インタビュー

中田ヤスタカが、世界の音楽シーンから見た邦楽の今後を語る

中田ヤスタカが、世界の音楽シーンから見た邦楽の今後を語る

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:馬込将充 編集:川浦慧

中田ヤスタカが初のソロアルバム『Digital Native』を発表した。映画『何者』の主題歌“NANIMONO(feat.米津玄師)”や、“Crazy Crazy(feat.Charli XCX & Kyary Pamyu Pamyu)”、『ULTRA MUSIC FESTIVAL』の公式アンセム“Love Don't Lie(Uitra Music Festival Anthem)(feat.ROSII)”など、コラボレーションやタイアップ楽曲を数多く含んだ内容は、いわゆる「作品集」のように見えなくもない。しかし、本作の背景には中田が常々語っていた「もっと作り手にスポットが当たってほしい」という強い想いがあり、能動的に「今作りたくて作った」という、正真正銘のソロアルバムだと言っていい。

そして、非常に印象的なのが『Digital Native』というタイトルだ。現在38歳の中田はもちろん生まれてすぐにインターネットやスマホがあったわけではなく、一般的にはデジタルネイティブの世代には括られない。しかし、彼が初めてのソロアルバムにこのタイトルを冠したのは、単に時代のキーワードだというだけでなく、自身と現代の音楽に対する明確な批評眼の表れに他ならない。彼の言葉と、彼の音に、ぜひとも耳を傾けてみてほしい。

タグではなくて、アーティスト名のところに「中田ヤスタカ」とあってもいいかなって。

—ソロアルバムの構想はいつごろからあったのでしょうか?

中田:常にあったんですけど、他にやらなきゃいけないことが多くて、後回しになってたっていうか。『ONE PIECE』の楽曲とか、TOYOTAのレーシングチームの曲とか、自分の名前で出てはいるけど、作曲家としてやってる感じで、「アーティスト・中田ヤスタカ」っていう感じじゃなかった。でも、いつかそういう曲を僕のアルバムとしてまとめたいと思ってたので、「それだけやる時間が欲しいんですけど」って話をして。

中田ヤスタカ
中田ヤスタカ

—「こしじまさん(こしじまとしこ:CAPSULEのボーカリスト)以外のいろんなボーカリストをフィーチャリングしてやりたい」っていう目的が先にあったわけでもない?

中田:ないですね。別に全部インストでもよかったんですけど、曲を作ってる途中で、「歌入った方がいいんじゃない?」って思った曲に関しては、「誰に頼もうかな?」っていう作り方です。

—「中田ヤスタカ」という名義で出すことは、以前からおっしゃっている「もっと作り手にスポットを当てたい」という想いの実践であるという言い方はできますか?

中田:そうですね。音楽が聴き放題になった今、名前が「タグ」みたいなものだと思うんですよ。で、ひとつのアルバムにはいろんな音楽家の名前がタグ付けされているんだけど、そのタグではなく、アーティスト名で調べる人がまだまだ多い。だから、タグではなくて、アーティスト名のところに「中田ヤスタカ」とあってもいいかなって。

映画はわりと羨ましくて、監督・脚本・主役の名前がちゃんと前に出る。音楽もいろんな役割があるのに、そうやって並ばないで、大体アーティスト名だけで終わっちゃうじゃないですか?

—確かに、そうですね。

中田:例えば、人気のグループがあるとして、そこに関わってる作曲家の名前を一人も挙げられないファンだっていると思う。結局アーティスト名って絶大な看板で、今まで僕は自分の看板を持ってなかったから、一回看板を出してみたところです。

『Digital Native』ジャケット
『Digital Native』ジャケット(Amazonで見る

「あの歌手が歌ってる」じゃなくて、「あの人が作った」っていう聴かれ方の割合が、もうちょっと増えてもいいんじゃないかと思う。

—「フィーチャリングか、インストか」みたいな部分よりも、まずは屋号を掲げるところからスタートすることが重要だったわけですね。

中田:不思議なんですけど、洋楽で誰が好きかって話をするとき、歌手じゃなくて、トラックメイカーやプロデューサーの名前も結構出てくるじゃないですか? Skrillexとかね。でもJ-POPに限って言うと、歌手以外の名前があんまり出てこないなって。

