特集 PR

チャットモンチーに訊く「完結」の理由。そして今後の展望は?

チャットモンチーに訊く「完結」の理由。そして今後の展望は?

チャットモンチー『誕生』
インタビュー・テキスト
矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
撮影:高橋一生(sui sui duck)

(母親としての歌は)すっごく難しいテーマだと思います。私には安易にできないって思うんですよね。(橋本)

—「もうチャットモンチーとは名乗れない」というのは、裏を返すと、チャットモンチーとして見せるべきものや歌うべき核を自覚していて、それらと自分たちがやれることややりたいことがズレてきた、という部分があるということですよね。

橋本:今の私が、10代の頃に書いた歌詞を「懐かしいな」って言いながら歌うにはまだ早いし、「今の自分です」って歌うには遠いなあとか、そういう想いが浮かぶときもありました。歌う人って、絶対どの時代の曲でも歌えるもんだと思っていたんですけどね、ずっと。でも、歌によっては、そうじゃない部分もあるんやなって。

橋本絵莉子

—たとえば“親知らず”を今歌うと、どんな心境になりますか?

橋本:“親知らず”を歌っていると……いやあ、より親のことを想いますね。

チャットモンチー“親知らず”(2007年発表曲)(Spotifyを開く

—ラストアルバム『誕生』に入っている橋本さんが作詞した曲(“たったさっきから3000年までの話”“the key”“クッキング・ララ feat.DJみそしるとMCごはん”“びろうど”)は、直接的には書いていなくとも、やっぱり母親が息子を想っているような描写が多くて。かつてのチャットモンチーは「恋」を歌っていたけど、最後は「愛」「家族愛」を歌っているなと。

橋本:「チャットモンチーで歌って大丈夫かな」「聴いてくれてる人はどう思うかな」って、絶対昔は考えていなかったようなことを、考えるようになっていたんですよね。でも今回は、そういうセーブするようなものを外して書きました。今回の歌詞は、自分からあんまり離れてなくて、自分に近寄った感じがすごくあります。

—パーソナルな内容を歌詞にしてもいいんだと思えたのは、ユニット「橋本絵莉子波多野裕文」で、個人的すぎる内容だからチャットモンチーとしては歌えないと思って寝かせていた歌詞を出したことが、ひとつのきっかけになったとも言えますか?(2017年6月、橋本絵莉子波多野裕文インタビュー記事

橋本:そうですね、こういうのもええんやって。いつも歌詞を書くときは、チャットモンチーを聴いてくれてる人を思い浮かべてたんやなっていう気づきがありました。でも、それが悪かったとは全然思ってなくて。

—新しい扉が一個開いた、みたいな。

橋本:うん、そういう感じがありました。

—特にチャットモンチーの音楽を青春時代から聴いていて、チャットモンチーとともに年齢を重ねてきたリスナーにとっては、これから、もっと、母親としての言葉や歌を聴きたいという想いがあるんじゃないかなと思うんです。

橋本:いやあ、めちゃくちゃ難しいです……すっごく難しいテーマだと思います。やっぱりプライベートすぎるし、共感してくれる人も全員じゃないと思うから。

—親子の形も様々だし?

橋本:めちゃくちゃ個人的なことになるから、それを大きな声で歌うことの意味を考えないといけないって思う。考えすぎかもしれないけど……曲にするとなると、私には安易にできないって思うんですよね。

左から:橋本絵莉子、福岡晃子

えっちゃんはいつも、なにが大事かわかってる。(福岡)

—『誕生』に入っている“砂鉄”に関して訊かせてください。今回、この曲の作詞を高橋久美子さん(2011年に脱退。元ドラマー)にお願いした理由は?

福岡:久美子がいたときに3人で作っていたデモがあって。久美子が抜けたから入れられなかったけど、それがよかったから、最後に入れたいってえっちゃんが言って。でも、そのデモが探してもなくて。

しかも、それを今出すことに対して久美子がどう思うのかもわからないし、久美子がいいなら新しいのを書いてもらうのはどうかなって、えっちゃんが言ったんですよね。もしお願いできるのなら、お願いしてみようということで。

チャットモンチー“砂鉄”(Spotifyを開く

—久美子さんが脱退されたあと、関わりはあったんですか?

