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吉田豪が見た『全裸監督』と村西とおる 過去の危ない体験談を語る

吉田豪が見た『全裸監督』と村西とおる 過去の危ない体験談を語る

『全裸監督』
インタビュー・テキスト
村上広大
撮影:沼田学 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

Twitterでも伝わる、プロインタビュアーとしての客観的な視点を持つことへの思い

―豪さんが悪のニオイに惹かれるのはなぜなんですか? そのあたりに豪さんが興味を持つ人の共通点があるような気がして。

吉田:緊張感があるからですかね。冷や汗をかきたい。これは仕事の姿勢にもしていることなんですけど、とんでもない地雷を踏みそうで踏まない、そのギリギリのところを攻めたいんです。だから、世の中で怖がられているような人とか、嫌われているような人を取材するのがすごく好きで。

たとえば、ボクの『人間コク宝』シリーズ(コアマガジン)というインタビュー集に登場する人は、半分くらい前科者なんですけど、彼らにも言い分があるんです。でも、それがちゃんと世に出ることってほとんどないじゃないですか。あっても社会正義というフィルターを通されることが多い。小林旭さんをインタビューして、「オレがヤクザとゴルフしたからって、誰が困るってんだよ」ってタイトルの記事になったことがあるんですけど、井上公造さんが「あれは僕にはできないインタビューだからうらやましい」っていってました。

ボク自身は善悪のジャッジを下さず、相手のいい分をちゃんと引き出して、読者にジャッジしてもらう。そんな姿勢で仕事を続けていたら、次第にいろんなことに巻き込まれるようになって(笑)。

―なにがあったんですか?

吉田:「この人は客観的な視点で話を聞いてくれるから」ってことでスキャンダルの渦中にいる人から連絡が来たりするんですよ。つい最近もあるマンガ家さんから女性問題で報道される前に取材してほしいと連絡があって。そういうのって受けるか受けないかは別として、お金にはならないけど面白そうだから相談には乗るじゃないですか。

吉田豪

―自分から巻き込まれにいくんですね(笑)。

吉田:ASKAさんが捕まったときも、意識的にCHAGE and ASKAのスタッフジャンパーとかTシャツを着てテレビに出ていたんですよ。たまに「Tシャツが見えないように上着のチャックを閉めてください」とかスタッフに注意されて、「E and A」しか見えなくなったりしながら(笑)。ボクとしてはちょっとしたいたずら心でもあったし、そういうことでメディアからあっさり抹殺されちゃうことへの反発心でもあったんですけど、ファンの人が「吉田豪さんがASKAさんにエールを送ってくれた!」って深読みするようになって。最終的にはASKAさんがAbemaTVの特番に出演するときに、インタビュアー2名のうちの1人としてボクが選ばれるっていう。ちなみに、もう1人のインタビュアーは亀田興毅さん(笑)。

―そういう意味では、豪さんってあんまり自分を主語として語ることは少ないですよね。

吉田:そうですね。「俺はこう思う」じゃなくて、「この人はこういう人だから、どう思うのかはあなたが考えて下さい」っていうスタンスなので、意見を押し付けたくないし、一方的に「こいつはクズだ」みたいなことは絶対にいいたくないんですよ。「さあ、みんなで考えよう」という、『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』(日本テレビ系列 / 1988〜1996年放送)の逸見政孝さんみたいな感じでやってます(笑)。

吉田豪

―そのスタンスはTwitterではけっこうわかりやすく出ていますよね。淡々と賛否のツイートをリツイートしていますし。

吉田:ボクの仕事は相手のいい分を聞くことで、それをどう思うかは読み手が決めればいいことだと思うんです。明らかに相手がどうかしたことをいっているときも、それを糾弾したりする気はないし、その間違いを掘り下げるのがボクの仕事で、それをそのまま提示したいんですよ。たまに「豪さんはどう思ってるんですか?」って聞かれることもあるんですけど、それを確認するのってすごく野暮じゃないですか? それくらい自分でジャッジしろよって。他人に判断を委ねちゃうのは絶対に危険なんですよ。