それって聴いてる人が悪いんじゃなくて、日本で音楽を売り出そうとしてる人が、そういう人たちを歌手と合体させて隠しちゃうからなんですよね。

中田ヤスタカ

—tofubeatsみたいな人も出てきてるけど、まだ少数ですもんね。

中田:僕が高校生のときは、そういう人が結構いたんですよ。TEI(TOWA)さんみたいな、シンガーに対して曲を作るだけじゃなくて、自分のフィールドを持ってるミュージシャンがいた。

—大沢伸一(MONDO GROSSO)さんとかもそういう存在でしたよね。

中田:そうですね。シンガーとして独自の力を持ってる人を、自分のフィールドに呼んでこれる人たちが結構いたと思うんですけど、今は実力のある作曲家もみんな「呼ばれる側」になっちゃってるから、もう一回「呼んでこれる」ようなシーンがあってもいいんじゃないかなって。「あの歌手が歌ってる」じゃなくて、「あの人が作った」っていう聴かれ方の割合が、もうちょっと増えてもいいんじゃないかと思うんです。

Page 1
次へ

リリース情報

中田ヤスタカ『Digital Native』初回限定盤(2CD)
中田ヤスタカ
『Digital Native』初回限定盤(2CD)

2018年2月7日(水)発売
価格:3,564円(税込)
WPCL-12695/6

Disk1
1. White Cube
2. Crazy Crazy (feat. Charli XCX & Kyary Pamyu Pamyu)
3. Love Don't Lie (Ultra Music Festival Anthem)(feat. ROSII)
4. NANIMONO (feat. 米津玄師)
5. Source of Light
6. Digital Native
7. Jump in Tonight (feat. 眞白桃々)
8. Level Up (feat. banvox)
9. Wire Frame Baby (feat. MAMIKO[chelmico])
10. Give You More

Disk2
1. Zedd & Alessia Cara「Stay - Yasutaka Nakata Remix」
2. Steve Aoki & Moxie「I Love It When You Cry (Moxoki) -Yasutaka Nakata Remix」
3. Madeon「Pay No Mind feat. Passion Pit - Yasutaka Nakata Remix」
4. Kylie Minogue「Into The Blue - Yasutaka Nakata Remix」
5. Kylie Minogue「Get Outta My Way - Yasutaka Nakata Remix」
6. Passion Pit「The Reeling - Yasutaka Nakata Remix」
7. Sweetbox「EVERYTHING'S GONNA BE ALRIGHT - Yasutaka Nakata Remix」

中田ヤスタカ
『Digital Native』通常盤(CD)

2018年2月7日(水)発売
価格:3,024円(税込)
WPCL-12697

1. White Cube
2. Crazy Crazy (feat. Charli XCX & Kyary Pamyu Pamyu)
3. Love Don't Lie (Ultra Music Festival Anthem)(feat. ROSII)
4. NANIMONO (feat. 米津玄師)
5. Source of Light
6. Digital Native
7. Jump in Tonight (feat. 眞白桃々)
8. Level Up (feat. banvox)
9. Wire Frame Baby (feat. MAMIKO[chelmico])
10. Give You More

「今月の顔」とは?

