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谷口暁彦が示す、オルタナティブな場所が消えた時代の同期とズレ

谷口暁彦が示す、オルタナティブな場所が消えた時代の同期とズレ

フェスティバル/トーキョー19
インタビュー・テキスト
杉原環樹
編集:宮原朋之、久野剛士(CINRA.NET編集部)

2010年代は、スマホや仮想空間をめぐる技術の普及によって、現実とインターネットの距離が急速に縮んだ時代だった。2000年代後半に活動を始めた谷口暁彦は、こうした新技術がもたらすリアリティーの変化を、ユーモアと深い考察を通じて示してきたメディアアーティストだ。自身のアヴァターや身近な日用品が登場するその作品は、忘れがたいインパクトを与えると同時に、見るものの世界に対する眼差しを静かに変えていく。

そんな谷口の初となる劇場作品『やわらかなあそび』が、10月より開催されている『フェスティバル/トーキョー19』のプログラムとして上演される。この公演を機に、彼にこれまでの活動の歩みを尋ねた。谷口は、いかにネットアートに出会い、変わり続ける社会の中で独自の表現を作り上げたのか? そして、「いまここ」を強く意識させる劇場空間にヴァーチャルな世界を介入させる、今回のパフォーマンスでの挑戦とは?

ネット世界と現実の関係を探る原体験

―谷口さんが、インターネットや画面上の世界と、現実との関係性に興味を持った原体験はなんですか?

谷口:よく覚えているのは、初めてインターネットにつないだ中学の頃に見た、なんの変哲もないニューヨークの交差点を映したライブカメラの映像です。うちの姉は工学・情報系の人で、当時はパソコンを自作したりしていたんですが、彼女が余ったパーツで作ってくれたパソコンでそれを見ました。テレビのように編集されず、ただ一箇所を映し続ける映像で、遠く離れた別の場所でリアルタイムに起きている出来事が、埼玉の田舎で見れることに、不思議な感覚がしたのを覚えています。

また、子どもの頃にプレイしたビデオゲームも大きかったです。1997年に発売された『moon』(アスキー)というRPGがあるのですが、これは勇者になって敵を倒すのではなく、なんの理由もなくモンスターを殺したりする「悪者」としての勇者から世界を救うゲームなんです。ゲームや遊びの前提を疑ったり、メタ的に捉えていた作品で、すごく印象に残っています。

谷口暁彦(たにぐち あきひこ)<br>メディアアーティスト。多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース講師。メディアアート、ネットアート、映像、彫刻など、さまざまな形態で作品を発表している。主な展覧会に『[インターネット アート これから]——ポスト・インターネットのリアリティ』(ICC、2012年)、『SeMA Biennale Mediacity Seoul 2016』(ソウル市立美術館、2016年)、個展に『滲み出る板』(GALLERY MIDORI。SO、東京、2015年)、『超・いま・ここ』(CALM & PUNK GALLERY、東京、2017年)など。
谷口暁彦(たにぐち あきひこ)
メディアアーティスト。多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース講師。メディアアート、ネットアート、映像、彫刻など、さまざまな形態で作品を発表している。主な展覧会に『[インターネット アート これから]——ポスト・インターネットのリアリティ』(ICC、2012年)、『SeMA Biennale Mediacity Seoul 2016』(ソウル市立美術館、2016年)、個展に『滲み出る板』(GALLERY MIDORI。SO、東京、2015年)、『超・いま・ここ』(CALM & PUNK GALLERY、東京、2017年)など。

―ゲームというと、大学院時代の初期作品『jump from』(2007年)は、スーパーマリオを使った作品でしたね。鑑賞者がマリオをジャンプさせると、谷口さんがプレイする過去の実写映像が画面に挿入され、時間感覚が混乱させられる作品です。

谷口:そうですね。ただ、最初からコンピューターやゲームを使った作品を志向していたわけではないんです。僕はもともと彫刻学科に入学したのですが、学科の空気に馴染めず、3年生から情報デザイン学科に編入しました。『jump from』は、当時よくつるんでいた油絵科の友人から聞いた作品のアイデアから着想した作品です。

そのアイデアとは、あるギャラリーに、その建物の駐車場に黄色いスポーツカーが停まっている様子を描いた絵が飾られている。それを見た鑑賞者は驚く。なぜなら、自分が同じ車に乗ってきたからだ……というものです。つまり、ある種の預言として機能するような絵画というものでした。

もちろん、そんな絵は描くことができないというか、その不可能性がロマンチックなんですが、コンピューターやプログラムを使えばそんな構造を身も蓋もない感じで作れてしまうのではないか、と思ったんですね。メタフィクションに関心があったので、どんな構造を使えばそうした作品を作れるかを考える中で、ゲームを使うアイデアに至ったんです。

―テクノロジーの使用は、作品コンセプトの要請によるものだったんですね。メタフィクションへの関心はどこからきたのですか?

