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湯川潮音×world's end girlfriend ありのままの「歌」を求めて

湯川潮音×world's end girlfriend ありのままの「歌」を求めて

sione『ode』
インタビュー・テキスト
金子厚武
編集:山元翔一

湯川潮音が「sione」名義でアルバム『ode』を発表した。幼少期に東京少年少女合唱隊に所属し、宗教音楽などを言葉の意味もあまりわからないままに感じ取って歌っていたこと。近年生活の拠点をニューヨークに移し、人種のるつぼのなかで日本語を改めて見つめ直したこと。そういったいくつかのきっかけを経て作られた『ode』は、歌詞のないアルバムとなっている。大空を羽ばたく鳥のように自由な旋律を響かせる楽曲は、原始的な歌の力を強く感じさせる。

本作のプロデュース / アレンジを担当したのは、かねてより自らの作品のボーカルに湯川潮音を起用し続けてきたworld's end girlfriend。湯川は昨年発表の『LAST WALTZ』にも参加していたが、あの作品に込められた「直接的なメッセージではない形で、人間の奥底に触れたい」という想いは、『ode』とも間違いなくリンクしているはずだ。現代における歌のあり方を巡って、sioneとworld's end girlfriendに語り合ってもらった。

sioneさんの歌声は、少女と老婆が同居している。(WEG)

―今回、sione名義で歌詞のないアルバムを制作するに至ったのは、そもそもどういったきっかけがあったのでしょうか?

sione:私のインディーズデビュー作(『tide & echo』、2000年リリース)はカバーアルバムだったので、活動を始めたときは曲も歌詞も書いてなくて。もっとさかのぼると、小さい頃は東京少年少女合唱隊にいて、宗教音楽や現代音楽を、言葉の意味をほとんど理解しないままに歌っていたんですね。

旋律とか楽曲の雰囲気から、「こういう歌かな?」って、感じ取って歌っていて。でも、そこにはなにかわからないけれど壮大なもの、心の曲線に響くものがあったんです。そういう得体の知れない力のあるもの、自分の原点に立ち返ったものをいつか作りたいと思っていたんですけど、今がそのタイミングかなって思ったのがきっかけでした。

sione
sione

―東京少年少女合唱隊は、練習が相当厳しいそうですね。

sione:合唱隊時代の経験が、自分の大半を形成している気がします。私はどちらかというとできない子で。他のみんなは四声部の曲でも、他のパートの誰が間違えたかわかっちゃうくらい耳もよくて知識もあったんですけど、私は譜面も読めなかったんです。

それで、隣の子が歌っているのを聴いて0.0何秒後に同じように歌う技術を身につけて(笑)。だから、「一人ずつ歌って」って言われると、全然できなくて、譜面にないことを勝手に作って歌ったりして。

―0.0何秒後に歌うとか、逆にすごいですけどね(笑)。world's end girlfriend(以下、WEG)は、以前からsioneさんをボーカリストとして自身の作品で起用していましたが、改めて、その歌声の魅力をどのように感じていますか?

WEG:sioneさんの歌声は、少女と老婆が同居しているようなところが好きで。ジブリ作品の曲をカバーする企画盤(『キラキラジブリ』、2008年リリース)で、“君をのせて”を歌ってもらってからの付き合いなんだけど、sioneさんの歌の「女性性」の出方がちょうどよくて。女性的な自意識が前面に出ている人の歌で、面白いものもあるんですけど、それは音楽として邪魔になるときもあって。そのバランスも自分に合うなって思います。

world's end girlfriend
world's end girlfriend

「歌う」というよりも、「存在してる」という感じになってきていて。(sione)

―自分のエゴを歌に乗せないっていうのは、合唱隊出身ということと関係がありそうですね。

sione:そうかもしれないですね。子どもの頃は、どうみんなと声を馴染ませるかということを常に意識して歌っていましたから。スタジオで「さあ、歌おう」って気持ちで歌うと、「歌を歌っている」っていう感じのテイクになることが多いんですよ。それが必要なときももちろんあるんですが、今回は違うなと思いました。

