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サニーデイ×LOSTAGEが腹を割って話す、音楽家兼経営者の胸中

サニーデイ×LOSTAGEが腹を割って話す、音楽家兼経営者の胸中

サニーデイ・サービス『Popcorn Ballads』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:タイコウクニヨシ 編集:山元翔一

音楽を聴くドキドキ感がなくなってきたのが大きいんです。「昔、俺が好きやった聴き方と違うぞ」って。(五味)

―LOSTAGEは今回「宣伝広告にお金を使わない」ということも決めているそうですね。

曽我部:まあ、僕らも「ストリーミングのみで突然出す」という発売方法自体が宣伝みたいなところもあるし、LOSTAGEも今回みたいな出し方をすることで、確実に宣伝になってるわけじゃないですか。つまり、いままで通りの宣伝をするか、もっと賢い宣伝をするかっていう違いだと思う。

曽我部恵一

サニーデイ・サービス『Popcorn Ballads』収録曲。配信開始のアナウンスとともに公開されたミュージックビデオ

五味:どこかの媒体にお金を払って、人に知ってもらうきっかけを作るのは当たり前だと思うんですけど、お金を払わんでも、それ以上のことができる可能性があると思うんです。宣伝にお金を使うことが悪って考えているわけではなくて。ただ、「お金なくてもやれるな」って感覚があったんですよね。

―ミュージックビデオも作らないという方針でしたが、現在YouTubeには非公式のビデオが上がっていますよね。五味さんも登場されていますけど、あれはどういった経緯で作られたのでしょうか?

五味:CDを開けたときが誰にとっても最初に音を聴く瞬間にしたかったから、試聴もできない、サンプル盤も作らない、ミュージックビデオも作らないって決めていたんです。でもCDを出したあとに、8ottoのベースのやつ(TORA)が「MV作りたいねんけど」って言ってきたんで、友達だし、「勝手に作ったら」って。

五味:これを見た人が、「じゃあ、私も作ろう」って別の曲で作ったっていい。買ってくれたものは、あとは自由に使ってくれていいんで、誰かが勝手にカバーしてもいいし、何やってもいいと思ってます。もしかしたら不具合がどっかで出るのかもしれないけど、そうなったらそのとき考えればいいかなと。

曽我部:今回僕らもサンプル盤は一切作ってなくて、それは業界の人もファンの人も、みんながびっくりすることをやりたかったからなんです。最近、告知なしでいきなりお店にCDが置かれることがあるじゃないですか?

五味:Hi-STANDARDがやりましたよね(2016年10月にリリースされた『ANOTHER STARTING LINE』は事前に告知を一切行わなかった)。

曽我部:でも、あのやり方ってお店の人は先に知ることになるじゃない? それって、お店の人が可哀想だなと。今回はみんなに同じように驚いてほしかったから、本当に内々のスタッフしかリリースの情報を知らなかったんです。

サニーデイ・サービス『Popcorn Ballads』ジャケット
サニーデイ・サービス『Popcorn Ballads』ジャケット(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

五味:僕らも、お客さんにも内側で自分たちをサポートしてくれる人たちにも、同じような感覚で聴いてもらいたいと思ってましたね。

曽我部:五味くんも僕も結局エンターテイナーなんですよ。楽しませたいんだよね。生活者としての意見もあるけど、それよりもまずエンターテイナーで、「もうこんなやり方はみんな飽きたでしょ?」みたいなさ。

五味:自分もそうですけど、音楽を聴くドキドキ感がなくなってきたのが大きいんですよね。YouTubeで聴いて、よかったらレコードで買うみたいな、「聴いて、買う」っていう当たり前の流れにドキドキしなくなってきてた。「昔、俺が好きやった聴き方と違うぞ」って。じゃあ、あの頃の感じでみんなに聴いてもらうにはどうすればいいんやろうって考えると、「何もわからん状態で、初めて聴く」という状態を作るしかないと思ったんですよね。

―やっぱり、根底にある発想は同じなんですね。

曽我部:うん、驚かせたいんですよ。子どもみたいな発想なんです(笑)。

曽我部恵一

サニーデイ・サービス『Popcorn Ballads』収録曲

答えなんてないんだから、それぞれが実験をして、それぞれのやり方を掴んで行ったらいいんだと思います。(曽我部)

