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THE NOVEMBERS小林×ENDON那倉が誘う、深遠なるBorisの世界

THE NOVEMBERS小林×ENDON那倉が誘う、深遠なるBorisの世界

Boris『DEAR』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:永峰拓也 編集:山元翔一

「あなたの元にノイズとしてBorisが現れた。あなたは意味がわからない。さあどうする?」(那倉)

―Borisというと、「アンダーグラウンドの帝王」みたいなイメージがあって、初めて聴く若い人たちにはハードルが高いところもあると思うのですが、そういう人たちが楽しむためのコツはありますか?

小林:音楽でも絵画でも映像でも何でもそうですが、ある作品と出会ったときに、それが何かということを認識・理解するのって、自分のなかに蓄積された経験則や知識、教養を通してだったりするわけじゃないですか。でもBorisには、そういった経験則や予備知識が一切通用しないくらいの衝撃があると思うんですよ。「よくわからないけど、すごいものを聴いてしまった」というような。

Boris『DEAR』収録曲

―Borisの音楽に初めて触れて、「よくわからないけど、すごい」と感じるというのはわかる気がします。

小林:もしそう思えたなら、僕は「よくわからないままでいい」と思うんです。わからないことを恐れたり、焦ってわかろうとしたりしなくていい。その衝撃が何だったのか、理解するまでにある程度の時間が必要な場合もあるし。

那倉:「よくわからないけどすごい」と思わされたとしたら、それは人間の無意識に働きかけるBorisの戦略の勝ちを意味しますよね。彼らの思う壺(笑)。言葉で説明できてしまう程度の感動だったら、それは無意識への作用とは言えない。

「あなたの元にノイズとしてBorisが現れた。あなたは意味がわからない。さあどうする?」って言うのが、今日のテーマかもしれないですね(笑)。もし、Borisの音楽に少しでも何か感じるものがあったり、引っかかったりしたのなら、それが何かを確かめるためにはライブに行けばいいと思います。そこには匂いがあり、振動があり、音以外の情報がたくさんある。それらを浴びて、自分の身体がどう反応するかに委ねればいいと思います。

那倉太一(ENDON)

非常に映像を感じさせる歌詞の世界観は、アンドレイ・タルコフスキーがメチャメチャ好きなAtsuoさんの編集センス。(那倉)

―新作『DEAR』についてもお話をお聞かせください。聴いてみて、お二人はどんな感想を持ちましたか?

Boris『DEAR』ジャケットBoris『DEAR』ジャケット(Amazonで見る)

那倉:まず歌詞がすごくいいですよね。多様な「読み」ができるような編集が入っていて、その編集にAtsuoさんの非常に映像的な趣味が透けて見えます。歌詞の内容だと1曲目“D.O.W.N -Domination of Waiting Noise-”と、次の“DEADSONG -詩-”。ここまで話してきたようなことが歌詞のなかに入っているんですよ。

―たとえば?

那倉:“D.O.W.N -Domination of Waiting Noise-”の<祈りの波と ノイズがここで 言葉に 意味を知る>という部分。つまり、「祈りの波」と「ノイズ」がぶつかって、「言葉と意味」のほうへ移動することを指しているのかなと。で、そのあとに「悔いがあるかないか?」と話をしていますけど、それは、「ノイズが意味の方向へと向かうことに、悔いがあるかどうか?」ってこと。つまり、成長することへの疑問なんですよ。あの、僕より10歳も上の人がですよ、こんなテーマを歌うなんてロクデモナイなと(笑)。中二病よりひどい。

一同:(笑)

那倉:続く“DEADSONG -詩-”ですが、Borisの歌詞でここまで「怒り」を露わにした曲はなかった気がします。<実感もせずに 痛みの闇はあるという>というのは明らかに、勘が悪い人たちや筋の悪い人たちに対して向けている言葉ですよね。実感していない人たちに、「実感しろ」と。Borisは、具体的な言葉でメッセージを訴えかけるんじゃなくて、無意識に働きかけて人々を啓蒙しようとしている。