橋本:私は、やっぱり寂しさとかいろいろあって、くみこん(高橋久美子)の活動を全然見れなくて。追っているようで、全然追えてなかった。でも、「お誕生日おめでとう」だけは送ってました。別れた彼氏みたいな感じだったと思う(笑)。

福岡:私はTwitterとかFacebookもフォローしてるから、久美子がなにをしているかは知っていて。要所要所で会うこともあって、そんなに遠くは感じてなかったですね。

左から:福岡晃子、橋本絵莉子

—この曲は、詞先ですか?

橋本:はい。

—お2人から、なにかオーダーはあったんですか?

橋本:最初、なにも言ってなくて。でも悩んでるって聞いて、きくりん(制作ディレクター)が「今のチャットモンチーが歌ったらいいなってことを考えてもらえれば」と彼女に伝えたら、これが上がってきました。

—上がってきたとき、どう感じました?

橋本:いやあ、とても感動しましたね。

福岡:「めっちゃ久美子やな」って。私とえっちゃんにはない色の歌詞やなって、改めて思いました。あたまから、久美子節。よく言ってたことやなって。

—<同じクラスだったら 友達にはなってないだろうな / ジャンル違いのオタクだもん プリント回すだけの関係さ>という部分ですか?

福岡:そう、久美子がよくそう言ってました(笑)。

左から:福岡晃子、橋本絵莉子

—先日DAWAさん、imai(group_inou)さん、MINORxUさんにインタビューした際、MINORxUさんが「この歌詞は、えっちゃんが『季節のお便り Vol.1 橋本絵莉子篇』に書いた文章に対する久美子ちゃんからのアンサーだと思う」とおっしゃっていました(チャットモンチーの素顔と尊さをDAWA、imai、MINORxUが語る)。

橋本:ふふふ(笑)。至るところにメッセージが散りばめられているんですよね。本人にすっごく訊きたかったんやけど、そんなことしたらだめだと思ったから、想像なんですけど。

—<だめでもだめだめでも 許すよ>って、なかなか他人に言えない言葉ですよね。結成から今まで、お互いを受け入れ続けられた理由、お互いのリスペクトしてる部分を訊いてもいいですか?

橋本:あっこちゃんは、もう、エンジンがすごい。エンジンの塊のような人で、グーンって進んでいける人。私が心配性で立ち止まり気味やから、乗っかるのが、ちょうどいいんだと思います。私の脳にはないようなものが詰まってるし、とにかく、エンジンがすごい(笑)。

福岡:それで言ったら、真逆(笑)。よくそんなのんびりしてられるなって。

橋本:あはは(笑)。

左から:橋本絵莉子、福岡晃子

福岡:それは、悪い意味ではなくてね。やっぱり、波に追い越されそうになるときがあるんですよ。「絶対にこうしたほうがいい」とか「みんながこう望んでるよ」って言われたりして、追い風がすごい時期があって。そういうときに、よくそんな石みたいに動かんでいられるなって。でも、それがないとバンドって流されちゃうんです。だから、えっちゃんが地に足がついていて、「ここに乗ってくれたら走るよ」という感じがよかったんやと思う。えっちゃんはいつも、なにが大事かわかってるし。

Page 2
前へ 次へ

リリース情報

『誕生』初回生産限定盤
チャットモンチー
『誕生』初回生産限定盤(CD)

2018年6月27日(水)発売
価格:3,240円(税込)
KSCL-30062/3
※三方背ケース、ハードカバーブック仕様

1. CHATMONCHY MECHA
2. たったさっきから3000年までの話
3. the key
4. クッキング・ララ feat. DJみそしるとMCごはん
5. 裸足の街のスター
6. 砂鉄
7. びろうど

『誕生』通常盤
チャットモンチー
『誕生』通常盤(CD)

