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2020年東京オリンピック以降を問う。美術家と建築家が見る景色

2020年東京オリンピック以降を問う。美術家と建築家が見る景色

『TOKYO 2021』
インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:八田政玄 編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部)

建築は団体競技的。話し合ううちに、何かが像を結び、その場にいる全員がハッとする瞬間があるんです。(中山)

『TOKYO 2021』の建築展は、8月3日から8月24日にかけて開催された。それは模型や写真を並べた展覧会とは全く異なる。気鋭の建築家13人が公募参加者と複数チームを組み、未来への提言として、ある課題に1か月かけて取り組み、議論するプロセスを公開するというものだ。ここでは、開催前に行ったキーパーソン2名のインタビューを紹介したい。

参加建築家は、土木、オフィス、商業空間、美術展会場など、得意領域も多様なメンバー。そして課題は、都心にある1㎢の敷地を対象に大規模開発プロジェクトを考え、議論することだという。ディレクションは建築家の中山英之が担った。

『TOKYO 2021』建築展

―中山さんがこのような建築展を考案した真意はどんなものでしょう?

中山:建築は基本的に大きな経済規模で動き、人々が関わる時間も長いものです。そしてしばしば、予想を超えた広がりも生む。

たとえば、建物単体の例ではありませんが、明治神宮は森を含めて全てが人工的な空間です。表参道は全国から寄進された木を運び上げるために掘り出されたスロープだったし、森の生育は今もって長期計画の途上にある。現代の都市を考えることもそんなふうに、より広い視野と長い射程の中にありたいと思いました。

中山英之(なかやま ひでゆき)<br>1972年福岡県生まれ。1998年東京藝術大学建築学科卒業。2000年同大学院修士課程修了。伊東豊雄建築設計事務所勤務を経て、2007年に中山英之建築設計事務所を設立。2014年より東京藝術大学准教授。主な作品に「2004」、「O邸」、「石の島の石」、「弦と弧」、「mitosaya薬草園蒸留所」、「Printmaking Studio / FMC」主な著書に『中山英之/スケッチング』(新宿書房)、『中山英之|1/1000000000』(LIXIL出版)『, and then: 5 films of 5 architectures/建築のそれからにまつわる5本の映画』(TOTO出版)。
中山英之(なかやま ひでゆき)
1972年福岡県生まれ。1998年東京藝術大学建築学科卒業。2000年同大学院修士課程修了。伊東豊雄建築設計事務所勤務を経て、2007年に中山英之建築設計事務所を設立。2014年より東京藝術大学准教授。主な作品に「2004」、「O邸」、「石の島の石」、「弦と弧」、「mitosaya薬草園蒸留所」、「Printmaking Studio / FMC」主な著書に『中山英之/スケッチング』(新宿書房)、『中山英之|1/1000000000』(LIXIL出版)『, and then: 5 films of 5 architectures/建築のそれからにまつわる5本の映画』(TOTO出版)。

中山:一方、いま大学で建築を教えていますが、このところの学生たちの卒業制作には「シェアハウス」や「シャッター街の再生」のような縮小社会を見据えたものがとても目立ちます。けれども、世界的な視野で見たら前回のオリンピックから地球の人口はほぼ倍増して、今も増え続けている。次の時代を背負う人たちが大きな課題に向き合いにくい状況を、自分たちの教育が生み出してしまってはいないかと、心を痛めてもいました。

―建築教育における課題の多くは架空の設計だとすれば、よりスケールの大きい挑戦があってもいい。でも社会状況や様々な要因から、実際はそれが非常に少ないということでしょうか。

中山:そうですね。だから今回は、僕ら建築家と参加者、さらに戸田建設の社員さんたちが一緒に「2021年以降の東京」のような大きな視野の課題に取り組み、かつそのプロセスを公開してみたいと考えたのです。最終日にはひとつに統合したプランを発表し、ゲストを招いて批評し合う公開討論会も行います。

