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THE NOVEMBERS小林×ENDON那倉が誘う、深遠なるBorisの世界

THE NOVEMBERS小林×ENDON那倉が誘う、深遠なるBorisの世界

Boris『DEAR』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:永峰拓也 編集:山元翔一

今までに観てきた「大音量のライブ」というのは、音がでかいだけであって、「デザイン」ではなかったということを思い知らされたんです。(小林)

―小林さんが爆笑するほどだったBorisの衝撃って、どんなところだったんでしょう?

小林:今までに観てきた「大音量のライブ」というのは、音がでかいだけであって、「デザイン」ではなかったということを思い知らされたんですよ。Borisの場合はちゃんと意図があって、それに見合う手法があって、結果があって、それが自分の快感につながっている。それ以来、僕も偶然とかまぐれに期待するんじゃなくて、ちゃんと原因と結果があるということを意識して音を出すようになりました。

小林祐介(THE NOVEMBERS)

那倉:「現象」ということでいうと、Borisは旋律的にシンプルに削ぎ落としていくことで、「それ以外の情報」を音のなかに招き入れるようにしているようです。たとえば、ライブで浴びる低音は、音律 / 旋律的な要素に加えて、シャツがビリビリと震えるほどの音圧を体感することを含みますし、あるいはVJによる映像、そして匂いも重要な要素になっている。

昔のBorisは、これと決めたお香を焚いてライブをやっていたそうです。今は、スモークをあり得ないほど焚いているんですけど、他のバンドのライブ会場でスモークの匂いを嗅ぐと、パブロフの犬のようにBorisのライブを思い出してしまう(笑)。その辺は、彼らがいろいろと頭をひねりながら、「いかに様々な情報を取り込んでいくのか?」を考えているからこそだと思う。同じように、「ジャーン」って一斉に鳴らすタイミングを合わせるために、楽器を大きく振りかぶって呼吸を合わせる動きもそうなんです。これは曲のテンポが極端に遅いことからくるカウントの代わりという必然的な機能と、振り付けという化粧が一体になっている動作なんです。

―小林さんのようにBorisのライブを観た人が「現象」と表現することの裏には、視覚や聴覚だけでなく嗅覚・触覚までも刺激するための工夫があったんですね。

那倉:サウンドと歌詞以外の情報、ノイズもそうですが、そういうものを音のなかに呼び込み、「現象」を起こすことにより、見るものの無意識に訴えかけて感覚を呼び覚ますというか。無意識に訴えるというのは、つまり身体に訴えるということでもあって、そのあたりBorisは非常に意識的にやっていると思いますね。

Boris / Photo by Yusuke Yamatani
Boris / Photo by Yusuke Yamatani

那倉:今回、最新作『DEAR』のライナーノーツで「Daymare Recordings」の濱田(忠)さんが、「Borisの本質は? 最小単位のトリオ編成で最大の現象を呼び込むこと、そしてこの3人にしか鳴らし得ない音を捕まえることだ。ヘヴィは起点に過ぎない。白玉音符(ドローン)に含まれる息遣い、ちょっとした歪み、軋むはかなさ、濃淡、強弱。ディティールは無限の情報量を持つ」と書かれていますが、これはBorisの本質を実に簡潔に、見事に捉えた文章だと思います。

母親の胎内で、「あ~気持ちいい~」ってなっているのが、ノイズのなかに埋もれている行為だと思う。(那倉)

―初歩的な質問ですが、BorisやENDON、THE NOVEMBERSの音楽に含まれている「ノイズ」には、そもそもどんな意味があるんでしょう。

那倉:理論はさておき、僕が定義する「ノイズミュージック」は、無調・無旋律の音が音楽としての強度を持った状態のことです。僕らの今のモードとしては、調も旋律も決まっている楽曲のなかでどう馴染ませていくか、その手触りや肌触りが重要な音楽のことだと思っていて。ロックの楽曲の横に電子音楽とミュージックコンクレートを「併置」させたSpooky Tooth(イギリスのバンド)とピエール・アンリ(フランスの現代音楽家)の『Ceremony』(1969年)に端を発す伝統的な試みです。

「楽曲を構築していく」というのはすごく父性的な行為であるのに対し、ノイズは母性的というか。自戒を込めて言えば母親の胎内で、「あ~気持ちいい~」ってなっているのが、ノイズのなかに埋もれている行為だと思うんですよ(笑)。あるいは、ノイズは「万能感」の象徴とも言えますよね。

―「万能感」の象徴、ですか。

那倉:下手くそなノイズバンドが、グチャグチャにノイズを垂れ流し、自分たちだけ楽しんでいる光景、よく目にするじゃないですか(笑)。あれって、幼児的な万能感に近いものだと思うんですよ。曲は大人にならないと書けないけど、ノイズは子どもでも鳴らせる。それを融合させたときのカタルシスとか緊張感が、ノイズミュージックの醍醐味のひとつなのかなと。

那倉太一(ENDON)

―楽曲とノイズが融合・共存することにこそ意味があると。確かにケヴィン・シールズ(My Bloody Valentine)もただ闇雲に爆音や轟音を垂れ流しているのではなく、どこまでも冷静にデザインするようにノイズを操っているんですよね。