―確かに、そうとも読めますね。

那倉:Borisって、今まで掴みどころのない歌詞を書いてきたバンドという印象だったんですけど、今作の歌詞は僕の「Boris論」といちいち符合するから、読んでいてエモさすら感じる。あと日本のロックの歌詞として「震災以降」を強く感じました。“D.O.W.N -Domination of Waiting Noise-”の「祈り」もそういった「祈り」だと思います。トラウマティックな出来事だからこそ、「祈り」や「ノイズ」を「意味」の方向に移動させることに抵抗があるのかもしれません。聞くところによるとBorisって、Takeshiさん(Vo,Ba,Gt)がまずざっくりと歌詞の大枠を書いて、それをAtsuoさんが編集しているらしいんです。

非常に映像を感じさせる世界観は、アンドレイ・タルコフスキー(ロシアの映画監督)がメチャメチャ好きなAtsuoさんの編集センスで、この透けて見えるパーソナリティーというのは、実はAtsuoさんではなくTakeshiさんのものかもしれない。これは憶測ですが。

左から:那倉太一(ENDON)、小林祐介(THE NOVEMBERS)

那倉:あと、“Dystopia -Vanishing Point / 何処へ-”の歌詞もいいですね。<名もない道へ逸れて 花を摘んでいた>って、非常に可愛くて美しい。Borisの活動の理想を、最も可愛い言葉で表しているとも言えますよね(笑)。さっき話した、「ノイズミュージックからも楽曲からも逸脱して」という話とつながるんです。

日常生活では絶対に出会えない何かがBorisのライブにはあり、人生を変えてしまう現象がライブハウス規模で起きている。(小林)

―小林さんはどう思いましたか?

小林:僕は、ちょうどレコーディングしているときに音源をもらったので、いつも使っているレコーディングスタジオで聴いたんですが、誇張なしに「ライブそのもの」という感じがしました。しかも、普通のライブ盤のようにあとから修正や編集を加えたものではなくて、そのままパッケージングしたようなサウンドというか。一緒に聴いていたエンジニアさんも、「え、これライブ盤?」って驚いていましたね。「自分が理想とするライブ盤のサウンドだ」と。とにかく音の説得力が半端なくて、CDとは思えない。

―先ほど那倉さんからもあったように、Borisの真髄がライブにあるのだとしたら、「ライブ盤のようなサウンド」というのは意味深い気がします。

小林:以前、土屋昌巳さんが、「自分の頭に鳴っている音をそのまま鳴らせるのが優れたミュージシャンで、自分の頭のなかに音のイメージはないが、出た音を受け入れて勝負できるのがマシなミュージシャン。最悪なのは、頭のなかにあるイメージを音として出せず、延々とエンジニアとやり合っているミュージシャン」っておっしゃっていて(笑)(インタビュー:THE NOVEMBERSの発想をがらりと変えた、土屋昌巳による学び)。

Borisは自分たちが出したい音を何も考えずにポンって出せる人たちなのかなと。だからこそこんなアルバムができるのだと思いますね。

左から:那倉太一(ENDON)、小林祐介(THE NOVEMBERS)

那倉:今回、ヘヴィー回帰しているのも大きいですよね。6月に新代田FEVERで『DEAR』からの曲メインの演奏を見たんですが、メチャメチャ盛り上がっていましたね。イントロのギターが奏でられた瞬間、客席から「うぉおおおおお!!!」と怒号のような歓声(笑)。今まで観てきたBorisのライブのなかで、最もオーディエンスが昂ぶっていたのがそのときのライブでした。

このアルバムがライブを意識して作られたかどうかはわからないけど、確かに小林さんの言うように、ライブとの差が少ないアルバムだと思いました。『DEAR』は音源でも流れが非常にいいですからね。

―リリース直後の週末には代官山UNITでライブがあるんですよね。

小林:それまで自分のなかになかったものを食らって、その後の自分の人生、価値を相対的に変えてしまうことってあると思うんです。それまで見えていた景色や、常識、考え方が、同じものではなくなってしまう。僕にとって、Borisはそういう存在でした。

日常生活では絶対に出会えない何かがBorisのライブにはあり、人生を変えてしまう現象がライブハウス規模で起きているんです。それを逃す手はないですよね?