中山英之
中山英之

中山:講評会は建築系の大学では日常的なものですが、そこで交わされる言葉って、すごく面白いんですよ。架空の計画を討議し合うという意味では、知的なエンターテインメント性もあると思います。そうした討議の中で、「こうしたら?」「いや、こうでしょ」と話し合ううちに、新しい何かが像を結び、その場にいる全員がハッとする瞬間があったり。今回もそんな場が生まれたらいいですね。

東京は小さな地域=「島」からなる、集合体=「島京(とうきょう)」に変容したともとれる。その将来を「島」スケールの新たな開発プランを通じて考えていきます。(藤村)

―藤村龍至さんは今回、中山さんに指名されて課題を作成したそうですね。「島京(とうきょう)2021」と名付けられたこの課題は、都心にある1㎢の敷地を対象に、予算1兆2000億円の開発プランを考えるというものです。そこにはどんな意図が?

藤村:東京では1990年代まで、行政主導で「多心型の都市」という目標が示され、2000年代以降はバブル崩壊後の「都市再生」が目指された20年だったと言えます。その過程で大手町、日本橋、京橋、銀座、六本木、渋谷、品川など、地域ごとのイメージが際立っていき、競争も本格化した。結果、渋谷が生活文化の街、日本橋が歴史の街、というように各所の個性が打ち出されます。

藤村龍至(ふじむら りゅうじ)<br>建築家。1976年東京生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2005年藤村龍至建築設計事務所(現RFA)主宰。2010年より東洋大学専任講師。2016年より東京藝術大学准教授。2017年よりアーバンデザインセンター大宮(UDCO)副センター長 / ディレクター、鳩山町コミュニティ・マルシェ総合ディレクター。2018年より日本建築学会誌『建築雑誌』編集委員長。住宅、集合住宅、公共施設などの設計を手がける他、公共施設の老朽化と財政問題を背景とした住民参加型のシティマネジメント、ニュータウン活性化、中心市街地再開発のデザインコーディネーターとして公共プロジェクトに数多く携わる。
藤村龍至(ふじむら りゅうじ)
建築家。1976年東京生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2005年藤村龍至建築設計事務所(現RFA)主宰。2010年より東洋大学専任講師。2016年より東京藝術大学准教授。2017年よりアーバンデザインセンター大宮(UDCO)副センター長 / ディレクター、鳩山町コミュニティ・マルシェ総合ディレクター。2018年より日本建築学会誌『建築雑誌』編集委員長。住宅、集合住宅、公共施設などの設計を手がける他、公共施設の老朽化と財政問題を背景とした住民参加型のシティマネジメント、ニュータウン活性化、中心市街地再開発のデザインコーディネーターとして公共プロジェクトに数多く携わる。

藤村:こうした流れは、東京が小さな地域(島)からなる集合体「島京(とうきょう)」に変容したともとれる。近年目立つ、地下鉄駅直結の複合型巨大建築など、日本独自の要素も生まれ、2020年の『東京オリンピック・パラリンピック』は「都市再生」の総仕上げとも見なせます。

ただ、「島」ごとの発展は成功例が各所で模倣されたりすると、新たな均質化の心配もある。今回の課題ではそうした現状をふまえ、東京の将来を「島」スケールの新たな開発プランを通じて、皆で考えていきます。

Video : Takamitsu Miyagawa

―それは単なるアイデア合戦にとどまらず、歴史を読み解き直すことにもつながる?

