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ROTH BART BARON×田中宗一郎 終わりゆく2010年代の果てで

ROTH BART BARON×田中宗一郎 終わりゆく2010年代の果てで

ROTH BART BARON『けものたちの名前』
インタビュー・テキスト・編集
山元翔一(CINRA.NET編集部)
撮影:木村篤史

「疑問を持つこと、いろんなことを知っていくことは、唯一カウンターの条件だと思う」。そう筆者に語ってくれたのは、GEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポーだったわけだが、今、自分がどのような世界に生きているのかということを正確に把握するのは、とても難しい。この国の経済は右肩下がりで、正解のない世界で人々はあらゆることでいがみ合い、分断と衝突を繰り返している。資本主義という巨大な構造のなかで、私たちの一つひとつの選択が未来にどのような影響を及ぼしていくのか、想像してもしきれない。この混沌とした時代の渦中で、あなたが私と同じように世界を少しでもよりよくしたいと願っているのだとしたら、知らなければいけないことは無数にある。

終わりゆく2010年代へのたむけたるROTH BART BARON『けものたちの名前』のリリースに先駆け、フロントマンの三船雅也と音楽評論家・田中宗一郎による対談を実施した。CINRA.NETでは、その3時間にも及んだ対話を前編と後編に分けて記事にする。前編は、「PALACE」というコミュニティー作りとクラウドファンディングの可能性について。僕らは一体、どんな未来を夢見ることができるのだろうか。

2010年代の終わり。音楽産業は行き詰まり、資本主義の見直しが進む

―もうまもなく2010年代も終わり迎えますが、ROTH BART BARONは「PALACE」という自らの場所を作り上げて成熟させ、クラウドファンディングをより実践的に用いた活動をしていますよね。2019年において、かなり自覚的にバンドのあり方と可能性を提示していると思うのですが、そもそもの前提となる現状認識についてお話しいただきたいです。

三船:たとえば、今年の『Coachella Festival』でバンドのヘッドライナーが1組だけだった話も含めて、そもそもバンドとして生きていくことがすごく大変な時代で。前提としての音楽産業の話をすると、レコード会社との契約って、システム側が儲かるために作られた契約書にみんなサインするんですけど、それもミュージシャンが損する内容になっている。

その会社との契約が切れても、自分たちの歌を歌うのにも、音源を売るためにもレコード会社に許可を得る必要があったり。俺らはバンドをはじめたときからいろんな人が声をかけてくれたんですけど、全部契約書には目を通してたんです。自分の幼少期の体験からか、あんまり大人を信用してなくて(笑)。

三船雅也(みふね まさや)<br>2人組フォークロックバンド・ROTH BART BARONのフロントマン。2018年、3rdアルバム『HEX』を発表し、『Music Magazine』『The Sign Magazine』をはじめ多くの音楽メディアにて年間ベストにランクイン。2019年、ファンコミュニティー「PALACE」の有料版「PALACE Premium」が始動。11月20日には4thアルバム『けものたちの名前』のリリースを控える。
三船雅也(みふね まさや)
2人組フォークロックバンド・ROTH BART BARONのフロントマン。2018年、3rdアルバム『HEX』を発表し、『Music Magazine』『The Sign Magazine』をはじめ多くの音楽メディアにて年間ベストにランクイン。2019年、ファンコミュニティー「PALACE」の有料版「PALACE Premium」が始動。11月20日には4thアルバム『けものたちの名前』のリリースを控える。

三船:The Nationalのエンジニアのジョナサンくん(The National『Sleep Well Beast』などを手がけるジョナサン・ロウ)と一緒にやりたいと思って、自分たちで連絡を取って制作を進めていたとき、ありがたいことに何社からか連絡をもらって。でも、みんな最初にお金の話をするんです。「やれることだけやって、売れてからさ」って。

でも、売れる未来なんて保証されてないわけ。売れることを基準にすべてが考えられているけど、売れないバンドなんて死ぬほどいるじゃないですか。でもやりたいことがある。お金を基準に考えると、アイデアが死んでいっちゃうんだよね。

