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音を使って千住の町を面白くする。アサダワタルの実践に迫る

音を使って千住の町を面白くする。アサダワタルの実践に迫る

『音盤千住』レコ発企画『聴きめぐり千住!』
インタビュー・テキスト
大石始
撮影:豊島望 編集:宮原朋之

レコードを囲んでワイワイ話し合うような環境を作ることが今回重要だと思ったんです。

—確かになにげなく録画していた商店街や都心部の映像が後から重要な価値を持ってくることはありますよね。

アサダ:当然、伝統文化も残さないといけないものではありますけど、同じようにボッタの焼ける音も残さないといけないだろうし、ダミ声は誰が残すんだ? という問題もあると思うんです。その何を大切に思うのかはタウンレコーダーの感性次第なんですよ。

—なるほど。

アサダ:こういうことを積み重ねていくことで後から意味が出てくるんじゃないかなとも思っています。『音盤千住』に入っている“さよなら、たこテラス”というトラックが象徴的です。築70年の木造平屋建てを改造した『音まち』と関わりのある『千住ヤッチャイ大学』の拠点で録音を進めていったんですが、その途上でそこを退去しなくちゃいけなくなった。すると、その録音に思いもよらず意味が出てきたんです。時間をかけて作っていくと、そういうことも起きうると思うんですね。

『千住ヤッチャイ大学』の拠点となっていた、たこテラスでの録音の様子
『千住ヤッチャイ大学』の拠点となっていた、たこテラスでの録音の様子

—そうして制作された音源が100枚限定という形でレコード化されるそうですね。なぜ不特定多数が聴ける配信やストリーミングではなく、限られた人数しか聴けないレコード、しかも非売品というリリース形態を選んだのでしょうか。

アサダ:どういう形で残すのかはさまざまな議論がありました。当初はCDにして配布することも考えたんです。地元の広報誌が各家庭のポストに投函されていくように、突然CDが投函されていたらどう思うだろう? と(笑)。

—それもおもしろいですね(笑)。

アサダ:でもふと考えてみると、突然投函されたCDをどれだけ聴いてもらえるだろうか、と。昔であれば、力道山の試合を見るためにテレビのある家までみんなが出かけていったように、限られた数だけプレスしたレコードを囲んでワイワイ話し合うような環境を作ったほうがいいんじゃないかとみんなで考えたんです。

アサダワタル

町を舞台に音で変なことをやる人が増えてくれたら嬉しい。

—1月21日に千住で開催される『聴きめぐり千住!』というレコードのリリース記念イベントでは、どんなことが行われるんでしょうか。

アサダ:まず、受付会場でこのレコードを参加者のみなさんにお貸しして、それと合わせて地図をお配りするんです。地図にある場所にはレコードのプレイヤーが置いてあって、その場所を取材したタウンレコーダーと現地の方がいます。そこで指定のトラックを聴きながら、実際に現地の方のお話を聞くことができたり、ワークショップがあったり、ダミ声の講座があったりする(笑)。そうやってレコードを実際に聴きながら、参加者は町を巡っていくことになるんですね。

アサダワタル

収録場所のひとつである「愛ちゃん」での録音風景
収録場所のひとつである「愛ちゃん」での録音風景

—まさに「聴きめぐり」しながら体験するイベントですね。

アサダ:ひょっとしたらイベントに参加するなかでタウンレコーダーになりたいと思う方もいるかもしれないし、千住の町に興味を持つ方もいるかもしれない。そういう出会いを広げるレコ発イベントにしたいなと思ってます。

—ところで、アサダさんと千住の町との縁は、いつからなのでしょうか?

アサダ:2014年から2年間、東京藝大の研究プロジェクトに関わったことがあって、そのときは千住にずいぶん通ったんです。ただ、千住のローカリティーを見つめていくような発想は今ほど具体的にはなっていませんでした。今回のプロジェクトが本格的に始まってから千住という町を意識するようになりましたね。

—アサダさんの視点で見ると、千住の町はどんなところに特徴がありますか?

