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最果タヒ×山戸結希 この時代の一番の共犯者たち「言葉」を語る

最果タヒ×山戸結希 この時代の一番の共犯者たち「言葉」を語る

『LUMINE CHRISTMAS~ルミネ×最果タヒの詩の世界~』
インタビュー・テキスト
羽佐田瑶子
撮影:永峰拓也、編集:野村由芽

詩人・最果タヒと映画監督・山戸結希。「言葉」を軸に、現代に生きる人々の心の思いを詩や映画で表現する二人が作りだす世界観は、美しく、そして力強い。今年、ルミネのクリスマスキャンペーンでは、最果タヒがクリスマスを題材に詩を書き下ろし、山戸結希の演出で俳優の成田凌が詩を朗読するコラボレーション作品が生まれた。『宇宙の深呼吸』をはじめとした5篇は、「恋人と過ごす」というひとつの定型を強要しない、子どもの頃に感じていた非日常への憧れときらめきが立ちのぼる、懐かしくて新しい大人のためのおとぎ話だ。最果タヒが紡ぐ言葉に、山戸結希が肉声を伴った音像詩として命を与える。面識はあったがじっくり話すのは初めてだという二人の対談は、「言葉」や「愛」を巡って、共鳴と共感に溢れた内容となった。

一人称の言葉を他者の身体に預けることではじめて、言葉や物語が願ったかたちで爆発して世の中に響く。(山戸)

―それぞれ「詩」や「映画」というかたちで表現をされていますが、互いの作品にはどのような印象をお持ちでしたか?

山戸:詩を書くというのは、ひたすらに孤独な行為だと思います。特に最果さんの詩は、ある瞬間の個的な感情に対して、深いところまで探っていって、喧騒の中、みんなの中に眠っていた「静かな美しさ」のようなものを見つけだして詩にされているのだと。今、書くのだという、書くしかないのだという、ひたむきな強さを、とても感じます。『死んでしまう系のぼくらに』(2014年)を読んだとき、感動しました。

ある言葉を前にすると、「もっと違う表現があるのかもしれない」とどうしても呼びかけられてしまうので、その生まれに立ち会っていない言葉から始まって作品を作ることが難しかったですね。そのため、これまで手がけた映像作品はほぼ、脚本を自分で書いていました。でも、最果さんの言葉は読んでいて、「これ以上、編まれるべき言葉はない」と確信が湧き上がってくるほど、細部まで、心が見えたのです。こんな作家さんに、同時代に出会えたことが、本当に嬉しくて。

左から:山戸結希、最果タヒ
左から:山戸結希、最果タヒ

最果:わあ……(照)。こちらこそ、ありがとうございます。前回ご一緒したのは『さいはてれび』(最果タヒの詩を原作に6人の映像・映画監督がショートフィルムを制作した)ですよね。「文庫の詩」(『死んでしまう系のぼくらに』収録作)から、山戸さんが映像を作ってくださって。

山戸:「文庫の詩」のときにも強く感じたのですが、最果さんは常に、ご自身の肉体を論拠にすることなく、「普遍的なひとり」のための詩を書かれていますね。普段私たちはどうしても、「私」という一人称を生きていて、そこにどうしても引き寄せられてしまう苦しみを知っています。でも、最果さんの詩はいつでも、その感覚を美しく手放しえているから、だからこそ逆説的に、誰かたったひとりのための詩となりうるのだと。

「文庫の詩」も、登場する二人の少女たちのために存在する詩だと自然に感じられました。「たったふたりのために存在する詩」なんて、刹那的で美しいですよね。その美しさだけを切り取って、立体化して、映像化したい。最果さんの詩に向き合うと、そう思わされます。

山戸結希

最果:私も山戸さんの作品が大好きで、言葉に対する距離感がとても似ているんじゃないかと思っています。とくにモノローグシーンが好きで……。感情って、最初から言葉になっているわけではないですよね。それを誰かに伝えるために、気持ちを一般化したり、整理したりして、言葉に変えて発信していく。でもモノローグというのは、誰かに伝えるためではなく、ただ自分の内側でうごめいているだけの言葉なんです。その人だけのもやもやした曖昧な気持ちが、誰かに伝えるために一般的な言葉に変えられていくのが私はとても苦手で、そうした「伝える」ということから一度逃れて、曖昧さを曖昧さのまま言葉にすることができないか、その言葉こそが、私にとっての「詩」なんじゃないかと思っています。だから詩を書くとき、私は声に発するより、もう少し内側の言葉を書こうとしていて……それはきっと「モノローグ」というレイヤーによく似ていると思っているんです。山戸さんの映画におけるモノローグは、そうした言葉の曖昧さにとても意識的だな、と思っていて、観ていていつも、揺さぶられます。

山戸:まさにモノローグとして、他者の肉体を借りて「言葉」が「声」という実存に立体化されると、言葉の飛距離が広がるんですね。

例えば、新人作家の初期作品は、どうしても私小説的な趣が、自ずと強くなりますね。それは、小説でも、映画でも、きっと詩でも。ただ、それらの問いに対して、自分自身の肉体を論拠にしないやり方があるのではないか? という問い直しも可能だと感じてきました。一人称の言葉を他者の身体に預けることではじめて、言葉や物語が願ったかたちで爆発して世の中に響くかもしれない、という感覚が、ずっとあります。

「言葉」って自分だけのものではなくて、他人と自分の間にあるものだと思います。(最果)

―二人には共通しているところが多く見受けられるように感じるのですが、とくに「言葉」を大事にされていますよね。その理由をお聞かせいただけますか?