ジョナサン・ロウがミックスを手がけた『ロットバルトバロンの氷河期』を聴く(Apple Musicはこちら

田中:ポップミュージックのビジネス的な側面で言うと、1950年代からシステムはずっと変わってきてるわけですよ。最初はもうひどくてさ、搾取の構造しかない。それが少しずつ是正され、パンクの時代には、よりDIYなアイデアや利権を分け合うアイデアが生まれた。

今だと一番よく話題になるのは、レーベルよりもディストリビューター(流通)のほうがプレゼンスをあげている、ということで。大きな流れとして、レーベル、マネジメント、ディストリビューション、リテーラー(小売)っていう仕組みが再定義されていることが前提としてある。

田中宗一郎(たなか そういちろう)<br>編集者、音楽評論家、DJ。1963年、大阪府出身。雑誌『rockin'on』副編集長を務めたのち、1997年に音楽雑誌『snoozer』を創刊。同誌は2011年6月をもって終刊。2013年、小林祥晴らとともに『The Sign Magazine』を開設し、クリエイティブディレクターを務める。自らが主催するオールジャンルクラブイベント『club snoozer』を全国各地で開催している。Spotifyプレイリスト「POP LIFE」の選曲、『POP LIFE: The Podcast』の制作出演。
田中宗一郎(たなか そういちろう)
編集者、音楽評論家、DJ。1963年、大阪府出身。雑誌『rockin'on』副編集長を務めたのち、1997年に音楽雑誌『snoozer』を創刊。同誌は2011年6月をもって終刊。2013年、小林祥晴らとともに『The Sign Magazine』を開設し、クリエイティブディレクターを務める。自らが主催するオールジャンルクラブイベント『club snoozer』を全国各地で開催している。Spotifyプレイリスト「POP LIFE」の選曲、『POP LIFE: The Podcast』の制作出演。

三船:もう流石になくなってきていると思うけど、こんなにストリーミングが広がった世界でも、レコード会社の人たちは予算を立てるときに、CDを何枚売るかって考える慣習が残っていたりね。

田中:ただ、それとは別に、そもそもそのシステムって資本主義を前提にしているよねという考え方もあるわけですよ。ここ5年くらい海外のミレニアル世代の間で社会主義が盛り上がっている流れのなかで、「資本主義リアリズム」みたいな言葉があって、資本主義に依存しない別のアイデアはないのかって機運も生まれている。ROTH BART BARONの一連の活動は、そことクロスオーバーする動きだと思っています。

三船:そもそもバンドって本当にお金かかるからね。ヒップホップだったらパソコンがあれば活動できるけど、バンドはスタジオ練習もしなきゃいけないし、楽器もすげえ高い。ギグをひとつするにしても移動費だってかかるし、PAとか照明の費用もかかって、すごいお金が必要。その割に誰も反応してくれないクソみたいなときもいっぱいある。そういう状況で心をすり減らしながらなんとか続けるなんて、やばいと思うんです。だからこそ俺たちはコミュニティーを作る必要があったんですよ。

―持続的なバンド活動を考えたときに、「PALACE」のような場所が必要だった。

三船:そう。自分たちが生きる村、あるいは生存圏を作るというかね。自分たちのことを好きでいてくれる人たち、毎回でもライブを観たいって思う人たちがいてくれてるおかげで、俺たちは活動できているので。

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プロジェクト情報

Makuake「ROTH BART BARON最新作『けものたちの名前』&パーシモン大ホール公演」

ROTH BART BARON、2019年最新作4th Album『けものたちの名前』をMakuakeクラウドファンディングにて先行予約、集まった資金で Music Video を3本作ります。また4th Albumツアーファイナルは2020年5月30日、めぐろパーシモン大ホールにて、応援して下さる皆さんと一緒にメモリアルな単独公演を開催します。今回、このプロジェクトではROTH BART BARONの最新アルバム(通常盤とスペシャルパッケージ盤)をMakuakeにてプレオーダーし、Music Videoの制作とめぐろパーシモン大ホールでの単独公演を応援してくださる方を募集致します。