―意識することで作為性が滲むというか。

sione:そう。でも今回は、極力、素の声を録りたくて。「歌ってます!」っていう感じを出さない録音の方法を採りました。

WEG:スタジオを予約して日時を決めてレコーディングをすると、体調とかそのときの状況に大きく左右される部分があって。それにsioneさんがデモや日常で気楽に歌ってるときの歌が好きで。これまで自分の曲を歌ってもらったときも、庭で一人で弾き語っているようなテイクがすごくよかったんです。なので今回は、そういう気楽な、いい感じに力が抜けた歌を録るために、sioneさんに自宅で一人で録れるように環境を整えてもらって。

―「気楽に歌ってるときのほうがいい」というのは、自我を取り去って、歌そのものになるという感覚なんですかね。

sione:文字のないところにある言葉を探してもらうには、絵のなかに溶け込む必要があるというか。自分と音楽の境界を曖昧にするという感覚といいますか。それは歌い始めた頃から思っていました。それに自分の在り方としても、今そういうところにあって。

―どういうことでしょうか?

sione:今はニューヨークと日本を行き来して暮らしていて、あっちでもライブをするんですけど、そういう環境のなかで、「歌う」というよりも、「存在してる」という感じになってきていて。

―仕事というよりも、生活の一部になってきたと。

sione:向こうでは私のことなんかお客さんも誰も知らないし、ふとした瞬間に自分がいるのかわからなくなるくらい、街に飲み込まれている。そういうパワーのある国ですからね。でもそれが、心地よく感じることもあって。自分のなかのいろいろな壁が取っ払われる感覚はあります。ニューヨークで日本語の歌を歌うと、聴いてくれるお客さんの反応も面白いんですよ。「日本語って母音が多いんだね」とか、「こういうフィーリングを感じたんだけど、実際はどんなことを歌っていたの?」とか。客観的に日本語を見つめる機会が増えたことで、「言葉がなくても伝わるものがあるんじゃないか?」と思ったのも大きいですね。

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リリース情報

sione『ode』
sione
『ode』(CD)

2017年4月15日(土)発売
価格:2,646円(税込)
VBR-040

1. Birds
2. Wealth of Flowers
3. Nocturne
4. ivy
5. The Seeker
6. Plein Soleil
7. Golden Age
8. The Hole in Your Heart
9. Harvest
10. I saw you one time
11. Kemono
12. Coda

『「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」サウンドトラック』
『「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」サウンドトラック』(CD)

2017年5月15日(月)発売
価格:2,700円(税込)
VBR-041

1. Winter Fire Place / world's end girlfriend
2. What a Day / sione
3. Happiness / mio-sotido
4. Sweet Cycle / world's end girlfriend
5. Nocturnal Dialogue / world's end girlfriend
6. Blooming Blooming! / sione
7. Weeding the Garden / mio-sotido
8. The Bottom of a Lake / world's end girlfriend
9. Share the Joys / 良原リエ
10. Graceful Cycle / world's end girlfriend
11. Link / ハチスノイト
12. Winter Calms / world's end girlfriend
13. Nocturnal Whispers / world's end girlfriend
14. Delightful Days / 良原リエ
15. The Clock Loses Time / sione
16. Pumpkin Moonshines / 良原リエ
17. Little Happiness / mio-sotido
18. Family / mio-sotido
19. Wealth of Flowers (Garden ver.) / sione
20. What a Day (instrumental) / sione

プロフィール

湯川潮音
湯川潮音(ゆかわ しおね)

1983年、東京出身。小学校時代より東京少年少女合唱隊に在籍、多くの海外公演などを経験。2001年、ポップフィールドではじめて披露された歌声が多くの話題を呼ぶ。翌年のアイルランド短期留学から帰国後、自作の曲も発表し本格的な音楽活動をスタート。以降、美しいことばの響きを大切にした歌詞、クラシックやトラディショナルを起点に置いた独自の世界観で音楽を紡ぎ続けている。

world's end girlfriend
world's end girlfriend(わーるず えんど がーるふれんど)

1975年11月1日かつて多くの隠れキリシタン達が潜伏した長崎県の「五島列島」に生まれ10歳の時に聴いたベートーヴェンに衝撃を受け音楽/作曲をはじめる。2000年デビュー。アジア、EU、USツアーなどを行い『ATP』『Sonar』など各国フェスにも出演。映画「空気人形」の音楽を担当し2009年カンヌ映画祭や世界中で公開された。2010年『Virgin Babylon Records』を設立し「SEVEN IDIOTS」をワールドワイドリリース。圧倒的世界観を提示しつづけている。

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