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apapico×おぐち対談 芸術or仕事で揺れるイラストレーターの苦悩

apapico×おぐち対談 芸術or仕事で揺れるイラストレーターの苦悩

apapico『It's not started, yet.』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:豊島望 編集:山元翔一
2017/08/02
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「芸術」として作るのか? それとも、「仕事」として作るのか?――この問いの狭間で揺れる表現者は、もしかしたら多いのかもしれない。この対談記事は、「イラストレーター」という同じ肩書を持ちながらも、両極のスタンスでそれぞれの創作活動を突き詰めている、二人の表現者が主人公だ。

片や、デザイナーとしての顔も持ち、『初音ミク「マジカルミライ 2017」』のサブビジュアルなどを手がける一方で、自身の作品作りも行うクリエイター、apapico。片や、村上隆率いるカイカイキキのグループ展への参加経験を持ち、ソーシャルゲームをはじめとするゲームキャラクターのデザインなどを手がけるイラストレーター、おぐち。

そもそも、この対談はapapicoからおぐちへのラブコールが発端となり企画されたのだが、結果として、この対話のなかで明らかになったのは、二人の「絵」に対する如実なスタンスの違いだった。もちろん、「どちらが正しい」ということではない。この二人は、それぞれがそれぞれのやり方で、とても誠実に、この時代に「イラストレーター」であること、ひいては「今、絵を描くこと」に向き合っているのだ。和やかな瞬間も多々あれど、二人の熱意が静かにぶつかり合う、とても刺激的な対談となった。

画家とイラストレーターでは、求められるものは似ているようで、全然違うんですよ。(おぐち)

―お二人は共にイラストレーターで、apapicoさんが32歳で、おぐちさんが25歳。apapicoさんは、年下のおぐちさんに対して、憧れに近い感情を抱いていると事前に伺いました。

apapico:おぐちさんの絵は、可愛いものとカッコいいもの、女の子とメカ……そういった化学反応が、自分が思い描く理想的な形でビジュアル化されていて。そこに対してはもう、本当にリスペクトしていますね。

おぐち:ありがとうございます。

apapico
apapico

おぐち
おぐち

apapico:あと、僕のおぐちさんへの憧れは、「アーティスト」への憧れでもあると思います。僕はデザインを仕事にしていますけど、デザイナーって、イラストレーターの方から絵をいただいて、印刷媒体やTシャツ、CDのジャケットにしたりっていうのが仕事なんですよね。同じ「もの」を作る人間ではあるけど、「アーティスト」的な面はあまりなくて。

おぐちさんはイラストレーターですけど、アーティスト然とした方だっていう印象が強いんです。僕が初めておぐちさんの絵を見たのは、村上隆さんが中野でやられている「Zingaro」っていうギャラリーの企画の作品で。

おぐち:グループ展のときですよね(2011年に「pixiv Zingaro」で開催された『HEISEIBU祭』)。

apapico:そうです。そのあと、カイカイキキ(村上隆が代表を務めるアート作品制作、アーティストマネジメントを手がける企業)にいたときに、村上隆さんの工房で、おぐちさんの作品をディスプレイ越しに見たんですけど、その作品はとにかく大きかったことを覚えています(『A Nightmare Is A Dream Come True』展の作品)。2メートルくらいありましたよね?

『A Nightmare Is A Dream Come True』展の際に収録された、おぐちのインタビュー動画

おぐち:サイズ的には300号だったので、縦は2メートルちょっと、横は4メートルくらいありましたね。あの展示ときは会場も大きかったので、その大きさに見合うだけのものを描かねばっていう気持ちもあったし、せっかくだから、ワンルームの自分の家ではできない、その場所でしかできないものを描きたかったっていうのもありました。

―そんなに大きな作品、どうやって描いたんですか?

