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津田大介×国境なき医師団 日本の悪循環を断ち切るメディア戦略

津田大介×国境なき医師団 日本の悪循環を断ち切るメディア戦略

国境なき医師団「病院を撃つな!」キャンペーン
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:豊島望 編集:宮原朋之、野村由芽

みんなが本当に求めている情報とは何か? 津田の考えを訊く

―津田さんは、2013年に政治情報サイト「ポリタス」を立ち上げられましたが、運営しながら、感じることはありますか?

津田:選挙の時期って、日本の報道はすごく安全運転になりますよね。法の縛りもあって、特定の候補者に肩入れして応援することはできないから、ただの議席予測しかしなくなる。それで結局、政治への関心が失われるという悪いスパイラルになっていると思います。たとえばアメリカの今回の大統領選では、ほとんどのメディアが支持候補を表明します。クリントン支持の社説を載せたりとか。

津田大介

―それに比べると、日本はかなり保守的ですよね。

津田:それこそが、無関心を生んでいる原因なんじゃないかと思います。そういうわけで、俺はこういう理由でこいつに入れる、お前も入れろっていうような原稿を、右も左もいろいろ集めたものが、ネットで全部見れるようになったら、新しいネットならではの公平性になるんじゃないかと思ったんです。

―それで「ポリタス」を立ち上げたと。

津田:2014年の都知事選で最初にやってみて、こういう情報を待っていたという感想がすごく多かった。「ポリタス」でいろいろな意見を読んで、この選挙で自分にとって大事なことがわかったと。そして、多くの人が本当に求めている情報っていうのは、自分が信頼している人が、どういう基準で行動をしているかということなんだと思いました。

津田大介

―先ほどキャンペーンを広める方法でも出てきた通り、やはり「インフルエンサー」が重要だということですね。

津田:信頼性が高い人にビシッと意見を言ってもらって、興味関心をつないでいく回路を作ることは、すごく大事。そうすることで、単に影響されるだけではなくて、自分の中に判断基準が作れるわけです。

他人のいろんな意見、しかもわりと強烈ではっきりした意見をある程度読むことで、「自分はこうなんだ」っていうことがわかる。これはネットのひとつの良さというか、効果的なところですよね。

加藤:なるほど。

ネットの特性を活かして、いろんなことを試し、トライ&エラーを繰り返す

―国境なき医師団の活動にも、そういうインフルエンサーの活躍が欠かせないのかもしれませんね。

津田:はい。活動に対して、顔出しでビシッと意見を言ってくれる人を、まず見つけることだと思います。いろんな人を見つけて、大キャンペーンを展開する。

その人がなぜ国境なき医師団に興味を持ったのかっていうバックグラウンドのストーリーを知ることは、すごく大事です。さらに、そういう人にSNSで拡散してもらうことで、シンジケートを作っていくのがよいですね。

加藤:日本では、さだまさしさんが様々な機会で応援してくださっています。世界ではMUSEというバンドが、我々の活動に共感し、サポートしてくれています。彼らのコンサート会場で、国境なき医師団の展示をさせてもらったりしているようです。

完売したMUSEの2016年ヨーロッパツアー会場で国境なき医師団のブースを設置 ©Tom Barnes
完売したMUSEの2016年ヨーロッパツアー会場で国境なき医師団のブースを設置 ©Tom Barnes

ブースでは国境なき医師団の活動地をインタラクティブに体験できる360°動画の展示やMUSEとのコラボグッズを販売 ©Tom Barnes
ブースでは国境なき医師団の活動地をインタラクティブに体験できる360°動画の展示やMUSEとのコラボグッズを販売 ©Tom Barnes

津田:そうなんですね。それだったら、日本のミュージシャンも興味を持つはずです。日本のミュージシャンは、あまり政治的な発言や活動をしないけど、国境なき医師団は、ニュートラルに徹している団体なので、そういう人たちも支援を公言しやすい。

加藤:日本でも、国境なき医師団に賛同しサポートしてくれるミュージシャンとのコラボレーションをいつか実現させられたらと思います。

―今のロックフェスは様々なトークショーが行われたり、そういう活動の場になっている側面もありますよね。

津田:いろんな専門家がいると、それぞれの立場から意見がでてきて、どんどん繋がっていくんです。昔はそういうことをするには、すごいお金がかかったりしましたけど、今はインターネットでお金をかけずにそういうことができるようになったと思います。

加藤:実は今回の「病院を撃つな!」キャンペーンの趣旨に賛同した有志―実際に紛争地で活動を行った医師や看護師などスタッフ30人以上が結集してバイラル動画を制作したんですが、やはり病院が爆撃されるという現実を、なかなかイメージとして伝えにくいところがあり、拡散というところまではいかなかったんです。

津田:こういうものを作ること自体はいいと思います。それによって反響がわかりますからね。ネットのいいところは、トライ&エラーできることなんです。新聞とかテレビでやろうとすると、お金もかかるし、全部がうまくいくわけではない。ネットの場合、すごく低予算でいろんなことが試せるんです。

―けっしてその先に希望がないわけじゃないと。

津田:そう。伝え方の技術やメディアは、どんどん多様化して新しいものが出てきます。ずっとやり続けることで、どこかで何かがヒットする可能性がありますよね。

加藤:今日はいろいろお伺いして、とても参考になりました。私たちの活動は、時に「砂漠に水をまくようなものだ」とのご指摘をいただくこともありますが、活動に参加しているものは皆、多かれ少なかれ無力感や限界を感じながらも、目の前の患者さんを救うことに全力を挙げています。

日本の人たちに伝えていくことは、決して簡単なことではないとは思います。私は講演会などで参加者に「あなたには世界を変える力があると思いますか?」とお聞きすることがあるのですが、多くの方が「そんな力はありません」と答えます。でも、この質問に一言付け加えて、「あなたにはほんの少しだとしても世界を変える力があると思いますか」と聞くと、ほんのわずかならできることがあるかもしれないとおっしゃる方が少なくありません。「自分にも世界を変えるためにできることがある」と想像する気持ちがあれば、行動を起こせるのではないでしょうか。

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国境なき医師団「病院を撃つな!」キャンペーン

プロフィール

津田大介(つだ だいすけ)

ジャーナリスト / メディア・アクティビスト。ポリタス編集長。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学文学学術院教授。大阪経済大学情報社会学部客員教授。テレ朝チャンネル2「津田大介 日本にプラス+」キャスター。J-WAVE「JAM THE WORLD」ナビゲーター。一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。ソーシャルメディアを利用した新しいジャーナリズムをさまざまな形で実践。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2013」選出。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)、『動員の革命』(中公新書ラクレ)、『情報の呼吸法』(朝日出版社)、『Twitter社会論』(洋泉社新書)、『未来型サバイバル音楽論』(中公新書ラクレ)ほか。2011年9月より週刊有料メールマガジン「メディアの現場」を配信中。

加藤寛幸(かとう ひろゆき)

1965年生まれ、東京都出身。小児科医。人道援助活動家。北海道大学中退。島根医科大学卒業(1992年)、タイ・マヒドン大学熱帯医学校において熱帯医学ディプロマ取得 (2001年)。東京女子医大小児科、Children's Hospital at Westmead(Sydney Children's Hospital Network)救急部、静岡県立こども病院・小児救急センターなどに勤務。MSF参加後は、スーダン、インドネシア、パキスタン、南スーダンなどへ赴任し、主に医療崩壊地域の小児医療を担当。東日本大震災、エボラ出血熱に対する緊急援助活動にも従事した。

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