
パノラマパナマタウンが掬いあげる、社会の中で死んじゃってる心
『GINGAKEI探索in MADO』- インタビュー・テキスト・編集
- 矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
- 撮影:小杉歩
パノラマパナマタウンのフロントマン・岩渕想太と初めて出会ったのは、アート集団・Chim↑Pomの個展だった。レコード会社・A-Sketchのスタッフ(この人→なぜA-Sketchはflumpool、ワンオクなどヒットを続けられるのか?)と偶然会って話していたら、隣にいたのが彼だった。正直に言うと、当時の私はまだパノラマパナマタウンの音楽や表現をちゃんとは知らなかった。でも、彼としゃべればしゃべるほど、彼がどれだけ好奇心旺盛で、あらゆるカルチャーを目をキラキラさせながら貪欲に吸収していて、アンダーグラウンドなものも掘りながらも、オーバーグラウンドにも目を向けて、今の時代を生きる人がなにを考えているのかを敏感な感性で感じ取っている方だと知り(あと実家が餅屋だということも)、どんどんとリスペクトが湧いていった。
そんなパノラマパナマタウンが、バンドとしての表現力と説得力を一段上げてミニアルバム『GINGAKEI』を完成させたタイミングで、CINRA.NETとして初めてインタビューさせてもらうことにした。さらには、CINRAが運営する渋谷ヒカリエ8Fのカルチャースペース「MADO」で、パノラマパナマタウンの世界観を体感してもらえるイベントを企画した。
自己肯定感を持てないこと、他人に合わせてしまうこと、社会の型にハマって物事を考えてしまうこと、迷惑をかけないのが絶対的な正しさだと思っていること……パノラマパナマタウンは、人々が無意識に身につけている様々な枷を外しにかかってくる。
人が喜ぶように生きて、自分を殺しちゃいがちだったんです。それが昔からコンプレックスだった。(岩渕)

パノラマパナマタウン
左から:タノアキヒコ(Ba)、田村夢希(Dr)、岩渕想太(Vo,Gt)、浪越康平(Gt)
福岡、広島、大阪、神戸と、それぞれ出身の異なる4人が、神戸大学の軽音楽部で集まり、結成されたオルタナティヴロックバンド。ロックとヒップホップ両方に影響を受けた、熱いライブパフォーマンスと独特なワードセンスを武器に奔走する。「MUSICA」「A-Sketch」「SPACE SHOWER TV」「HIP LAND MUSIC」が「MASH A&R」として主催する4社合同オーディションでグランプリを獲得。2018年1月にメジャーデビュー。2019年11月13日にミニアルバム『GINGAKEI』をリリースし、同月15日からアルバムをひっさげてのツアー『銀河探察TOUR 2019-2020』を開催。年明けには大阪BIGCAT、恵比寿LIQUIDROOMでもワンマンライブも決定している。
―これまでのパノラマパナマタウン(以下、PPT)の曲は、自分が抱えてるモヤモヤを吐き出したり、メッセージを自分自身にも言い聞かせてたところがあったように思うのですが、最新作『GINGAKEI』を聴かせてもらって、今はもう自分の生き方に対して確固たる意志を持っているし、メッセージは自分に向いてるのではなくて人に伝えている、という姿勢に変わったなと感じました。
岩渕(Vo,Gt):そうですね。確かに、前までは葛藤とか自分の悩みがそのまま歌詞になってたけど、今回は……まあまだ自分のこともあるけど……やっぱり人に伝えたいことが鮮明に出てると思います。
前作(『情熱とユーモア』2019年2月発売)は、メジャーに行って最初のフルアルバムということもあって、音楽的にもなにをするかすごく悩んでいたときだったし、歌いたいことはずっとあったけど、いざとなると「自分が伝えられること、歌えることって、なんだろう」って悩んだりもして。やっぱり、一個腹が決まったのがデカイかもしれないです。
―腹が決まった、というのは?
岩渕:自分たちが面白いと思うことをしないと、面白いと思ってもらえないなって。メジャーに行って、自分で枷をハメてたところがあったなと思ったんです。「ロックバンドってこうじゃなきゃいけないんじゃないか」って考えたり、プレッシャーを抱えてダメになっちゃったり、焦ってた感じもあったし、焦ってがむしゃらにやってた部分もたくさんあったりして。
もともと自分たちは4人の楽しいことをやっていたはずで、枷をハメたりルールを作ったりなんてしてなかったのに、自分で自分のことを面白くなくしてるなっていう気持ちが出てきて。だから今回は、「自分たちが面白いと思えることに振り切ろう」というモードでアー写も撮ったし、曲も作ったし、歌詞も書いたし。
タノ(Ba):前回のアルバムの終盤にできたのが“めちゃめちゃ生きてる”だったんですけど、これができたときに「抜けれたな」という感覚がありました。多分、ハマりきった状態だと、「めちゃめちゃ生きてる」という言葉は出てこなかったと思うし。
実際、ミュージックビデオを撮るときも、岩渕が監督さんに結構いろいろ言って、ちょっとモメたりもしたんですけど、でもそうやって突き通したからこそ納得のいく曲と映像が作れたなっていう感覚があって。しかも、通したら本当に靄が晴れた。だからやっぱり、自分らがやりたいことちゃんと通さないといけないし、やりたいことは無理に抑えないでいいんだなって思いましたね。
―『GINGAKEI』は、日本人が抱いているあらゆる「恐怖心」を指摘しつつ、外へと導いてくれる内容になっているとも思いました。そのひとつは「人からなにか言われること」に対する恐怖心で。今言ってくれたような、自分で自分を抑えなくていいんだよ、他人や社会に合わせようとしなくていいんだよ、というのはこのアルバムのメッセージの大事な核になっていますよね。
岩渕:僕、もともと小さい頃から人に合わせちゃいがちで。いろんな人が見てるところに出たら、みんなが喜ぶようなことをしたり。人が喜ぶように生きようと思ったら、そういうふうに生きれちゃって、自分を殺しちゃいがちだったんです。それが昔からコンプレックスで。
だから、一人ひとりが輝いていこうとか、一人ひとりが本当はもっと面白いはずだからそのまんま輝いてほしい、というメッセージを強く言いたかったんですよね。
―エンターテイナーを演じることができるのもひとつの個性だとは思うけど、自分の素を肯定してもらえることの安心感って人間には必要ですよね。
岩渕:小中高のときは仲良い友達が3人くらいいたんですけど、その友達とかこのメンバーに、「みんなといるときの岩渕ってなんか違うよね」って絶対に言われたんですよ。女の子との1対1の会話でも、「なんか違うよね」って絶対に言われて。本当はこんなんじゃん、もっと面白いじゃん、って。
それで自分に対しての悔しさみたいなものがすごくあって。なんでこんな自分の面白いところを殺さなきゃいけないんだろう、これを素直に出した方がよっぽど面白いのになあ、みたいなつらさがずっとあったんです。
リリース情報