日々数多くの情報を発信しているCINRA.NET編集部が毎月1組だけ選出する、「今月のカルチャーの顔」。ジャンルや知名度を問わず、まさに今、読者の皆さんに注目していただきたいアーティストや作家を取り上げます。

プロフィール

中田ヤスタカ
中田ヤスタカ(なかた やすたか)

'01年に自身のユニットCAPSULEにてデビュー。日本を代表するエレクトロシーンの立役者であり、Kawaiiダンスミュージックからハードなトラックまで、その独自の感性によって世界中のアーティストから支持を受けている数少ない日本人アーティスト。Madeon、Porter Robinson、Sophie(PC Music)など海外の第一線で活躍中の彼らも「強くインスパイアされたアーティスト」として中田ヤスタカの名を挙げるなど、シーンへの影響力は絶大。ソロアーティストとして、日本人初となるUltra Music Festival世界公式アンセム(2017)を手がけた「Love don't lie(feat.ROSII)」、Zedd「Stay」のリミックス、Charli XCXとのコラボが話題となった楽曲「Crazy Crazy」、国内においては映画「何者」('16)の主題歌「NANIMONO(feat.米津玄師)」などを発表している。音楽プロデューサーとしてはPerfume、きゃりーぱみゅぱみゅなど数々のアーティストを世に送り出し、国内外のポップシーンを常に牽引してきた。また、国際的なセレモニーへの楽曲提供などパブリックな作品の他、「LIAR GAME」シリーズのサウンドトラックなど、数々の映画の楽曲制作にも携わっており、ハリウッド映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」では監督であるJ・J・エイブラムスと共同プロデュースによる劇中曲も手がけた。9月1日には、日清カップヌードル チリトマトヌードル「White Mystery篇」CM曲で話題となった、中田ヤスタカの十八番とも言えるボーカルカットアップが特徴のカラフルな楽曲「White Cube」を発表。クラブシーンを核に、時代をナナメに切り取る独自のセンスによって、ゲーム、ファッション、映画まで、その活動は多岐に渡る。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

『傑作? 珍作? 大珍作!! コメディ映画文化祭』予告編

12月15、16日に座・高円寺2で開催される、Gucchi's Free School主宰の『傑作? 珍作? 大珍作!! コメディ映画文化祭』。上映される7本のうち、なんと4本が日本初上映作品(!)。予告だけでもパンチの強さが伝わってくるが、さらに各日トークショー付きという内容の濃さ。このイベントでひと笑いしてから2018年ラストスパートを迎えよう。(野々村)

  1. 入場料のある本屋「文喫」は高いのか、安いのか?店内を一足先にレポ 1

    入場料のある本屋「文喫」は高いのか、安いのか?店内を一足先にレポ

  2. ゆずが語る、ゆずへの期待を背負ったことで解放できた新たな側面 2

    ゆずが語る、ゆずへの期待を背負ったことで解放できた新たな側面

  3. Queen・フレディ在籍時の6度の日本ツアーに密着 300点超の写真収めた書籍 3

    Queen・フレディ在籍時の6度の日本ツアーに密着 300点超の写真収めた書籍

  4. ゲスの極み乙女。の休日課長こと和田理生が「テラスハウス」に入居 4

    ゲスの極み乙女。の休日課長こと和田理生が「テラスハウス」に入居

  5. 光宗薫が個展『ガズラー』を銀座で開催 ボールペンの細密画&滞在制作も 5

    光宗薫が個展『ガズラー』を銀座で開催 ボールペンの細密画&滞在制作も

  6. 鈴木康広の作品『ファスナーの船』が隅田川を運航 期間限定で 6

    鈴木康広の作品『ファスナーの船』が隅田川を運航 期間限定で

  7. 『神酒クリニックで乾杯を』に松本まりか、栁俊太郎ら&主題歌はアジカン 7

    『神酒クリニックで乾杯を』に松本まりか、栁俊太郎ら&主題歌はアジカン

  8. 「RADWIMPSからのお手紙」が100通限定配布 渋谷駅地下コンコースに登場 8

    「RADWIMPSからのお手紙」が100通限定配布 渋谷駅地下コンコースに登場

  9. 立川シネマシティの「次世代映画ファン育成計画」とは? 意図や想いを訊く 9

    立川シネマシティの「次世代映画ファン育成計画」とは? 意図や想いを訊く

  10. アジカン後藤と関和亮が語り合う、ゆとりなき今の社会に思うこと 10

    アジカン後藤と関和亮が語り合う、ゆとりなき今の社会に思うこと