那倉:ENDONの『MAMA』(2014年)はAtsuoさんにプロデュースしてもらったんですけど、Atsuoさんがボリュームを書き込んでくれたり、位相を細かく調整してくれたりして、さっきの小林さんがおっしゃっていたようにノイズをデザインしてくれたんです。あのアルバムでは、Atsuoさんが「もう一人のメンバー」として、ミキサーを操作しながら「演奏」していたとも言えるくらいで。

ENDON『MAMA』収録曲

―Borisがノイズをそこまでコントロールしているというのは、意外に思う人もいるかもしれないですね。

那倉:今回の対談をやるにあたって自分なりの「Boris論」が整理されたんですけど、たとえば、矛盾 / 対立する2つの考えがあったとき、そのどちらからも逃げるもの / 逸脱するものがBorisの音楽なのではないかと。楽曲とノイズとか国内と海外とかいう二項対立そのどちらからも逃れるように。

Borisだけじゃなく、ENDONもTHE NOVEMBERSもそうですが、ただ楽曲を理論的に構築していくだけでは退屈な音楽になってしまうし、ノイズを垂れ流すだけでは音楽ですらない。その「どちらでもないところ」を目指しているのが、この3バンドなのだと思います。

小林祐介(THE NOVEMBERS)

小林:こないだ灰野敬二さんに会ったときに、「(ピアノの)白鍵と黒鍵の間には無限の音がある」と言っていたんです。「その間の音を人は『ノイズ』と呼ぶかもしれないけど、僕にとってはどの音も等価値だから、白鍵と黒鍵が1つずつあれば、そのなかで無限に音楽ができる」と。

那倉:なるほど……。今話してきたノイズと楽曲の話で言えば、今の灰野さん発言が、最も「強い」ですね(笑)。

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リリース情報

Boris『DEAR』日本盤
Boris
『DEAR』日本盤(2CD)

2017年7月12日(水)発売
価格:3,456円(税込)
DYMC-300

[CD1]
1. D.O.W.N -Domination of Waiting Noise-
2. DEADSONG -詩-
3. Absolutego -絶対自我-
4. Beyond -かのひと-
5. Kagero -蜉蝣-
6. Biotope -ビオトープ-
7. The Power
8. Memento Mori
9. Dystopia -Vanishing Point / 何処へ-
10. Dear
[CD2]
1. More
2. Evil Perspective
3. D.O.W.N -Domination of Waiting Noise- (Full Version)

Boris『DEAR』
Boris
『DEAR』(3LP)

2017年7月12日(水)発売
価格:7,560円(税込)
DYMV-300

[SIDE-A]
1. D.O.W.N -Domination of Waiting Noise-
2. DEADSONG -詩-
3. Absolutego -絶対自我-
[SIDE-B]
4. Beyond -かのひと-
5. Kagero -蜉蝣-
6. Biotope -ビオトープ-
[SIDE-C]
7. The Power
8. Memento Mori
[SIDE-D]
9. Dystopia -Vanishing Point / 何処へ-
10. Dear
[SIDE-E]
1. More
2. Evil Perspective -イビルパースペクティブ-
[SIDE-F]
3. D.O.W.N -Domination of Waiting Noise- (Full Version)

イベント情報

『DEAR Release Party』

2017年7月15日(土)
会場:東京都 代官山 UNIT

プロフィール

THE NOVEMBERS
THE NOVEMBERS(ざ のーべんばーず)

2005年結成のオルタナティブロックバンド。2007年にUK PROJECTより1st EP『THE NOVEMBERS』でデビュー。2013年10月からは自主レーベル「MERZ」を立ち上げ、2014年には『FUJI ROCK FESTIVAL』に出演。小林祐介(Vo,Gt)は、CHARA,yukihiro(L'Arc~en~Ciel)、Die(DIR EN GREY)のサポート、浅井健一と有松益男(Back Drop Bomb)とのROMEO's bloodでも活動。ケンゴマツモト(Gt)は、園子温のポエトリーリーディングセッションや映画『ラブ&ピース』にも出演。高松浩史(Ba)はLillies and Remainsのサポート、吉木諒祐(Dr)はYEN TOWN BANDやトクマルシューゴ率いるGellersのサポートなども行う。2016年9月21日に6枚目のアルバム『Hallelujah』をMAGNIPH/Hostessからリリース。

ENDON
ENDON(えんどん)

エクストリーム・ミュージックの決定的な更新を目論み結成、2007年現行のヴォーカル / ギター / ドラム / ノイズ×2体制に。ギター / ドラムのソリッドな演奏を機軸に、ハードコアやブラック・メタル的意匠をまといノイズで空間を埋め尽くすサウンドは、シーンの最先鋭として知られる。1stアルバム『MAMA』(2014年、BorisのAtsuoプロデュース)発表以降、バンド / ノイズ界は勿論、クラブ・カルチャーからストリート・シーンまで横断して活動。海外でのライブ活動も積極的に行い、2016年には2度の北米ツアーを実施した。2017年春にKurt Ballou(CONVERGE)によるUS録音の2ndアルバム『THROUGH THE MIRROR』を発表。秋にはBorisの北米ツアー全行程に帯同する。

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