最果:私はただ言葉を書くのが楽しくて、それだけを理由に書き続けていました。言葉になる以前のもやもやとした感覚を、曖昧さを損なわないままで言葉にする、ということが好きで、ブログに書き溜めていたんです。それを詩として発表するようになり、雑誌やネットでいろんな人の目に触れるようになりました。そこで感想をいただいて、人によってまったく違う解釈で詩に触れているんだということを知りました。詩が、受け手の中でもう一度、姿を変えて、そこで完成しているんだな、と思ったんです。最初は楽しいから書いていただけでしたが、そうやって詩が読み手の中で完成していく感覚は、今までになく達成感があって、「ここを目指して、私は言葉を書いていたんだ」と気がついたんです。

最果タヒ

山戸:素敵ですね。誰にも読まれない詩は存在することにはならず、誰にも観られない映画は、永遠に映画たり得ないのかもしれません。それはきっと、芸術自体が、他者の存在をあらかじめ条件にしているから。詩も映画も、その作者からの発露と、社会において受容するアイデンティティーとのせめぎ合いの上に存在している。その運命と戦いながら、一番きわどいところで最果さんは、詩を書かれていますよね。

最果:ありがとうございます。やっぱり「言葉」って自分だけのものではなくて、他人と自分の間にあるものだと思います。互いに言葉だけをやり取りしているように見えますけど、本当は文章を書いているときの指先ごと、相手に伝わるんですよね。ネットに書くようになって余計に、振動とか温度とか、姿ごとイメージして言葉を紡がないと伝わらない、と思いました。

―指先ごとですか……。見えているものだけではなくて、感覚全てを伝えようとする力強い「言葉」だから、多くの方に伝わっているのかもしれませんね。

最果:予想以上の方々に読んでいただいて、とてもありがたく思っています。でも、どういうふうに読まれているのか、それは私には想像がつかないことだといつも思います。受け取ってもらったその先で、言葉がどんな色をしているのか、どんな形に見えているのか、それは私にはもうコントロールのできないことで、ときどきもらえる感想でその一部を教えてもらっているような、そんな感覚です。それは、自分以外の人の感性に触れるようなことでもあって……。たとえば詩を書かなかったら、一生ひとりの視点だけで世の中を見ていたかもしれない、そう思うと詩を書いていてよかったな、と思います。

それぞれがまったく違う場所から、まったく違う感覚で世界に向かっていて、そこで彼らが見ているものに、詩を通じて触れることができて……。その感覚が愛おしいです。どのように読まれるかなんてコントロールできるわけがないし、不安は常にありますが、そうした愛おしさを知っているから、10年も書き続けられたのかなと思います。

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キャンペーン情報

『LUMINE CHRISTMAS~ルミネ×最果タヒの詩の世界~』では、最果タヒさんに5編の詩を書き下ろしていただきました。期間中、この5編の詩を、各方面で活躍のクリエイターが独自の手法で表現し、イメージビジュアルから館内装飾や、ウェブサイトにいたるまで、ルミネ全体を詩の世界で包みこみます。さらに、23日24日はルミネゼロにて2日間限定の『LUMINE LYRICAL CHRISTMAS~五感で読む、ルミネ×最果タヒの詩の世界~』を開催。

イベント情報

『LUMINE LYRICAL CHRISTMAS~五感で読む、ルミネ×最果タヒの詩の世界~』

2017年12月23日(土)、12月24日(日)12:00~18:00
会場:東京都 新宿 LUMINE 0(NEWoMan新宿 5F)

ルミネクリスマスの世界を体感できるスペースとして、最果タヒさんの詩を、五感で楽しむことができる、2日間だけの幻想的な空間がルミネゼロに登場します! この会場限定で聴くことの出来る、成田凌さんによる詩の朗読の試聴体験のほか、視覚、触覚、味覚、嗅覚のインスタレーションをお楽しみいただけます。さらに、ルミネのアプリ「ONE LUMINE」会員さまには、抽選で各日200組400名さまをスペシャルライブにご招待いたします! ここでしか見ることの出来ない、ここでしか体験することのできない2日間を展開します。

『SPECIAL LIVE』
会場:東京都 新宿 LUMINE 0(NEWoMan新宿 5F)

2017年12月23日(土)14:00~15:00
出演:青葉市子

2017年12月24日(日)14:00~15:00
出演:NUUAMM

応募方法:
1.ルミネのアプリ「ONE LUMINE」をダウンロード
2.「ONE LIMINE」のマイページ内にあるイベント応募バナーをタップして応募画面へ

プロフィール

最果タヒ(さいはて たひ)

詩人。中原中也賞・現代詩花椿賞。最新詩集『愛の縫い目はここ』がリトルモアより発売中。その他、詩集に『死んでしまう系のぼくらに』『空が分裂する』『グッドモーニング』などがあり、2017年5月に詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』が映画化された。また、小説に『十代に共感する奴はみんな嘘つき』、エッセイ集に『きみの言い訳は最高の芸術』『もぐ∞』、対談集に『ことばの恐竜』などがある。11月22日に、清川あさみとの共著『千年後の百人一首』が発売予定。

山戸結希(やまと ゆうき)

2014年、『5つ数えれば君の夢』が渋谷シネマライズの監督最年少記録で公開され、『おとぎ話みたい』がテアトル新宿のレイトショー観客動員を13年ぶりに更新。2015年、第24回日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞受賞。2016年、乃木坂46、Little Glee Monster、RADWIMPSのMVを監督し、小松菜奈・菅田将暉W主演『溺れるナイフ』が全国ロードショーされ異例のヒットを記録。2017年、ブルボン「アルフォートミニチョコレート」や、カネボウ化粧品「suisai」の広告映像も手がけている。

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