
tofubeatsが音楽を続けてきたわけ。その道を極めることの面白さ
サントリー 天然水 GREEN TEA- インタビュー・テキスト
- 黒田隆憲
- 撮影:垂水佳菜 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)
「継続は力なり」ということわざがある。どんな大業を成し遂げた人も、最初からその道の達人だったわけではない。日々の積み重ねや試行錯誤によって少しずつスキルを身につけ、前進してきたからこその姿である。しかし、未熟のまま人前で披露したり、ある程度上達するまで続けたりするのは決して容易いことではない。「もう少し準備をしてから」とやらない言い訳をしたり、「自分には向いてない」とすぐに諦めてしまいがちだ。
吉田兼好による『徒然草』を、5組のアーティストがそれぞれの解釈で曲を作る『徒然なるトリビュート』。第3弾は、tofubeatsが登場。600年以上前の随筆から彼が選んだのは、臆せず人前で披露すること、下手でも続けてみることの大切さについて綴られた第150段。そこからインスパイアされた楽曲“Keep On Lovin' You”は、好きなことを継続する大切さを歌うオーガニックなミドルチューンとなった。
自らを「いわゆるプロパーのミュージシャンではない」と語るtofubeatsは、楽器が弾けなくても、譜面が読めなくても、「曲を作りたい」という熱意と、それを継続する意志さえあれば、日本を代表する音楽家になれるということを証明した1人といえよう。もちろん、類稀なる才能を持っていたからこそ、彼はここまで来ることができたのだが、未熟なままでも始めてみる勇気がなければ、道はまた違っていたかも知れない。
自分で自分をモチベートし、諦めずに続けている人が好きだというtofubeats。そんな彼のクリエイティビティーに迫った。
「とにかく始めてみること」「続けてみること」。ネットが普及した今、いろんなハードルが下がって、物事を始めやすくなっていると思う。
―トーフさんは、『徒然草』って読んだことありました?
tofubeats:今回このお話をいただいて、本屋で現代語訳の新書など買って読んでみると、何となく読んだことがあるような気もするというか。学生時代の時に読んでいたのかもしれないです。

