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Taiko Super Kicksが鳴らす、閉塞した世界への静かなる反抗

Taiko Super Kicksが鳴らす、閉塞した世界への静かなる反抗

Taiko Super Kicks『Fragment』
インタビュー
北沢夏音
インタビュー・テキスト:天野史彬 撮影:馬込将充 編集:山元翔一

左から:伊藤暁里、こばやしのぞみ

物語とか、体系的なものを意識することって、行き詰まりを生むこともあると思うんです。(伊藤)

—それは最初に話していただいた詩の話にも通じますね。伊藤さんは、理想論としての詩ではなく、現実を描いた詩に惹かれるという。

北沢:最初にも話したけど、タイコってステージでも決してアゲアゲな感じではなくて。じわじわと熱を帯びていって、ときどき爆発する、みたいな。それが僕はいいなと思うし、リスナーの人たちの日常も、そういうものなんじゃないかって思うんです。

伊藤:そう思います。やっぱり、一聴して「最高!」ってなるものって、消費される快楽っていう感じがするんですよね。僕らのアルバムって、パッと聴いて「うおー、最高!」と思える曲、1曲もないと思うんですよ。

北沢:そう……かもしれないね(笑)。

伊藤:でも、それが自分たちにとっては正しいなって思うんです。

Taiko Super Kicks『Fragment』収録曲

北沢:「Fragment」っていう単語は、どういうところから浮かんできたの?

伊藤:「断片」っていう単語は、前から頭のなかにあって。インスピレーション源としては、のぞみん(こばやし)に教えてもらった、ミランダ・ジュライの本とか。

こばやし:ミランダ・ジュライの『あなたを選んでくれるもの』(2015年)という本があって。なんでもない、ごく一般の人たちにインタビューしている本なんですけど、人々の生活を、誇張したり、物語にしたりするわけでもなく、ただ記述しているんです。そこに人生の断片のきらめきみたいなものが見えてくるのがすごく面白くて。

こばやしのぞみ

伊藤:そういう話を聞いたり、僕自身、保坂和志さんの『試行錯誤に漂う』(2016年)という本を去年読んだりして。そういう経験のなかから、「断片」という言葉がいろんなところから入ってきて、自分の生活のなかの大事な言葉だと感じたんです。

要は、「体系」ではないものを重要視したいと思ったんですよね。『Many Shapes』では、個々のものではなくて、「メニイシェイプスがたくさんあって、世界なんだ」っていう「体系」のことを歌っている。でも、そうじゃなくて、部分部分、「それ自体」のことを、今回は言いたかった。

Taiko Super Kicks『Many Shapes』収録曲

北沢:「断片」が浮遊する如く漂っている世界、ということ? たとえば、暁里くんの好きなリンクレイター監督の『スラッカー』(1991年)って、群像劇だけど登場人物たちが絡んでいるようで絡んでいないじゃない? ああいう、ストーリーラインがはっきりしないような感じって、「Fragment」だなって思うんだけど。

伊藤:まさに、そういうイメージです。『スラッカー』は一番と言ってもいいくらい好きな映画で、あの映画の、物語がないけどそれ自体が物語になっているような感じは、今作を作るうえでもなんとなく念頭にありました。物語とか、体系的なものを意識することって、行き詰まりを生むこともあると思うんですよ。

いまって、短期間でシステムができあがってしまったがゆえに、AmazonとGoogleとFacebookとAppleの4つに支配されているよね。(北沢)

北沢:「体系」というのを、もう少し具体的に言える?

伊藤:「意味」とか「背景」とかっていうことですね。いまは、とにかく情報が多すぎる。インターネットの影響もあると思うんですけど、なにを見るにも体系や物語を意識せざるを得ないのが嫌で。そういう世界から違う場所に行きたいって思うんです。

北沢:でも、だからといって、実際にSNSを遮断することはしないわけだよね?

伊藤:そうです。やっぱり、どれだけ「違うところに行きたい」といっても、この世界から抜け出すことはできないから。「ここから抜け出して最高の世界に行こうぜ!」って言っちゃうと、エスケーピズムになってしまうじゃないですか。そうじゃなくて、ただ、「違うところに行きたい」と思っている感じですね。

北沢:なるほどなぁ。たしかにいまって、短期間でシステムができあがってしまったがゆえに、AmazonとGoogleとFacebookとAppleの4つにほとんど支配されているよね。この四つからは逃れられない。逃れられなくはないかもしれないけど、逃れたら、取り残されてしまう……そういう感覚が、もはや植えつけられているよね。これも一種の閉塞感だと思うし。

