠と水の ない海と 私をめぐる 淡いかなしみ」という作品があって。彼は病床で歌を書いた人なのですが、自分の肉体を離れた視点の作品が多いんです。夜寝る前にこの歌を思い出すのですが、自分の肉体を失っても言葉によって何にでもなれる気がするんですよ。

肉体という制限があっても、魂だけを言葉に託すとどこへでも行けるし、誰にでも会える気がして、安心して眠れます。私にとって言葉の最大の魅力は、言葉に託すことで何かになれるかもしれないという感覚なんです。だから風化してしまった自分の感情でも、言葉や音楽にすることで、巡り巡って誰かの夜を支えることになるといいなと思っています。

左から:吉澤嘉代子、文月悠光

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サイト情報

『ISETAN PARK net』

日本最大級のファッション発信基地である伊勢丹新宿店の「今」と「これから」がわかるウェブメディア。ファッション、アート、音楽、カルチャーなどを切り口に、週ごとに新宿店で繰り広げられるイベント情報を紹介しています。

リリース情報

吉澤嘉代子『屋根裏獣』ジャケット
吉澤嘉代子
『屋根裏獣』初回限定盤(CD+DVD)

2017年3月15日(水)発売
価格:3,500円(税込)
CRCP-40497

[CD]
1. ユートピア
2. 人魚
3. カフェテリア
4. ねえ中学生
5. 屋根裏
6. えらばれし子供たちの密話
7. 地獄タクシー
8. 麻婆
9. ぶらんこ乗り
10. 一角獣
[DVD]
1. 地獄タクシー MUSIC VIDEO
2. アボカド feat.伊澤一葉(live at 東京キネマ倶楽部 2016.10.16)
3. 東京絶景 feat.曽我部恵一(live at 東京キネマ倶楽部 2016.10.16)

吉澤嘉代子
『屋根裏獣』通常盤(CD)

2017年3月15日(水)発売
価格:3,000円(税込)
CRCP-40498

1. ユートピア
2. 人魚
3. カフェテリア
4. ねえ中学生
5. 屋根裏
6. えらばれし子供たちの密話
7. 地獄タクシー
8. 麻婆
9. ぶらんこ乗り
10. 一角獣

イベント情報情報

『吉澤嘉代子 獣ツアー 2017』

2017年4月29日(土・祝)
会場:岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
料金:4,000円(ドリンク別)

2017年5月4日(木・祝)
会場:宮城県 仙台 darwin
料金:4,000円(ドリンク別)

2017年5月7日(日)
会場:東京都 有楽町 国際フォーラム ホールC
料金:4,500円

2017年5月13日(土)
会場:福岡県 BEAT STATION
料金:4,000円(ドリンク別)

2017年5月14日(日)
会場:大阪府 なんばHatch
料金:4,000円(ドリンク別)

2017年5月19日(金)
会場:愛知県 名古屋市芸術創造センター
料金:4,500円

書籍情報

『洗礼ダイアリー』
『洗礼ダイアリー』

2016年9月5日(月)発売
著者:文月悠光
価格:1,512円(税込)
発行:ポプラ社

『わたしたちの猫』
『わたしたちの猫』

2016年10月31日(月)発売
著者:文月悠光
価格:1,512円(税込)
発行:ナナロク社

プロフィール

吉澤嘉代子(よしざわ かよこ)

1990年、埼玉県川口市生まれ。鋳物工場街育ち。父の影響で井上陽水を聴いて育ち、16歳から作詞作曲を始める。ヤマハ主催『“The 4th Music Revolution” JAPAN FINAL』にてグランプリとオーディエンス賞をダブル受賞。2016年、『ROCK IN JAPAN FES 2016』、『SWEET LOVE SHOWER』など大型フェスヘ出演。2017年、3rdアルバム『屋根裏獣』をリリース。5月7日、東京国際フォーラム ホールCを含む「獣ツアー 2017」開催決定。4月放送バカリズム主演ドラマ「架空OL日記」主題歌起用も決定している。また、私立恵比寿中学、南波志帆らへの楽曲提供も行う。

文月悠光(ふづき ゆみ)

1991年北海道生まれ、東京在住。中学時代から雑誌に詩を投稿し始め、16歳で現代詩手帖賞を受賞。高校3年時に出した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少受賞。早稲田大学在学中に、第2詩集『屋根よりも深々と』を刊行。2016年秋、初のエッセイ集『洗礼ダイアリー』、第3詩集『わたしたちの猫』を刊行する。NHK全国学校音楽コンクール課題曲の作詞、詩の朗読、書評の執筆など広く活動中。

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