インタビュー

SIDE COREが語る、ストリートカルチャーと現代美術を繋げる実践

SIDE COREが語る、ストリートカルチャーと現代美術を繋げる実践

インタビュー・テキスト
中島晴矢
撮影・編集:宮原朋之

2012年に高須咲恵と松下徹が発足し活動を開始したSIDE COREは、「都市空間における表現の拡張」をテーマに多数の展覧会を企画・開催してきた。ゲリラ的に作品を街に点在させたり、都内工場地帯のスタジオ兼オルタナティブスペースの運営を行う彼らの活動は、公共空間の隙間に介入し、新しい行動を生み出していくための実践となっている。

この夏に宮城県の石巻で開催された『Reborn-Art Festival 2017』でも特に異彩を放っていたのが、SIDE COREの展示『RODE WORK』だった。石巻の工場跡地で繰り広げられていたのは、工事現場の作業着姿でスケートボードをする映像、シャンデリアのように吊るされた警備用工具、津波の高さまでスケボーのように乗り上げた漁船、建物の周囲に設置された波のように細長いスケートランプ……。

ストリートカルチャーと、現代美術と、被災地の刺激的な出会い。こんな空間を作った人たちは実際にどのような思いで創作を行っているのだろうか? 彼らも運営に携わる京浜島のアートファクトリー「BUCKLE KOBO」にて、SIDE COREのメンバー、松下徹に話を伺った。

最初は現代美術としてのストリートアートというものをすごく考えていた。

―普段は東京がホームなんですよね。SIDE COREはそもそもどういったモチベーションではじめられたのでしょう?

松下:SIDE CORE自体は2012年に結成したんだけど、その前にSIDE COREの基盤となる『トウキョウアーバンアーート』(2011年)という展覧会をやったんだよ。震災後の節電で止まった噴水に登ってポートレイトを撮った菊地良太や、外に出られず自宅のあらゆるものにドローイングをした田井中善意など、震災後の個人的な行動に基づいた表現を展示したんだよね。

松下徹(SIDE CORE)
松下徹(SIDE CORE)

菊地良太『stuck』(2011年) / 『トウキョウアーバンアーート』より
菊地良太『stuck』(2011年) / 『トウキョウアーバンアーート』より

―震災後のリアクションという側面が大きかったんですね。多くのアーティストが様々なアクションを起こすなかで、ストリートやグラフィティの手法に着目したのはなぜだったのでしょう。

松下:日本にはグラフィティをバックグラウンドに持ったアーティストがあまりいないけど、現代アートにはグラフィティの遺伝子はそもそも入ってるわけ。であれば、そういう遺伝子を持ったアーティストの表現の輪郭を探していきたい。それがSIDE COREのはじまりだった。グラフィティって一言で言ってもいろいろあるからね。

『SIDE CORE-日本美術とストリートの「感性」』 / SIDE CORE1回目の展示風景(左から松岡亮、井上純、小畑多丘の作品が並ぶ)
『SIDE CORE-日本美術とストリートの「感性」』 / SIDE CORE1回目の展示風景(左から松岡亮、井上純、小畑多丘の作品が並ぶ)

―それはいわゆる「現代美術」としてやりたかったのでしょうか。

松下:最初はそうだったね。現代美術としてのストリートアートというものをすごく考えていた。だから現代美術の作家とストリートのアーティストをぶつける展示もやったりしてね。なので展示の冒頭には、キース・へリングが来日した際に、ダンサーの着ていた服に描いたドローイングとその時の映像や、日本の元祖ストリートアーティストとして評価される日比野克彦の作品を、若手のアーティストたちの作品といっしょに展示をしたんだよ。

『SIDE CORE-日本美術とストリートの「感性」』展示風景 / 1988年1月、代々木公園歩行者天国でCHINOとアオピーを含むダンスクルーがブレイクダンス中、来日していたキース・ヘリングが彼らのダンスをモチーフに、歩道にチョークでライヴドローイングを行い、ダンサーの衣服にもドローイングを施した、当時の映像と服を展示。ヒップホップとストリートアート黎明期を象徴する貴重な資料
『SIDE CORE-日本美術とストリートの「感性」』展示風景 / 1988年1月、代々木公園歩行者天国でCHINOとアオピーを含むダンスクルーがブレイクダンス中、来日していたキース・ヘリングが彼らのダンスをモチーフに、歩道にチョークでライヴドローイングを行い、ダンサーの衣服にもドローイングを施した、当時の映像と服を展示。ヒップホップとストリートアート黎明期を象徴する貴重な資料

