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画家・仙石裕美の自由な考えを象徴する「独特の遠近法」とは?

画家・仙石裕美の自由な考えを象徴する「独特の遠近法」とは?

『FACE2018 損保ジャパン日本興亜美術賞』
インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影:豊島望 編集:久野剛士、宮原朋之

自分の絵について、人からよく「遠近感が不思議」と言われることがあります。

—制作で悩んだとき、方程式を解くように頭で解決しようとする作家も多いと思いますが、仙石さんは具体的に身体を動かすことから可能性を探ってみるんですね。

仙石:「論理的に絵を作らないといけない」というのも、思い込みが強かったぶん、コンプレックスでした。とくに留学中はそうで、これまでの美術史を受けた回答として、作品を作らなければいけないプレッシャーがすごくあった。

でも、あまり考えすぎると、それがストッパーになっていく感覚があります。論理的に考え続けなければいけないんですけど、ある瞬間、それをいったん投げ捨てる。そして自分で動いてみたときに、いい作品ができる実感があります。

仙石裕美

—裸体と草原を組み合わせるなど、ある意味で非現実的な光景を描いた作品も多いですが、作品のアイデアはどこから得ることが多いのですか?

仙石:普段の生活のたわいのない光景や人の振る舞い、会話が多いです。みんな普通にしているけど、けっこう不思議なことはあるなと思っていて。そこに焦点を当てて描いてみると、現実にある何かを描いたはずなのに、非現実的に見えてくる。人物の裸体も、非現実にも見えるんですけど、こんなに身近なものはないかなと思うんですね。

そしてたとえば、小さな鉢植えを見ているのに、それが自分を取り巻くすごく大きな草原のように思えてくる感覚がある。そこがものの見え方の不思議だと思うんです。自分の絵について、人からよく「遠近感が不思議」と言われることがあって。「遠いのにこんな大きい見え方はしないはずだ」と。でも私は絵で描かれたものが、人間のものの見方の本来のあり方だと思っているんです。

仙石裕美

—それはなぜでしょう?

仙石:たとえば100メートル先にすごく興味があるものがあって、30センチ先にそんなに興味がないものがあるとしたら、私には100メートル先のもののほうがずっと鮮明に大きく見える。それは「心理的な遠近法」と言えるものかもしれないんですけど。絵画というのは写真ではないし製図ではないので、人間の目を通した心理的な解釈の入った遠近感でものが見られる。それについては今後もっと研究したいと思っています。

フレキシブルに、考え方を変えても良いのかなと思います。

—ちなみに仙石さんは作家活動のほかに、何かお仕事はされているんですか?

仙石:ここ4年ほどは絵画教室で教えているんですが、学校を卒業後約3年は主に実用書を作っている編集プロダクションでお手伝いをしていました。

—すぐに作家で大成する人もいれば、ほかの仕事をしながら創作を続ける人もいますよね。仙石さんにとって、ほかの仕事をしながら創作して良かったと思える点は?

仙石:やっぱり、いろんな視点から刺激をもらえたことです。画家同士で話していると、どうしても共通したある考えの中で話していて、ややもすれば世界が狭まってしまうこともある。でも、その会社の方たちは、別の観点からユニークなアイデアをくれたり、私が制作面でいつの間にか思い込んでいたことに対しても、「それって大事?」とあっさり言ってくれたりするのが面白かった。

—仙石さんは「コンクールは35歳まで」ということでしたが、同年代や駆け出しの作家の中には、制作の区切りをいろいろと考えて悩んでいる人もいると思います。

仙石:私、最近は「35歳まで」と言っていたんですけど、じつは以前は「29歳まで」と言っていて、延長したこともあるんです……。

—そうなんですか(笑)。

仙石:もうちょっとやってみたいなと。だから、そこはフレキシブルに、考え方を変えても良いのかなと思います(笑)。そうすると、今回はたまたま賞をいただけたけど、結果のいかんにかかわらず、納得できることがあるのではないかと。自分が納得するまで何かをやってみるのは、すごく価値があることだと思います。

仙石裕美

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イベント情報

『FACE展 2018 損保ジャパン日本興亜美術賞展』
『FACE展 2018 損保ジャパン日本興亜美術賞展』

2018年2月24日(土)~3月30日(金)
会場:東京都 新宿 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
時間:10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜
料金:一般600円 大学生400円
※高校生以下、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方と付添の方1名、被爆者健康手帳を提示の方は無料

プロフィール

仙石裕美(せんごく ひろみ)

武蔵野美術大学油絵学科を卒業後、2年間の大学院在学後、パリ国立美術学校編入、ポスト-ディプロム修了。帰国後、個展やグループ展を中心に発表。現在に至る。主な受賞歴に2004年ホルベインスカラシップ奨学生、2014年シェル美術賞本江邦夫審査員奨励賞、2015年上野の森美術館大賞展賞候補など。

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