tofubeats(とーふびーつ)
1990年生まれ、神戸在住。在学中からインターネット上で活動を行い、2013年にスマッシュヒットした“水星 feat.オノマトペ大臣”を収録したアルバム『lost decade』を自主制作で発売。同年『Dont
―改めて読んでみて、どんなふうに思いました?
tofubeats:「テキトーなやつだな、吉田兼好は」と(笑)。段によっては、ちょいちょいいいことも書いてるんですけど、あとは徒然とやっとんな~みたいな。
―(笑)。いろんなテンションの段が、ごった煮になっている感じですよね。その中で、トーフさんがこの段を選んだのは、どんな理由だったのでしょう?
tofubeats:昔からそうなんですが、自分のことをいわゆる「プロパーのミュージシャン」ではないなと思っていて。未だにミュージシャン的な素養……例えば楽器を演奏したり、譜面を読んだりということができないままなんですけど、それでも続けていれば、こうやって機材を駆使して曲が作れるようになり、スタジオを持ってプロとして活動できる。それって不思議だなあって思うんですよね。で、この段はまさにそういうことが書いてあって。
要は、続けることが大事だと思うんです。それは、自分が音楽を始めた時から思っていたことでもあって。練習もそうですけど、僕の場合は曲作りを続けてきたからこそ、他のことができなくても通用している。そういうことを、昔の人がちゃんと気づいていたのが印象的だったので、この段を選びました。
―これまでトーフさんが続けてきたこと、あるいは続けてこられなかったことって、例えばどんなことなんですか?
tofubeats:音楽のことだけで挙げてみても、結構いろいろあるんですよ。音楽を始めた早い段階で「ベースを始めよう」と思って買ったけど、すぐ挫折して。最近になってまた「ギター弾けるとかっこいいよなぁ」と思って、少なくても1年間は絶対に続ける覚悟でフェンダーの会員になったけど、5日で辞めるっていう。1年間の教則本、どうするよ……みたいな(笑)。
でも逆に言うと、いろんなことを試してみて、自分が続けられるものを探すってことも大事だと思うし、この150段で言っていることに近いんじゃないかと思いますよね。吉田兼好は「とりあえず始めてみよう」と書いているわけじゃないですか。「とにかく始めてみること」、そして「続けてみること」。それこそネットやSNSが普及した今、いろんなことのハードルが下がっていて、物事を始めやすくなっていると思うし。しかも続けていくことで、誰でもどこかで面白くなってくると思うんですよ、それは周りから見ても。
昔よりも進歩しているんですけど、じゃあどのスキルが上がったのか? と言われると、あまりわからない。
―トーフさんが「とりあえず作ってみよう」と思って、最初に作った曲は覚えていますか?
tofubeats:いやあ、ほんと酷いもんでしたよ(笑)。しかも僕、当時の音源データもちゃんと保管してあるんですよ。例えば2006年に作った曲が、ハードディスクから今すぐ立ち上げられる状態なんですよね。もちろん誰にも聴かせないけど。
―(笑)。実際に聴き直すことはありますか?
tofubeats:曲作りが難航している時に、「この頃よりはいいわ!」と思うために聴くことはあります。もちろん、今の方が進歩しているんですけど、じゃあどのスキルが上がったのか? と言われると、あまりわからないというか。相変わらず楽器は弾けないままやし、聴いてる楽曲の量が増えたりパソコンが以前よりも使いこなせるようになったりしたけど、よくよく考えてみれば当時も音楽はたくさん聴いていたし、パソコンだって操作していたわけだし。
―「使えるコードが増えた」とか、「音色を選ぶセンスが磨かれた」とかではない?
tofubeats:いや、今でも鍵盤を弾く時に「これはCだな」と思って弾かないし、そういう意味では昔と変わらないんですよ。雰囲気でやっているのは一緒なのに、15年前と比べると曲がシュッとしていることが面白いなあ、とはよく思うんです。それがきっと「続けることの面白さ」なのでしょうね。毎日自炊をやっていたら料理が上手くなっているとか、普通にあるじゃないですか。
―繰り返すことで洗練されるというか。
tofubeats:「洗練」とまでいかなくても、自分の中で明確になっていく。その人の持っている「重心」に、到達していく感覚というのかな。
―いろいろ試して挫折したこともあった中で、「曲作り」を続けてこられたのはどうしてだと思います?
tofubeats:僕にとっては「達成感」が得やすかったのかもしれない。最初の頃は、既存の曲をサンプリングして作っていたし、わりと形になりやすかったんですよ。それに比べると楽器の練習は、「完成形」が見えにくいじゃないですか。
例えば、難しいフレーズに挑戦して弾けるようになることに感動できる人だったら、きっと続けられるんでしょうけど、僕の場合は手っ取り早くカタチにならないと、モチベーションに繋がらないんですよね。パソコンとサンプリングを使った曲作りは、「できた感」がすぐに味わえる(笑)。それでどんどん好きになっていったところはありますね。
―続けていて、ちょっと飽きてしまったり、嫌になってしまったりしたことはなかったですか?
tofubeats:しんどいな、と思うことはありますけど、曲ができて「いえーい!」っていう喜びは、代えが効かないんですよ。
しかも、そこまでいったらもうこっちのもので。作った曲に納得がいかなくて、さらに新しいものを作ろうって思い始めたら、あとはもう自動的に一生曲を作っていくゾーンに入っていくわけです(笑)。「そこまでいったら安泰だよ」って僕の周りの若手にも言っているんですよね。自分で自分をモチベートさせられるものが見つかったら、それは何事でも幸せなんじゃないかなって思います。
tofubeats『“Keep On Lovin' You』ジャケット(Apple Musicで聴く)
商品情報

- サントリー 天然水GREEN TEA
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2019年4月16日(火)発売
新しい時代にあった緑茶をつくりたい。そんな思いから生まれたのが「サントリー天然水 GREEN TEA」です。目指したのは、気持ちをクリーンに、前向きにしてくれるストレスフリーなお茶。「サントリー天然水」ブランドの持つ「清々しくて気持ちいい」というイメージを活かした、新時代にふさわしい緑茶商品です。ほっと一息つきたいときだけではなく、気分をすっきりリフレッシュしたいときまで、新しい緑茶が飲まれるシーンを提案していきます。
サービス情報

- 『徒然なる トリビュート』
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約700年前、「ありのまま、自分らしくいること」の大切さを随所で綴った随筆文学、『徒然草』。サントリー 天然水 GREEN TEAのブランドメッセージとも重なるそのスタイルを、今を生きる人々へ届けたい。そんな想いから生まれたのが、この「徒然なるトリビュート」です。ありのまま、自分らしいスタイルを貫く5組のアーティストが『徒然草』を再解釈し、オリジナル楽曲を書き下ろし。MVを通じて、そのメッセージを届けていきます。
リリース情報

- tofubeats
『Keep On Lovin’ You』 -
2019年5月24日(金)配信
プロフィール

- tofubeats(とーふびーつ)
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1990年生まれ、神戸在住。在学中からインターネット上で活動を行い、2013年にスマッシュヒットした“水星 feat.オノマトペ大臣”を収録したアルバム『lost decade』を自主制作で発売。同年『Don't Stop The Music』でメジャーデビュー。森高千里、藤井隆、DreamAmi等をゲストに迎えて楽曲を制作し、以降、アルバム『First Album』(14年)、『POSITIVE』(15年)、『FANTASY CLUB』(17年)をリリース。2018年10月に4thアルバム『RUN』をリリースした。SMAP、平井堅、Crystal Kayのリミックスやゆずのサウンドプロデュースのほか、BGM制作、CM音楽等のクライアントワークや数誌でのコラム連載等、活動は多岐にわたる。