- パノラマパナマタウン
『GINGAKEI』(CD) -
2019年11月13日(水)
価格:1,980円(税込)
AZCS-10871. Dive to Mars
2. 目立ちたくないMIND
3. ずっとマイペース
4. Chopstick Bad!!!
5. HEAT ADDICTION ~灼熱中毒~
6. エイリアン
7. GINGAKEI
イベント情報
- 『パノラマパナマタウン 「銀河探索TOUR 2019-2020」』
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2020年1月13日(月・祝)
会場:大阪府 BIGCAT2020年1月19日(日)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM

- 『俺の命はクリスタルガイザー何本分なのよ』
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2019年12月16日(月)~12月25日(水)
会場:東京都 歌舞伎町 人間レストラン
時間:18:00~5:00
プロフィール

- パノラマパナマタウン
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メンバーは岩渕想太(Vo,Gt)、浪越康平(Gt)、タノアキヒコ(Ba)、田村夢希(Dr)。福岡、広島、大阪、神戸と、それぞれ出身の異なる4人が、神戸大学の軽音楽部で集まり、結成されたオルタナティヴロックバンド。ロックとヒップホップ両方に影響を受けた、熱いライブパフォーマンスと独特なワードセンスを武器に奔走する4人組。2015年、ロッキング・オンが主催する『RO69JACK』でグランプリを獲得し、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』へ初出演。「MUSICA」「A-Sketch」「SPACE SHOWER TV」「HIP LAND MUSIC」が「MASH A&R」として主催する4社合同オーディションでグランプリを獲得。2016年3月には初の全国流通盤となる『SHINKAICHI』をリリース。2018年1月17日、メジャーデビューミニアルバム『PANORAMADDICTION』をリリース。2019年2月13日、1stフルアルバム『情熱とユーモア』をリリース。2019年11月13日にミニアルバム『GINGAKEI』をリリースし、同月15日からアルバムをひっさげてのツアー『銀河探察TOUR 2019-2020』を開催。年内はゲストを迎えた2マン公演で全国をまわり、年明けには大阪BIGCAT、恵比寿LIQUIDROOMでもワンマンライブも決定している。