インタビュー

前野健太、2018年は『紅白』も出場圏内か?ひと皮むけた男が語る

前野健太、2018年は『紅白』も出場圏内か?ひと皮むけた男が語る

インタビュー・テキスト
九龍ジョー
撮影:タイコウクニヨシ 編集:山元翔一 取材協力:器と珈琲 — 織部下北沢店

前野健太

言っておきたいのは、ここに出てくるのは、すべて「今」の話なんですよ。

―しかし、競馬(“アマクサマンボ・ブギ”)やストリップ(“マイ・スウィート・リトル・ダンサー”)、ジャズ喫茶(“人生って”)といったことを歌にするシンガーソングライターも、近年はなかなかいないと思いますよ。

前野:まあ、昭和ですよね(笑)。でも、言っておきたいのは、ここに出てくるのは、すべて「今」の話なんですよ。

―“マイ・スウィート・リトル・ダンサー”では、「2017年2月」という具体的な時期を示す言葉をあえて歌詞に残していますね。

前野:あれは絶対言わなきゃなって思ったんです。だって、あの踊り子さんはそういう人だったわけでしょう?

―昨年引退したストリッパーの方のことですね。雑誌『Didion』(エランド・プレス)に寄稿したエッセイで前野さんも書いてましたけど、活動期間は2年半ぐらいでした。まさにストリップ界を駆け抜けていったという感じで。しかも前野さんのファンでもあった。「デラカブ」(ストリップ劇場「新宿DX歌舞伎町劇場」の俗称)という単語が歌詞になったのも、日本芸能史上初でしょうね(笑)。

前野:カラオケに入ったらアツいな。ぜひ歌舞伎町で歌ってほしい(笑)。

―“アマクサマンボ・ブギ”のアマクサマンボだって、数年前の話ですもんね。

前野:東京シティ競馬で実際にあった話ですからね。ジョッキーが落馬したあとも、走るのをやめなかった。“さらばハイセイコー”(1975年)みたいな競馬ファンなら誰でも知っている馬を歌った曲はありますけど、こっちはじゃあ、まったく無名な「アマクサマンボ」を残してやろうと。

もう歌泥棒ですよ(笑)。

―前野さんって、そうやって「いい遊び」をしていますよね。遊びの肥やしが歌になるっていうのは、やはり荒木一郎みたいな人を彷彿とさせる。

前野:もちろん歌ができればいいなと常に思ってはいるんですけど、たとえば女の子と会うときにそういうことを考えても、けっきょくダメなんですよね。流れがないと。

前野健太

前野:たとえば、NHKの『ジドリ』という番組のために曲を提供してほしいと言われてディレクターと打ち合わせして、向こうは「ありものでいいです」っていうのを、僕のほうから「いや、新しい曲を書きますよ」と提案したんです。で、番組のテーマを聞いたら、「人のあがきみたいなものを描けたら」って言うんですよ。でもそんなやりとりをすっかり忘れた頃に、ジャズ喫茶のママが言うわけですよ。「人生ってあがき」って。

―ジャズ喫茶ナルシス(歌舞伎町にある名店のジャズ喫茶)のママが。

前野:そう、キタ! それだ! って。もう歌泥棒ですよ(笑)。あとでママに言われましたもん。「前野さん、聴いたわよ。何あれ! 私がしゃべったまんまじゃない」って。だから、流れなんですよね。歌は意外とこちらを見てますよ。求めてもなかなかやってこないんですけど、「よし、このタイミングならお嫁にいってあげようかな」みたいな。

―そうやって歌と連れ添うわけですね(笑)。『サクラ』というアルバムタイトルについても伺えますか?

前野:候補はいっぱいあったんです。ある人と飲んでるときにそのリストを見せたら、「『サクラ』ってどうですか?」と言われて。そんな名前、リストに書いてないんですよ。そしたら、「だって前野健太は絶対に『サクラ』ってつけないでしょう?」って。たしかにつけないわ、と。でも、家に持ち帰ってあらためて考えてみたら、考えれば考えるほど、しっくりきてしまって。

―どのへんがしっくりきたんですか?