伊藤:はい、それも「体系」のひとつだと思います。

北沢:たとえばSpotifyとApple Musicがあると、両方入る人もいるけど、「どちらかを選ぼう」って迷うでしょ。昨年、サニーデイ・サービスが『Popcorn Ballads』を配信オンリーで突然リリースしたり、この間、小沢健二くんがAppleで番組を始めたり、「これは入らざるを得ないのかなぁ」って思わされることばかりでさ(苦笑)。

左から:北沢夏音、こばやしのぞみ、伊藤暁里

北沢:それ自体は楽しいニュースだし、メディア環境の変化とともに人間の有り様が変わっていくのは当然のことで、なにをチョイスするかも自由だけど、選択肢があるようで、実はないように仕向けられているんじゃないかって。音楽以外でも、そうやって、向こうからどんどんと強力な勧誘をされることに、最近ちょっとうんざりしているんだ。僕は、そういうのも「息苦しいな」って思うことが多くて。なにも考えずにそこに乗っかれば、ある意味、快適に暮らすこともできるんだろうけどさ。

伊藤:そうですよね。でも、僕ら四人とも、なにも考えずに快適に暮らせないタイプの人間なんだと思います。

北沢:きっと、タイコのみんなにとっては、映画を見たり本を読んだりすることも、「物語」を消費していく感覚ではないんだよね。なにか気づきを得たり、心が開けるような感覚を得たくて接しているんじゃないかな。主催イベントのタイトルにカサヴェテスを持ってくる意味も、きっとそういうことなんだろうと思うし。

伊藤:まさに、そうだと思います。

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リリース情報

Taiko Super Kicks『Fragment』
Taiko Super Kicks
『Fragment』(CD)

2018年2月7日(水)発売
価格:2,484円(税込)
TSK-001

1. たたかいの朝
2. 景色になる
3. 汗はひき
4. 遅刻
5. うわさ
6. のびていく
7. バネのように
8. 悪いこと
9. 無縁
10. フラグメント

イベント情報

『Taiko Super Kicks presents “Fragment” Release Tour』

2018年3月4日(土)
会場:台湾 台北Revolver

2018年3月17日(土)
会場:愛知県 金山ブラジルコーヒー
出演: Taiko Super Kicks
mei ehara
テト・ペッテンソン

2018年3月23日(金)
会場:福岡県 福岡UTERO
出演:
Taiko Super Kicks
よあけ
yound

2018年3月24日(土)
会場:岡山県 岡山BLUEBLUES
出演:
Taiko Super Kicks
カネコアヤノ
and more

2018年3月25日(土)
会場:京都府 京都UrBANGUILD
出演:
Taiko Super Kicks
本日休演
接近!UFOズ
ギリシャラブ

2018年3月30日(金)
会場:渋谷TSUTAYA O-nest

プロフィール

Taiko Super Kicks
Taiko Super Kicks(たいこ すーぱー きっくす)

伊藤暁里(Vo,Gt)、樺山太地(Gt)、大堀晃生(Ba,Cho)、こばやしのぞみ(Dr)により結成。東京都内を中心に活動中。2014年8月、ミニアルバム『霊感』をダウンロード・フィジカル盤ともにリリース。2015年7月、『FUJI ROCK FESTIVAL'15「ROOKIE A GO-GO」』に出演。2015年12月23日、1stアルバム『Many Shapes』をリリース。そして、2018年2月7日、最新アルバム『Fragment』をリリースする。

北沢夏音(きたざわ なつを)

1962年東京都生まれ。ライター、編集者。92年『Bar-f-out!』を創刊。著書に『Get back,SUB! あるリトル・マガジンの魂』(本の雑誌社)、共著に『次の本へ』(苦楽堂)、『冬の本』(夏葉社)、『音盤時代の音楽の本の本』(カンゼン)、『21世紀を生きのびるためのドキュメンタリー映画カタログ』(キネマ旬報社)など。ほかに『80年代アメリカ映画100』(芸術新聞社)の監修、山口隆対談集『叱り叱られ』(幻冬舎)の構成、寺尾紗穂『愛し、日々』、森泉岳土『夜のほどろ』(いずれも天然文庫)の企画・編集、『人間万葉歌 阿久悠作詞集』三部作、ムッシュかまやつ『我が名はムッシュ』、やけのはら『SUNNY NEW BOX』などのブックレット編集・執筆も手がける。2017年8月、サニーデイ・サービスにとって初の単行本となる共著『青春狂走曲』(スタンド・ブックス)を上梓。

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