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遠山正道が狩野派・元信に学ぶアートとビジネスのプロデュース術

遠山正道が狩野派・元信に学ぶアートとビジネスのプロデュース術

サントリー美術館『六本木開館10周年記念展 天下を治めた絵師 狩野元信』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:宮原朋之

サントリー美術館で開催中の『六本木開館10周年記念展 天下を治めた絵師 狩野元信』は、狩野派2代目の天才絵師の画業を紹介する展覧会だ。「天下を治めた」という副題に驚かされるが、こと元信に関して言えば、これはけっして誇張ではない。

室町幕府の御用絵師として才能を発揮した創始者・正信の画風を継いだ元信は、その様式を徹底的に解析し、障壁画や絵巻物などの大作を集団で生産できるようにする工房システムを形成し、その後約400年続く狩野派の礎を築いた。芸術家としてだけでなく、プロデューサー、経営者としても秀でた彼がいたからこそ、狩野派は日本美術史上最大の画派に成長できたのだ。

そんな稀代の絵師の足跡から、現代の敏腕プロデューサーはなにを読み解くだろうか? ということで、お招きしたのは株式会社スマイルズ代表の遠山正道さんだ。食べるスープ専門店「Soup Stock Tokyo」を全国に展開したかと思えば、一冊の本だけを売る書店「森岡書店」に出資するなど、マクロからミクロまで新たなビジネスの試みを行ってきた遠山さんは、約500年前のアーティストにいかなる共感を持つのだろう?

サントリー美術館の開館以来、半世紀を超えた念願の企画がついに実現

ある休日の昼下がり。日本美術ファンで賑わう美術館に、まるで散歩でもするような気軽さで、ふらりと現れた遠山さん。現代美術のコレクターとしても有名な遠山さんだが、サントリー美術館にもよく足を運んでいるのだろうか?

遠山:じつはかなり久しぶりなんです。というのも、やっぱり現代美術が大好きで、どちらかというと日本美術にはちょっととっつきにくい印象を持っていたから。ほら、中国風の山や川とか、故事(大昔にあった物や出来事)にちなんだ画題とか、どうしても日本人の普段の感覚とは距離があるじゃないですか。

でも、ここ10年くらい美術史家の山下裕二さんや、アーティストの杉本博司さんからの熱心な布教(笑)を受けて、徐々にその魅力に開眼しつつあるんです。だから、今日は勉強のつもりで来ました。

遠山正道(株式会社スマイルズ代表)
遠山正道(株式会社スマイルズ代表)

そんな遠山さんのガイド役は、この展覧会を担当した学芸員の池田芙美さん。池田さんによると、この展覧会はサントリー美術館開館以来の念願の企画なのだとか。

池田:佐治敬三(元サントリー社長。1999年没)が当館をオープンしたのが1961年。その約20年後に蒐集したのが元信の『酒伝童子絵巻』で、「いつか元信の展覧会をするぞ!」というのが館の大きなミッションだったんです。

そして2015年、同絵巻は重要文化財に指定された。それをひとつの契機として、半世紀を超えて本展はついに実現に至ったというわけだ。

「あらゆることがやり尽くされて、誰もが迷っているいま、狩野派が取り組んできた他の分野に可能性を探っていく感覚は、とっても有効だと思う」(遠山)

全6エリアで構成される本展の冒頭、「第一章 天下画工の長となる ― 障壁画の世界」は傑作と名高い『四季花鳥図』をはじめとする障壁画で構成されている。障壁画とは、襖や壁に貼り付けられた絵の総称だ。例えば、『四季花鳥図』(展示期間10月18日~11月5日)や、『禅宗祖師図』(展示期間10月23日まで)は、保存や展示のために表装され直したもので、ともに京都・大仙院の障壁画に設えられていたものだ。

重要文化財『禅宗祖師図』狩野元信(16世紀)東京国立博物館 Image:TNM Image Archives / 展示期間:9月16日~10月23日(ただし展示替あり) / 真体
重要文化財『禅宗祖師図』狩野元信(16世紀)東京国立博物館 Image:TNM Image Archives / 展示期間:9月16日~10月23日(ただし展示替あり) / 真体

遠山:とても緻密で色鮮やかですね。『四季花鳥図』に描かれている鳥は、たぶん日本にはいない種類だと思うんですが、つまりこれは日本ではなく中国の風景なんですよね?