藤村:そう期待したいです。1960年代は建築家たちによる大きな都市計画が活発に提案されたまぶしい時代で、今はそうしたものは非常に少ない。一方、現実社会のプロジェクトとしては、1960年代に超高層ビルの先駆けとなった霞が関ビルがあり、21世紀に入っても六本木ヒルズや東京ミッドタウンなど、開発は続いています。

このあたりは俯瞰すると一種の捻れもあるように思えて、そこから「もうひとつの東京建築史」も議論できたらと思います。そうした議論を幅広い層の来場者にいかに伝えられるかも、工夫したいですね。

藤村龍至
藤村龍至
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イベント情報

『TOKYO 2021 課題「島京2021」』

2019年8月3日(土)~8月24日(土)
会場:東京都 京橋 TODA BUILDING

『TOKYO 2021 un/real engine - 慰霊のエンジニアリング - 』

2019年9月14日(土)~10月20日(日)(毎週火曜日定休)
会場:東京都 京橋 TODA BUILDING
料金:無料(Peatixサイトより事前登録)

プロフィール

藤元明(ふじもと あきら)

1975年東京生まれ。東京藝術大学美術学部大学院デザイン専攻修了。FABRICA(イタリア)に在籍後、東京藝術大学先端芸術表現科非常勤助手を経てアーティストとして活動。都市における時間的/空間的余白を活用するプロジェクト「ソノ アイダ」を主催。人間では制御出来ない社会現象をモチーフとして、様々な表現手法で作品展示やアートプロジェクトを展開。主なプロジェクトに「NEW RECYCLE®」、広島-New Yorkで核兵器をテーマに展開する「Zero Project」など。2016年より開始した「2021」プロジェクトは現在も進化中。

永山祐子(ながやま ゆうこ)

1975年東京都生まれ。1998年昭和女子大学卒業後、青木淳建築計画事務所を経て、2002年永山祐子建築設計設立。2005年JCDデザイン賞2005奨励賞を受賞した「ルイ・ヴィトン京都大丸店」にて注目を集める。2006年AR Awards(UK)優秀賞「丘のあるいえ」、2014年JIA新人賞「豊島横尾館」、2018年山梨県建築文化賞、JCD Design Award銀賞、東京建築賞優秀賞「女神の森セントラルガーデン」等国内外受賞多数。現在、ドバイ万博日本館(2020年)、新宿歌舞伎町の高層ビル(2022年)などの計画が進行中。

中山英之(なかやま ひでゆき)

1972年福岡県生まれ。1998年東京藝術大学建築学科卒業。2000年同大学院修士課程修了。伊東豊雄建築設計事務所勤務を経て、2007年に中山英之建築設計事務所を設立。2014年より東京藝術大学准教授。主な作品に「2004」、「O邸」、「石の島の石」、「弦と弧」、「mitosaya薬草園蒸留所」、「Printmaking Studio / FMC」主な著書に『中山英之/スケッチング』(新宿書房)、『中山英之|1/1000000000』(LIXIL出版)『, and then: 5 films of 5 architectures/建築のそれからにまつわる5本の映画』(TOTO出版)。

藤村龍至(ふじむら りゅうじ)

建築家。1976年東京生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2005年藤村龍至建築設計事務所(現RFA)主宰。2010年より東洋大学専任講師。2016年より東京藝術大学准教授。2017年よりアーバンデザインセンター大宮(UDCO)副センター長/ディレクター、鳩山町コミュニティ・マルシェ総合ディレクター。2018年より日本建築学会誌『建築雑誌』編集委員長。住宅、集合住宅、公共施設などの設計を手がける他、公共施設の老朽化と財政問題を背景とした住民参加型のシティマネジメント、ニュータウン活性化、中心市街地再開発のデザインコーディネーターとして公共プロジェクトに数多く携わる。

黒瀬陽平(くろせ ようへい)

1983年、高知生まれ。美術家、美術批評家。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。『思想地図』公募論文でデビュー。美術からアニメ・オタクカルチャーまでを横断する鋭利な批評を展開する。また同時にアートグループ「カオス*ラウンジ」のキュレーターとして展覧会を組織し、アートシーンおよびネット上で大きな反響を呼ぶ。著書に『情報社会の情念 —クリエイティブの条件を問う』(NHK出版)。

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