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糸奇はな×『UNDERTALE』作者 相思相愛の音楽&ゲーム談義

糸奇はな×『UNDERTALE』作者 相思相愛の音楽&ゲーム談義

糸奇はな『PRAY』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:中村ナリコ 編集:山元翔一

自分が創作したキャラクターを表に出そうと思ったのも、『UNDERTALE』にもらった勇気のおかげ。(糸奇)

—糸奇さんから見て、キャラクターの魅力以外に『UNDERTALE』が特別な作品である点って、どういったところなのでしょうか?

糸奇:ゲームって、選択肢が出てきたときに「はい / いいえ」とか「奪う /奪わない」という二者択一を迫られることが多いと思うんです。そこで大抵の人は、1回目は普通に選んで、「次は、別の選択肢を選んでみよう」って思って、もう1回プレイしたりする。でも、『UNDERTALE』には、そういったプレイヤーの好奇心が、ゲームの世界にとってどれだけ残酷なものかっていうことを感じさせる部分もあるんです。

たとえば、間違えて大切なキャラクターを倒してしまって、リセットしてやり直したら、「今、間違えたからリセットしたよね?」と言ってくる人物が出てきてヒヤッとしたり……。そうやって、どこか見透かされているような感覚になるんですよね。

左から:トビー・フォックス、糸奇はな

—プレイヤーがゲームを見つめているだけではなくて、ゲームもプレイヤーを見つめている。

糸奇:そこには、人それぞれの「正義」の違いとかも関わってくると思うんです。バトルの場面も、「戦う」以外の選択肢があるところも面白いし、同時に、キャラ全員を倒すことができるっていう選択肢もあって、その選択肢の存在が救いだったりもするし……。「そのままでいいんだよ」ってこともそうだけど、もっと言うと『UNDERTALE』は、いろんなモンスターと人間が共存する優しい世界の可能性に対して、希望を見てもいいんだよって言ってくれたような感覚があったんですよね。

—糸奇さんは『PhantomAria』という空想の世界を舞台にした創作物語をネット上で公開されていますけど、今言ってくださった『UNDERTALE』の世界観に、もしかしたら通じるものがあるのかもしれない、と思いました。

糸奇:自分が創作したキャラクターたちをちゃんと表に出そうと思ったのも、『UNDERTALE』にもらった勇気のおかげだと思います。

『PhantomAria』より
『PhantomAria』より(サイトを見る

「フィーリング」は、音楽の一番重要な部分。(トビー)

—糸奇さんのアルバムに収録されている、2人の共作曲“74”についてもお話を伺いたいのですが、この曲はトビーさんが作詞作曲、糸奇さんが編曲と歌詞の和訳をされたんですよね。最初にトビーさんから送られてきた曲を聴いて、糸奇さんはどのように感じましたか?

糸奇:幻想的だなって思いました。最初は歌だけではじまって、そのあと、タタタタっていう半音の動きから、いきなりオクターブに動いていく……その音の動きに、透明感みたいなものを最初から感じました。オーケストレーションも、すごくトビーさんらしいというか。空虚な、空っぽなお城のなかに、小さな声がパンッと響くような……そういう情景も、音から感じられて。

糸奇はな『PRAY』収録曲

—「空虚な城に声が響く」というのは、<時だけが過ぎてゆく 孤独と 朽ちた王宮の果てで>という情景からはじまる、“74”の歌詞の世界観そのものですよね。

糸奇:トビーさんの曲は主旋律だけじゃなくて、副旋律も「歌っている」と感じられるところが美しくて。メロディー自体が、その曲の性格や物語を語っているような気がするんですよね。それは、打ち込まれている音でも、ピアノ1本の演奏でも。前に、トビーさんと即興演奏でゲームをしたことがあったんです。「雲の音」とか「太陽がシャンシャンと輝いている音」みたいなお題を出し合って、即興で弾いてもらうっていうゲームなんですけど。