左から:那倉太一(ENDON)、小林祐介(THE NOVEMBERS)

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リリース情報

Boris『DEAR』日本盤
Boris
『DEAR』日本盤(2CD)

2017年7月12日(水)発売
価格:3,456円(税込)
DYMC-300

[CD1]
1. D.O.W.N -Domination of Waiting Noise-
2. DEADSONG -詩-
3. Absolutego -絶対自我-
4. Beyond -かのひと-
5. Kagero -蜉蝣-
6. Biotope -ビオトープ-
7. The Power
8. Memento Mori
9. Dystopia -Vanishing Point / 何処へ-
10. Dear
[CD2]
1. More
2. Evil Perspective
3. D.O.W.N -Domination of Waiting Noise- (Full Version)

Boris『DEAR』
Boris
『DEAR』(3LP)

2017年7月12日(水)発売
価格:7,560円(税込)
DYMV-300

[SIDE-A]
1. D.O.W.N -Domination of Waiting Noise-
2. DEADSONG -詩-
3. Absolutego -絶対自我-
[SIDE-B]
4. Beyond -かのひと-
5. Kagero -蜉蝣-
6. Biotope -ビオトープ-
[SIDE-C]
7. The Power
8. Memento Mori
[SIDE-D]
9. Dystopia -Vanishing Point / 何処へ-
10. Dear
[SIDE-E]
1. More
2. Evil Perspective -イビルパースペクティブ-
[SIDE-F]
3. D.O.W.N -Domination of Waiting Noise- (Full Version)

イベント情報

『DEAR Release Party』

2017年7月15日(土)
会場:東京都 代官山 UNIT

プロフィール

THE NOVEMBERS
THE NOVEMBERS(ざ のーべんばーず)

2005年結成のオルタナティブロックバンド。2007年にUK PROJECTより1st EP『THE NOVEMBERS』でデビュー。2013年10月からは自主レーベル「MERZ」を立ち上げ、2014年には『FUJI ROCK FESTIVAL』に出演。小林祐介(Vo,Gt)は、CHARA,yukihiro(L'Arc~en~Ciel)、Die(DIR EN GREY)のサポート、浅井健一と有松益男(Back Drop Bomb)とのROMEO's bloodでも活動。ケンゴマツモト(Gt)は、園子温のポエトリーリーディングセッションや映画『ラブ&ピース』にも出演。高松浩史(Ba)はLillies and Remainsのサポート、吉木諒祐(Dr)はYEN TOWN BANDやトクマルシューゴ率いるGellersのサポートなども行う。2016年9月21日に6枚目のアルバム『Hallelujah』をMAGNIPH/Hostessからリリース。

ENDON
ENDON(えんどん)

エクストリーム・ミュージックの決定的な更新を目論み結成、2007年現行のヴォーカル / ギター / ドラム / ノイズ×2体制に。ギター / ドラムのソリッドな演奏を機軸に、ハードコアやブラック・メタル的意匠をまといノイズで空間を埋め尽くすサウンドは、シーンの最先鋭として知られる。1stアルバム『MAMA』(2014年、BorisのAtsuoプロデュース)発表以降、バンド / ノイズ界は勿論、クラブ・カルチャーからストリート・シーンまで横断して活動。海外でのライブ活動も積極的に行い、2016年には2度の北米ツアーを実施した。2017年春にKurt Ballou(CONVERGE)によるUS録音の2ndアルバム『THROUGH THE MIRROR』を発表。秋にはBorisの北米ツアー全行程に帯同する。

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