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大友良英が語る盆踊りと祭り。音楽が生まれる瞬間はどんなとき?

大友良英が語る盆踊りと祭り。音楽が生まれる瞬間はどんなとき?

『アンサンブルズ東京』
インタビュー・テキスト
大石始
撮影:豊島望 編集:宮原朋之、山元翔一

場所は東京・丸の内の「GOOD DESIGN Marunouchi」。周囲を巨大なビルに囲まれたアートスペースには場違いなミシンが数台、カタコトと音を立てている。

「アーティストと共にみんなで作り上げる音楽祭」を謳い、2015年に始まった『アンサンブルズ東京』。その開催を10月15日に控え、会場に敷かれる大風呂敷を作成するワークショップがここでは行われている。2011年の『プロジェクトFUKUSHIMA!』から始まった大風呂敷アートは今や各地へと広がり、このイベントを象徴するものともなっている。そこには「音楽とアートはどのように社会との接点を持つことができるのか?」という芸術監督を務める大友良英の思いも込められている。

今年は10月15日に東京タワーの麓にUAと稲葉俊郎、坂本美雨とCANTUS、大友良英スペシャルビッグバンド、芳垣安洋とOrquesta Nudge!Nudge!らが集う『アンサンブルズ東京』。事前のワークショップもレッドブル・スタジオ東京などで行われる。その開催を前に、日本の祝祭を追いかけ続けるライター・大石始が大友に話を訊いた。

大風呂敷を広げたとき、一瞬にして祭りの空間が生まれたことにびっくりした。(大友)

大石:さきほど大風呂敷のワークショップに参加して、少しだけミシンも踏んできました(笑)。

大友:そんなことまでやってくれたんだ(笑)。

左から:大友良英、大石始。大風呂敷の前にて
左から:大友良英、大石始。大風呂敷の前にて

大友:ミシン、やったことある?

大石:小学校の家庭科でやったぐらいですね(笑)。うまく縫い合わせられなくてズレちゃったんですけど、それでも参加した充実感のようなものがありました。あの大風呂敷は毎回新しく作っているんですか?

大友:「作り足している」と言ったほうがいいかな。毎回同じものを使ってもおもしろくないし、作る過程がおもしろいということもあるので。いろんなところで縫ったものがひとつの場所に集まることで、この大風呂敷は作られているんですよ。

大石:さまざまな場所から集められた生地がひとつの大風呂敷として縫い合わされていると。なおかつ、さまざまな時期の生地が集まっているという。

ワークショップでミシンも踏む大石
ワークショップでミシンも踏む大石

縫い上がったのがこちら
縫い上がったのがこちら

大友:2011年のものもあれば、2017年に集められたものもあるしね。1回目の『プロジェクトFUKUSHIMA!』(東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけに立ち上がったプロジェクト)のときはあくまでもセシウム対策として大風呂敷を敷いて、少しでも身体につくセシウムを減らせればというものだった。でも、大風呂敷も作り始めてから7年目に入ったので、時間が蓄積されてきたんですよ。

『アンサンブルズ東京 2016』の模様

大友:それに加えて、大風呂敷を縫う場所も福島だけじゃなくて、札幌や愛知など、どんどん広がってきている。時間と地域の広がりが出てきて、1枚の大風呂敷でもその存在と意味合いが立体的になっているんですね。今みたいな広がりが生まれることなんて最初は想像もしてなかったんだけど。

大石:大風呂敷を広げることによって、そこに突如祝祭空間が出現してしまうというおもしろさもありますよね。

大友:そうそう。最初の『プロジェクトFUKUSHIMA!』で大風呂敷をブワッと広げたとき、一瞬にして祭りの空間が生まれたことにびっくりした。大風呂敷を敷けば会場自体を自分たちで作り出すことができる。それがわかったとき、セシウム対策という目的がメインじゃなくなっちゃったんです。

『プロジェクトFUKUSHIMA!』での様子
『プロジェクトFUKUSHIMA!』での様子

「かっとばせー、○○」という野球の声援。あれは完全に音楽ですよ。(大友)

大石:『アンサンブルズ東京』は「アーティストと共にみんなで作り上げる音楽祭」と謳っていて、一般の人たちと一緒になって演奏をし、イベントを作り上げていますよね。そもそものお話なのですが、大友さんが大人数で音を鳴らす喜びを感じたのは、1980年代半ばにサンバを習っていたときだそうですね。