—すごい、音楽家ならではのゲームですね。

糸奇:「砂漠」というお題を出すと、太陽がシャンシャンと輝いていて、他には何もない……そういう雰囲気が、トビーさんが弾くピアノだけでわかる。でも、急に低い音がドンドンと鳴って、「あ、これはたぶん黒い雲がきているな」とか、「雨が降っているな」っていう情景の展開が見えてきて、「今、雨降ったよね?」って訊くと、「そうだよ」って答えが返ってくる、みたいな。そういうことを旋律やリズムで表現できるのが、すごいなって思うんです。

普段から、足音とか、草が揺れる音とか、そういう音を視覚的に強く感じていて、それが湧いて音楽になるのかなって思うんですよね。それで、前に「色は見えますか?」って訊いたことがあったんですけど、「色は見えない」っておっしゃっていました。でも、私は彼の音楽を聴いていて、いろんな色が見えるなと思うんです。

トビー・フォックス『UNDERTALE Soundtrack』を聴く(Apple Musicはこちら

トビー:なんだか、今日は「褒めるパーティー(日本語で)」みたいだな(笑)。

—ははは(笑)。

糸奇:“74”も、音からストーリーや物語が感じられる曲で、すごいなって思います。

トビー:そうですね……フィーリングを音楽とマッチさせることは、これまですごく練習してきたことで。だから、上手くできるようになったんじゃないかな。「フィーリング」は、音楽の一番重要な部分ですから。音を作るときは、「どうすれば、ああいう感じのフィーリングが生まれるだろう?」といったふうに考えながら作るんです。僕自身、演奏の技術はあまりないほうだけど、少なくとも僕のアイデアは、音楽を通してクリアに聴こえてくれていると思います。

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リリース情報

糸奇はな『PRAY』初回生産分限定盤
糸奇はな
『PRAY』初回生産分限定盤(CD)

2018年8月7日(火)発売
価格:4,180円(税込)
PLCD-1187
※特製スリーブケース、特製立体ペーパーシアター付

1. きみでないのなら
2. ROLE PLAY
3. 74
4. Pillowman
5. A love suicide
6. 環 -cycle-
7. 不眠症ロンリーガール
8. 忘却舞踏
9. 四角い世界
10. Wither
11. 体内時計
12. あこかがれ

糸奇はな
『PRAY』通常盤(CD)

2018年8月7日(火)発売
価格:2,808円(税込)
PLCD-0003

イベント情報

『PLAY In The FRAME』

2018年9月10日(月)
会場:東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
開場 18:45 / 開演 19:30
料金:前売り4,000円 / 当日4,500円

作品情報

『Undertale』

2017年8月16日より配信
価格:1,620円(税込)(PS4,PS Vita)、980円(税込)(PC,Mac,Linux)
開発:トビー・フォックス
発売・移植:ハチノヨン

プロフィール

糸奇はな
糸奇はな(いとき はな)

英仏の歌曲を吸収したボーカルパフォーマンスと、儚い内面性を表現する歌詞世界、クラシカルな要素が強くありながらも打ち込みを駆使した現代的かつエッジーなサウンドメイクで独自の幻想的な音楽を提示するアーティスト。小学生の頃に観た『オペラ座の怪人』に衝撃を受け、憧れ、声楽を学び始めた後、オリジナル曲の制作を開始。2016年8月10日には初のフィジカル作品となる『体内時計』手づくり版を110枚限定リリースし即完売。この作品は1枚1枚手刷りした版画でCDを包みナンバリングをするという凝りに凝った作品。これが音楽関係者の間で話題となり、11月にはタワーレコード限定の全国流通版として『体内時計』レプリカ版がリリースされ話題となった。歌唱、作詞、作曲、アレンジ、打ち込み、楽器演奏、といった音楽にまつわる全てのことをひとりでこなし、それだけでなくイラスト、動画、漫画、版画、刺繍、ゲーム作りからモールス信号まで、様々なやり方で独自の世界を表現するマルチアーティスト。

プロフィール

トビー・フォックス

アメリカ合衆国の作曲家、ビデオゲーム開発者。Webコミック『Homestuck』への音楽提供、2015年発表のコンピュータゲーム『UNDERTALE』の開発で知られる。

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