遠山正道

池田:そのとおりです。中国絵画の総称を一般的に「漢画」と呼びますが、それにならって中世・近世の日本で描かれたものも「漢画」に含まれます。これに対比されるのが「やまと絵」で、平安時代に発達した日本的な絵のこと。元信はこの2つの画風を融合させた立役者として知られていて、『四季花鳥図』にも漢画の水墨的表現と、やまと絵の色彩感覚が融合しているのが見てとれます。

遠山:墨特有のボカシが効いている背景と、手前の花や鳥のくっきりとしたキャラクター感が絶妙ですね。

重要文化財『四季花鳥図』狩野元信(16世紀)京都・大仙院 / 8幅のうち4幅 / 展示期間:9月16日~10月2日、10月18日~11月5日(ただし展示替あり) / 真体
重要文化財『四季花鳥図』狩野元信(16世紀)京都・大仙院 / 8幅のうち4幅 / 展示期間:9月16日~10月2日、10月18日~11月5日(ただし展示替あり) / 真体

池田:この2点は元々、お寺の一室に設えられていたものなので、近くで見るときのディテールが素晴らしいんです。でも、離れて見てみると、すこーんと抜けた背景の余白と、ぎっちり描かれている部分の密度の、計算された演出に気づかされます。元信は、現在まで残る真筆(本人が描いたとされる絵)がかなり少ない人物なのですが、これだけを見ても、その技術、構成力の確かさがわかります。

遠山:ちょっと前に京都の二条城で狩野探幽らの障壁画を見たのですが、絵の迫力もさることながら、空間の特性を活用するセンスの確かさに驚かされました。私たちは、どうしても額縁に入っているものを「美術」って思ってしまいがちだけど、それは歴史のとある一部分でしかなくて、美術は視覚も含めた体験すべてから吸収するものだったんだなって、改めて気づかされました。

千利休が確立した「茶の湯」なんてその最たるもので、2~3畳の極小の空間のなかで、光の入る方向、影の落ち方、そしてそこから生じる身振りまで総合的に演出・プロデュースしている。この空間への意識から学ぶところはとても大きいと思います。

遠山正道

遠山:いまの時代って、食にしてもデザインにしてもファッションにしても、あらゆることがやり尽くされた感があって、誰もが「次はなんだ?」と迷っている。そのときに、利休あるいは狩野派が取り組んできた他の分野に可能性を探っていく感覚は、とっても有効だと思うんです。これはビジネスにも通じることじゃないかな。

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イベント情報

サントリー美術館
『六本木開館10周年記念展 天下を治めた絵師 狩野元信』

2017年9月16日(土)~11月5日(日)
※会期中展示替えあり
会場:東京都 六本木 サントリー美術館
時間:10:00~18:00(金、土曜、10月8日、11月2日は20:00まで、入館は閉館の30分前まで)
休館日:火曜(10月31日は開館)
※shop×cafeは会期中無休
料金:一般1,300円 高大生1,000円
※中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方は、ご本人と介護の方1名様のみ無料

プロフィール

遠山正道(とおやま まさみち)

1962年東京生まれ。85年三菱商事(株)入社後、99年スープ専門店「Soup Stock Tokyo」第1号店をオープン。2000年三菱商事初の社内ベンチャー企業(株)スマイルズを設立、2008年MBOによりスマイルズの株式100%を取得。現在「Soup Stock Tokyo」、ネクタイブランド「giraffe」、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」、ファミリーレストラン「100本のスプーン」、コンテンポラリーフード&リカー「PAVILION」、海苔弁専門店「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」を展開。スマイルズが作家として「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」や「瀬戸内国際芸術祭2016」に作品を出品する取り組みなども行う。近著に『成功することを決めた』(新潮文庫)、『やりたいことをやるビジネスモデル-PASS THE BATONの軌跡』(弘文堂)がある。

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