日比野克彦『HOUSE』(1983年)、『RECORD PLAYER』(1983年) / 『SIDE CORE-日本美術とストリートの「感性」』展示風景
日比野克彦『HOUSE』(1983年)、『RECORD PLAYER』(1983年) / 『SIDE CORE-日本美術とストリートの「感性」』展示風景

松下:ただ、それが2014、5年くらいから徐々に変わってきて、「ジャンルなんて関係ないっしょ」みたいな世界に入っていったんだよね。ストリートカルチャーを題材にしながらも、いろんな作家が作品を作って、路上や公共空間にいかに関わっていくかっていうプロジェクトになっていった。

―ジャンルは関係ないと思うようになったのはなぜだったんでしょう。

松下:ジャンルとか文脈じゃなくて、もっと路上での実践や、アートとしての実践に変えてこうと思ったからかな。そしてそれをどういう風に捉えるかっていう枠組みを考える。

松下徹

グラフィティライターが作品を作れば、それはもう既に現代アートになっている。

―もとからグラフィティへの期待は高かったんですか?

松下:アメリカの高校に通ってたから、当然のようにストリートアートから美術に入ったし、好きだったのね。逆に言うと、それがアートなんだと思ってた。でも一番影響されたのは大学1年のときに見た水戸芸術館の『X-COLOR/グラフィティ in Japan』(2005年)。日本のグラフィティライターだけを集めたすごい展覧会だったんだよ。

グラフィティって地域によってクセがあるんだけど、日本のグラフィティが土着的な進化を遂げて、キャラクター表現や絵画性においてある意味ですごく日本らしかった時代で、一番シーンが盛り上がってた最高のタイミングだった。何回も通って、「これだ!」って思ったよ。あれはいまやろうと思ってもできないな。

『X-COLOR/グラフィティ in Japan』(2005年)写真提供:水戸芸術館現代美術センター 撮影:齋藤剛
『X-COLOR/グラフィティ in Japan』(2005年)写真提供:水戸芸術館現代美術センター 撮影:齋藤剛

―グラフィティがアートの原体験だったんですね。そこから現代アートへどう繋がっていったのでしょう。

松下:森美術館の『六本木クロッシング2010』(2010年)でグラフィティと現代美術をボーダレスに展示してるのを見て、「ストリートアートとして現代美術に介入できるじゃん」っていうのは思ったね。それらを引き継ぐ形でSIDE COREが派生していった。ただ2010年前後くらいから、俺たちがやるまでもなく、ストリートの文脈のモノも現代美術に接続されていく時代になってきていたんだよ。

『六本木クロッシング2010』(2010年)よりHITOTZUKI(Kami+Sasu)『The Firmament』写真提供:森美術館 撮影:木奥惠三
『六本木クロッシング2010』(2010年)よりHITOTZUKI(Kami+Sasu)『The Firmament』写真提供:森美術館 撮影:木奥惠三

―私もアーティストとして活動していますが、周囲は逆にグラフィティやストリートアートの影響を受けていない作家の方が少ないとすら感じます。

松下:みんなストリートの精神を受け継いでるよね。でもそれは1960年代、日本の前衛芸術の時代から、路上への介入やハプニングがコンテクストとして元々あったからなんじゃないかな。だからグラフィティライターが作品を作れば、それはもう既に現代アートになっているよね。

Page 1
次へ

イベント情報

『開閉しろ都市』Part.1
EVERYDAY HOLIDAY SQUAD『渋谷の部屋』

2017年11月17日(金)~12月22日(金)
会場:東京都 西麻布 SNOW Contemporary
時間:13:00~19:00(水曜は21:00まで)
休廊日:日曜、月曜、火曜、祝日