おぐち:普通に油絵です。僕は当時、美大生だったんですけど、油絵のノウハウがある人間がイラストも描く……そうやって手法をミックスさせることでどんなコンテンツが生まれるか? っていうコンセプトの展示だったんです。

ただ、村上隆さんのような現代美術的な磁場にいた僕に、その後、イラストレーターとしてのお仕事が来るようになったのは、「ギャップがあるな」とも思うんですけどね。

左から:おぐち、apapico

―確かにおぐちさんは現在、アーティストではなくイラストレーターとしてのお仕事がメインなわけですよね。カイカイキキのグループ展に参加されていた頃と現在とでは、活動スタンスは変わっているものですか?

おぐち:それこそあのグループ展の頃、僕の立ち位置は「画家」や「アーティスト」だったと思うんですけど、僕が今やっている「イラストレーター」の仕事っていうのは、アーティスト的なものとは全然違います。さっき、apapicoさんはデザイナーとアーティストの違いをおっしゃっていましたけど、イラストレーターは、アーティストとデザイナーの間くらいの存在というか。画家(アーティスト)とイラストレーターでは、求められるものは似ているようで、全然違うんですよ。

―おぐちさんには、「画家」はアーティストだけど、「イラストレーター」はアーティストではない、という認識があるようですね。「画家」と「イラストレーター」の違いって、具体的にどんなものですか?

おぐち:今、自分がやっているイラストレーターの仕事って、たとえば、ゲーム会社の人から「こういう設定に合った絵を描いてほしい」って言われて描くものなんです。「スカートを描いてください」と言われたら、「今はデニムのほうが流行っているんだけどな」って思っても、スカートを描かなきゃいけない。でも、「画家」っていうのは、自分が表現したいものに価値を見出してくれる人、つまりパトロンを探すっていうことで。

おぐち

―なるほど。

おぐち:画家はもう、霞を食って生きている感じですよ(笑)。誰に言われるでもなく自分が作りたいものを作って、それに「お金を払ってください」って言うのは、今の社会ではなかなか難しい。

「自分で何かを作りたくてしょうがない!」っていう人が作るものに面白さを見出して、お金持ちの方が「君の生活の世話をするから、君は好きなものを作ってくれ」って言ってくれる……そうやって活動を続けていくのが画家であるならば、イラストレーターは、基本的には「ゲームを作りたい」とか「アニメを作りたい」っていう人がいて、初めて成り立つんです。極端に言うと、人からの依頼があって初めて仕事ができる。

PlayStation Vita『Caligula-カリギュラ-』1周年記念イラスト ©FURYU Corporation.
PlayStation Vita『Caligula-カリギュラ-』1周年記念イラスト ©FURYU Corporation.

―apapicoさんは、おぐちさんのことを「画家」的な存在として認識されていたようですけど、ご本人の意識はまた違ったところにあるんですね。

apapico:そうですね。おぐちさんご自身は、アーティストというよりも、イラストレーターとして冷静にお仕事をされているというか。

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イベント情報

『It's not started,yet.』

2017年10月20日(金)~10月22日(日)、10月27日(金)、10月28日(土)
会場:東京都 馬喰町 factory
時間:12:00~20:00(金曜は15:00~20:00、入場は各日19:30まで)
料金:入場無料

プロフィール

apapico(あぱぴこ)

福島県出身。東京工芸大学デザイン学科卒業。デザイナー&イラストレーター。学生時代よりアーティストのアシスタントやクラブイベントでのVJをやりつつ、イラストやデザインを勉強。村上隆のカイカイキキにて学んだ後、現在はstudioNASでイラスト / 各種デザインに従事。

おぐち

東京藝術大学油絵科卒業。村上隆率いるカイカイキキのグループ展への参加経験や、ブラウザゲーム『艦隊これくしょん -艦これ-』の敵艦デザイン、グッドスマイルレーシングの『レーシングミク 2014ver.』公式イラスト、また、PS Vitaゲーム『カリギュラ』のキャラクターデザインを手がける。現代アートからポップカルチャーまでを横断し、揺るぎない独自の世界観を持ちつつも、新たな表現を探求し続けるアーティスト。

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