2018年6月27日(水)発売
価格:2,592円(税込)
KSCL-30064

1. CHATMONCHY MECHA
2. たったさっきから3000年までの話
3. the key
4. クッキング・ララ feat. DJみそしるとMCごはん
5. 裸足の街のスター
6. 砂鉄
7. びろうど

『たったさっきから3000年までの話』
チャットモンチー
『たったさっきから3000年までの話』(7インチアナログ)

2018年6月6日(水)発売
価格:1,512円(税込)
KSKL-8534

イベント情報

『チャットモンチー完結展』

2018年6月27日(水)~7月10日(火)
会場:東京都 渋谷 GALLERY X BY PARCO
時間:11:00~20:00(最終日は18:00まで)
料金:500円

プロフィール

チャットモンチー
チャットモンチー

橋本絵莉子(Guitar, Vocals, Synthesizer)・福岡晃子(Bass, Drums, Chorus, Synthesizer, Percussion etc.)。2000年徳島で結成。2005年メジャーデビュー。2006年リリースのSG『シャングリラ』がヒット。2007年リリースの2nd AL『生命力』に続き、2009年リリースの3rd AL『告白』は、オリコン初登場2位を記録。2008年には、初の日本武道館公演を開催。メジャーデビューから2年4か月での日本武道館2days公演は、女性ロックバンドとしては史上最短(※当時)で、現在のロックシーンを代表するバンドへと成長を遂げる。2011年にDr.高橋久美子の脱退により、橋本、福岡の2ピース体制となる。2014年には、サポートメンバーを迎えた体制での活動を発表し、6th AL『共鳴』を15年にリリース。そしてデビュー10周年の日本武道館公演を行い、2016年には郷里徳島で主催フェスを2daysで初開催。大成功を収めた。デュオ「橋本絵莉子波多野裕文」(橋本)やユニット「くもゆき」(福岡)での活動、CM歌唱(橋本)や徳島での多目的スペースOLUYOの運営(福岡)など、それぞれ多彩な活動を行っている。2017年11月23日、2018年7月をもって活動を「完結」させることを発表した。2018年6月27日に、ラストアルバム『誕生』をリリースする。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. 星野源、ドラマ『着飾る恋には理由があって』主題歌“不思議”ジャケ公開 1

    星野源、ドラマ『着飾る恋には理由があって』主題歌“不思議”ジャケ公開

  2. くるり・岸田繁と君島大空の共鳴するところ 歌と言葉とギターの話 2

    くるり・岸田繁と君島大空の共鳴するところ 歌と言葉とギターの話

  3. Honda新型VEZELのCMに井浦新、玉城ティナ、Licaxxxら 楽曲は藤井 風が担当 3

    Honda新型VEZELのCMに井浦新、玉城ティナ、Licaxxxら 楽曲は藤井 風が担当

  4. Puzzle Projectとは?YOASOBIの仕掛け人と3人の10代が語る 4

    Puzzle Projectとは?YOASOBIの仕掛け人と3人の10代が語る

  5. 君島大空が照らす、生の暗がり 明日を繋ぐよう裸の音で語りかける 5

    君島大空が照らす、生の暗がり 明日を繋ぐよう裸の音で語りかける

  6. 今泉力哉と根本宗子が決めたこと ちゃんと「面倒くさい人」になる 6

    今泉力哉と根本宗子が決めたこと ちゃんと「面倒くさい人」になる

  7. パソコン音楽クラブが語る「生活」の音 非日常下で見つめた自然 7

    パソコン音楽クラブが語る「生活」の音 非日常下で見つめた自然

  8. サブスク以降のバンド活動 97年生まれ、Subway Daydreamの場合 8

    サブスク以降のバンド活動 97年生まれ、Subway Daydreamの場合

  9. Huluの映像クリエイター発掘&育成企画『HU35』発足の理由とは? Pが語る 9

    Huluの映像クリエイター発掘&育成企画『HU35』発足の理由とは? Pが語る

  10. 「日本が滅びても残る芸術を作りたい」平田オリザ×金森穣対談 10

    「日本が滅びても残る芸術を作りたい」平田オリザ×金森穣対談