
永原真夏が語る、SEBASTIAN Xの10年。活休、活動再開を経た今
SEBASTIAN X 結成10周年企画第三弾「ワンマン X」- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:馬込将充 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部) 取材協力:吉祥寺Warp
「人が変わったら、音が変わっちゃうじゃん」っていうことに関しては、すごくナイーヴなメンバーたちだと思います。
—真夏さんは常々、「SEBASTIAN Xはメンバーチェンジはない」ということを言い続けていますよね。今回は10周年インタビューでもあるので、改めてバンドの結成時を振り返って、その結びつきの強さの源を探っていきたいと思います。
永原:まず、(工藤)歩里と高校で出会ったんです。歩里は、Sex PistolsのTシャツを着て、南京錠とかつけてて、「マジかっけえ」って思ったのが最初。
永原:私たち、一緒にプリクラ撮って「THEE MICHELLE GUN ELEPHANT」って書くようなロック少女だったんですよ(笑)。
—プリクラにミッシェル(笑)。
永原:そう(笑)。最初はクラスの男子とコピバンをやっていたんですけど、「ライブハウス出てみない?」って誘われてメンバーを探していたときに出会ったのが飯田で。飯田は、歩里の幼馴染の同級生で、すでにオリジナルをガンガンやってました。そこに沖山くんも加わったんですけど、当時はみんなパンクな感じでしたね。
永原:で、高円寺とか吉祥寺のライブハウスに出るようになって、それがSEBASTIAN Xになっていくんです。
—じゃあ、最初は「パンク」がみんなの共通点だった?
永原:うーん……パンクが好きだから集まったというより、「バンドやりたいヤツ」って感じだったと思います。高校生でちゃんとバンドやりたい人ってなると、絶対数が限られるので。だから……やっぱり私たちの場合、高校生からずっと一緒っていうのは大きいんですよね。出会ったときは価値観も全然固まってなくて、4人でそれを一緒に作ってきたのかなと思う。
—一緒に価値観を形成していくなかで、「このメンバーじゃないと」っていう確信みたいなものも同時に形成されていった?
永原:単純に、「メンバーが変わっちゃうと、バンドが変わる」っていう話でもあるんですよね。「人が変わったら、音が変わっちゃうじゃん」っていうことに関しては、すごくナイーヴなメンバーたちだと思います。
「やってみないとわかんないじゃん」っていうのが自分のなかで一番リアル。
永原:あとSEBASTIAN Xは、みんなの個性を持ち寄って、アレンジを作ってきたバンドだからっていうのも大きいかもしれない。「こういう音楽をやってみよう」っていうよりも、「どうやってピアノとピアノの間を埋めるか」とか「どうやったらピアノとベースとドラムで『バンッ!』って鳴るか」とか、そういうことを考えながら作ってきたバンドなので、きっとこの4人しか知らない秘密のコツがあるんですよ。それがなくなったら、SEBASTIAN Xの音じゃなくなっちゃうっていう、シンプルな話かも。
—激しい音楽をやるのにギターレスっていう編成にしろ、アカペラから作るっていう作曲法にしろ、なかなか他には見当たらないですもんね。
永原:そうですね。それに沖山くんは左利きで、カウベルの入る位置が独特だし、ギターアンプとベースアンプを両方使うベースも飯田ならではのやり方だし、キーボードも単純にクラシック出身の上手い人がテクニックでどうこうできるものじゃない。得も言われぬコツをみんなが持ってるんですよね。ダイナミクスとかレンジとか、ミッドローの埋まり方とか、SEBASTIAN X独自のものがあって、それって研究してわかるものでもないと思う。
SEBASTIAN X『ひなぎくと怪獣』(2012年)収録曲SEBASTIAN X『イェーイ』(2014年)収録曲
—今のSEBASTIAN Xはどこかに所属するとかではなく、バンド運営も自分たちでやってるわけですよね?
永原:そうです。それを決めるのも……だいたい、ひと悶着あるんですよ(笑)。それを乗り越えてきたのも、大きいかもしれない。ずっとお世話になった事務所から独立しようってときも、もちろん、4人だけで作ってきたバンドではないっていうことはみんな重々わかっていながらも、でも「4人ではじめたことだから、もう一度4人でやろう」っていう、4人のなかではシンプルな考え方だったし。そういうことがこれまで何度もあったんです。
—SEBASTIAN Xって、ひと通り経験してるバンドじゃないですか。大手の事務所、個人事務所、インディレーベル、メジャーレーベル、そして、今は自分たちだけ。しかも、この10年は音楽業界も大きな変化の時期で。
永原:この10年はヤバかったですよね……信じられない!(笑)
—SEBASTIAN Xはその荒波を乗りこなしてきたのか、翻弄されてきたのか……。
永原:よくも悪くも、翻弄されてきたと思う。でも、翻弄されるだけの強さもあった。それは「とりあえず、やってみよう」っていう精神があったからだと思うんですよね。
「やってみないとわかんないじゃん」っていうのが自分のなかで一番リアルで、全部やってみて、翻弄される力を身につけたっていうのは、10年続いたコツかもしれない。私、どんなに強い意志があったとしても、実際の行動には勝てないと思っていて、とにかく行動して、体感していった10年だったと思うし、その10年が今の自分をマジで作ってると思います。
アイテム情報

- 「☆と詩によるスマホオーケストラ」
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SEBASTIAN Xの約3年半ぶりの新曲“愚かなる大人たちへ”の一節をあしらった、CINRA.STOREオリジナルiPhoneケース
ケース価格:4,500円(税込)
イベント情報
- 『SEBASTIAN X 結成10周年企画第三弾「ワンマン X」』
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2018年12月23日(日・祝)
会場:東京都 渋谷 WWW X
料金:前売3,300円 当日3,800円(共にドリンク別)
プロフィール

- SEBASTIAN X(せばすちゃん えっくす)
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2008年吉祥寺にて結成。ボーカル、キーボード、ベース、ドラムスからなる男女4人組。独特の切り口と文学性が魅力のVo.永原真夏の歌詞と、パワフルだけど愛らしい楽曲の世界観が話題となる。これまでにミニアルバムを含め7作品をリリースしながら精力的なライブ活動を展開。2015年赤坂ブリッツでのワンマンライブののち2年間の休止期間に入るも、2017年4月に活動再開、"TOKYO春告ジャンボリー2017"を主催し、自主制作音源『メトロポリス』をリリース。2018年、結成10周年を迎えマイペースに活動中。