前野:今まではアルバムのタイトルに意味を込めすぎていたんです。でも、伝えるべきメッセージを託すのは曲でいいじゃないかと。で、今作はこの国で歌心を捕まえようとしてつくった曲が並ぶわけですから、「サクラ」で言い表せてる気がしたんですよ。

前野が取材に持参した制作メモ

前野:象徴としての「サクラ」にはさまざまな意味があるし、こういうスーパーメジャーな言葉に身を任せることで開けるものもあるんじゃないかと。もはや、次作以降も『サクラ2』『サクラ3』でいいんじゃないかな(笑)。

最近驚いたのが、みうら(じゅん)さんが、「酒なんか、全然おいしいと思ったことない」って言うんですよ。

―この4年半を振り返ると、映画や演劇、ダンスなど異ジャンルの作家たちとの協業も多くて、それもまた刺激になったんじゃないですか。

前野:それはもうすごくありましたね。作品自体もそうですけど、つくる課程で一緒に時間を共有できたのが大きいです。ボロボロになるまで飲んだりとか。

―また、とことん飲む人たちが多くて(笑)。

前野:もう、ひどいですよ(笑)。最近驚いたのが、みうら(じゅん)さんが、「酒なんか、全然おいしいと思ったことない」って言うんですよ。酔うために飲んでるって。

左から:みうらじゅん、安齋肇
左から:みうらじゅん、安齋肇(インタビュー:初ポルノを撮ったみうらじゅん&安齋肇が、憧れの「変態」を語る / 撮影:豊島望)

―みうらさんが前野さんを気に入ったのも、近年珍しく泥酔するまで飲む若者だったからと聞いています。

前野:酔うために飲んでるのは、僕も一緒ですからね。森山未來さんもムチャクチャ飲む人だし。ああいう普段は緊張感のある人たちが、泥酔してほんの少し緩む瞬間があって、その一瞬に強いつながりを感じたりもしました。

―森山さんと共演した『なむはむだはむ』では、舞台に立っているだけでおかしみのある前野さんの存在感が際立っていましたね。

前野:そこは未來さんに見つけてもらった部分ですよね。最初に誘われたときも、「何も考えなくていい、マエケンは舞台にいるだけで強烈だから。あとは岩井(秀人)さんがテキストを書いて、オレが踊れば大丈夫」と言ってくれて。それであの舞台に限らず、だいぶラクになった部分はありますね。「あ、身を委ねればいいんだ」って。

参考記事:子どもの言葉に悔しがる前野健太、岩井秀人&森山未來と劇に挑む
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リリース情報

前野健太『サクラ』
前野健太
『サクラ』(CD)

2018年4月25日(水)発売
価格:2,700円(税込)
PECF-1150

1. 山に囲まれても
2. 今の時代がいちばんいいよ
3. アマクサマンボ・ブギ
4. 嵐~星での暮らし~
5. 夏が洗い流したらまた
6. マイ・スウィート・リトル・ダンサー
7. 大通りのブルース
8. SHINJUKU AVENUE
9. 虫のようなオッサン
10. 人生って
11. いのちのきらめき
12. ロマンティックにいかせて
13. 防波堤

イベント情報

『前野健太 ニューアルバム 「サクラ」 発売記念ツアー ~開花宣言~』

2018年5月20日(日)
会場:東京都 渋谷 WWW X
出演:前野健太バンド
料金:前売4,000円(ドリンク別)

2018年5月31日(木)
会場:福岡県 福岡 BEAT STATION
出演:
前野健太バンド
ゲスト:ハンバートハンバート
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2018年6月1日(金)
会場:広島県 広島CLUB QUATTRO
出演:
前野健太バンド
ゲスト:ハンバートハンバート
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2018年6月2日(土)
会場:大阪府 梅田 Shangri-La
出演:
前野健太バンド
ゲスト:シャムキャッツ
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2018年6月3日(日)
会場:愛知県 名古屋 JAMMIN'
出演:
前野健太バンド
ゲスト:シャムキャッツ
料金:前売3,800円(ドリンク別)