大友:そうかもしれないね。それまではずっと少人数編成でノイズやジャズをやってきたけど、人数が少ないからお互いの音を把握できるんですよ。でも、僕らがいたサンバのチームは80人以上いて、そうなると一人ひとりの音が曖昧になる。大人数がグルーヴする状態って本当におもしろいと思ったんです。

大石:一人ひとりの存在そのものが曖昧になっていって、個人の表現を超えていく状態ですよね。

大友:音楽において個人の表現が強調されるようになったのは20世紀以降、レコード文化が発展してからだと思うんだけど、そういうものだけが音楽じゃないと思うんだよね。たとえば、「かっとばせー、○○」という野球の声援。みんなリズムも完璧だし、あれは完全に音楽ですよ。自覚はないけど、音楽の場が生まれている。あれが音楽の本質だと思う。

大友良英

大石:盆踊りや祭りの場もまさにそういうものですよね。音楽を鳴らすことが目的ではないけれど、音楽の場が立ち上がってしまうという。

大友:まさにそう。基本的に盆踊りに来てる人は、音頭取りに敬意を払うためじゃなくて、「踊りに来てる」わけでしょ。1曲終わる前に踊りの輪から抜ける人もいるけど、クラシックのコンサートだったら相当失礼なことですよ(笑)。でも、盆踊りではそんなこと誰も気にしない。盆踊りを通じて、「音楽のあり方は一通りじゃない」という当たり前のことに気づかされたんです。

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イベント情報

『アンサンブルズ東京』

2017年10月15日(日)
会場:東京都 東京タワー(正面玄関前エリア、南側駐車場など)
時間:14:30~ 料金:無料(ただし、事前に実施予定の音楽ワークショップは有料)
主催:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、アンサンブルズ東京実行委員会(ピースリーマネジメント有限会社、特定非営利活動法人大丸有エリアマネジメント協会、株式会社文化放送)
助成・協力:東京都
協力:株式会社三陽商会、東京タワー、公益財団法人日本デザイン振興会、レッドブル・スタジオ東京

ワークショップ
『プロジェクトFUKUSHIMA! 大風呂敷をみんなで作って会場をアートで飾ろうワークショップ』

Aプログラム(土日・市ヶ谷)
2017年10月7日(土)、10月8日(日)
会場:東京都 市ヶ谷 株式会社三陽商会 九段ファーストプレイスビル1F
時間:各日12:00~18:00
料金:無料

Bプログラム(平日・丸の内)
2017年9月27日(水)、9月28日(木)
会場:東京都 丸の内 GOOD DESIGN Marunouchi
時間:各日12:00~20:00
料金:無料

※両プログラム全日程とも上記の日時でオープンしていますので、ご都合に合わせてご参加ください。

『楽器何でもビッグバンドワークショップ』大友良英スペシャルビッグバンド

2017年10月14日(土)
会場:東京都 渋谷 Red Bull Studios Tokyo
時間:14:00~18:00
定員:100名程度
料金:一般2,000円 学生1,000円 60歳以上・小中学生500円 未就学児無料

プロフィール

大友良英(おおとも よしひで)

1959年横浜生まれ。音楽家。10代を福島市で過ごす。常に同時進行かつインディペンデントに即興演奏やノイズ的な作品からポップスに至るまで多種多様な音楽をつくり続け、その活動範囲は世界中におよぶ。映画音楽家としても数多くの映像作品の音楽を手がけ、その数は70作品を超える。近年は「アンサンブルズ」の名のもとさまざまな人たちとのコラボレーションを軸に展示する音楽作品や特殊形態のコンサートを手がける。また障がいのある子供たちとの音楽ワークショップや一般参加型のプロジェクトにも力をいれている。2011年の東日本大震災を受け、遠藤ミチロウ、和合亮一とともに『プロジェクトFUKUSHIMA!』を立ち上げる。2012年芸術選奨文部科学大臣賞芸術振興部門を受賞。2013年、NHK朝の連続ドラマ「あまちゃん」の音楽を担当。著書に『MUSICS』(岩波書店)、『シャッター商店街と線量計』(青土社)など

大石始(おおいし はじめ)

旅と祭りの編集プロダクション「B.O.N」ライター / 編集。著書・編著書に『ニッポンのマツリズム』『ニッポン大音頭時代』『大韓ロック探訪記』『GLOCAL BEATS』『関東ラガマフィン』など。連載は月刊サイゾーなど。

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