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ベルトラン・ラヴィエが語る園芸とコンセプチュアルアートの関係

ベルトラン・ラヴィエが語る園芸とコンセプチュアルアートの関係

ベルトラン・ラヴィエ展『Medley』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:森山将人 編集:木村直大

アーティストは、この世界に流れる不協和音のなかから、何かを抽出し、より強いアイデンティティーを付与できる人間です。

ー道路標識のように、日常生活に隠されているアートの要素を見つけることもひとつの技法と言えますか? あるいは、それはラヴィエさんにとって、ひとつの楽しみでもある?

ラヴィエ:それは多くの芸術家に共通する喜びでしょうね。「美しい」という意味のフランス語で「ピトレスク」という言葉がありますが、語源的には「絵にするに足るほど(美しい)」という意味です。つまり、現代のさまざまなプロダクトのなかからコンテキストを抜き出して作品化するということ。

私自身も、道端にあった自然石を置いただけの作品を作ったりしています。アーティストというのは、普通の自然のなかにある石にも美しさを見出すことができる人間なんですよ。矛盾かもしれないですが、私の作品は思索を促すコンセプチュアルアートであると同時に、ポップなアートでもあります。ものの見方に関して偏見を持たず、保守的でない人であれば、直接的に語りかけることのできるアートなのです。

ベルトラン・ラヴィエ

ー少し作品から離れた質問をさせてください。ラヴィエさんがスマホから自身の作品の画像を取り出して見せてくださったように、今の社会では20年前よりもはるかにたくさんの物や情報に溢れています。そういった情報過多な社会では、アーティストが作品化できる素材を見出すことの難易度も上がっているのではないでしょうか?

ラヴィエ:アーティストというのは、この世界に流れる不協和音のなかから、何かを抽出し、より強いアイデンティティーを付与したり、予想もしないアイデンティティーを付け加えることができる人間でもあります。

例えばソファと冷凍庫なんて、世界のありとあらゆるところにある。でも、この2つのなかにある別の要素を取り出して、組み合わせることで、この2つの物体は「作品」となって、大量生産された商品よりもはるかに長い時間、人々に記憶されるものになるのです。ヒマワリだって、世界に何十億本と生えています。でも、みなさんはゴッホの『ひまわり』は鮮明に記憶していますよね。あるいは、先ほどの道路標識だって、100年後のフランスには残っていないかもしれないけれど……。

ーLED化されているかもしれないし、立体映像になっているかもしれませんね。あるいは道路標識そのものが不要になっているかもしれない。

ラヴィエ:SFの世界のようにね(笑)。でも、こうやって作品になれば、別の意味を与えられて未来にも残るかもしれない。

ベルトラン・ラヴィエ

私は自由とユーモアを楽しんできました。今の若いアーティストたちには自由は少ないかもしれません。

ーそこでふと思うのは「アイデンティティーを付与する作業は、必ずしもアーティストだけに可能なことではないのでは?」という疑問です。例えばキュレーターやデザイナーも同様のことができるかもしれない。

ラヴィエ:「そうではない」と私は自信を持って断言できます。なぜならアーティストという名前を使うことで、さまざまに異なる領域へと、自由に入っていくことができるからです。キュレーターと名乗ってしまうと、できることは限られてしまう。私自身もキュレーターや舞台芸術の演出家として働いたことがありますが、やはりアーティストであることによって、非常に大きな自由を獲得できたと感じています。

例えば明日、私がふと思い立って歌をうたって録音したとします。ヘタクソかもしれないけれど、アーティストとしてはそれが可能なんです。

ベルトラン・ラヴィエ

『アトミウム、ディテール No.10』(2007年) アルミニウムにアクリル Acrylic on aluminium 210 x 247 x 13 cm  © Adagp, Paris 2018
『アトミウム、ディテール No.10』(2007年) アルミニウムにアクリル Acrylic on aluminium 210 x 247 x 13 cm © Adagp, Paris 2018

ーラヴィエさんは作家活動を始めて今年で49年を迎えたわけですが、約半世紀にわたって自由を謳歌しているんですね。

ラヴィエ:そのとおりです! 私がアーティストになったのは、最初に個展を開いた1969年と言えます。当時はまだ園芸学校に在籍していて、ヨーロッパのレンガ壁を覆う蔦や葉っぱに、白い直線が浮かぶようなペインティングをほどこしたのが最初の作品でした。それ以来、私は自由とユーモアを楽しんできました。この49年間は、とても素晴らしい時間だったと思います。

しかし、それに比べると、今の若いアーティストたちには自由は少ないかもしれません。今のアートにはより強固なマーケットが備わり、各種の財団があり、さまざまな圧力があります。そして何よりも観客が増えています。観客の増加はポジティブなことですが、一方で動きの自由、表現の自由の制約を生み出してもいる。30年前は、美術館で展覧会を行うときには動員数につながるようなアーティストの人気は問われませんでした。でも今は違います。こういった時代の変化についてはもっと真剣に考えていかなければならないでしょうね。

ベルトラン・ラヴィエ

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イベント情報

ベルトラン・ラヴィエ

『Medley』

2018年4月19日(木)~9月24日(月・振休)
会場:東京都 表参道 エスパス ルイ・ヴィトン東京
時間:12:00~20:00
休館日:ルイ・ヴィトン表参道店に準ずる
料金:無料

プロフィール

ベルトラン・ラヴィエ

1949年、シャティヨン=シュール=セーヌ(フランス)生まれ。1980年代および1990年代のアプロプリエーション(流用)アート運動に強い影響力を与えたアーティストであり、冷蔵庫やテーブルといった日常的な大量生産製品にペイントを何層も厚塗した、もしくは、ありふれた「物」を台座に置いたレディメイド作品でよく知られている。多種多彩な媒体を駆使するラヴィエの作品はこれまで世界各地で展示され、2012年にはポンピドゥーセンター(パリ、フランス)で大々的な回顧展が開催。

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