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107人の天才に学ぶ「クリエイティブ」困難を乗り越える武器になる

107人の天才に学ぶ「クリエイティブ」困難を乗り越える武器になる

『天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:鈴木渉 編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

プッシー・ライオットはクリエイティブを「社会変革」のための手段として使っていて、常にユーモアやアイロニーがあるよね。

―ところで、この映画を作るにあたり「この人には絶対にインタビューしたい」と思ったのは誰ですか?

ヴァスケ:もちろんホーキング博士もそのひとりだし、デヴィッド・ボウイには絶対に出てほしかった。ボウイやイギー・ポップ(アメリカ出身のロックミュージシャン、The Stoogesのボーカル)、イアン・カーティス(イギリス出身のロックミュージシャン、Joy Divisionのボーカル)は、私がベルリンでDJをやっていた頃から憧れの存在だからね。

サーチ&サーチのポール・アーデンもそう。そういう人たちと出会ったことで、私の物事を見る視点は変わったし、そうした経験を、より多くの人と共有したいという思いでこの映画を作っている。

―実に30年分のインタビューがアーカイブされている映画ですが、時代によってクリエイティブの捉えられ方も変化したと感じますか?

ヴァスケ:ここ数年は特に、活動家のクリエイティビティが変わりつつあるように感じているよ。映画の中にも登場するプッシー・ライオット(ロシア出身のパンク集団。音楽活動や無許可のゲリラ演奏を行っている)は、自分たちのクリエイティブを「社会変革」のための手段として使っていて、パフォーマンスには常にユーモアやアイロニーがあるよね。2018年の『FIFA ワールドカップ』ロシア大会決勝でピッチに乱入したのも、まさに先ほど話した「何か驚かせてくれるもの」だった。彼女たちのクリエイティブには「勇気」も必要だ。

プッシー・ライオットの活動の様子

ヴァスケ:最近は、地球温暖化についての話題が大きく取り沙汰されている。もちろん、我々が取り組んでいくべき重要項目だが、それをどう訴えていくか? というところでグレタ・トゥーンベリさんのスピーチには感銘を受けた。彼女の行動は非常にクリエイティブで、人々の関心を引きつけたと思う。先ほど話した香港デモの件もそう。中国の全体主義に対抗するため、若者たちは抵抗の仕方をとてもクリエイティブに考えている。

国連の気候行動サミットで演説をした、16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリ。怒りをあらわにしたスピーチが話題になった

アーティストは自分の「宿命」を受け入れるしかないし、作り続けることで問題に対処する以外にないのだろうね。

―先ほどヴァスケ監督は、「政治にもクリエイティビティが必要だ」とおっしゃいました。それには同意するのですが、「社会変革」を目指す活動家のクリエイティブと、社会を「維持すること」が職務である政治家のクリエイティブが、ぶつかり合うことなく共存することは可能だと思いますか?

ヴァスケ:君の言わんとしていることはよく分かるよ(笑)。もしひとつ例を挙げるとしたら、『ノーベル平和賞』を受賞したヴァーツラフ・ハヴェルのエピソードが適切だろう。彼はチェコの劇作家であり、大統領も経験した人物で、「ビロード革命」(1989年にチェコで勃発した民主化革命)のときは市民フォーラムの代表も務めている。作家時代は投獄までされた人物が、後に大統領となって自らのクリエイティブを政治に持ち込み大きな影響力をもたらしたんだ。文字通り国を引っ張っていったわけだよね。

彼のような人物が、政治の場にもっと出て行けば世の中はよりよくなっていくと思う。今はポピュリズムが台頭していて、なかなか難しいことだとは重々承知しているけどね。

ハーマン・ヴァスケ

―多くのアーティストが自身のクリエイティブを「幸福なもの」とは考えていないことにも衝撃を受けました。イザベル・コイシェ(スペイン出身の映画監督。映画『死ぬまでにしたい10のこと』『エレジー』などを監督)も、「クリエイティビティはウィルスと一緒。否応なしに巻き込まれる。クリエイティビティのある人は幸せになれない」と話していますし、デヴィッド・ホックニー(イギリス出身の画家)も「それ(クリエイティビティ)しかなかったから仕方ない」「やむを得なくてアーティストになった、そうしないと人生に耐えられない」と話しています。

ヴァスケ:「なぜものを作るのか?」という原点の話だね。人によってそれは親の影響であり、性的衝動であり、野心や恐れからくる場合もある。そんな中、ホックニーは「突き動かされるようにアーティストになった」と話していて、山本耀司も「強迫観念から作り続けていることの辛さ」について語っていたと思う。「やめたくてもやめられない」「スイッチ・オフができない」と、多くのアーティストが打ち明けてくれた。彼らは自分の「宿命」を受け入れるしかないし、作り続けることで問題に対処する以外にないのだろうね。

山本耀司へのインタビューの様子
山本耀司へのインタビューの様子
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作品情報

『天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~』
『天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~』

2019年10月12日(土)から新宿武蔵野館ほか全国で順次公開

監督:ハーマン・ヴァスケ
出演:
デヴィッド・ボウイ
クエンティン・タランティーノ
ジム・ジャームッシュ
ペドロ・アルモドバル
Bjork
イザベル・ユペール
スティーヴン・ホーキング
マリーナ・アブラモヴィッチ
ヤーセル・アラファト
Bono
ジョージ・ブッシュ
ウィレム・デフォー
ウンベルト・エーコ
ミハイル・ゴルバチョフ
ミヒャエル・ハネケ
ヴェルナー・ヘルツォーク
サミュエル・L・ジャクソン
アンジェリーナ・ジョリー
北野武
ジェフ・クーンズ
ダイアン・クルーガー
スパイク・リー
ネルソン・マンデラ
オノ・ヨーコ
Pussy Riot
ほか
上映時間:88分
配給:アルバトロス・フィルム

プロフィール

ハーマン・ヴァスケ

ドイツ・ベルリン出身の映画監督であり作家でありプロデューサーである。監督としては、ハーヴェイ・カイテル、デビ・メイザー、スーパーモデルのナジャ・アウアマンが出演の短編映画『Who Killed the Idea?(原題)』(2003年)、マリーナ・アブラモヴィッチ、スラヴォイ・ジジェク、エミール・クストリッツァ、アンジェリーナ・ジョリーらを出演に迎えた『Balkan Spirit(原題)』(2012年)を手掛ける。近年は、ダイアン・クルーガー、ヴィム・ヴェンダース、ジュリアン・シュナーベル、マイケル・マドセン、エド・ルシェ、フランク・ゲーリー、クリス・クリストファーソン、ハリー・ディーン・スタントンら出演の『Dennis Hopper: Uneasy Rider(原題)』(2016年)を手掛けた。これまで、グリメ賞(ドイツのエミー賞に匹敵する賞)受賞をはじめ、カンヌライオンズなどを含め1000以上の賞を受賞している。ドイツ・アート・ディレクターズ・クラブの会員であり、トリーア応用芸術科学大学で教授として教鞭をとり、ヨーロピアン・フィルム・アカデミー(EFA)の会員でもある。

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