―僕が今回のLOSTAGEのリリース方法を知って、パッと連想したのがクラムボンで、彼らも昨年から流通を通さずに、ライブ会場での手売りをスタートさせました。近年各アーティストがそれぞれのやり方を模索し始めているのは間違いないと思うんですよね(参考記事:クラムボンが一歩踏み出して話す、アーティストの「お金」の話)。

曽我部:答えなんてないんだから、それぞれが実験をして、それぞれのやり方を掴んでいったらいいんだと思います。アメリカのハードコアが始まった1980年代初頭もめちゃくちゃだったけど、それを何十年もやってきたっていうのが、いまのアメリカのオルタナティブの、商業ベースじゃない音楽の強さだと思うんです。

―ローカルのネットワークや、ファンコミュニティーの強さですよね。

曽我部:そうそう。だから、いまから日本もみんなで実験し合って、「このやり方よかったよ」「あそこの店ライブできるよ」っていうふうにいろいろ始まっていくのかなと。そうすれば、僕らみたいにテレビでたくさん宣伝するわけじゃない音楽も、文化として残っていくと思う。

左から:曽我部恵一、五味岳久

―五味さんは実際に手売りを始めて、何か気づきってありましたか?

五味:最初に曽我部さんが「昔は反応がわからなかった」っておっしゃってましたけど、いまは届いたら、「届いた!」って写真がネットに上がるわけじゃないですか?

曽我部:これはInstagramとかにのっけたいもんね。

五味:だいたい同じ構図なんですけど(笑)、でもそうやって反応がダイレクトに返ってくるのって、めちゃくちゃうれしいんですよね。

LOSTAGE『In Dreams』ジャケット
LOSTAGE『In Dreams』ジャケット(オンラインショップで購入する

五味:正直しんどいから、次は別のやり方にしようと思ってたけど、このやり方を気に入ってしまって。この形でつながっていって、ライブの動員も増えたら、バンドだけで食っていけるかもって思ったりするんです。

五味岳久

曽我部:何枚くらいのセールスをキープすれば食っていけるのかって、自分たちでバンド運営してる人ならみんな考えると思うんだけど、LOSTAGEのいまのやり方だと、5000~6000枚売れれば、余裕で全員食えるよね? バイトもせず、赤貧じゃなく、家族がいてもちゃんと暮らせる。

五味:そうですね。1~2年に1枚アルバム出して、それでツアーもやれば。「上京して、売れたいです」って言う、自分たちより若いガツガツしたバンドに、「じゃあ、何枚売りたいの?」って訊くと、具体的な数字は出てこなかったりするんですよね。彼らには漠然とした「売れる」っていうイメージしかない。

若いときはしょうがないとも思うけど、もうちょっと具体的に「これくらい売って、お金をこれくらい集めて、次の制作にいくら回して、自分たちの暮らしにいくら回す」とか、そういうことをちゃんと考えると、僕らは10万枚とかって数字は必要ないんです。まあ、「じゃあ、そこを目指す」って言ってしまうと、それはそれで夢がないかなとも思うんですけどね。

曽我部:でも、日々遊んで暮らして、その上で好きなことやるっていうのが夢じゃない? 5000~6000枚売ることで、「全然余裕っすよ」って誰かが言ってくれたら、みんながみんな「とりあえず武道館」「とりあえずMステ」じゃなくなるから、それはすごく大事だと思う。

曽我部恵一

曽我部:FUGAZIのドキュメンタリーで、ライブやったあとにイアン・マッケイが札束を数えるシーンがあるんです。日本のバンドは「お金の話と音楽やライブの話は分けたい」って気持ちがあるのかもしれないけど、一生懸命汗だくになってやったライブに対して、みんながお金を払ってくれて、それを山分けして、また次の街に行くってだけの話で。あれはすごくいいシーンだなって思うんですよね。