谷口:僕が学生の頃、90年代後半から2000年代頃に登場したラップトップミュージシャンからの影響があったと思います。具体的にはOvalや Alva Noto(ともにドイツの音楽ユニット、音楽家)といったアーティストたちです。僕も当時、Max/mspなどを使用して、ラップトップミュージックを作っていました。特にOvalがそうだったのですが、彼らには、あたらしい音楽を生み出すためには、そのためのツール、ソフトウェアから自作しなければならないというような「制作に対するメタな態度」があったんですね。

Oval『Systemisch』(1994年)を聴く(Apple Musicはこちら

―大学院修了後、活動を本格化する中ではどんな出来事がありましたか?

谷口:2000年代後半はTwitterが普及し始めた頃で、ネット上で友達の友達くらいまでの距離でゆるやかに繋がっていたように思います。仲間内と公共の間くらいの領域でちょうどよく活動できていたというか、騒げていたところがありました。当時、僕は同級生の渡邉朋也くんと「思い出横丁情報科学芸術アカデミー」というメディアアートの架空の学校を作り、夜な夜な Ustreamで配信を行いながら批評活動のようなことをしていていました。それもやはり当時のインターネットの雰囲気でできたことのように思います。

また、そうした活動を通じてネットアートのユニット「エキソニモ」の千房けん輔さんと出会いました。当時、千房さんは「Webの質感」という言葉を使われていて。たとえば、「(ファイル形式の)JPEGとGIFではどちらが硬いか?」といったような、一般的には謎な(笑)、けれど現代的な感覚について言及していたんですね。このような問題についての議論が、2012年に開催された『[インターネット アート これから]——ポスト・インターネットのリアリティ』展(ICC)につながりました。

谷口暁彦が手がけたゆるふわギャング“Hunny Hunt”MV

―同展は、その数年後に日本でも広く注目された「ポストインターネット」という概念や感覚を先駆的に取り上げた展示でした。

谷口:そうですね。その頃はネット由来の質感に、多くのアーティストが注目していました。たとえば2010年から2012年頃にかけて「GIF」が再注目された時期もありました。当時、アンソニー・アントネリスというアーティストの「putitonapedestal.com」というGIF画像を架空のギャラリー空間に展示することができる作品があって、それに影響されて僕も「GIF 3D Gallery」という、3次元の仮想空間にGIF画像を展示することができるネットアート作品を作っていたりしました。

自宅でインタビューに答える谷口
自宅でインタビューに答える谷口
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イベント情報

『フェスティバル/トーキョー19』
『フェスティバル/トーキョー19』

2019年10月5日(土)~11月10日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場、あうるすぽっと、シアターグリーンほか
主催:フェスティバル/トーキョー実行委員会
「トランスフィールド from アジア」共催:国際交流基金アジアセンター

『やわらかなあそび』
2019年11月9日(土)~11月10日(日)
会場:東京都 池袋 シアターグリーン BIG TREE THEATER
演出・出演:谷口暁彦

『Sand(a)isles(サンド・アイル)』
2019年10月28日(月)~11月10日(日)
会場:東京都 池袋 周辺
演出・設計:JK・アニコチェ × 山川陸

『Bamboo Talk(バンブー・トーク)』『PhuYing(プニン)』
2019年10月25日(金)~10月27日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シアターイースト
振付:ウンラー・パーウドム、ヌーナファ・ソイダラ

『To ツー 通』
2019年11月2日(土)~11月4日(月)
会場:東京都 池袋 シアターグリーン BIG TREE THEATER
企画・出演:オクイ・ララ × 滝朝子

『トランスフィールド from アジア トーク』
2019年11月2日(土)、11月3日(日)、11月9日(土)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シンフォニースペース他

『ファーム』
2019年10月19日(土)、10月20日(日)
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと
演出:キム・ジョン
作:松井周

『新丛林 ニュー・ジャングル』
2019年10月18日(土)~10月20日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シアターウエスト
コンセプト・演出・出演:香料SPICE

『Strange Green Powder』
2019年10月24日(木)、10月26日(土)、10月27日(日)
会場:東京都 池袋 豊島区立目白庭園 赤鳥庵
振付・演出:神村恵

『Changes シーズン2』
2019年11月2日(土)~11月4日(月)
会場:東京都 池袋 HUMAXシネマズ
ディレクション:ドキュントメント

『オールウェイズ・カミングホーム』
2019年11月9日(土)~11月10日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シアターイースト
原案:アーシュラ・K・ル=グウィン
演出:マグダ・シュペフト

『NOWHERE OASIS』
2019年11月1日(金)~11月10日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 劇場前広場 ほか
コンセプト・ディレクション:北澤潤

『ひらけ!ガリ版印刷発信基地』
会場:東京都 大塚 ガリ版印刷発信基地
ディレクション:Hand Saw Press

プロフィール

谷口暁彦(たにぐち あきひこ)

メディア・アーティスト。多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース講師。メディア・アート、ネット・アート、映像、彫刻など、さまざまな形態で作品を発表している。主な展覧会に『[インターネット アート これから]——ポスト・インターネットのリアリティ』(ICC、2012年)、『』SeMA Biennale Mediacity Seoul 2016』(ソウル市立美術館、2016年)、個展に『滲み出る板』(GALLERY MIDORI。SO、東京、2015年)、『超・いま・ここ』(CALM & PUNK GALLERY、東京、2017年)など。

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