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なぜ電波少女にNIHA-Cが加入した?9年目に増員の決意をした背景

なぜ電波少女にNIHA-Cが加入した?9年目に増員の決意をした背景

電波少女『GXXD MEDICINE』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:西槇太一 編集:久野剛士、矢島由佳子

弱さを肯定する価値観が、音楽に限らず世間に多すぎるなって思うんですよ。(ハシシ)

—でも、新曲の“GXXD MEDICINE”は、トラックにもリリックにもポジティブな質感のある曲ですよね。去年リリースされたアルバムの『HEALTH』も、曲順を追うごとに次第にポジティブに開かれていくような感覚のあるアルバムでした。いまのハシシさんは、一概に「ネガティブ」とは言えないんじゃないですか?

ハシシ:確かに『HEALTH』の頃からポジティブな曲は増えてきていると思います。でも、限りなくネガティブ寄りのポジティブだと思うんですよ。「不幸中の幸い」くらいの温度感だったり、テーマ自体がそもそも暗かったり。なんの根拠もない励ましやポジティブなことを書いてバカだと思われても嫌だし。“GXXD MEDICINE”も、あくまでも暗いテーマに対して自分の思う気持ちを歌ったら、結果ポジティブ風になりました。バッドエンドなんですけど。

—この曲の根底にあるテーマは、どのようなものなんですか?

ハシシ:薬の話ですけど、今回は違法なものではなく医療用の薬を悪用? や過剰摂取してしまう人に対して歌っていて。僕は、そういう行為に対して全然理解できないので、完全に否定派なんですよ。いまに始まった事じゃないですけど、そういうことをやっている人たちが多いし、ヒップホップの世界でもドラッギーな表現が多くなりつつあるというか……。変な言い方をするとロック寄りになってきていると思うんです。

NIHA-C:ファッションもどんどん細身になっていますよね。あと精神性も、破滅的な方向に向かう人が多い。

—確かに、「エモラップ」(自身の憂鬱や孤独, 不安をリリックで表現したジャンル)なんていう言葉も聞きますからね。海外でもそのような、内省的な表現をする若いラッパーの人気が高いですし、そこでは所謂ドラッグディール的な表現よりも、「心の病とクスリ」といった形の表現が多い印象があります。

ハシシ:自分の身の回りにも、特に女の子なんですけど、医療薬を大量に飲んじゃう子とかいて。一種の自傷行為や快楽だと思うんですけど、時代の流れ的に、心が弱い人に対して強いことを言えない風潮があると思うんです。「頑張れよ」とか「強くなろう」って、言い辛い時代だと思う。だからこそ音楽も、心が弱い人を肯定してあげようとする曲が多くなっているし。

—確かに。

ハシシ:でも、『HEALTH』に入っていた“A BONE”もですけど、そういう心が弱い人に、俺はあえて「甘えんなよ」「しっかりしろよ」って嫌がらせで言いたいんですよ。自分の事は棚に上げて。

—“A BONE”ではまさに<ガンバレ>という言葉も出てきますもんね。

ハシシ:弱者の意見を聞くことはもちろん大事だと思うし、電波少女も昔はそうだったとは思うけど、「弱くてもいいんだよ」とか、「○○ができない。でも、それでいいじゃん」みたいな価値観が、音楽に限らず世間に多すぎるなって思うんですよ。そういう状況に対してアンチテーゼを発したいっていう気持ちがあるんですよね。

—ある種の「弱さ」を守りすぎることは、表現が規制されたりすることに繋がることもありますしね。

ハシシ:もちろん、明らかに言ってはいけないことは俺もわかっているつもりです。さっき言ったような薬を過剰摂取する子たちの中には、それに依存しなくちゃ生きていけない人がいるのもわかるし。

でも、それを始める最初のきっかけがファッションの場合もあるから。そうしたケースには、曲でなにかを伝えることに効果があるのかなって思うんですよ。言葉でなにかを言っても、その人は救えない。そこに対する無力感があって、でも、曲でなら伝わるんじゃないかって思ったんです。別に世直しをしたいわけではないけど、電波少女を聴く世代――10代や20代の子たちが考えさせられるような曲を作れたらなって。

ハシシ

—そういった“A BONE”や今回の“GXXD MEDICINE”に連なるいまのハシシさんのモードって、発端はどこにあるんだと思います?

ハシシ:25歳くらいの頃から変わり始めたんだと思います。その頃から、昔の日本語のロックバンドの歌に衝撃を受けることが多くなったんですよね。すごいパワーがあって、自分もストレートで強い言葉を歌いたいなって思うようになったんです。

—NIHA-Cさんは、今回の“GXXD MEDICINE”が、電波少女のメンバーとなって最初の曲になりますけど、この曲がハシシさんから来たとき、どういった印象を持ちましたか?

NIHA-C:薬を処方箋とは間違った使い方をしている子は俺も見たことがあるんです。でも、やっぱり止めることはできなくて。そこに対する無力感に共感しましたね。

左から:nicecream、NIHA-C

“GXXD MEDICINE”ジャケット写真
“GXXD MEDICINE”ジャケット写真(サイトを見る

—最後に、今回、こうして電波少女は新体制になりましたけど、結成当初からのオリジナルメンバーはハシシさんだけですよね。ご自身の中には、「電波少女」という名前を守ってきた、という意識はありますか?

ハシシ:まぁ、名前変えたらお客さんが減るんで(笑)。

—ははは(笑)。

ハシシ:電波少女って、来年で10年なんですよね。正直、この名前、ダサいなって思っているんですよ(笑)。でも、意地みたいなものもあるし。それに結局、アーティストがかっこよければ、その名前もかっこよく聞こえるじゃないですか。なので、特にこだわらないようにしていますね。

—なるほど。

ハシシ:あと、この名前でやっていれば、いままで電波少女を辞めていった人たちやファンじゃなくなった人たちの目にも、嫌でもチラつくと思うんですよ。なので色んな意味でこの名前でやっていきます(笑)。

左から:nicecream、NIHA-C、ハシシ

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リリース情報

電波少女『GXXD MEDICINE』
電波少女
『GXXD MEDICINE』

6月20日(水)配信リリース

イベント情報

『OWARI NO HAJIMARI』

2018年7月1日(日)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-EAST
料金:前売り4,200円(ドリンク代別)
出演:電波少女 
ゲスト:Jinmenusagi

プロフィール

電波少女(でんぱがーる)

2009年、インターネット動画投稿サイトに突如姿を現した数名の個性派MC・TMで電波少女結成。幾度のメンバー加入、脱退を経る。MC担当ハシシとパフォーマンス&ボタンを押す係担当nicecreamに、NIHA-Cが加わり、現在は3名で活動。等身大でリアルなリリックと、キャッチーなメロディーは一度聞いたら耳から離れない中毒性を持ち、ライブにおけるnicecreamのダンスパフォーマンスは、ほかでは味わえない華やかさがありライブならではの一体感を生み出している。各動画サイトにアップロードされたMVなどの映像は累計で300万再生を突破しており、今、最も注目と期待を集めているHIPHOPCREWである。2017年9月27日メジャーデビューアルバム『HEALTH』を発売。NIHA-C加入後初となる作品『GXXD MEDICINE』を6月20日に配信リリース。

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