それに、すべてが善悪で判断できるとも思ってなくて。社会的には問題があるけど人間としては信用できる人とか、なにも罪を犯していないけど人間的に好きになれない人もいますから。村西監督も完全にどうかした人だし、その波乱万丈な人生は間違いなく面白い。その上で、それぞれがジャッジすればいいんじゃないですかね。

1980年代に青春時代を送った吉田の、村西とおるへの視線

―たしかに、『全裸監督』を見ても波乱万丈ぶりがよく伝わってきますよね。主人公のモデルとなった村西監督が、他の人たちと決定的に違ったものってなんだったんでしょう?

吉田:突き抜けていかがわしいかったですよね。やっぱり、次の世代のV&Rプランニングやソフト・オン・デマンドとかの名物監督なり名物社長なんかと比べると、完全に生き物として別種じゃないですか。やっぱり悪のニオイがするというか。1980年代から面白コンテンツとして村西監督を消費しようとする空気はありましたけど、それじゃ収まらないぐらいに危ない橋を渡ってきた人間ならではの凄みもあったし、言葉は丁寧だけど暴力のニオイもあった。

ボクも村西監督に取材したことがあるし、本が出るとサイン入りで送ってくれたりもしてくれるんですけど、、すごくフレンドリーな人ではあるし、いまも事務所は近所らしいんですが、一定の距離は保つようにしています(笑)。ある意味、アントニオ猪木に似ていると思ってるんですよね。事業欲が強いけど失敗していく感じや、キャラクターを演じきっているけれど実像は怖そうな感じとかが。

―それが村西監督の複雑さでもあるんでしょうね。

吉田:魅力はあるけど、下手に近づくと危険(笑)。ボクは村西監督のズレた感じが大好きなんですよね。たとえば、ある大手アイドル事務所の看板タレントのスキャンダルをネタにAVを作ったことがあるんですけど、ちょっと考えたら問題になるのはわかるじゃないですか。当然のごとく揉めて。でも、怒られると火がつくのも村西監督らしくて。

その後、過去にその事務所に所属していたアイドルを引っ張り出してきて復活させるんですけど、歌手として再起させるのかと思ったら手品を教え込むんですよ(笑)。それでパブとかをどさ回りさせる計画だったから、担ぎ上げられたほうはこんなはずじゃなかったと途中で決裂してしまう。端から見たらそうなることは予測できるんですけど、村西監督は冗談ではなく本気でやってるんです。そういうところがどうかしてますよね。

『全裸監督』場面写真
『全裸監督』場面写真

―村西監督への憧れも強いんでしょうか?

吉田:憧れというか、やっぱり思春期に衝撃を受けたリビング・レジェンドではありますからね。個人的に嬉しかったのは、2007年に幕張メッセで行われた『アダルト・トレジャー・エキスポ』というアダルトトイとかAVの展示会に呼ばれたことで。掟ポルシェと一緒にトークショーをすることになったんです。その前説を村西監督があの名調子でやってくれて。そのときに「自分もここまで昇り詰めたか」と感動しましたね。このイベント、クレイジーケンバンドとかZEEBRAとかマキシマム ザ ホルモンとかボーイズIIメンとか、めちゃくちゃ豪華な人たちのライブもあって。でも、ライブのブースだけ別料金だったから、ボーイズIIメンとか人が全然入ってなかったですけど(笑)。

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作品情報

Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』

Netflixにて全世界独占配信中
総監督:武正晴
監督:河合勇人、内田英治
原作:本橋信宏『全裸監督 村西とおる伝』(太田出版)
音楽:岩崎太整
出演:
山田孝之
満島真之介
森田望智
柄本時生
伊藤沙莉
冨手麻妙
後藤剛範
吉田鋼太郎
板尾創路
余貴美子
小雪
國村隼
玉山鉄二
リリー・フランキー
石橋凌

プロフィール

吉田豪(よしだ ごう)

1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。

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