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椿昇×松倉早星 反逆のアートフェアが描こうとする京都の未来図

椿昇×松倉早星 反逆のアートフェアが描こうとする京都の未来図

『ARTISTS' FAIR KYOTO 2020』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:伊藤信 編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部)

頑固さと根性はアーティストにとって重要なんです。逆に器用になんでもできる子はほとんど大成しない。(椿)

―出品作家であるお二人からも話を聞きたいと思います。どういう経緯で今回参加することになったのでしょうか?『AFK』は、若手アーティストを、中堅以上の作家が推薦するアドバイザリーボードのシステムを採用していますね。

前田:私はもともと京都造形芸術大学の学生で、椿さんからの推薦です。

前田紗希<br>1993年福井県生まれ。2015年京都造形芸術大学美術工芸学科油画コース卒業。作家が日常の中で感じ取る、物事の相対性や対比がトライアングルのフォルムとして画面に現れる。トライアングルは「隣り合うものによって答えが変わり、決して交わりはしない」という万物とその関係性の根本を主張する。
前田紗希
1993年福井県生まれ。2015年京都造形芸術大学美術工芸学科油画コース卒業。作家が日常の中で感じ取る、物事の相対性や対比がトライアングルのフォルムとして画面に現れる。トライアングルは「隣り合うものによって答えが変わり、決して交わりはしない」という万物とその関係性の根本を主張する。

椿:前田さんは学部の卒業制作で学長賞を獲っているんですけど、当時、完全なダークホースだったんですよ。在籍していた美術工芸学科ではそれまでまったく注目されてなくて。

前田:選ばれたのはすごく意外でした。実際、自分の絵は良いと思ってたんですけど、学生のときはぜんぜん評価されてなくて(苦笑)。だから認められたことで自信が確固たるものに変わったというか。

前田紗希『19_14』
前田紗希『19_14』

松倉:よかった!

前田:制作って孤独な作業ですし、安定してお金がもらえるわけでもないから精神的にかなりしんどいんです。そこで認めてくれる人が現れたのは素直に嬉しかったですね。

椿:僕らは獰猛なハイエナだから、すぐによさに気づくのよ。「これ早く食わな!」って(笑)。彼女は大学院には進まず、一度は地元にも帰って、就職しながら描いているんだけど、そういう頑固さと根性はアーティストにとって重要なんです。

逆に器用になんでもできる子はほとんど大成しない。前田さんのように、厳しい環境に身を起きつつ、作品に関しても「三角形」という限定的なモチーフを展開するなんて、ストイックで体力がなければできないこと。僕は飽き性だから絶対に無理!

前田:(笑)絵を描くのってすごく体力いりますからね。

前田紗希

アートや音楽のフィールドを利用して、自分のやりたいことをいかに広げていけるか。(黒川)

―黒川さんは誰からの推薦で?

黒川:自分は金氏(徹平)さんから話をいただきました。前田さんがおっしゃった体力については、彫刻をやっているので自分にも思い当たるところが多くあります。もともとは音楽をやっていたのですが、音と彫刻の接点を感じて、京都市立芸術大学の大学院美術研究科の彫刻専攻に入学しました。

黒川岳<br>1994年島根県生まれ。2016年東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科卒業、2018年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了。自身が出会った様々なものの音や形、動きを注視し、それらを自らの身体で捉えようとする行為を繰り返す中で生まれる形や音、動きなどをパフォーマンスや立体、映像、プロジェクトなど様々な形式で発表している。
黒川岳
1994年島根県生まれ。2016年東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科卒業、2018年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了。自身が出会った様々なものの音や形、動きを注視し、それらを自らの身体で捉えようとする行為を繰り返す中で生まれる形や音、動きなどをパフォーマンスや立体、映像、プロジェクトなど様々な形式で発表している。

黒川:それまでせいぜい楽器を弾くレベルの話だったのが、彫刻は石を彫るとか、2トンの石を吊るとか、めちゃくちゃフィジカル(苦笑)。でも、それが自分のやりたいことには必要でしたから、色々な技術も習得しながら今に至るという感じです。

―音楽から彫刻に移るというのは、すごい転身ですね。

黒川:学部時代に所属していた専攻が、演劇や美術、社会学、人類学などと一緒に、複合的に音や表現を考えるというものだったんです。そこでは作品を作る人もいれば、場を作る人もいて、もともと横断的だった。ですから、アートや音楽そのものをやりたいというよりも、それらのフィールドを利用して、自分のやりたいことをいかに広げていけるか、が自分にとってのテーマでもあるんです。

黒川岳『listening to stone』
黒川岳『listening to stone』

椿:僕もまったく同じなので共感します。プラットフォームを作りたいのであって、アートをやりたいわけじゃない。そしてアートをプラットフォームとして見ると、あちこちに隙間があって、それを利用してやれることってたくさんあるんだよ。京都市芸で教えている金氏さんも、そういった表現のフィールドの広さを視野に入れながら、そのハブになるような活動を自分でもしている。それはとても重要なこと。

黒川:関西は異なるフィールドの人の間の活発な交流があっていいなと思います。音楽なのか美術なのか判断つかないような表現がある。そして、だいたいどうやって暮らしているのかわからない人がたくさんいる(笑)。そういうところがすごくいいですね。

黒川岳
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イベント情報

『ARTISTS' FAIR KYOTO 2020』
『ARTISTS' FAIR KYOTO 2020』

2020年2月29日(土)、3月1日(日)
会場:京都府 烏丸御池 京都府京都文化博物館 別館、丸太町 京都新聞ビル 地下1階
時間:11:00~18:00

プロフィール

椿昇(つばき のぼる)

京都造形芸術大学芸術学部美術工芸学科教授。アメリカ同時多発テロ事件をきっかけとした「UN APPLICATION PROJECT」、東日本大震災復興のための「VITAL FOOT PROJECT」など、時勢を受け、様々なプロジェクトを展開してきた。長年にわたってアート教育にも携わり、京都造形芸術大学美術工芸学科の卒展をアートフェア化、内需マーケット育成のためにアルトテックを創設。アートを持続可能社会実現のイノベーションツールと位置づけている。

松倉早星(まつくら すばる)

1983年北海道富良野生まれ。立命館大学産業社会学部卒業。東京・京都の制作プロダクションを経て、2011年末ovaqe inc.を設立。2017年7月より、プランニング、リサーチ、クリエイティブに特化したNue inc設立。代表取締役就任。これまで領域を問わないコミュニケーション設計、プランニング、戦略設計を展開し、国内外のデザイン・広告賞受賞多数。

前田紗希(まえだ さき)

1993年福井県生まれ。2015年京都造形芸術大学美術工芸学科油画コース卒業。個展に2017年『DUAL BLUE』(GALLERY TOMO ITALY,MAG / イタリア)、2019年(GALLERY TOMO / 京都)、2018年『アートフェア東京』(MISA SHIN GALLERY)等出展多数。作家が日常の中で感じ取る、物事の相対性や対比がトライアングルのフォルムとして画面に現れる。トライアングルは「隣り合うものによって答えが変わり、決して交わりはしない」という万物とその関係性の根本を主張する。

黒川岳(くろかわ がく)

1994年島根県生まれ。2016年東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科卒業、2018年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了。自身が出会った様々なものの音や形、動きを注視し、それらを自らの身体で捉えようとする行為を繰り返す中で生まれる形や音、動きなどをパフォーマンスや立体、映像、プロジェクトなど様々な形式で発表している。近年は音楽家やダンサー、パフォーマーとのコラボレーションによる作品制作も行う。

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