ROTH BART BARON「PALACE Premium」

ROTH BART BARONによるファンコミュニティの有料版。「PALACE Premium」では、ROTH BART BARONライブの生配信や動画配信、バンドメンバーによるラジオ配信、デモ音源や写真の販売、ここでしか投稿されないトピックなど、「PALACE」では公開されない限定コンテンツをお届けします。有料版「PALACE Premium」でご支援いただいた資金は、バンドの活動資金、また新しいアルバムやMusic Videoの制作費に充てさせていただきます。制作のプロセスや使い方などもコミュニティの中で共有していく予定です。ROTH BART BARONをよりもっと深く楽しみたい方へ、新しいコミュニティ「PALACE Premium」をどうぞよろしくお願い致します。

リリース情報

ROTH BART BARON『けものたちの名前』
ROTH BART BARON
『けものたちの名前』(CD)

2019年11月20日(水)発売
価格:2,750円(税込)
PECF-1177 / felicity cap-318

1. けもののなまえ
2. Skiffle Song
3. 屋上と花束
4. TAICO SONG
5. MΣ
6. 焔
7. HERO
8. 春の嵐
9. ウォーデンクリフのささやき
10. iki

イベント情報

ROTH BART BARON
『TOUR 2019-2020~けものたちの名前~』

2019年11月27日(水)
会場:東京都 渋谷 WWW X

2019年11月29日(金)
会場:宮城県 仙台 Darwin

2019年12月21日(土)
会場:台湾 台北 The Wall

2020年2月1日(土)
会場:富山県 高岡 飛鳥山善興寺

2020年2月2日(日)
会場:石川県 金沢 アートグミ

2020年2月7日(金)
会場:福岡県 the voodoo lounge

2020年2月8日(土)
会場:鹿児島県 SR Hall

2020年2月9日(日)
会場:熊本県 NAVARO

2020年2月10日(月)
会場:山口県 岩国 Rock Country

2020年2月11日(火)
会場:会場:大阪府 梅田 Shangri-La

2020年2月22日(土)
会場:愛知県 愛知芸術文化センター 中リハーサル室

2020年2月23日(日)
会場:会場:広島県 福山 Cable

2020年2月28日(金)
会場:北海道 札幌 Sound Lab mole

『肘折国際音楽祭』2020年3月7日(土)
会場:山形県 肘折温泉

2020年3月8日(日)
会場:青森県 八戸 Powerstation A7

2020年3月22日(日)
会場:京都府 磔磔

2020年5月30日(土)
会場:東京都 めぐろパーシモンホール 大ホール

プロフィール

ROTH BART BARON
ROTH BART BARON(ろっと ばると ばろん)

三船雅也(Vo,Gt)、中原鉄也(Dr)から成る2人組フォークロックバンド。2014年、米国フィラデルフィアで制作されたアルバム『ロットバルトバロンの氷河期』でアルバムデビュー。2015年、2ndアルバム『ATOM』をカナダ・モントリオールにて制作。2017年、EP『dying for』英・ロンドンにて制作。2018年、3rdアルバム『HEX』を発表し、『Music Magazine』『The Sign Magazine』をはじめ多くの音楽メディアにて年間ベストにランクイン。2019年、ファンコミュニティー「PALACE」の有料版「PALACE Premium」が始動した。

田中宗一郎(たなか そういちろう)

編集者、音楽評論家、DJ。1963年、大阪府出身。雑誌『rockin'on』副編集長を務めたのち、1997年に音楽雑誌『snoozer』を創刊。同誌は2011年6月をもって終刊。2013年、小林祥晴らとともに『The Sign Magazine』を開設し、クリエイティブディレクターを務める。自らが主催するオールジャンルクラブイベント、『club snoozer』を全国各地で開催している。Spotifyプレイリスト『POP LIFE』の選曲、『POP LIFE: The Podcast』の制作出演。

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