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リリース情報

サニーデイ・サービス『Popcorn Ballads』
サニーデイ・サービス
『Popcorn Ballads』

2017年6月2日(金)からApple Music、Spotifyで配信

1. 青い戦車
2. 街角のファンク feat. C.O.S.A. & KID FRESINO
3. 泡アワー
4. 炭酸xyz
5. 東京市憂愁(トーキョーシティブルース)
6. きみは今日、空港で。
7. 花火
8. Tシャツ
9. クリスマス
10. 金星
11. heart&soul
12. 流れ星
13. すべての若き動物たち
14. summer baby
15. 恋人の歌
16. ハニー
17. クジラ
18. 虹の外
19. ポップコーン・バラッド
20. 透明でも透明じゃなくても
21. サマー・レイン
22. popcorn run out groove

LOSTAGE『In Dreams』
LOSTAGE
『In Dreams』(CD)

2017年6月9日(金)よりLOSTAGEライブ会場、THROAT RECORDS店頭、THROAT RECORDS ONLINE SHOPのみで販売
価格:2,600円(税込)
THC-011

1. さよならおもいでよ
2. ガス
3. 窓
4. ポケットの中で
5. REM
6. 泡沫の
7. 戦争
8. I told.
9. 僕のものになれ
10. Shoeshine Man

イベント情報

サニーデイ・サービス
『サニーデイ・サービス サマーライブ 2017』

2017年8月27日(日)
会場:東京都 日比谷野外大音楽堂
出演:サニーデイ・サービス
料金:5,000円

LOSTAGE
『LOSTAGE In Dreams TOUR』

2017年8月12日(土)
会場:香川県 高松 TOONICE

2017年8月13日(日)
会場:高知県 X-pt.

2017年8月18日(金)
会場:福岡県 UTERO

2017年8月19日(土)
会場:広島県 4.14

2017年9月2日(土)
会場:愛知県 名古屋 HUCK FINN

2017年9月22日(金)
会場:大阪府 十三 FANDANGO

2017年10月5日(木)
会場:京都府 MUSE

2017年11月10日(金)
会場:東京都 吉祥寺 WARP

2017年11月23日(木)
会場:神奈川県 F.A.D YOKOHAMA

2017年12月16日(土)
会場:北海道 札幌 KLUB COUNTER ACTION

2018年1月27日(土)
会場:沖縄県 OUTPUT

プロフィール

サニーデイ・サービス
サニーデイ・サービス

曽我部恵一(Vo,Gt)、田中貴(Ba)、丸山晴茂(Dr)からなるロックバンド。1994年メジャーデビュー。1995年に1stアルバム『若者たち』をリリース。以来、「街」という地平を舞台に、そこに佇む恋人たちや若者たちの物語を透明なメロディーで鮮やかに描きだしてきた。その唯一無二の存在感で多くのリスナーを魅了し、90年代を代表するバンドの1つとして、今なお、リスナーのみならず多くのミュージシャンにも影響を与えている。7枚のアルバムと14枚のシングルを世に送り出し、2000年に惜しまれつつも解散。2008年に再結成を果たして以降は、アルバム『本日は晴天なり』『Sunny』をリリース。2016年8月3日には通算10枚目のアルバム『DANCE TO YOU』を発売し、現在もロングセラー作品となっている。この作品からは、全曲のインストバージョンを収録したアルバム『透明 DANCE TO YOU』をカセットテープで、気鋭のクリエイターたちが全曲をそれぞれリミックスした『DANCE TO YOU REMIX』を2枚組アナログ盤でもリリースしている。2017年6月2日、事前告知なしでニューアルバム『Popcorn Ballads』を配信限定でリリースした。

LOSTAGE
LOSTAGE(ろすとえいじ)

2001年秋に奈良で結成された日本のロックバンド。奈良や大阪を中心にライブ活動を開始。2004年7月、UK PROJECT内にレーベル「qoop music」を立ち上げ、ミニアルバム『P.S. I miss you』を発表。2007年7月、アルバム『DRAMA』でメジャーデビュー。2010年から五味岳久(Vo,Ba)、五味拓人(Gt)、岩城智和(Dr)による3ピースバンドとして活動するとともに、バンド表記を大文字の「LOSTAGE」へと変更。同年6月に4thアルバム『LOSTAGE』を発表し、『ECHOES』(2012年)、『Guitar』(2014年)とアルバムリリースを重ねる。2017年6月より、7枚目となるフルアルバム『In Dreams』を、ライブ会場と五味岳久が店長を務めるレコードショップ「THROAT RECORDS」店頭およびオンラインストア限定で販売している。

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