アサダ:千住って東京の下町として語られることも多いですけど、僕の印象としては、どこか掴みどころのない町なんですよ。もともと宿場町だったという町の歴史は聞いてたんですけど、実際に駅に降り立ってみると、本当にいろんなものが混在している。

昔ながらの下町の風景も残っていれば、若い人もいて、今時のお店もあって、そういう多種多様な要素がつかず離れず混在としていて、そのぶん町を象徴するものが見えにくい。でも町を構成する要素は一つひとつパンチが効いてるんです(笑)。

アサダワタル

—今回のプロジェクトを通して、千住の町にどんな変化が生まれることを期待しますか?

アサダ:千住の町を象徴するようなものとして、「千住では音を使っていろいろとおもしろいことをやってるらしい」という噂が広がっていったらいいなと思います。「千住といえば、音の町でしょ?」っていうような。音が千住のシンボルになったらおもしろいと思うし、それが成功すれば、他の町にも転用できるんじゃないかとも考えているんです。

—「住み開き」にしてもそうですが、アサダさんはそれぞれの地域を見つめつつも、他の地域でも転用できるものの考え方、実践の方法論を提唱してきましたよね。

アサダ:まさにそうですね。これをキッカケに町を舞台に音で変なことをやる人が増えてくれたら嬉しいです。町では「こんなことをやってもいいんだよ」とハードルを下げていければと思うし、「こんなことをやったら怒られるんじゃないか」というストッパーを一つひとつ解禁していけたらいいですね。

アサダワタル

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イベント情報

『音盤千住』レコ発企画『聴きめぐり千住!』
『音盤千住』レコ発企画
『聴きめぐり千住!』

2018年1月21日(日)
会場:東京都 北千住 千住エリア各所

料金:無料(事前申し込み優先)
※受付・音盤貸出は仲町の家
野村誠 千住だじゃれ音楽祭 第2回定期演奏会
『かげきな影絵オペラ』

日時:2018年2月4日(日)
会場:東京都 北千住 東京藝術大学 千住キャンパス 第7ホール
出演:
野村誠
だじゃれ音楽研究会
梅津和時
川村亘平斎
神谷未穂
竹澤悦子
中原雅彦
定員:200名(先着順、事前申込優先)
料金:無料

千住・縁レジデンス 表現(Hyogen)
『茶MUSICA(チャムジカ)』

2018年1月28日(日)、2月10日(土)、11日(日・祝)、17日(土)
会場:東京都 北千住 仲町の家
参加:
表現(Hyogen)
神崎悠輔
定員:各回20名(事前申込優先)
料金:各回1,000円
※演奏とお茶の時間以外は入場無料、出入り自由

プロフィール

アサダワタル
アサダワタル(あさだ わたる)

1979年生まれ。2002年、バンド「越後屋」のドラマーとして、くるり主宰レーベルNMRより2枚のCDをリリースし解散。のちに紆余曲折を経て、大阪でNPOや寺院に勤めながらアートによる独特なコミュニティ活動を展開。2009年に提唱したソーシャルコンセプト「住み開き」が話題に。2010年以降は、音楽を軸に全国で様々なアートプロジェクトの企画演出と執筆に取り組む。著書に『住み開き』(筑摩書房)、『コミュニティ難民のススメ』(木楽舎)など。大阪市立大学都市研究プラザ特別研究員、博士(学術)。またグループワークとして、ドラムを担当するサウンドプロジェクト「SjQ/SjQ++」では、アルス・エレクトロニカ2013デジタル音楽部門準グランプリ受賞。

千住タウンレーベル

千住で生活してきた市井の人々の人生譚(記憶)、千住のまちならではの風景や人間模様にまつわるエピソード、千住に根づき息づく音楽など、これらすべてをテキスト(文字)だけではなく、「音楽」として編集し、まちなかの拠点を編集室(スタジオ)として、発信・アーカイブしていくプロジェクトです。

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