『前野健太 ニューアルバム 「サクラ」 発売記念ツアー ~開花宣言2~ <ソロ対バン篇>』

2018年6月7日(木)
会場:宮城県 仙台 Rensa
出演:
前野健太
ゲスト:竹原ピストル
料金:前売3,800円(ドリンク別)

2018年6月22日(金)
会場:北海道 札幌 BFHホール
出演:
前野健太
ゲスト:スカート
料金:前売3,500円(ドリンク別)

2018年7月7日(土)
会場:沖縄県 桜坂劇場ホールA
出演:
前野健太
ゲスト:大森靖子
料金:前売3,500円(ドリンク別)

2018年7月12日(木)
会場:京都府 磔磔
出演:
前野健太
ゲスト:吉澤嘉代子
料金:前売3,800円(ドリンク別)

『CROSSING CARNIVAL'18』
『CROSSING CARNIVAL'18』

2018年4月22日(日)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-EAST、TSUTAYA O-WEST、TSUTAYA O-nest、duo MUSIC EXCHANGE
出演:
KOHH
Chara×韻シストBAND
GRAPEVINE(ゲスト:康本雅子)
大森靖子(world's end girlfriendとコラボライブも)
藤井隆
おとぎ話(新作の完全再現ライブ)
前野健太
Awesome City Club feat. Jiro Endo
world's end girlfriend × Have a Nice Day!
THE NOVEMBERS(ゲスト:志磨遼平(ドレスコーズ))
GAGLE(ゲスト:鎮座DOPENESS、KGE THE SHADOWMEN)
DADARAY(ゲスト:藤井隆)
WONK
Tempalay feat. JABBA DA FOOTBALL CLUB
King Gnu × Ryohu
LILI LIMIT(牧野正幸による映像とコラボ)
Emerald(ゲスト:環ROY)
料金:前売6,000円 当日6,500円(共にドリンク別)

「今月の顔」とは?

日々数多くの情報を発信しているCINRA.NET編集部が毎月1組だけ選出する、「今月のカルチャーの顔」。ジャンルや知名度を問わず、まさに今、読者の皆さんに注目していただきたいアーティストや作家を取り上げます。

プロフィール

前野健太(まえの けんた)

1979年埼玉県入間市出身。シンガーソングライター。2007年に自ら立ち上げたレーベル「romance records」より『ロマンスカー』をリリースしデビュー。2011年には第14回みうらじゅん賞を受賞。2013年1月、ジム・オルークをプロデューサーに迎え制作された4枚目のアルバム『オレらは肉の歩く朝』を発売。同年7月『FUJI ROCK FESTIVAL'13』へ出演。12月、5枚目のアルバム『ハッピーランチ』を発売。2014年、月刊「すばる」にてエッセイの連載を開始。2015年7月、KAATキッズ・プログラム2015 おいしいおかしいおしばい『わかったさんのクッキー』(台本・演出:岡田利規)の劇中歌を作曲。12月NHK番組『ジドリ』の音楽を担当。雑誌『Number Do』に初小説を寄稿。CDブック『今の時代がいちばんいいよ』を「エランド・プレス」より発売。2016年10月、初のラジオレギュラー番組「前野健太のラジオ100年後」が1422ラジオ日本で放送開始。同年12月、主演映画『変態だ』(みうらじゅん原作、安斎肇監督)が新宿ピカデリーを皮切りに全国公開。2017年2月、初舞台となる『なむはむだはむ』(つくってでる人:岩井秀人、森山未來、前野健太)に参加。東京芸術劇場にて2月18日~3月12日まで上演。同作の滞在制作の模様を密着したドキュメント映像「コドモのひらめき オトナの冒険~“なむはむだはむ”の世界~」がNHKEテレで放映された。同年3月3日初のエッセイ集『百年後』を「STAND!BOOKS」より刊行。2018年4月からNHK Eテレ『オドモTV』にレギュラー出演。

関連チケット情報

2018年12月22日(土)
前野健太
会場:日本橋三井ホール(東京都)
2019年2月24日(日)〜3月17日(日)
「世界は一人」
会場:東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

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