『開閉しろ都市』Part.2
SIDE COREディレクター・松下徹『常磐の部屋』

2018年1月12日(金)~
会場:東京都 西麻布 SNOW Contemporary
時間:13:00~19:00(水曜は21:00まで)
休廊日:日曜、月曜、火曜、祝日

『リボーン・アートフェスティバル 東京展』

2017年10月20日(金)~12月30日(土)
会場:東京都 外苑前 ワタリウム美術館
時間:11:00~19:00(水曜は21:00まで)
休館日:月曜(12月4日は開館)
料金:大人1,000円 学生800円 大人2人券1,600円 学生2人券1,200円 小中学生500円 70歳以上700円

『カオス*ラウンジ新芸術祭2017 市街劇「百五〇年の孤独」』

2017年12月28日(木)~2018年1月28日(日)※1月からは金土日祝のみ
会場:福島県 いわき市 zittiほか、泉駅周辺の複数会場
時間:10:00~18:00
観覧料:1000円(高校生以下は無料)

プロフィール

SIDE CORE(さいどこあ)

2012年、高須咲恵と松下徹が発足し活動を開始。「都市空間における表現の拡張」をテーマに、展覧会を多数開催。近年では、街全体を使った不定形の展覧会『MIDNIGHT WALK tour』を開催。アーティストとゲリラ的な作品を街に点在させ、既存の建築や壁画、グラフィティや街を巡る。また、都内のスタジオ兼多目的スペースの運営をおこなっている。これらの活動は、公共空間のルールを紐解き、その隙間に介入し、そして新しい行動を生み出していくための実践である。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

yahyel“TAO”

音楽と映像、そしてその相互作用によって完成するyahyelの芸術表現が完全に別次元に突入したことを証明するミュージックビデオ。クライムムービーとそのサントラのような緊迫感に終始ゾクゾクする。一体いつ寝てるんですかと聞きたくなるが、監督はもちろん山田健人。「崇高」という言葉を使いたくなるほどの表現としての気高さに痺れる。(山元)

  1. 安室奈美恵の引退日に1回限りのCM放送 安室の「笑顔」集めた60秒映像 1

    安室奈美恵の引退日に1回限りのCM放送 安室の「笑顔」集めた60秒映像

  2. 大野智がNHK『LIFE!』でダンス披露 『嵐にしやがれ』とのコラボ企画 2

    大野智がNHK『LIFE!』でダンス披露 『嵐にしやがれ』とのコラボ企画

  3. 三島由紀夫作の舞台『熱帯樹』に林遣都、岡本玲ら 演出は小川絵梨子 3

    三島由紀夫作の舞台『熱帯樹』に林遣都、岡本玲ら 演出は小川絵梨子

  4. TOSHI-LOWとフェス。アーティスト兼主催者目線で、現状を語る 4

    TOSHI-LOWとフェス。アーティスト兼主催者目線で、現状を語る

  5. 『ULTRA JAPAN 2018』開催。日本におけるEDM人気の立役者が5周年 5

    『ULTRA JAPAN 2018』開催。日本におけるEDM人気の立役者が5周年

  6. 渡辺あや脚本『ワンダーウォール』、静かに話題呼ぶ京都発ドラマ地上波再放送 6

    渡辺あや脚本『ワンダーウォール』、静かに話題呼ぶ京都発ドラマ地上波再放送

  7. 安室奈美恵の1994年からの歴代CM45本を一挙公開 AbemaTVの生放送特番 7

    安室奈美恵の1994年からの歴代CM45本を一挙公開 AbemaTVの生放送特番

  8. 平手友梨奈の「予測不可能」な生き様。初主演映画『響 -HIBIKI-』が公開 8

    平手友梨奈の「予測不可能」な生き様。初主演映画『響 -HIBIKI-』が公開

  9. 崎山蒼志が戸惑い混じりに語る、『日村がゆく』以降の喧騒の日々 9

    崎山蒼志が戸惑い混じりに語る、『日村がゆく』以降の喧騒の日々

  10. Amazon.co.jpが音楽イベントのストリーミング配信を開始。その狙いを訊く 10

    Amazon.co.jpが音楽イベントのストリーミング配信を開始。その狙いを訊く